原発再稼働 御嶽噴火は新たな教訓-東京新聞(2014年10月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014100602000139.html
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火山は、いつ、どこで、どんな噴火を起こすか分からない−。御嶽山は教えている。巨大噴火は予知できると、火山群近くにある川内原発の再稼働を急ぐのは、科学的に正しいことなのだろうか。

九州電力川内原発が新たな規制基準に「適合」と判断された後、地元の薩摩川内市長と鹿児島県知事は、政府から経済産業相名の文書をそれぞれ受け取った。

「万が一事故が起きた場合は関係法令に基づき、政府が責任を持って対処する−」

だが、どのような事故を想定し、具体的に何ができるのかは定かでない。

むろん原発事故は、電力会社や自治体の手に負えるものではない。だが、政府の力も到底及ばないことを福島の事故は教えている。原状回復や補償はおろか、後始末さえままならない。原発事故の責任を負える者など、この世には存在しない。万が一にも、あってはならない事故なのである。

川内原発再稼働のハードルは、地元合意を残すのみだとされている。周辺住民へ安心をアピールするためとしか思えない。

ところが地元や周辺住民は、白煙を上げる御嶽山と、噴火被害の甚大さを知って、新たな不安を募らせているのではないか。

川内原発は火山の群れの中にある。九電も原発の半径百六十キロ以内に、将来、噴火活動の可能性が否定できない火山が十四あると認めている。

原子力規制委員会は御嶽の噴火後も「巨大噴火は平均九万年に一度。今回より大規模な噴火に遭っても原発に影響はない。噴火の予兆は監視し
ており、対処はできる」との考えを変えてはいない。

「巨大噴火の予知は今の研究レベルでは不可能」とする火山噴火予知連絡会の見解と食い違う。

かつて御嶽は活動を終えた死火山と考えられていた。有史以来の噴火が起きたのは一九七九年。つい最近と言っていい。今回も新しいタイプの水蒸気爆発という。

三年前に噴火した霧島連山新燃岳の場合、前兆はあったが正確には予知できなかった。地震同様、火山や噴火の正体を、科学はまだまだとらえてはいない。

安倍晋三首相は先日の所信表明で「(規制委の)科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます」と、原発回帰を宣言した。

規制委の判定は十分科学的だと言えるのか。川内原発の適合をより多くの見地から見直す方が、科学的だと言えるのではないか。