ドナルド・キーンの東京下町日記 憲法9条 行く末憂う-東京新聞(2014年1月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014010590070808.html
http://megalodon.jp/2014-0107-1057-19/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014010590070808.html

歌手の沢田研二が私のためにバラード曲を作詞してくれた。突然、届いたCDに収められた『Uncle Donald』(ドナルドおじさん)。音楽好きの私だが歌謡曲には疎く、恥ずかしながら沢田を見たこともなければ、名前も知らなかった。「誰もが知ってる大スター」と聞いて驚いた次第だ。思わぬプレゼントに感謝しながら曲に耳を傾けた。

Pray

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知り合いで憲法起草に関わったベアテ・シロタ・ゴードンもこう証言していた。「人権部門担当の私は、男女平等の概念を盛り込もうとして抵抗を受けた。でも九条については異論を聞かなかった」

戦争には開戦理由があっても、終わって十年もすれば何のためだったか分からなくなることが多い。最近もイラク戦争大義名分だった大量破壊兵器は見つからず、うやむやになった。そもそも国家による暴力の軍事行動は国際問題を複雑化し、解決をより難しくする。

昨年は、言論の自由を制限する特定秘密保護法が成立した。尖閣諸島竹島をめぐり近隣諸国との関係が緊張した。年末には安倍晋三首相の靖国神社参拝に米国からも異例の「失望」が表明された。今年は一転して、私が沢田に「心配ご無用」と一句返せる一年にしたい。