あまちゃん作曲家が語る風営法裁判「まるでコメディー」-朝日新聞(2014年4月24日)

http://www.asahi.com/articles/ASG4P7SF3G4PUCVL03F.html
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無許可で客にダンスをさせたとして、風俗営業法違反の罪に問われた大阪市のクラブ「NOON」の元経営者、金光(かねみつ)正年被告(51)の判決公判が、25日に大阪地裁で開かれる。「レッツダンス署名推進委員会」の呼びかけ人の一人で、人気ドラマ「あまちゃん」の音楽を手がけた音楽家大友良英さん(54)に、改めて風営法について聞いた。

特集「ダンス規制を考える」

 ――そもそも、クラブとはどういう場所ですか。

文化の交差点で、創作の中心。交流の中から色々なものが生まれる。音楽だけじゃなくて、ファッションの要素があったり、フリーペーパーを発行するお店があったり。
 ――風営法のダンス営業規制撤廃を訴える、「レッツダンス」の活動にかかわるようになったきっかけは。

知人のクラブ関係者が「次に摘発されるのは僕らだ」って、本当に悲しそうな顔をしていて。これは何とかしなきゃと思った。最初、「デモをしたい」というから俺は止めたの。ドレッドヘアーやタトゥーの連中がデモをしても、賛同を得られるどころか逆効果になりかねないから(笑)

それよりは、法的な問題を攻めるべきだと思いましたね。ダンス営業を規制することは基本的人権に抵触するんじゃないかと。

 ――世間のクラブに対するイメージは良いとは言えません。

おっかないところだと思われてるでしょ。そういう店もあるのかもしれないけど、俺は知らない。暴力や薬物、騒音などの問題があるなら、個別の法律で取り締まればいい。「ダンス」の有無で取り締まるっていうのは「別件」じゃないですか。

 ――NOONに出演したことは。

ミュージシャン仲間から評判は聞いていましたが、出演したことはありません。金光さんには、この件が問題化した後にお会いしました。

 ――裁判では、検察側が摘発時の客に「動いているのは足ですか」「腕を動かす時は手首、肩、ひじのどこを基点に?」「どうジャンプしましたか」と詳細に問いただすなど、どこか滑稽に見えるやりとりも繰り広げられました。

検察側の主張は社会常識に照らしてナンセンス。踊った、踊ってないでモメてるなんて、まるでコメディーみたいじゃないですか。法律にのっとって判断しているのかもしれないけど、だとしたらやっぱり法律がおかしい。

有罪、無罪はわからないですけど、そもそもダンスをさせることを有罪にしていいのか。被害者がいるわけじゃないし。

 ――超党派のダンス文化推進議員連盟が、風営法改正案の国会提出を目指しており、法改正が現実味を帯びてきました。

変わってほしいな。社会全体に「どうせ変わらない」という空気が蔓延(まんえん)していて、みんな、自分たちが法律を変えられるなんて夢にも思っていない。僕らも若い世代も、あまりに長い間、「変えられない」と思わされてきた。

でも、そろそろ「変えられる」という実感を持った方がいい。単にダンスだけの問題じゃなくて、「どうせ社会にコミットできない」と思ってた人たちが世の中を変えることができたら、すごくドラマチックですよね。

80年代にクラブが出始めた頃、ライブハウスともコンサートホールとも違う画期的なスペースで、新しさがあった。でもそれから30年経って、人間で言えばとっくに成人式を超えてる。従業員だっていいオッサンですよ。いつまでも子どものままではいられない。

米国の禁酒法時代のジャズのように、反社会的なところにいるから存在意義があるんだという人もいるけど、それは子どもの理論。クラブも社会化して、大人にならなければいけないというのが俺の意見です。