われわれは遠隔操作ウイルス事件を正しく裁けるか 松浦 幹太氏(東京大学生産技術研究所准教授)-ビデオニュースドットコム(2013年11月09日)

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 しかし、いざ裁判となった時、情報コンピュータプログラミングやセキュリティの専門家らの証言を、果たして裁判官が正しく理解し、正当な裁きをすることができるのだろうか。専門的な知識を持たない人間が、理解不足ゆえに犯人ではない人間を犯人だと断定してしまったり、あるいはその逆のことが起きる恐れはないのだろうか。
 これはコンピュータ犯罪に限ったことではない。DNA鑑定や高度な測定器などを用いた鑑定技術が刑事司法にも導入され、犯人を特定する能力は飛躍的に上がっている。しかし、仮に鑑定そのものが正確無比であっても、鑑定される証拠の採取やその評価は人間が行うことになる。そもそも何を鑑定すべきかの判断も人間が決めていることなのだ。
 ところが、一旦、高度技術を用いた鑑定が行われると、公判で鑑定の結果に抗うのが難しくなる傾向があることは否めない。それは裁判官や裁判員はもとより、弁護側や検察官までもが、鑑定に用いられた技術の意味を十分正確に理解できていないことに起因する面があるからだ。