英語のSHALL(シャル)とWILL(ウィル)。同じ未来形…-東京新聞(2014年1月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014013002000170.html

英語のSHALL(シャル)とWILL(ウィル)。同じ未来形に使用する助動詞だが、どんな差があるのか。
いずれも未来に向けた「意志」を示すが、シャルには「そうすべきだ」というニュアンスがより強い。
例示としてよく引用されるのが、マッカーサー元帥の「アイ・シャル・リターン」と、歌の「ウィ・シャル・オーバーカム」。その曲を歌った米フォーク歌手ピート・シーガーさんが二十七日、九十四歳で死去した。
きっと、「オーバーカム」(勝利)するという強い決意。だからシャル。打ち勝たなければならない相手は黒人差別だった。曲は一九五〇、六〇年代の米公民権運動の一種のテーマソングになった。その立役者がシーガーさんだった。
興味深いことにもともとはシャルではなかった。米公共ラジオNPRの記事に教わった。原曲は黒人のチャールズ・アルバート・ティンドリー牧師が〇一(明治三十四)年に発表した霊歌で当時の曲名は「アイル・オーバーカム・サムデー」。助動詞は「ウィル」だった。しかも主語は複数形の「ウィ(私たち)」ではなく「アイ(私)」だった。
シャルで歌ったのはシーガーさんだが、ある黒人女性の「こっちの方が好き」と言ったのがきっかけになった。一人の気持ちがやがては人々の決意に変化する。「ウィ」と「シャル」の力。遠い昔の話になってしまったが。

We Shall Overcome - Pete Seeger