苦心する日本の教科書:私説・論説室から-東京新聞(2015年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015020402000156.html
http://megalodon.jp/2015-0205-1202-24/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015020402000156.html

韓国は日本に対し、植民地支配の歴史を十分に教えていないと批判する。手元に韓国の高校国史教科書(二〇〇七年版)がある。近代史の後半は植民地時代であり、日本の統治や抗日独立運動に関する記述は多岐にわたり全部で四十ページ近くになる。

次に中学用の「新編 新しい社会 歴史」(東京書籍)を読んでみたが、日清戦争韓国併合皇民化政策など、朝鮮半島に関する記述は合わせても三ページほど。日本の近、現代史では中国や米国との関係にも枚数を割いているから、日韓の教科書が相手国を記述する分量の差は埋まりそうもない。

東京書籍版の二枚の写真が強く印象に残った。「日本語で授業を受ける朝鮮の子どもたち」と「志願兵に動員された朝鮮の若者たち」。日本の統治が続いて、学校では韓国語や韓国史を教えなくなった、創氏改名で日本名を名乗り戦地に赴いた若者もいたことを、小さな写真だがよく伝えていた。

韓国は日本の教科書について、竹島(韓国名・独島)の領有権を主張し、従軍慰安婦の記述が次第に削除されていると強く批判する。二つの問題は日韓外交の最大の対立点だ。それでも、教科書の多くはアジアの近隣諸国に多大な被害を与えたというものごとの核心を、限られた紙幅で苦心して表現しようとしている。こういう点をもっと知ってほしい。 (山本勇二