<税を追う>地上イージス・レーダー 国内企業の参画断念 - 東京新聞(2019年1月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012302000125.html
https://megalodon.jp/2019-0123-1003-40/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012302000125.html


防衛省が国内二カ所に配備を予定している地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に搭載する米ロッキード・マーチン社のレーダー「SSR」の開発を巡り、同省が日本企業の参画を断念したことが分かった。開発に加わった場合、納期が遅れ、価格が上がる可能性があるためとしている。日本企業の参画はSSRが選ばれるポイントの一つになったが、同省は選定をやり直さない方針という。 (藤川大樹)
二〇一七年十二月の導入決定後、防衛省は構成品の選定作業に入り、レーダーは、米ミサイル防衛庁から米ロッキード製「SSR」と、米レイセオン製「SPY−6」の提案を受けた。課長級の検討チームで性能や部品供給などの後方支援、経費、納期の四項目を評価。一八年七月、事務次官を議長とする構成品選定諮問会議でSSRを選んだ。
選定の段階では、SSRの開発に富士通の窒化(ちっか)ガリウム半導体の技術が採用される見通しだったため、評価のポイントになったとされる。その後、価格上昇や納期遅れの可能性が判明し、同省は富士通の開発参画をやめることにした。
同省の幹部は「ロッキード社から日本企業参画の可能性があるとの提案を受け、評価したのは事実だが、複数ある評価項目の一部であり、参画がなくなっても結果は変わらない」と説明する。防衛産業界からは「条件が変わったのであれば選定をやり直すべきだ」との指摘が出ている。
地上イージスは一基千二百二十四億円。ミサイルの発射装置や施設整備の費用は含まれていない。防衛省秋田市山口県萩市・阿武町にある陸上自衛隊の各演習場に配備する方針。
海上自衛隊OBで、かつてレイセオン社の上級顧問も務めた防衛アナリストの坂上芳洋氏は「防衛省は国内企業の技術力向上を目的の一つに、SSRを選定した。富士通の参入を断念したことで、SSR選定の意義は失われてしまった」と指摘している。

(筆洗)遺伝子を改変した双子の女児が誕生 - 東京新聞(2019年1月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019012302000154.html
https://megalodon.jp/2019-0123-1005-02/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019012302000154.html

米航空宇宙局(NASA)が二〇一一年におもしろい発表をしている。題名は「NASA研究者が選んだ科学的にもっともらしいSF映画ベスト・ワースト」
ベスト部門一位は米映画の「ガタカ」(一九九七年)である。遺伝子の改良によって知能、体力、容姿を向上させた新人類が支配する未来を描いている。遺伝子操作を受けていない人間は「不適正者」として差別され、なりたい職業にもつけない。
現実的というNASAの見立てが的中するのか。中国広東省でゲノム編集によって遺伝子を改変した双子の女児が誕生したという。
世界で初といえども倫理、安全面で批判のあった研究である。研究者は功名心でやったと言うが、あまりにも軽々しく神の扉を開けてしまったのではないか。
ゲノム編集で難病を治療する。これは理解できるし、期待もある。だが生殖細胞をゲノム編集で改変できるとなれば、人はいずれ、ある欲求を抑えられなくなるだろう。ゲノム編集で生まれてくるわが子を頭脳優秀で運動能力も高く美しい子に。デザイナーベビーである。
誰もが自分の能力や姿に不満があろう。がまんしているのは神様が決めたことだからである。それを人が書き換える。その神の扉の先に待つのは優良な遺伝子だけが生存すべきだという優生学的思想と差別ではないか。科学的にもっともらしいあの映画の世界である。

<学校と新聞>正しい言葉って? 意味を理解し使うことが大切 - 東京新聞(2019年1月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/nie/CK2019012302000184.html
https://megalodon.jp/2019-0123-1006-45/www.tokyo-np.co.jp/article/education/nie/CK2019012302000184.html

第五回の図書委員会NPC(Newspaper Conference=新聞会議)の参加は六人。行事続きで忙しく、記事は私が用意しました。「なし崩し」「檄(げき)を飛ばす」などの使い方が話題になった文化庁の「国語に関する世論調査」の五紙(東京・朝日・産経・毎日・読売、昨年九月二十六日)の記事を集めて事前に配布。読み比べの意図もありましたが、果たして…。
真奈さんが口火を切ります。「私もかなり間違って使っていると気づいた。『ガチ』が浸透していないのは分かるが『上から目線』も思ったより広まっていないのにびっくり」。麗華さんは「同じ言葉でも本来と違う意味で使われていると分かったので調べないと。それにしても、日本語はむずかしい」とポツリ。
「言葉の意味が変わっていくことは、少し心配。カタカナ表記は、名探偵コナンの映画の題『異次元の狙撃手(スナイパー)』で漢字をスナイパーと読ませるのを思い出した」と遥さん。それを受け「漢字のルビが正しくないのに通用するのは不思議だよ」と拓音くん。真鈴さんは「タメとかガチとか普通に使っているけど、高齢の方からすると普通ではなく、カタカナ用語は難しいと思う」。倫哉くんも「『ほぼほぼ』や『上から目線』を当たり前に使っていたが、年配の人はほとんど使っていないね」。
ここで真奈さんが「同じ調査なのに、新聞によって取り上げ方が違うよね」と指摘。ここで読み比べの話題かと私は期待したが、みんな「確かに」の一言ですませ、「カタカナって読みづらいね」と麗華さんが発言。「確かに。でもインパクトもある」と真鈴さん。「ビジュアルの問題もあるな」と拓音くん。倫哉くんが「そもそも記事に出てきた言葉って使う? 例えば『やおら』って初めて知った」と本音を暴露。「授業で習っても実際に使うことはあまりない」と遥さん。
「でも意味を理解して使うことが大切。話す相手によって使う言葉を考えることも」と麗華さんが鋭く切り込みます。真奈さんが、「私も皆の前で話すときや生徒会新聞を作るときは、正しく伝わる言葉を使い、友達への手紙はそこまで気を使わずに書く」。話が着地したと思ったら、拓音くんが「正しい言葉って何だ?」と一言。混迷の中、会はお開きに。(東京都公立中学校主任教諭・穐田剛)

「平成」改元の公文書開示 恣意的な解釈は許されぬ - 毎日新聞(2019年1月23日)

https://mainichi.jp/articles/20190123/ddm/005/070/108000c
http://archive.today/2019.01.23-010726/https://mainichi.jp/articles/20190123/ddm/005/070/108000c

1989年1月に元号を「平成」に改めた際、経緯を記録した公文書について、内閣府は公開の対象となる時期を大幅に延期していた。
公文書管理法によると、公文書は官庁が「作成、取得」した時から最長で30年保存された後、公文書館に移され、原則公開される。
だが、現在、関連文書を管理する内閣府は、改元を担当していた内閣官房から文書を移管されたことで文書を新たに「取得」したと恣意(しい)的に解釈し、2014年を保存期間の起算点に変えた。このため、本来なら19年には公開対象となるはずが、44年以降に延びた。
官庁間で文書が移管されたことを理由に保存期間を延長するのは、公文書を国民が主体的に利用する共有の知的財産とする法の趣旨に反する。識者が「不適切だ」と指摘するのは当然である。保存期間を延長する場合は、理由と期間を首相に報告することが必要だが、その手続きも取っていなかった。
政府の重要な意思決定をめぐり、情報公開の姿勢に著しく欠けていると言わざるを得ない。
改元に関する文書には「平成」の考案者が記されているとみられ、毎日新聞の情報公開請求にも非開示とした。政府は、これが公になることで将来の元号考案者に不必要な予断を与えることなどを懸念しているという。しかし、情報公開を延々と遅らせていい理由にはならない。
そもそも平成への改元は、新憲法下で国民が主権者となって初めて行われた。さらに、1979年に成立した元号法に基づき、閣議決定による政令元号が公布された初のケースである。
こうした時代状況にふさわしい改元が行われたのかを検証するためにも、関連文書をできるだけ早い時期に公開することは重要だ。
公文書の管理、公開に関する安倍政権の姿勢は、森友・加計問題にも見られたように、後ろ向きと批判されても仕方ない。天皇陛下の退位日を決めるため、25年ぶりに開いた皇室会議の詳細を公文書として残していないことも明らかになっている。
情報公開は民主主義の根幹を担う。政府はまず、今回の内閣府の判断を変更し、関連文書の公開に向けた適正な手続きを進めるべきだ。

(辺野古設計変更へ) 工事止め国会で検証を - 沖縄タイムス(2019年1月23日)


https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/376039
https://megalodon.jp/2019-0123-1008-12/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/376039

なりふり構わぬ工事の進め方は異様というほかない。
名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は今春にも設計変更に着手する方針を固めた。埋め立て予定海域の大浦湾側に存在する軟弱地盤の改良工事に向け、年内に県に変更を申請する考えだ。
玉城デニー知事は変更後の計画を承認しない構えである。軟弱地盤は県が埋め立て承認を「撤回」した大きな理由だからだ。
防衛省沖縄防衛局の2014年から2年間のボーリング調査で多数確認されている。
防衛局はその事実を公表せず、市民らの情報公開請求で昨年3月、明らかになった。水深30メートルの海底に深さ40メートルにわたって地盤の強度が「ゼロ」のマヨネーズ状の超軟弱地盤が広がっている。
海底に基礎捨て石を敷き、その上にコンクリート製の箱「ケーソン」を置く計画だった。最大で長さ52メートル、幅22メートル、高さ24メートル、重さ7200トンに上るケーソンもある。軟弱地盤は極めて大掛かりな改良が必要となる。
新基地建設で埋め立てに約5年、施設整備などに約3年かかるとしていたが、県は軟弱地盤もあって工期は13年、費用は当初の約10倍に上る2兆5500億円に膨らむ見通しを示している。
環境への影響は計り知れない。環境影響評価(環境アセス)の前提が崩れるからだ。すでにジュゴン2頭の行方がわからない。サンゴの保全対策も不十分だ。
工事を止めた上で国会で全面的に検証すべきだ。

    ■    ■

沖縄防衛局は現在埋め立てを進めている海域の西側に隣接する区域で、3月25日から土砂投入を始めると県に通知した。約33ヘクタールに及び、現在の約6・3ヘクタールと合わせると予定海域全体(約160ヘクタール)の約4分の1に相当する。
今春までに大浦湾側でもサンゴを移植しないまま護岸工事に着手する方針を固めた。乱暴極まりない。
安倍政権はなぜしゃにむに突き進もうとしているのか。
民間桟橋から土砂を搬出、県の承認を得ずに土砂の細かな土の割合を高くして業者に発注、岩ズリの単価を1社だけの見積もりで決め、沖縄総合事務局が公表している単価を大幅に上回っている。
工事は疑問だらけだ。
県民投票まで工事を停止するようトランプ米大統領に求めるホワイトハウスの署名は賛同者が21万人に迫る勢いだ。国際的な動きも無視するのは暴走というしかない。

    ■    ■

今週、立憲民主党枝野幸男代表、国民民主党玉木雄一郎代表らが相次いで現場を視察。枝野氏は「海兵隊の大規模飛行場が必要なのか疑問だ。立ち止まるべきだ」と語った。玉木代表は「軟弱地盤の問題を再検討する必要がある。工事はいったん凍結すべきだ」と主張した。
今月28日から通常国会が始まる。政府からは工期や予算が示されないままである。税金の使い方の観点からも問題である。辺野古を巡る国会審議はこれまでも十分であったとはいえない。野党は「辺野古国会」と位置付ける気概で臨んでもらいたい。

辺野古設計変更へ 工事を止めて説明せよ - 琉球新報(2019年1月23日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-864917.html
https://megalodon.jp/2019-0123-1010-57/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-864917.html

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、大浦湾側に軟弱地盤が存在することを政府がようやく認めた。地盤改良工事に向けて設計変更を県に申請する方針であることが明らかになった。
沖縄の基地問題について、政府は都合の悪い事実を隠すことを続けてきた。それが今度も繰り返された。
記者会見で岩屋毅防衛相は、国土交通大臣行政不服審査法に基づく審査を請求していることを理由に説明を拒んだ。県民を愚弄(ぐろう)するような姿勢である。政府に工事をする資格はないと、改めて強調したい。
軟弱地盤の存在が公になったのは昨年1月、市民の情報公開請求によってである。開示されたボーリング調査報告書には、2本の活断層があることも示されていた。
報告書は16年3月にまとめられている。その時点で活断層と軟弱地盤の存在は分かっていたはずである。しかし政府は17年11月、「辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書閣議決定するなど、ごまかし続けた。
この時期、当時の翁長雄志知事は埋め立て承認撤回を検討すると何度も表明していた。県知事選挙も控える中で、政府は新基地の実現可能性が揺らぐ事実を隠してきたのではないか。
これが政府のすることだろうか。まるで詐欺師顔負けの手口ではないか。
今回、設計変更が明らかになったのは、現在土砂を投入している区域に隣接する区域でも新たに土砂投入を開始すると県に通知したタイミングだ。後戻りできなくなったと印象付けた上で、難工事となる大浦湾側の作業に着手しようという狙いであろう。
普天間飛行場を5年以内に運用停止すると約束した期限が来月に迫っているが、政府は何もしていない。この設計変更も、「2022年度以降」としてきた普天間返還の時期をさらに遅らせる理由にしかねない。
軟弱地盤の存在は、昨年8月に知事権限で埋め立て承認を撤回した理由の一つである。そもそも、世界的価値のあるかけがえのない貴重な生態系を破壊すべきではない。県は、設計変更をして工事を続けても完成まで13年以上かかると見積もっている。普天間返還の時期が見通せない中で、設計変更を承認することはあり得ない。
政府が軟弱地盤を認めたことは、来月実施予定の県民投票で重要な判断材料になるだろう。4月の衆院3区補選、7月の参院選でも争点となるのは間違いない。
これ以上、工事を続けることは許されない。政府は直ちに工事を中断すべきである。今やるべきことは、工期や工事費がどうなるか、普天間飛行場はいつ運用停止できるのか、返還はいつ実現するのかについて、正直に県民、国民に説明することである。

<金口木舌>署名がしたい - 琉球新報(2019年1月23日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-864928.html
https://megalodon.jp/2019-0123-1029-00/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-864928.html

昨年夏、読者からいただいた電話を思い出している。新基地建設の是非を問う県民投票の実施を求める署名が始まって、しばらくたってのこと。どこで署名をすればよいのか、読者は熱心に尋ねてきた
▼「もう年を取ってね。あちこち出掛けることはできないけれど、どうしても署名したい」。本紙は署名数の伸びが鈍いと報じていた。読者はいても立ってもいられないという様子だった。署名できただろうか
▼昨年末、県民投票まで新基地建設を止めるよう求めるホワイトハウスへの請願署名が盛り上がりを見せているころに寄せられた電話も忘れ難い。ネットによる署名の方法が分からないという。声から推測して高齢者のようだ
▼「ガラケーを使っているけど、うまくいかない」と困り果てていた。英文サイトによるネット署名は確かに難しい。似たような電話は他にもあった。同僚が相談に応じたが、理解してもらえただろうか
▼県民投票不参加を決めている5市の動きに接し、電話をくれた人々のことを考えている。5市の市民であれば一票を投じることができない。これでよいはずがない
▼県民投票に背を向ける首長や議員の言い分は理にかなっているか。県議会与野党は、新基地問題の行方に気をもむ県民と向き合っているか。議論は尽くされたのか。いま一度問い直してほしい。投票まであと1カ月だ。

Tカード 個人情報の重大な侵害 - 信濃毎日新聞(2019年1月22日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190122/KT190121ETI090010000.php
http://archive.today/2019.01.22-113856/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190122/KT190121ETI090010000.php

映画の好みや行きつけのレストラン。個人のそんな私生活が、本人の知らないところで捜査当局によってたやすく把握される状態になっている。プライバシー保護の観点から、到底許されるものではない。
ポイントカード最大手の「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、会員の住所や商品購入のポイント履歴、レンタルDVDのタイトルといった情報を、裁判所の令状なしに警察など捜査当局に提供していることが分かった。
会員規約は、当局への情報提供について明記していない。当局側も、Tカードによって個人情報を得たことが本人に知られないよう保秘を徹底していた。
会員が納得した明確なルールもなく提供を続けるのは、重大な裏切り行為である。CCCは情報管理の在り方を見直すべきだ。
Tカードの会員数は日本の人口の半数を超える約6700万人に上る。コンビニ、ドラッグストア、携帯電話など日常生活のあらゆる場面で利用されている。
CCCは2003年、DVDや書籍を扱う「TSUTAYA」を中心にTカードの共通ポイント制度を開始。提携先を広げてきた。
ポイントサービスは近年、顧客の利便性を高めようと共通化が進んだ。限られた業者が情報を握る傾向が強まっている。他のポイント制度にも同様の例はないか。各業者は、個人情報を預かる立場として責任を自覚してほしい。
CCCは、捜査機関との協議を経て「開示が適切と判断された場合にのみ、必要な情報を提供すると決定した」としている。
だが実態は、提供が日常化していたようだ。捜査関係者によると、一度に数十件の照会もあった。対象者が会員か分からなくても、氏名などで「取りあえず問い合わせる」こともできたという。
裁判所の令状がなく企業などに任意で情報提供を求める「捜査関係事項照会」はいま、捜査当局にとって必要不可欠なツールになっている。検察が、情報を入手できる企業など計約290団体のリストをつくって内部で共有していることも明らかになっている。
憲法は権力の乱用を防ぎプライバシーや財産権を守るため裁判所がチェックする令状主義を定めている。捜査当局が照会で私生活を網羅的に把握できるとすれば、その精神に反する恐れがある。
企業が膨大な情報を保有する時代になったことを踏まえ、厳格なルールづくりを急ぐ必要がある。

非暴力の戦い - 北海道新聞(2019年1月23日)


https://www.hokkaido-np.co.jp/article/269332
http://archive.today/2019.01.23-011337/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/269332

沖縄県知事玉城デニーさんは昨年秋の選挙戦を北部の伊江島から始めた。母の出身地であり「真の民主主義を求め、島ぐるみで歩み出した原点」だからだ。
第一声に当たり、線香を手向けに立ち寄った場所がある。「沖縄のガンジー」と呼ばれた阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)さん(1901〜2002年)の資料館に隣接する祭壇だ。占領下の55年、米軍は「銃剣とブルドーザー」で家や畑をつぶし、土地を奪った。
阿波根さんたちはこれに非暴力で抵抗した。「乞食行進」と称して沖縄本島を巡り、窮状を訴えた。「乞食をするのは恥ずかしい。しかし土地を取り上げ乞食をさせる米軍はもっと恥ずかしい」
11項目の「陳情規定」を作り、米兵と話す時はこれを守った。<怒ったり悪口を言わない><うそ偽りは絶対語らない><耳より上に手を上げない>。手を上げると米兵が「暴力を振るった」と写真を撮るからだ。粘り強い交渉を経て多くの土地を返還させた。
資料館には「頑張って」と書き添えた布製の慰問袋が何枚も展示されている。60年余り前、たくさんの学用品、衣類、食料を詰め、炭鉱が盛んだった夕張などから送られてきた。阿波根さんは「北海道は距離は遠いが、一番近い身内」と話したという。
辺野古では今日も非暴力の戦いが続く。資料館の遺影横には「平和の最大の敵」そして「戦争の最大の友」は「無関心である」と記されている。