木下恵介監督、高峰秀子さん主演の映画「二十四の瞳」は1954(昭和29)年9月の公開で、ちょうど60年前になる。ビデオを見ても損はない-東京新聞(2014年11月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014110302000113.html
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木下恵介監督、高峰秀子さん主演の映画「二十四の瞳」は一九五四(昭和二十九)年九月の公開で、ちょうど六十年前になる。本日は文化の日。若いお方もスマホ遊びで休日を終えるぐらいならば、ビデオを見ても損はない。
香川県・小豆島の分校を舞台にした若い先生と小学一年十二人の日々という説明は要るまい。映画の冒頭、先生が教室で、初めて出欠を取る場面がえらく長い。
出席なんて名を呼び、返事をきけば済むのに大石先生は名前を呼んで、いちいちその子と会話をする。「みんなには何て呼ばれているの」「あなたはちょっとおせっかいね」。時間がかかるはずだが、子ども一人一人に時間をかけて向きあう大石先生の性格を描いている。
同じ小学一年生。公立小学校の一年生「三十五人学級」の見直しと四十人体制の復活を財務省が主張している。二〇一一年度に導入したが、いじめ、不登校などで大きな改善効果がないという。
新たに導入する幼児教育の段階的無償化にも財源がかかることは承知しているが、いかにも性急な判断である。
一年生にとって、先生は親に近く、お話をしたい相手である。「先生あのね」。人数を増やし、子らが分け合う時間を奪うべきではなかろう。そこに思い出や体験が生まれる。「八十の瞳」はいかにも窮屈である。成果がない? 成果はその子が大人になるまで判断できまい。