<税を追う>辺野古の土砂、割高 1立方メートル1万円超 良質石材の倍 - 東京新聞(2019年1月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019011890070217.html
https://megalodon.jp/2019-0118-1013-02/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019011890070217.html


沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省沖縄防衛局が埋め立て用土砂の単価を県内の良質な石材の倍以上の一立方メートル当たり一万円以上と見積もり、業者に発注していたことが本紙の取材で分かった。防衛省の内規で、土木工事の材料単価は原則三社以上から見積もりを取ることになっているが、一社だけの見積もりを採用していた。石材業界からは「単価が高い」という指摘が出ている。(中沢誠)
防衛局は採石場などで石を砕く時に出る「岩ズリ」という規格外の砕石を埋め立てに使用。岩ズリを含む埋め立て土砂に、サンゴなどの自然環境に悪影響を与える粘土性の「赤土」が大量に混じっている疑いが浮上している。沖縄県は土砂の検査などを求めているが、国は応じていない。
防衛局は二年前、都内の調査機関に県内産岩ズリの見積もりを委託し、単価を積算していた。本紙が入手したこの調査機関の報告書によると、十三社に岩ズリの見積額を尋ねた結果、回答があったのは一社だけで他は見積もりを辞退した。
防衛省の内規は「原則として三社以上から見積を徴収する」と定めている。ところが防衛局は、この一社が提示した見積額をそのまま採用。海上運搬費を含め一立方メートル当たり一万一千二百九十円で、埋め立て工事の予定価格に反映した。先月から土砂を投入している工区は、防衛局が予定価格七十六億円で大林組などの共同企業体(JV)に七十二億円で発注している。
防衛局の仕様書では、埋め立て土砂は岩石以外の粘土などの細粒分が40%まで混じってもいいとしており、岩ズリだけを使うよりも品質はさらに落ちる。
沖縄県公共工事の資材単価表では、岩ズリより良質な石材「雑石(ざついし)」を辺野古周辺で使う場合、一立方メートル当たり四千七百五十円(運搬費込み)と積算。また、国の出先機関沖縄総合事務局は、那覇地区で港湾工事に使う場合、岩ズリの単価を同三千五百五十円(同)と積算している。
建設資材の価格を調査している建設物価調査会(東京)の担当者は「岩ズリは相場観が出づらいが、通常、路盤材に使う一番安価な石材より安く取引される」と説明。一番安価な「クラッシャラン」という石材でも、沖縄本島の相場は運搬費込みで一立方メートル当たり四千円前後という。
業界団体の日本砕石協会(東京)も「地域や用途、ストック量によって変動はあるが、一立方メートルで一万円というのは高い」とする。

◆埋め立て費 拡大の恐れ

沖縄防衛局が着工前に沖縄県に示した計画では、辺野古の新基地建設の工費を二千四百億円と試算。このうち土砂の埋め立てに千四百億円かかるとしている。
埋め立てに必要な土砂は二千六十二万立方メートルで、東京ドーム十七個分に相当。うち八割が岩ズリを使う。
今回明らかになった一立方メートル当たり一万一千二百九十円の単価で計算すれば、岩ズリの購入費だけで千八百五十六億円に上り、防衛局の試算を大きく上回る。今後は県外からも調達することになっており、輸送費を考えればさらに費用が膨らむ可能性がある。

◆適正に単価を積算

防衛省整備計画局の話> 沖縄では大型工事も多く、需給の変動が大きい。しっかり価格調査を行い、適正に単価を積算し発注した。

<税を追う>辺野古土砂含有率を無断変更 防衛省、回答拒否続ける - 東京新聞(2019年1月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011802000131.html
https://megalodon.jp/2019-0118-1014-14/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011802000131.html

沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省が埋め立て用土砂の成分比率を県に無断で変更していた問題などを巡り、十六日に野党の国会議員らによる現地調査が行われた。防衛省沖縄防衛局は「当時の担当者に確認できておらず答えられない」と繰り返すのみ。現地では「赤土が使われている」と疑念が広がる。県側は「埋め立てを強行し、基地の既成事実化を図るのは許せない」と反発を強めている。 (望月衣塑子)
沖縄防衛局は着工前の二〇一三年、県に埋め立て承認を求める文書を提出。土砂に含まれる砂や粘土など「細粒分」の割合を「概(おおむ)ね10%前後」と記していた。
ところが防衛局は一七年十一月、業者から土砂を調達する際、細粒分の割合を40%以下として発注。埋め立て承認の内容に変更がある場合、防衛省は事前に県と協議することになっているが、県に細粒分の変更を知らせていなかった。
岩屋毅防衛相は十三日、記者の質問に「細粒分の含有率は概ね10%前後という記述は、護岸を閉め切る前に埋め立てを実施する場面を想定した。今の作業は海を閉め切って(石を砕く時に出る)岩(がん)ズリを投入している」と反論したものの、変更した理由は説明しなかった。
十六日の現地視察でも防衛局担当者が同じ説明をしたため、野党議員や県の幹部らは反発。県の担当者は「埋め立て承認願書に添付された環境保全図書には『外海を切り離し閉鎖的な水域をつくり』『概ね10%前後の土砂投入』とある。閉め切っているから問題なしという防衛局の主張は初めて聞いた」と批判した。
那覇市での合同ヒアリングでも質問が集中。立憲民主党川内博史議員が「防衛局は県にきちんと説明したのか」と聞くと、防衛局調達部の担当者は「当時の担当者でないので確認できない」と回答。共産党の仁比聡平(にひそうへい)議員は「今日の防衛局の説明や岩屋防衛相が話した論理は、いまになって作り上げたものとしか思えない」と批判した。
埋め立て現場で、実際に土砂を見た議員たちは船上から口々に「あれ、赤土ですよね」と指摘すると、立ち会いの防衛局職員が「一応、岩ズリです」と答え、議員らから失笑が漏れた場面もあった。
赤土は細粒分が多いため粘着力が弱く、埋め立てに多く使うと環境に悪影響を与えるため、沖縄県では、赤土が大量に流出しないよう埋め立て事業者に届け出を義務付ける「沖縄県赤土等流出防止条例」がある。
議員らの「赤土はあるのか」の質問にも防衛局は一切答えず、「細粒分含有率は10%前後です」とだけ言い続けた。県は防衛局に立ち入り調査と検査用の土砂の提供を求めているが、防衛局は「法的根拠を示せ」として応じていない。
謝花喜一郎(じゃはなきいちろう)副知事は「どんなに行政指導しても、それに従わないことが常態化している。わが国は法治国家なのか」と強く批判。県は十八日までに防衛局に回答するよう再度求めている。

病院で手錠腰縄「人権侵害」 入管収容者訴え 写真拡散、議論に - 東京新聞(2019年1月17日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011702000261.html
http://web.archive.org/web/20190117100433/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011702000261.html

入管施設に収容された外国人が職員に伴われ病院に行く際、待合室で手錠や腰縄姿をさらされるのは人権侵害との指摘が、実際の様子を捉えた写真とともにインターネット上で提起され、論議になっている。
東京入国管理局は「逃亡防止のため」と説明するが人権問題の専門家は「人格の尊厳を傷つける」と批判している。
写真は昨年十月、制服姿の東京入管職員がバングラデシュ出身の難民申請者マルフ・アブダラさん(36)に手錠や腰縄をし、病院待合室を連れて歩く様子を居合わせた人が撮影し、外国人を支援する織田朝日さんに相談。織田さんがネットに公表し入管を批判、写真は拡散し議論が起きた。手錠はむき出しでなくカバーが付いていた。
アブダラさんは「実態を知ってほしい」と写真や実名の公開を了承し、共同通信に「腰や膝の診察だが、緊急ではない。手錠や腰縄は辱めだ」と指摘。「私は犯罪者ではない」と訴えた。
拘束者の護送を巡っては、刑事裁判の日本人被告が眼科受診の際、手錠や腰縄のまま待合室を歩かされたと国を提訴。大阪地裁は一九九五年「人格権に対する違法な加害行為」と賠償を命じ、最高裁で確定した。
法務省矯正局によると、現在、所管する刑務所や拘置所で受刑者らを病院に連れて行く際、職員は私服に着替え裏口から入るなど人目に付かない配慮をするという。
中央大法科大学院の北村泰三教授(国際人権法)は、入管収容は司法の刑罰手続きでなく行政の措置であり「推定無罪を受ける刑事被告人と同様か、それ以上に人権を守る必要がある」と話す。
東京入管は「省令に従い逃走防止のため手錠、腰縄をするが、人目に触れさせない配慮をしている。この写真は一場面だけを切り取ったため常に公衆にさらしている印象になった」と説明した。


深刻さ増す不正統計問題 安倍政権挙げて解明急げ - 毎日新聞(2019年1月18日)

https://mainichi.jp/articles/20190118/ddm/005/070/115000c
http://archive.today/2019.01.18-011600/https://mainichi.jp/articles/20190118/ddm/005/070/115000c

厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正調査問題で、同省がきのう専門家らによる特別監察委員会の初会合を開いて本格的な調査を始めた。
統計法の規定に反する不正の意図は何だったのか。なぜ長年まかり通ってきたのか。組織ぐるみの不正だったのか。解明すべき点は多い。
問題は深刻になるばかりだ。
従業員500人以上の事業所全てを調べる決まりになっていながら、東京都内では抽出調査に変えていた今回の不正が始まったのは2004年。03年には不正を容認するような内部のマニュアルが作られていたが、この容認の記述は15年以降削除されたという。
一方で16年に厚労省総務省に提出した資料には「全数調査とする」と明記していた。不正の隠蔽(いんぺい)と虚偽報告が続いていたことになる。
既に指摘したように昨年1月から全数調査に近づけるような統計処理を行っていながら、その変更について何ら公表しなかった責任は重い。
そもそもなぜ変更したのかも現時点では不明で、しかも昨年12月には根本匠厚労相も問題の報告を受けながら、その翌日、不正を伏せて統計を発表していた。驚くべき事態だ。
旧民主党政権も含め、歴代の厚労相経験者は「知らなかった」と口をそろえているようだ。だが国民の不信の原点は、裁量労働制に関する不適切データや障害者雇用数の水増しをはじめ、今回のみならず官僚が都合良くデータや公表数字を変えてしまう行為とともに、それを政治家が監督できない点にあるはずだ。
政府はこの問題で新年度予算案を修正して、閣議決定をし直す異例の事態に追い込まれた。雇用保険などを過少に給付されていた対象者は当初の推計より、今後拡大する可能性がある。システム改修や人件費などもかさむだろう。影響は大きい。
安倍晋三首相は第1次政権時の07年を思い出しているに違いない。この年初め、同じ厚労省の「消えた年金記録」問題が発覚しながら、対応が遅れた結果、政権全体への世論の批判が強まって夏の参院選自民党が惨敗する大きな要因となった。
その教訓を生かすなら、調査や処分を厚労省任せにせず、こんな事態が繰り返される構造的な欠陥にまで踏み込んで解明すべきである。

書店も驚き!売り切れ続出 直木賞受賞作「宝島」は戦後沖縄が舞台 - 沖縄タイムス(2019年1月18日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/373705
https://megalodon.jp/2019-0118-1016-47/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/373705

米軍占領下の沖縄でもがきながら生きる若者たちの姿を描き、直木賞を受賞した真藤順丈さん(41)の小説「宝島」(講談社)が沖縄県内で反響を呼んでいる。受賞発表翌日の17日、各書店では売り切れが続出。那覇市内の書店スタッフは「直木賞受賞作と言っても、これだけ反響があるのはめったにない。異例だ」と驚き、「沖縄の歴史や今も続く基地問題について考える一冊」と称賛する。(社会部・吉川毅、比嘉桃乃)
こんな売れ方めったにない
物語は、米軍基地から物資を盗む「戦果アギヤー」と呼ばれた若者たちを描く。沖縄の言葉をふんだんに盛り込み、沖縄の戦後史に切り込んだ意欲作だ。
那覇市久茂地のリブロリウボウブックセンター店では、直木賞が発表された16日夜、閉店間際に本を求めて数人が駆け込んだ。17日も朝から売れ続け、用意した40冊は午後3時ごろに完売した。
ライターの友寄貞丸さん(58)=那覇市=は、知人から東京で売り切れているので手に入れてほしいと連絡があり急いで購入。「沖縄の戦後史を本土の作家がどう捉えて小説にしたのか興味がある」と笑みを浮かべた。店頭に並ぶ最後の2冊を購入したのは那覇市の60代の夫婦。「小説の舞台が沖縄なので読みたくなった。復帰前の私たちは高校生。主人公の思いが重なるかもしれない」と話した。
同店スタッフの宮里ゆり子さん(37)は「表現力がすごくて、読んでいると頭に映像が浮かんでくる」と絶賛した。「主人公が今の沖縄で生きているなら、基地にどう向き合っていただろうかと考える。基地がある沖縄の歴史や今も続く問題を考える一冊だと思う」
16日夜にブースを設けた同市牧志ジュンク堂那覇店では、17日正午すぎに50冊が完売。200冊を追加発注した。森本浩平店長(44)は「圧倒的なクオリティー。きょうは年配の方が多く購入していたが、若い人たちにも手にとってほしい本」と太鼓判を押した。
午前中で22冊が売り切れた同市おもろまちの球陽堂書房メインプレイス店では、すでに20冊以上の予約を受け付けた。新里哲彦店長(61)は「小学校への戦闘機墜落、交通死亡事故の無罪判決、コザ騒動など、主人公を通して沖縄の痛みが理解できる。多くの人に読んでほしい」と願った。

【ことば】戦果アギヤー 戦後の沖縄で、米軍の倉庫から豊富な物資を盗み出すことを得意とした人のこと。食うや食わずの住民生活に比べて米軍物資はあり余るほど豊かで、生きていくためのぎりぎりの手段でもあった。

宝島

宝島

石垣陸自3月着工 「アセス逃れ」は姑息だ - 琉球新報(2019年1月18日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-862706.html
https://megalodon.jp/2019-0118-1018-26/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-862706.html

石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備に関して、防衛省は3月1日に駐屯地建設に着手すると県に通知した。工事区域は平得大俣地区のうちの約0・5ヘクタールの用地造成だ。
そもそも配備予定地周辺の4地区は配備に反対している。配備の賛否を問う住民投票を求める動きも活発化している。地域の理解も得ないままに工事を開始することは許されない。しかも、改正された県環境影響評価(アセスメント)条例の適用対象になる前に見切り発車の形で工事を進めようとしている。
改正アセスは県土の環境破壊を防ぐために必要とされ、県議会で条例改正が可決された。それをくぐり抜ける「アセス逃れ」は姑息(こそく)であり、環境保全をないがしろにするものだ。
沖縄防衛局は1月4日に県に対し赤土等流出防止条例に基づき、着工を通知した。工事をする面積は駐屯地建設に伴う用地造成面積約29ヘクタールの1・7%程度で、本格工事とは言えない。
県アセス条例は一定面積以上の道路、ダム、飛行場、ゴルフ場、土地区画整理など対象事業の種類を定めていた。が、2018年に改正され、施行区域が20ヘクタール以上で、土地造成を伴う事業は新たにアセスの対象にした。それにより基地施設の整備も対象となった。
県によると改正条例は神奈川県などの条例と並んで全国で最も厳しい要件となる。それも、沖縄の自然環境を守るために必要な措置だ。現在、さまざまな目的で土地造成がされている中、対象事業を限定する方が不自然だ。「環境へ配慮した事業計画」が求められるのは民間であっても公共であっても変わらない。基地建設も同様だ。
アセスには最短でも3年程度かかるため、着工が遅れる可能性もある。防衛局は遅れを避けるため、適用前の年度内駆け込み工事を図ったのだろう。
しかし、配備計画を巡って、石垣市では賛否を問う住民投票条例を求める署名が必要数以上集まっており、21日から条例案の審議が市議会で始まる予定だ。条例制定請求者の「市住民投票を求める会」は、18歳になる高校生が進学などで島外に出る前に投票できるよう、2月中の実施を希望している。
配備予定地周辺の4地区(於茂登、開南、川原、嵩田)の公民館長は防衛局が先月開催した説明会に出席せず、抗議文書を提出した。地元の反対は根強い。さらに地元から出されている水源地汚染などの環境悪化への懸念を払拭(ふっしょく)するなら、なおさらアセスは必要だ。
地元の意向にかかわらず工事を強行するのは、建設を既成事実化しようとしているように見え、辺野古新基地建設とも重なる。防衛省は拙速な着工をやめてアセス条例に基づく手続きを取り、さらに住民投票の結果を含めた民意を尊重すべきだ。

<金口木舌>ハンストと「普通の生活」 - 琉球新報(2019年1月18日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-862708.html
https://megalodon.jp/2019-0118-1020-05/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-862708.html

「どうすれば沖縄の人々が普通に生活できる社会にできるのか」。2016年6月、米軍属女性暴行殺人事件の遺棄現場で、当時シールズ琉球で活動していた元山仁士郎さんが語った。命を奪われた、ほぼ同世代の女性を思い、祭壇に手を合わせていた

▼元山さんは現在「『辺野古』県民投票の会」代表を務める。県民投票への不参加を表明した5市に投票事務実施を求め、15日からハンガーストライキに入っている
▼ハンストはマハトマ・ガンジーの断食に由来する非暴力抵抗運動だ。沖縄でも1960年代、教育公務員特例法など2法を阻止する運動で教師らがハンストを行った。沖縄県祖国復帰協議会も沖縄の無条件復帰を求め、沖縄や東京でハンストをした
▼近年は2013年にオスプレイ配備反対を訴えて市民がハンストに取り組んだほか、今年1月に市民団体が元山さん同様に県民投票の実施を求めて宜野湾市役所前で72時間のハンストをした
▼元山さんの行動は、沖縄で非暴力抵抗運動の歴史が若い世代に受け継がれていることを示す。同時に基地問題を巡る沖縄の状況が変わっていないことの表れでもある
ガンジーの命懸けの行動で、インドは英国から独立を勝ち取った。一方、沖縄で「普通に生活できる社会」はいつ訪れるのか。全県民に投票する権利を保障することが、その一歩になるのではないか。

声を届ける - 北海道新聞(2019年1月18日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/267875
http://archive.today/2019.01.18-012431/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190118/KP190117ETI090004000.php

空知管内奈井江町の北良治・前町長は、市町村合併の是非を問う住民投票に合わせ、全国初の「子ども投票」を行った。2003年のことだ。対象は小、中、高校生たち。自分たちのまちを自分たちでつくるという、そんな思いだった―。退任後、本紙の取材に答えていた。
一方、こちらは参加したくてもできない住民が数多く出るのだろうか。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の賛否を巡り、沖縄県が行う県民投票である。沖縄市など5市が不参加の意向を示した。
県が市町村に交付する投票経費を盛り込んだ関連予算を、市議会が否決したことなどを理由に挙げる。否決されても首長判断で経費を支出できるが、各市長は議会の意思を尊重するとして不参加を表明した。
気になるのは、どの議会も保守系議員が多数を占め、首長が県と対立する国政与党に近い立場とされること。自民党衆院議員が、関連予算の否決に全力を尽くすべきだとする文書を市町村議に配っていたことも判明した。「全県投票」を阻止し、投票結果は県民の総意ではないと主張するつもりでは、と警戒する声すらある。
日本は間接民主主義が基本だが、市民の声が政治に届かないときもある。住民投票はそれを補う手法の一つだ。5市の判断は、住民が意思表明する権利を奪うことにほかならない。
民主主義が揺らいでいる。遠い沖縄の話と傍観してはならない。

デマ拡散防止 安倍政権の姿勢に不安 - 信濃毎日新聞(2019年1月18日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190118/KP190117ETI090004000.php
http://archive.today/2019.01.18-012431/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190118/KP190117ETI090004000.php

政府が災害や選挙時のデマ情報の拡散防止に乗り出す。今年半ばをめどに対策をまとめる考えだ。
災害のときに間違った情報が広がると、最悪の場合人命に関わる。選挙では結果がゆがめられかねない。対策は必要だ。
半面、政府が前面に出ることには不安を感じる人も多いのではないか。安倍晋三政権のこれまでの姿勢から見て、表現の自由が損なわれる心配が否定できないからだ。対策は民間主導で進めることを基本としたい。
昨年1年間を振り返っても、デマが流布、拡散した例は多い。7月の西日本豪雨では「窃盗団が被災地に入り込んでいる」との情報が交流サイト(SNS)などで流れた。9月の北海道地震では自衛隊発の情報として、ネット上に「数時間後に大地震が来る」と書き込まれた。
沖縄県知事選では当選した玉城デニー氏を標的とするデマが広がった。「当選したら沖縄が中国に徐々に浸食される」などの内容だった。現職国会議員が拡散に加わって批判される一幕もあった。
対策は欧州が先行している。例えばドイツは2年前に施行した法律で、SNSに対し虚偽情報や人種差別的な書き込みを24時間以内に削除するよう義務付けた。欧州連合(EU)はIT企業向けの行動規範を定めている。
そこで問題になるのは安倍政権の姿勢である。
憲法は国民の権利の中でも表現の自由を特に手厚く保護している。政治に参加するために必要不可欠な権利だからだ。今の政権がその意味を十分に理解し、尊重しているとは思えない。
例えば自民党は4年前、テレビ局幹部を党本部に呼び番組を巡って「事情聴取」している。放送内容に口を挟むことを禁じた放送法に違反する可能性が高い。
安倍首相自身、2014年総選挙の時に出演したテレビ番組で、政権に批判的な声が街頭インタビューで多く紹介されたことに対して「選んでますね。おかしいじゃないですか」とかみついた。
政府は具体的な対策として、米IT企業や日本のネット事業者に自主的な行動規範の策定を求めることを検討している。自主的な規範といっても、進め方によっては政府による強制になる。
デマ情報の拡散と抑制はいたちごっこ。関連企業が本気で取り組み、工夫を凝らさないと効果が上がらないだろう。政府はバックアップに徹するべきだ。

英原発建設中断の日立、推進派・中西会長の警鐘(佐伯真也 記者) - 日経ビジネス(2019年1月17日)

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/011700012/

日立製作所は1月17日、英国での原子力発電所の建設事業を凍結すると発表した。3兆円規模となる事業費を巡り、日英政府や関連企業との交渉が難航。民間企業の経済合理性の観点から事業継続が厳しいと判断した。凍結に伴い2019年3月期に約3000億円の損失を計上する見通しで、業績予想を下方修正した。
日立は12年11月、英原発事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを約899億円で買収。英国内に原発2基を新規建設することを目指し、協議を重ねてきた。18年5月には約3兆円とされる総事業費のうち、英国政府が2兆円超を融資し、日立、日本政府と日本企業、英政府と英企業が3000億円ずつ出資する枠組みを固めるなど事業化へ並々ならぬ意気込みを示してきた。
だが、原発に対する批判を受け、日本企業からの出資が難航。英国政府に追加出資を要請したものの色よい返事は得られていない。もはや日立だけでは経済合理性の観点から計画推進が困難だと判断した。
11年の東日本大震災原発事故を受け、日本企業が推進してきた海外での原発建設は中断を余儀なくされている。こうした状況に、警鐘を鳴らすのが日立会長の中西宏明氏(現経団連会長)だ。

もうからない商売はダメ

「大変危機的な状況だ」。中西氏は18年末、経団連会長として受けた日経ビジネスのインタビューで日本の原発の現状をこう表現した。
中西氏が最大の問題とするのが、原発がもうからない事業になった点。「もうからない商売ほどダメな商売はない。お客さんがもうけられない仕事で、機器ベンダーがもうけられるわけがない」と語る。
日立は今後も、英国政府との協議は継続する方針。プロジェクト再開も視野に入れるが、実現のハードルは極めて高いだろう。さらに国内では原発の新設はおろか、再稼働すら難しい状況だ。
中西氏は「国民が支持しないものは動かせない」と断言。「安全審査を通り、さあ動かそうとしても自治体がノーと言えば動かせない。再稼働の必要性を仮に自治体の長が説いても、原発を動かすと次の選挙で落ちる。こういう仕組みに入ってしまった」と続ける。
日立に加え、東芝三菱重工業の「原発御三家」も事業環境は同じ。既存原発のメンテナンスと廃炉作業だけのビジネスでは、縮小均衡に陥る可能性がある。原発の海外輸出という国策がとん挫するだけでなく、「このままだと中国とロシアだけが原発をつくる国になってしまう」と中西氏は危機感を口にする。
「好き嫌いではなく真正面からエネルギーをどうすればいいか議論すべきだ」と中西氏は説く。日立の英原発凍結で、岐路に立った日本の原発。残された時間は少ない。