秘密保護法 言わねばならないこと(5)作品を萎縮させる 映画監督 崔 洋一氏-東京新聞(2013年12月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2013122502000127.html
http://megalodon.jp/2013-1225-1239-51/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2013122502000127.html

私たちは常に、戦前戦中の国策下に置かれた映画製作の痛恨の歴史だけではなく、現行憲法下で保障されている表現の自由、そして表現の抑制に非常に敏感だ。先輩監督はそういう時代に懸命に向かい合ってきた。

監督は時代の空気感を読み、次の時代を発信する仕事。菅義偉(すがよしひで)官房長官が「映画監督が映画を作れなくなるとか、あり得ないことが報道されている」と発言したが、疑問だ。明らかにこの法律は作品を自己規制・萎縮させる。表現の自由は作り手、送り手だけの自由だけではなく、観客も含めた受け手の選択の自由の抑制にもつながってはならない。

秘密保護法廃止という旗を降ろすわけにはいかない。権力が表現に手を突っ込む時代はろくな時代ではない。時代の流れに批評性を持つというのも私たちの仕事なので、作品世界の中でそういうことを反映させることにも自由でありたい。創作活動に(今の状況を)どう持ち込み、作品化していくのか、またはしないのか、自らを問うことになるだろう。