(政界地獄耳)霞が関を壊したのは誰だ - 日刊スポーツ(2019年1月19日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901190000043.html
http://archive.today/2019.01.19-025533/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901190000043.html

厚労省のずさんな毎月勤労統計調査問題で、政府は17日、同省事務次官鈴木俊彦ら幹部を処分する方向を示した。長年続けてきた不正の根源を調べずに現職のトカゲのしっぽ切り。更迭されてもどこかでまた戻ってくる今だけの処置だろう。自民党は自分たちの問題ではなく役人失策として扱い、28日予定の通常国会召集前に野党の閉会中審査の要求をすんなりのんだ。自民党も国民や野党とともに厚労省を叱る役だと思っているのだろう。確かに一義的には厚労省の責任だ。だが、その裏には政権与党の表や裏にある「意向」や「忖度(そんたく)」が見え隠れする。

★どの世の中も役人の人事権や政策にはその上に君臨する政治家の意向が働く。ところがこの20年余り役人は国家を語らず、寄るとさわると人事のうわさしかしなくなった。誰に近づき誰に気に入られるかで人生が決まるとばかり、自分のため、国や国の将来を売る政治家にすり寄った。その政治家に与えてしまった人事権が怖くて、心と志を売ることが当然となった。

★ある官僚OBは「少なくとも35年前は、『上が言いましたから』『トップのご命令です』などと言ってはいけない、きちんと理由がないことはしてはいけないと研修で教わった。ところが今日、『官邸のご意向です』は当たり前の会話。大臣にべたべたすり寄り、また大臣のほうもそういう輩を大喜び。自分だけ良ければ今だけ良ければは米大統領トランプ流だが、日米の根本的違いはトランプとはやってられないといって去っていく気骨ある人がいるだけ米国には見どころがある。霞が関を去るのは、20代から30代。あるいは、そもそも嫌気が差して公務員試験を受けない」。全体の質が低下するのは当然だ。だがこの体質に霞が関を変えていったのは自民党政権そのもの。短期の成績で判断する新自由主義の評価方式が生んだ産物ではないか。霞が関を壊しておいて政治家が「けしからん」とは片腹痛い。(K)※敬称略

<税を追う>辺野古土砂割合 防衛省、無断変更認め「県の承認不要」 - 東京新聞(2019年1月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011902000136.html
https://megalodon.jp/2019-0119-0935-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011902000136.html

沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、防衛省は十八日、県に無断で埋め立て土砂の成分比率を変更していたことを本紙の取材で認めた。防衛省は「県の承認を必要とするものではない」と主張した。
沖縄防衛局は着工前、県に埋め立て承認を求めた文書に、埋め立て土砂のうち、岩石以外の砂や粘土など「細粒分」の割合を「概(おおむ)ね10%前後」と記していた。ところが、防衛局は、工事を発注するときになって仕様書で「40%以下」と変更していた。
防衛省整備計画局の担当者は「40%の数値は自分たちの判断で決めた」としながらも、変更の理由やなぜ40%という数値としたのかは明らかにしなかった。
一方、県は、先月から投入が始まった土砂に、環境に悪影響を与える粘土性の「赤土」が大量に含まれている可能性を指摘している。
十八日、防衛局は、現場への立ち入り調査を求めた県に、文書で「最新の試料でも埋立材に問題がないことを確認した」と回答。立ち入り調査や検査用土砂の提供に応じなかった。県は土砂の成分比率を変更した理由についても質問していたが、言及はなかった。
県によると、防衛局は先月以降の土砂の検査結果を回答書に添付。内容は仕様書に適合しているかどうかの検査で、赤土の有無を調べたデータはなかった。県の担当者は、本紙の取材に「こちらが求めた問いかけに明確な回答はなく、はぐらかされた印象だ。土砂の細粒分含有率の変更には、知事の承認が必要だ」と反発。土砂の検査結果を分析し、今後の対応を検討する。 (望月衣塑子、中沢誠)

辺野古巡る投票 不参加表明5市に 「全県実施を」ファクス行動 - 東京新聞(2019年1月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011902000137.html
https://megalodon.jp/2019-0119-0937-03/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011902000137.html

米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設の賛否を問う県民投票の全県実施を−。県民投票への不参加を表明している宜野湾、沖縄、宮古島、石垣、うるまの五市への全国一斉ファクス行動が始まった。呼びかけた石川県野々市市の主婦小原美由紀さん(54)は「同じ思いの人が多い。五市の市長に気持ちを変えてもらいたい」と訴えている。 (山本哲正)
県民投票に向けた署名活動を主導した「『辺野古』県民投票の会」代表の元山仁士郎(もとやまじんしろう)さん(27)は十五日から地元の宜野湾市役所前で、不参加表明の五市に抗議するハンガーストライキをしている。不参加の動きに心を痛めていた小原さんが元山さんに賛同。十七日にフェイスブックでファクス行動について投稿すると、一日で少なくとも全国十五都府県の二百人以上が参加した。
川崎市では十八日、小原さんに呼応した子育て中の母親らが勉強会を開き、二十代から五十代の女性四人が集まった。「投票する権利が奪われることに、とてつもない危機感を覚える」と五市長にメッセージを書いて送信した。川崎市の衣装製作業、林佐登子さん(44)は元山さんを市内のイベントに招いたことがあるだけに、「元山さんの気持ちを考えると胸がしめつけられる」との一文をメッセージにそえた。
勉強会では、不参加問題について沖縄県内の弁護士がフェイスブックに投稿した解説を共有。五市の不参加を許せば、例えば衆院解散総選挙でも「解散理由が不当だ」として不参加の自治体が出かねないとの指摘に、「そうだよ」「よほど民意を示されるのが怖いんだ」と話し合った。
横浜市の鈴木法子さん(50)は、石垣市在住の農家伊良皆(いらみな)美栄子さん(55)らが作ったハーブティーを持参し、思いを寄せながら「民主主義を壊していくのを看過できない」と危機感を募らせた。
川崎での取り組みを知った伊良皆さんは取材に「私も投票したいのに、このままではできない。一地域ではものを言いにくい空気もあり、外からの意見はうれしい」と支援の広がりを喜んだ。

児童虐待を見落とさない 転居時対応、狭山など5市連携:埼玉 - 東京新聞(2019年1月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201901/CK2019011902000141.html
https://megalodon.jp/2019-0119-0939-16/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201901/CK2019011902000141.html

県西部の狭山、所沢、飯能、入間、日高の五市は十八日、「児童虐待防止に関する連携協定」を締結した。虐待リスクのある子育て世帯が五市の中で転居した場合、情報の受け渡しに漏れがないよう、職員の共同研修や、虐待を把握するためのチェックシートの共通化などを目指す。虐待防止を目的に複数の自治体が連携して協定を結ぶのは全国的にも珍しいという。 (加藤木信夫)
今回の協定は、狭山市で二〇一六年一月に虐待による女児の死亡事件が発生したのを契機に、準備を進めてきた。
取りまとめ役の狭山市によると、昨年四〜十二月、住民票のある子育て世帯が五市の中を移動した例は十三件あり、生活圏の近い場所への転居は珍しくないという。
県内では昨年八月、県警と県の児童相談所の間で、児童虐待に関連する情報を共有するデータベースの運用が始まったが、市町村はこの枠組みに入っていない。
担当者は「日ごろ、子どもに一番近い位置にいる自治体の間で、情報の温度差が生じないよう、連携する必要がある」と協定の意義を強調した。
虐待の有無や程度を反映するチェックシートについては現在、県作成のシートに各自治体がそれぞれの特性を加味して運用している。そのため、虐待程度の記入スタイルが「大中小」だったり「ABC」だったりするなどの差異があり、情報共有に向けての課題になっている。
狭山市の場合、転居を多く繰り返していたり、警察から「子どもの泣き声がした」などの連絡があったりした世帯を対象に、シートへの記入を促している。その結果、虐待リスクが高いと判断した場合は「要保護」や「要支援」に指定するなどし、適切と思われるセクションでの対応につなげているという。
今後は、五市で共通のチェックシートを作るなどし、複数の市をまたぐような事案でもリスクの見落としがないように対応していく方針だ。

真藤さん直木賞 文学で直視する「沖縄」 - 東京新聞(2019年1月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019011902000166.html
https://megalodon.jp/2019-0119-0952-30/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019011902000166.html

沖縄の戦後を描いた小説「宝島」が直木賞に決まった。東京出身ながら「沖縄問題」を直視し、日本人全員が自らのこととして捉えるべきだと説く作者の真藤順丈(しんどうじゅんじょう)さん。受賞を祝福したい。
物語は戦後の一九五二年、米軍統治下の沖縄を舞台に始まる。主人公は、生きるために米軍基地から物資を奪う孤児たち。ある時、リーダーがいなくなり、残された三人は警官や教師、テロリストとして別々の人生を歩み始める。
三人が織りなす鮮烈な青春の群像。その行動と心情を、時には霊媒師のように、時には「島唄」のように伝える語りの巧みさ。
文芸評論家の清水良典さんが「戦後沖縄を描く社会派小説の構えでありながら、神話か叙事詩のような格調を帯びる」と評する通り、これから読む人には沖縄への先入観を排し、まずは文芸作品としての魅力を味わってほしい。
しかしながらやはり、本作の真価は、沖縄の戦後史を真正面から見すえる点にあるといえよう。
教師になった主役の一人が勤め先で遭遇する米軍機の墜落と子どもたちの悲惨な焼死は、一九五九年に実際に起きた宮森小学校米軍機墜落事故が下敷き。また米兵による六歳女児の暴行殺害事件(五五年)や、米軍基地の毒ガス漏れとその隠蔽(いんぺい)(六九年)など沖縄の辛酸を象徴する史実が、主役たちの人生にからめて詳述される。
作中の人物が憤るのは、米国に沖縄を差し出して「追従を重ねるだけの日本(ヤマトゥ)」だ。「沖縄問題」とは実は「日本の問題」なのだと気づかされる読者もいるだろう。
「沖縄にルーツを持たないことに葛藤があり、途中で書けなくなった」と振り返りつつ「批判が出たら矢面に立とうと覚悟を決め、全身全霊で小説にした」と語る真藤さん。熱意が実っての受賞だ。これを機に、沖縄の出身ではなくともその歴史と現状に目を向ける作家や表現者が続いてほしい。
また、本作を読んだ人はこれを機に、いずれも芥川賞受賞者の大城立裕、又吉栄喜目取真俊の三氏ら沖縄の作家の創作も読んでみてはいかがだろう。
特に目取真氏はカヌーで辺野古(名護市)の海に出て、埋め立て工事に体を張って抗議している。自身のブログ「海鳴りの島から」は、住民の反対を圧殺する政府への鋭い批判に満ちている。沖縄戦の死者をめぐる「水滴」など優れた小説と合わせ、現実と格闘する作家の精神に触れてみてほしい。

県民投票全県実施向け「3択」検討 県議会議長提案で最終調整 - 琉球新報(2019年1月19日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-863272.html
https://megalodon.jp/2019-0119-0950-02/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-863272.html

辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票の全市町村実施に向けて、選択肢を現在の2択から「3択」に変更する条例改正案が与党内で検討されていることが18日、分かった。与党幹部と県執行部、法律家との間で協議が始まっており、県議会での全会一致の可決に向けて、「議長提案」という形での改正案提案に向け最終調整に入っている。与党関係者によると「容認」「反対」「やむを得ない」の3択が検討されている。 
県民投票を巡っては、昨年の県議会11月定例会で「賛成」「反対」の2択の条例案が県政与党と維新による賛成多数で可決し、4択を提案した自民、公明は反対の立場を取っている。また、宜野湾市沖縄市など5市でも2択の県民投票への不参加を表明し、県に対し選択肢の変更を求めていた。
さらに、公明党県本も今週に入り、玉城デニー知事に3択への見直しによる全県実施を水面下で打診した。与党関係者によると、玉城知事は「不参加を表明した5市が投票に応じるという担保が取れれば選択肢の変更に応じる」との考えを示している。
一方、与党内では、2択にこだわる意見も根強く、今後、与野党での調整でどこまで双方が歩み寄れるかが焦点となる。
一方、公明党の金城勉公明党県本代表は照屋守之自民党県連会長と18日に県議会内で非公式に面談した。協議の内容は明らかではないが、県民投票の全県実施を巡り意見を交わしたとみられる。
行政視察で伊平屋島を訪れている玉城知事は同日、選択肢の変更で5市の参加が担保された場合の対応を記者団に問われ「みんなで歩み寄る努力をやることについてはやぶさかではない。ただ、現実的に時間という問題もある」と述べた。(吉田健一

(県民投票 迫る告示) 与野党とも努力尽くせ - 沖縄タイムス(2019年1月19日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/374340
https://megalodon.jp/2019-0119-0947-07/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/374340

辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票は、2月14日の告示まで1カ月を切った。
県は16日、各市町村の担当者を集め、事務説明会を開いたが、現時点でも宮古島、沖縄、宜野湾、石垣、うるまの5市の保守系市長は不参加の方針を変えていない。
全市町村の参加は極めて厳しい状況だ。
このまま県民投票を実施することになれば、県内の有権者のおよそ3割に当たる約36万3千人が投票の機会を奪われることになる。
民主主義と地方自治にとって極めて由々しい事態だ。
投票権は、民主主義を支える最も重要な政治的権利である。県や市町村は、憲法地方自治法、条例によって付与された住民の投票権を保障する役割を担っている。
投票の選択肢が4択にならなかったからといって、それを理由に、一般住民の投票する権利まで奪い取るというのは、いくらなんでも度が過ぎる。
どちらの主張が県民の理解を得られるか−正当性を巡る県議会与野党の駆け引きは、激しくなる一方だ。
時間は限られているが、県議会を召集し、与野党が「全県実施」に向け緊急に協議して欲しい。
それぞれの主張をもう一度整理し、なぜ相手側の主張に反対するか、歩み寄る余地はないのかどうか、あらためて住民の前で説明を尽くしてもらいたい。
不参加を表明している市長は、住民との対話集会を早急に実現し、なぜ県民投票ができないかを説明すべきだ。

    ■    ■

辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん(27)が宜野湾市役所前で実施しているハンガーストライキは、18日で4日目を迎えた。
元山さんのやむにやまれぬ行動は、県内外で大きな反響を呼び、激励のため訪れる人が後を絶たない。
「県民投票をきっかけに多くの県民が議論し、悩んで、納得のいく一票を入れて欲しい。その過程を経れば対立や分断は必ず乗り越えられる」と元山さんは強調する。
元山さんのその主張を大事にしたい。5市で県民投票が実施されなければ、宜野湾市に住んでいる元山さん自身も投票できなくなる。
県議会与党の中には、4月の衆院補選、夏の参院選を念頭に「(5市が)参加しなくてもそのままやればいい。参加しない方が悪い」との声がある。
突き放したような不用意な発言を重ねれば、全県実施を求める県民の批判は、与党にも向けられるだろう。

    ■    ■

沖縄県民は戦後27年間、日本の主権の及ばない米軍統治の下に置かれた。
今の県知事にあたる行政主席を公選で選ぶようになったのは、本土よりも大幅に遅れ、1968年になってからである。復帰後も基地の維持が優先され、地方自治はさまざまな制約を受けた。
投票権参政権)なくして民主主義なし。県民投票の投票権を求める住民の主張は、県民にとって歴史に根ざした要求という性格を帯びており、その意味は重い。

(大弦小弦) 対照的な、あまりにも大きい言動の落差に接すると… - 沖縄タイムス(2019年1月19日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/374339
https://megalodon.jp/2019-0119-0945-15/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/374339

対照的な、あまりにも大きい言動の落差に接すると、私たちが向き合うべき相手が見えてくる。辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票の全県実施を求めてハンガーストライキを続ける元山仁士郎さん(27)と菅義偉官房長官のふるまいである

▼ハンストを続ける若者に対する政府の認識を聞く30秒に満たない記者の質問は、司会によって「簡潔にしてください」などと3度遮られた。官房長官はあざけるような表情を見せ、「その方に聞いてください」と述べるや会見場を後にした

▼「その方」が宜野湾市役所前でハンストを始めてから18日で4日目を迎えた。高齢の女性は元山さんの体調を必死に気遣い、40代の女性は「何もできずに申し訳ない」と涙をためた

▼元山さんは昨夜、「一人で始めたハンストだが、一人じゃないと気づくことができた」と述べた

▼有効署名約9万3千筆をもとに思い描いたのは、辺野古に新基地をつくっていいかどうかを県民みんなで悩み、考えようということである。子や孫に聞かれても答えられるような一票を投じよう、と

▼現状は5市長の不参加表明によって、元山さんらが描いていた議論には至っていない。ハンストはきょう5日目に突入する。政治的な立場を超えて全県実施と議論の活性化に向かうには今に生きる私たちの知恵が試される。(溝井洋輔)

転機のNHK 「公共」の議論、今こそ - 朝日新聞(2019年1月19日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13855113.html
http://archive.today/2019.01.19-004323/https://www.asahi.com/articles/DA3S13855113.html

大きな転機の年――。NHKの上田良一会長は年頭記者会見で、今年をそう位置づけた。
かねて望んできた、放送中の番組をインターネットでも常時同時配信できるめどが立ち、放送法改正案が通常国会に提出される見通しになったのを受けた発言だ。昨年末には4K・8Kの本放送も始まった。
だからこそ、NHKは山積する課題に真摯(しんし)に向き合い、「公共」の使命を果たすために何をすべきか、議論を深め、決意と覚悟を組織全体で共有しなければならない。
先ごろ発表された19年度予算案は9年ぶりの赤字予算となった。秋以降、順次実施する受信料の還元や値下げを反映したもので、赤字分の30億円はこれまでの繰越金で埋めるという。
その額は1千億円にまで積み上がっているというから驚く。受信料水準については、総務省有識者会議が「継続的な見直し」を求めている。今回の地上波・衛星波あわせて実質月額160円程度の値下げは当然で、さらなる検討が迫られよう。
そのためにも、業務やガバナンスの改革は必須だ。
4K・8Kでテレビチャンネルが六つに増えたのを受け、NHKも「衛星波を整理・削減する方向で年末をめどに考え方を示す」と表明している。また、常時同時配信が始まってNHKの影響力がさらに強まれば、民放との格差が広がり、多様な情報を発信してきた二元体制が揺らぎかねない。ネット事業に充てる経費に上限を設けるなどして、なし崩し的な業務拡大に歯止めをかける必要がある。
報道機関として政権との距離をいかに適切に保つかという、長年の課題も残されたままだ。
昨年出版されたNHKの元記者の手記が反響を呼んでいる。
森友問題の特ダネを報じた現場に、局幹部の不満が伝えられたり、予定していた放送がされなかったりしたという。NHKは「虚偽の記述がある」と反論するが、それ以上具体的な説明はしていない。
今月初めには、沖縄・辺野古の埋め立てをめぐり「あそこのサンゴは移している」という安倍首相の発言(事前収録)をそのまま放送し、沖縄県などから「不正確」との指摘を受けた。移植したのは区域外にあるごく一部だという事実を伝えなかったことを批判されても、「自主的な編集判断」と繰り返すばかりで、説得力を著しく欠く。
こんな姿勢で「転機」を乗り切れるだろうか。求められるのはうわべの言葉ではなく、視聴者の理解を得る行動である。