9条 世界にアピールを スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん-東京新聞(2013年5月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013050902000173.html
http://megalodon.jp/2013-0510-1703-41/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013050902000173.html

風立ちぬ」が公開される七月には参院選が予定されている。安倍首相は戦争放棄をうたった憲法九条の改正を視野に、改憲の発議要件(九六条)を両院の「三分の二以上」の賛成から「過半数」に引き下げる構えを見せている。

日本が起こした戦争をどう描くかによって、将来の日本のビジョンが見えてくる。今回、宮さんらしいなと思ったのが、国のためにいろいろやった人を描くんじゃない、というところ。それは、どの作品でも一貫していると思います。

紅の豚」(九二年公開)という映画も主人公はある時期、国のために戦ったわけです。そのむなしさを知ったがゆえに、豚になって生きているという設定。「ハウルの動く城」(二〇〇四年公開)は反戦というか、厭戦(えんせん)です。

現実の写し絵です。日本はずっと戦争がないけれど、世界の各地では減るどころか、増えているわけでしょ。いつまでこんな愚かなことをやり続けるのか、っていうことでしょうね。

風立ちぬ」に戦闘シーンは出てきません。起きていることとして、みんな知っているわけでしょ。多くの映画は、そういうものを描いていますけれど。

みんな戦いが好きですよね。自分が勝つ側に立つからでしょう。負ける側に立った途端に、やってられない。ジブリでも昔、「戦争の名人」と呼ばれた名将を取り上げたいと言ったやつがいて。「おまえ、自分のこととして考えろ」って言いたくなった。もしその企画をやるとしても、僕なら名将に連れて行かれてひどい目に遭う、一兵卒の視点から描きたいですけどね。

平和ぼけですね。想像力に欠けているわけでしょ。安倍さんなんかはね、年が若いのになぜああいうことを考えるのか、ちょっとピンときません。もう少し上の世代だったら分かる気もするんですが。やり方を間違えたから日本は負けた。間違えなかったら勝っていた。そう考える、ある年齢の人たちがいるのを僕は知っていますしね。

やっぱり「三分の二」じゃなくちゃいけないんじゃないですか。そんな大事なことを決めるのに、「二分の一」じゃだめですよね。それをやっておいて、将来、何になるかっていう問題でしょ。やめてほしいですよね。