道徳、「読む」から「考える」に 教科化へ指導要領改定案-東京新聞(2015年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015020590070210.html
http://megalodon.jp/2015-0205-1044-43/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015020590070210.html

◆価値観強制 懸念拭えず
道徳の教科化によって、検定教科書と子どもの学習評価が導入される。政権が特定の価値観を強制するのではないかという懸念は拭えず、国民を戦争に駆り立てた戦前の教科「修身」を重ね合わせる教育関係者も少なくない。

鍵となるのが教科書の検定基準だ。安倍政権は昨年一月、歴史や領土などの政府見解を明記するよう社会科教科書の検定基準を見直し、統制を強めている。文部科学省作成の副教材「私たちの道徳」が、教科書会社に影響を与える可能性も指摘される。検定基準は、多様な教科書作りを促すものでなくてはならない。

学習評価の導入にも問題点が多い。学校現場からは「どう評価したらいいのか」「子どもの内面は評価できない」と戸惑いの声が漏れる。国が求める価値観で評価すれば、児童生徒の考え方が画一化される恐れもある。文科省が作成する教師向けの指導資料には、多様な児童生徒の個性を前向きに捉えるよう評価方法を明示すべきだ。

道徳の教科化は第一次安倍政権も目指したが、中教審は「検定教科書はなじまず、評価も難しい」との理由で答申を見送った経緯がある。今回は大津市の中二いじめ自殺事件の再発防止を前面に掲げたが、当時の課題は解決していない。

教科書の検定基準と教師向けの指導資料は、二〇一五年度中には出そろう。そこで、学校現場や教育関係者らの懸念を拭い去れるかどうかが、文科省に問われる。 

<教科> 法律上の定義はないが、中教審は2008年に「一般的に、免許を持った専門教師が、教科書を用いて指導し、数値などで評価を行う、と考えられる」とした。現行の学習指導要領は、小中学校のいずれも国語、社会など9教科で構成されている。

関連)
東京新聞の紙面記事「道徳の戦前回帰 警戒」より
道徳の評価の歴史-大森直樹研究室
http://www.u-gakugei.ac.jp/~omori/Teaching_materials_poster.pdf