総選挙2014 最高裁国民審査は「わからなかったら×(バツ)」で(江川紹子さん)-ポリタス「総選挙」から考える日本の未来(2014年12月8日)

http://politas.jp/articles/231

ただ、せっかく投票に行ったのに、国民審査だけ棄権してしまうというのは、いかにももったいない。
では、わかる裁判官についてだけ判断をしよう。そう思っても、それはできない。一枚の用紙に複数の裁判官が並んでいるため、「A裁判官は辞めさせたいが、他の裁判官についてはよくわからない」という場合、A裁判官についての判断だけして、後は棄権する、という個別的棄権ができない。これは、大きな制度的欠陥だ。
「B裁判官には続けて欲しいが、他の裁判官については判断できない」という場合にも、B裁判官以外の判断を棄権することはできない。現行制度では、「辞めさせたい」裁判官も「よくわからない」裁判官も、無印にするしかなく、同じ扱いになってしまう。これでは、有権者の考えが結果に反映されているとは言えない。

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そういう今の国民審査のあり方に対して、「ノー」を言う意味でも、私は、「わからなかったら×をつける」ことを提案したい。
そもそも、私たちは日頃、「よくわからない」人に白紙委任状を出したりはしない
そもそも、私たちは日頃、「よくわからない」人に白紙委任状を出したりはしないではないか。知らない人に、お金を預けたりもしない。なのに、最高裁裁判官という私たちの人権や国の法制度に大きな権限を持つ人たちについての大事な判断をする時に、「わからなかったら、お上にお任せしておく(=何もつけずに投票)」というのは、いかがなものだろうか。人権や法制度についての最終判断を、「よくわからない」人に託してしまって大丈夫か? この裁判官については「よくわからない」と思ったら、私は×をつける。
もちろん、「この人は信任したい」「この裁判官を辞めさせる必要はない」と思える人がいれば、その人については空欄のままにしておけばよい(くれぐれも、○をつけたりしないように。×以外の印をつけると無効になってしまう)。
私自身も、前回の国民投票では対象裁判官全員に×をつけたが、今回は、5裁判官のうち2人は信任の気持ちを込めて無印にしようと思っている。その2人については、先日の「一票の格差」訴訟判決での意見を読み、審査広報の「裁判官としての心構え」に、憲法の尊重や人権擁護の決意がしっかり明記してあるのを知って、ぜひ、今後とも裁判官を続けて欲しい、と思った。

  • 山本庸幸(やまもと・つねゆき)

インタビュー記事など:
集団的自衛権見直し布石の異例人事/丁寧な説明不可欠/法制局長官に小松駐仏大使
山本新判事、解釈変更「難しい」 集団的自衛権行使で
http://www.47news.jp/47topics/e/244378.php
http://megalodon.jp/2014-1208-0947-37/www.47news.jp/47topics/e/244378.php

内閣法制局長官から最高裁判事に就任した際の記者会見で安倍政権が進める憲法解釈による集団的自衛権容認について「現行の憲法で約半世紀維持されてきた解釈を変えるのは、なかなか難しいと考えている」とし、「集団的自衛権を実現するには憲法改正をした方が適切」との見解を表明した。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2003G_Q3A820C1CR8000/
http://megalodon.jp/2014-1208-0945-45/www.nikkei.com/article/DGXNASDG2003G_Q3A820C1CR8000/

  • 山粼敏充(やまさき・としみつ)

主に関わった裁判:
2013年参院選の「一票の格差」をめぐる最高裁判決
2013年参院選の1票の格差をめぐる最高裁判決で「参議院議員通常選挙の定数配分規定について違憲状態にあったが、国会の較差是正の実現に向けた取組が国会の裁量権行使の在り方として相当なものでなかったということはできず、憲法違反ではない」という多数意見に対し、「参議院議員選挙制度における投票価値の平等の妖精は国政の運営における参議院の役割等に照らせば、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって違憲の問題が生ずる前期の不平等状態が解消される必要があるというべきである」との補足意見を付加した。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/647/084647_hanrei.pdf