少年法改正―更生の視点をつらぬけ-朝日新聞(2014年4月11日)

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罪を犯した少年の立ち直りを重んじる理念を守って、運用してほしい。

少年法の改正が、きょうの参院本会議で成立する。

成人なら無期懲役相当の事件でも、少年の場合は有期刑にできる規定がある。その上限が15年から20年になる。少年が更生する可能性をふまえ、「○年以上○年以下」という形で宣告する不定期刑も、最長5年ずつ長くなる。

成人については05年の刑法改正で、有期刑が最長20年から30年に厳しくなった。

少年に対する今回の改正を、法務省は「厳罰化でなく、刑の選択肢の多様化」と説明するものの、収容の長期化を招く可能性は否めない。

少年であれ、犯した罪と向き合い、償うべきであることは言うまでもない。しかし、10代半ばの少年がそれまで生きた期間より長い年月を塀の中で過ごすことになれば、社会復帰のハードルはおのずと高くなる。

この10年間、少年犯罪は減少傾向にある。法改正が安易な厳罰化につながらないよう、裁判所は慎重に運用してほしい。

刑務所や少年院の受け入れ態勢にも、いっそうの工夫が必要になるだろう。

改正によるもう一つの変化は、家庭裁判所での少年審判に検察官が関与できる事件が広がることだ。これまで殺人などの重大事件に限られたが、窃盗、恐喝なども対象になる。

少年事件の場合、家庭環境など、少年だけに帰すべきではない事情が多い。だからこそ少年審判は、調査官が関係者や事件の背景などを調べ、これに基づき少年に最適な処遇を決める方法をとっている。

00年の法改正で、事実認定を明らかにするため検察官が審判に関与する余地が初めてできたが、審判の機能を損ねる懸念は常にあった。

改正後も検察官の関与は、少年が否認し、共犯者の言い分が食い違うような複雑な事件に絞るべきだ。検察官は冤罪(えんざい)を防ぐ観点から寄与してこそ、参加する意義がある。

改正では国選の弁護士が付添人となる事件も対象が広がる。少年の権利を守ることにつながることが期待される。

ただ国会審議では、付添人が少年の罪を軽くしようと被害者との示談を急ぐことが、かえって少年が罪と向き合う妨げになるとの指摘も参考人の元調査官からあった。

付添人になる弁護士が増える機会に、担うべき役割を改めて見つめてほしい。