歴史も「コピペ」するのか:私説・論説室から-東京新聞(2014年8月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2014081302000135.html
http://megalodon.jp/2014-0813-1026-27/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2014081302000135.html

インターネットで検索した他人の文章やデータを勝手に「コピー&ペースト」して、論文やリポートを作る学生が増えているらしい。若いデジタル世代にとって、コピペはありふれた無邪気な行為なのかもしれない。

ネットを調べると、小中学生向けの自由研究や読書感想文の見本さえ出回っている。適当に見繕ってコピペすれば、夏休みの宿題もあっさりと乗り切れそうだ。でも、しっかりした手ほどきがないと、著作権侵害やデータの捏造(ねつぞう)や改ざんに無頓着にもなりかねない。

理化学研究所小保方晴子氏の論文不正が騒がれたが、ずさんな指導や甘い審査が災いしたのではないか。多くの学生がコピペに罪悪感を抱いていない実態を見ると、小保方氏に野心はあっても、悪意はなかったと思う。

コピペ行為には思考停止に陥る危うさがある。他人の意見やアイデアを都合よく盗み取り、自分の頭では考えないからだ。そこには努力や真心の結晶はかけらも残らない。

広島と長崎の原爆の日安倍晋三首相のあいさつは核や原爆症をめぐる内外の動きを紹介したくだりを除き、去年のコピペに等しかった。平和の尊さに思いをはせた痕跡は感じられず、安易に官僚任せにしたに違いない。

立憲主義を骨抜きにし、日本を戦争ができる国に変える。負の歴史までコピペするのは無邪気では済まされない。誰の悪知恵の盗用なのか。厳しく審査しなくては。