団藤重光・元最高裁判事死去 98歳、死刑廃止論唱える-朝日新聞(2012年6月25日)

http://www.asahi.com/obituaries/update/0625/TKY201206250266.html
http://megalodon.jp/2012-0627-2250-05/www.asahi.com/obituaries/update/0625/TKY201206250266.html

刑事法の大家で、現行刑事訴訟法の生みの親である団藤重光さんがお亡くなりになりました。


 団藤さんは死刑廃止論者で運動にも積極的にかかわってこられたことはよく知られていますが、実は少年法についても多くの発言をなされています。

2000年「改正」少年法につき反対運動が継続されていた1999年、団藤さんは日弁連の講演で「要するに人間的なものを見失った、そういう改正は絶対にいけないと思うのです。...21世紀を迎えるにあたっては、次の世代につながることを考えて、遠大かつ慎重な計画をもっていろいろなことをやってゆかなければならない。こんな時期に、驚くべき近視眼的な見識で、とりかえしのつかない形で根本を変えてしまうような行き方をあえてとることは、世紀の恥辱であり、無責任きわまることだと思うのです」と激しい言葉でこの「改正」を批判しました。

「子どもの視点からの少年法論議を求める請願署名をすすめる会」参照
http://www.kodomonoshiten.net/kouen.htm

少年法改正 刑事罰で切り捨てるな 団藤 重光 元最高裁判事-朝日新聞(2000.9.18)
http://www.kodomonoshiten.net/asahi000918.htm


 団藤さんは、記者の「今回の改正原案にある裁判官合議制の導入や検察官の立ち会いは、少年審判を充実させることになりますか」との質問に対し「いかにも審判を丁寧にするかのような感じがあるが、実は少年審判の生命を奪うものとなる。少年審判は、裁判官と少年が向き合い、人間と人間が触れあう中で、少年が心を開き、自らの口で『実はこうだった』と話すことに意義がある。だが、目の前に3人の裁判官がいたらどうでしょうか。ましてやそこに検察官がいて、少年の責任を追及したら、少年は心を開くと思いますか」と、少年審判の命を奪うと話されています。


 最高裁判事時代には、1983年の流山中央高校事件(少年法では重要な判例のひとつ)決定で補足意見を述べられました。これは少年審判における証拠調べの範囲・義務に関するものですが、団藤裁判官は、「家裁の裁量は・・羈束(きそく)された裁量」「このような要請は、ひとり適正手続条項からだけのものではなく、実に少年法1条の宣明する少年法の基本理念から発するものであると信じるのである。少年に対してその人権の保障を考え納得のいくような手続をふんでやることによって、はじめて保護処分が少年に対して所期の改善効果を挙げることができるのである」と、子どもの権利条約と直結する補足意見を述べられています。

石井小夜子