ODA揺らぐ平和理念 他国の軍隊への援助解禁-東京新聞(2015年2月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021002000260.html
http://megalodon.jp/2015-0211-1100-58/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021002000260.html

政府は十日午前の閣議で政府開発援助(ODA)の基本方針を定めたODA大綱に代わる新たな「開発協力大綱」を決定した。これまで原則禁じていた他国の軍隊に対する援助を、災害後の復旧などの非軍事分野に限って認めるのが柱。安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」を反映させ、軍と無関係の開発支援に限ってきたODAの理念を大きく変える内容。支援が軍事分野に転用される懸念もあり、日本の平和外交が変質する恐れがある。
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◆周辺地域 刺激の恐れ
<解説> 十日に閣議決定された開発協力大綱で透けて見えるのは、経済・軍事的に拡大を続ける中国に対する安倍政権の対抗意識だ。だが、中国を意識するあまり、日本の援助が他国軍に軍事転用されたり、援助先と競争関係にある国を刺激したりする恐れが強まった。

大綱は重点政策の一つに「(援助先との)普遍的価値の共有」を掲げた。具体的には「基本的人権の尊重や法の支配」といった価値観を他国と共有することで安定した社会を目指すとした。これらは、安倍首相が中国を意識して頻繁に使う言い回しだ。

首相は他国の軍隊や「ODA卒業国」への援助に道を開くことで、幅広い国々との連携も加速させ、中国包囲網をつくろうとしている。

連携相手として首相の念頭にあるのは、東南アジア諸国だ。特に、南シナ海の領土問題で中国と対立するフィリピンやベトナムなどを中心に資金や物資を提供し、連携を強化、中国をけん制する狙いがある。

ODAについて、国益を達成する外交手段として位置付けたのも、開発支援をてこに国際社会で有利な立場を築く戦略からだ。

新大綱は、首相の積極的平和主義を踏まえ「国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、より一層積極的に貢献する」ことを目的に掲げた。だが、新大綱により、日本の平和国家としての外交方針が揺らぐことになっては本末転倒だ。 (上野実輝彦)