『忘却に抵抗するドイツ -歴史教育から「記憶の文化」へ-』

http://www.kodomo-hou21.net/pdf/05_2013-10.pdf 子どもと法21 通信(通巻146号)

忘却に抵抗するドイツ―歴史教育から「記憶の文化」へ

忘却に抵抗するドイツ―歴史教育から「記憶の文化」へ

戦後のドイツには自分は戦争の被害者だとの認識を持つ人が多く、「時刻ゼロ」という言葉が使われた。「ナチ時代に起こったことは、ドイツの歴史上不幸な事故だった。その事故は 1945年に終わり、新しくゼロから始まった」という意味で教科書にも載っていたという。あまりに残酷な事実と自分との関わりを直視したくないという心理が社会全体にあったのだろう。
それが大きく変わったのが、1968 年。世界各国でベトナム反戦を訴えた学生運動が盛んになった年、学生を中心に戦後生まれの若い世代が、ナチスの過去を不問にしてきた親の世代を批判した。ワルシャワゲットーの記念碑の前で跪き、哀悼の意を表した当時のブラント首相が新東方政策をとったことも大きかった。
そして 1970 年代から、歴史教育が大きく変わっていく。常に批判的に歴史を見ることが歴史教育のもっとも重要な目的の一つになっている。資料などを使って討論し、プレゼンテーションを行う授業の中では「説明する」のではなくて「いかに自分の言葉で話すか」ということを重視する。それが、「歴史を学ぶこと」が過去のことを学ぶのではなく、いまの自分とのかかわりを考えることになるのだろう。