日立株が11日に急騰 ドライな市場が突き付けた「原発NO」 - 日刊ゲンダイ(2019年1月12日)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/245372

市場が「原発ノー」を鮮明にした――。11日の日経平均株価は前日比195円高の2万359円だった。
元気だったのが、前日終値3080円の日立製作所だ。朝は小幅な値動きをしていたが、午前11時になって急騰した。3200円を突破し、午後には3354円まで付けた。終値は3346円だったが、前日比8.64%も上がった。昨日の日経平均は0.97%アップだったから、日立の株高は際立っている。午前11時に何があったのか――。兜町関係者はこう説明する。
「10時59分に日経電子版が、日立が英国の原発建設を中断するというニュースを配信したからです。記事には、来週の取締役会で計画中断を決める予定であることや、2000億〜3000億円の損失を2019年3月期中に計上する見通しを伝えていた。英原発凍結のニュースはすでにされていますが、具体的な道筋まで報道され、投資家に好感が広がったのです」
10日の日英首脳会談で日立の原発計画についてメイ首相は「企業の商業的な判断となるだろう」と言い、安倍首相は「現在、日立など関係機関で議論が行われている。その検討を待ちたい」と両首脳とも“様子見”のような口ぶりだったが、日立は原発離脱を固め、市場はそれを歓迎している。安倍だけが原発にこだわっているが、ドライな株式市場は、原発に未来がないことを見抜いているのだ。

(政界地獄耳)「民主主義の死に方」防ぐために - 日刊スポーツ(2019年1月12日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901120000069.html
http://archive.today/2019.01.12-010533/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901120000069.html

★日本の政治は閉塞(へいそく)感にさいなまれているが、これは日本だけの現象ではない。ではそこから抜け出すにはどうしたらいいか。昨年秋に出版された「民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道」(スティーブン・レビツキー ダニエル・ジブラット、濱野大道訳 新潮社刊)にはその処方のヒントがある。

★軍事クーデターによって民主主義が消えた国はあるものの、もうひとつ、選挙で選ばれた指導者によって民主主義が死ぬこともあると本書は指摘する。ベネズエラアメリカ、ジョージアハンガリーニカラグア、ペルー、フィリピン、ポーランド、ロシア、スリランカ、トルコ、ウクライナ、チリなどが挙げられているが、日本はどうだろうか。また本書は独裁主義的な行動を示す4つのポイントを示している。(1)ゲームの民主主義的ルールを拒否(あるいは軽視)する(2)政治的な対立相手の正当性を否定する(3)暴力を許容・促進する(4)対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする。

★そしてそれらと戦う野党の役割について「過激主義者が選挙の強力な対立相手に浮上した時は、主流派の政党はいつでも統一戦線を張って相手を倒さなくてはならない。主流派はイデオロギーの異なるライバルと組んででも民主主義的な政治秩序を積極的に守らなくてはならない。そんな方策を取れば道義的に許されない行為だと支持者から非難の声が上がるはずだ。しかし異常な状況下においては、党指導者たちは時に勇敢な行動をとる必要がある。彼らは政党よりも民主主義と国家を優先し、どんな危機が起きているかを有権者に詳しく説明しなくてはならない」としている。今の野党には民主主義の危機という視点が欠けてはいまいか。今までの政治と違う動きに対応できず、判断できない野党へのヒントがくみ取れないようでは日本の民主主義の行方も案じざるを得ない。(K)※敬称略

民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道

民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道

辺野古埋め立て 事実誤認が目に余る - 東京新聞(2019年1月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019011202000179.html
https://megalodon.jp/2019-0112-0934-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019011202000179.html

サンゴは移植で守られ、汚濁防止対策もぬかりない−。辺野古新基地建設のための埋め立て工事を巡り、政府側の事実に背く説明が目に余る。辺野古に基地を造る妥当性がさらに大きく揺らいでいる。
「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」
安倍晋三首相は六日のNHK番組でこう述べた。誰もが埋め立ての前に、辺野古の海のサンゴを全面的に救っていると思うだろう。
しかし、防衛省沖縄防衛局が移植したのは現在の土砂投入区域外にある希少サンゴ。埋め立て海域全体で七万四千群体に上る移植対象のうち、九群体のみだ。
移植は昨夏に行われ、その後沖縄県辺野古の埋め立て承認を撤回。移植のための採捕も許可しておらず作業は全く進んでいない。
現在の埋め立て区域には移植対象はないというものの、護岸外の直近には希少サンゴが残る。これに関しては移植はせず、土砂がかからない措置をしているのみだ。
そもそも移植対象は、希少種のほかは大きさや群生度合いで防衛局が選んだ。また移植をすればサンゴが守られるわけでもない。
繊細な環境下で育つサンゴは水流や光の強さが少し変わるだけで死ぬとされる。移植対象や移植先の選定が不適切であるなど、環境保全措置の不備が県の承認撤回の大きな理由にもなっている。
さらに、埋め立て土砂の質の「偽装」問題も浮上した。埋め立て申請時、防衛局は県に県産の黒石を砕いた岩や石を使用し、細かな砂状の成分は10%前後に抑えるとしていた。実際には40%以下で業者発注し、赤土を含む土砂が投入された疑いがある。
投入を急ぐあまりの手抜きか。
護岸で囲っても細かな砂は外に流出しやすく、海を濁らせる原因になる。先月の投入開始時から土砂が赤茶色なのを地元の土木技術者らが指摘。野党も防衛省に聞き取り調査をしたが、省側は「調達現場に防衛局職員が立ち会い基準を保っている」と強弁を続けた。
環境保護へのずさんな認識、約束破りには猛省を促したい。
辺野古の埋め立て中止を求める米政権への請願サイトには先月来、二十万筆余の電子署名が寄せられた。辺野古の海は「沖縄の生態系の重要な一部」との訴えが共感を呼んだ。
新たな怒りは県民のみならず、世界に広がろう。それでなくとも民意を押しのけて進められる工事だ。うそやごまかしがあっては、もはや何の支持も得られまい。 

厚労省の不正統計 どれだけ背信重ねるのか - 毎日新聞(2019年1月12日)

https://mainichi.jp/articles/20190112/ddm/005/070/090000c
http://archive.today/2019.01.12-002551/https://mainichi.jp/articles/20190112/ddm/005/070/090000c

厚生労働省の「毎月勤労統計」で本来と違う不適切な調査が行われ、延べ約2000万人の雇用保険労災保険が過少給付されていた。総額は567億円に上るという。
統計法で定められた「基幹統計」の一つで、国内総生産(GDP)の算定根拠にもなる。重要な政策の基になる統計でなぜこんなことが起きたのか。徹底した調査が必要だ。
政府は2019年度予算案を組み替え、04年までさかのぼって不足額を支払う方針だ。住所データが残っている人には手紙で知らせるが、連絡先がわからない人も多数いるはずだ。システム改修や住所確認など事務手続きのコストは大きい。
同統計は労働者の賃金や労働時間、雇用の動向を示すもので、全国約3万3000事業所(従業員5人以上)が調査対象だ。東京都内の従業員500人以上の事業所は1464あったが、04年から491事業所を抽出した調査に変えていた。
本来であれば調査結果を約3倍に復元して統計処理すべきなのに、それを怠ったため、給与水準が高い都内の大規模事業所のデータが大幅に削除され、全体の平均給与額が低くなった。
雇用保険などの給付水準は同統計の平均給与額で決まっている。そのため、04年以降の給付が過少となっていた。
さらに問題なのは、不適切な調査をしていたことが内部調査で発覚し、昨年1月分からは正規の調査規模に合わせる修正をしていたのに、何も公表しなかったことだ。過少給付の救済が遅れただけでなく、一貫性を欠くデータを公表し続けていたことになる。政府の統計の信頼性を傷つけた罪は重い。
都内の大規模事業所の全数調査をやめたのは厚労省の判断だったと根本匠厚労相は記者会見で認めた。だが、なぜ抽出調査のデータを適正に修正せず、長年引き継がれてきたのかは不明だ。
政府は56の基幹統計を一斉点検する。ほかにも不適切なデータがないか徹底して調べるべきである。
年金記録のずさんな管理、裁量労働制に関する不適切なデータなど、厚労省の統計や記録の誤りは何度も繰り返されてきた。デタラメを許す土壌を変えなければならない。

([県民投票「予定通り」) 局面打開へ全力挙げよ - 沖縄タイムス(2019年1月12日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/371063
https://megalodon.jp/2019-0112-0932-40/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/371063

辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票を巡って、県が窮地に追い込まれている。
これまでに宜野湾、宮古島、沖縄、石垣の4市長が、県民投票を実施しない方針を明言した。うるま市も、議会が予算案を否決したのを受け、態度を保留したままである。
4市に対しては、知事や副知事、市民団体などが再三、実施を要請しているが、翻意の可能性は低い。
玉城デニー知事と県議会与党は11日、急きょ対応を協議し、予定通り2月24日に条例に従って実施することを確認した。
極めて重大な判断だ。きちんと議論した上での、手続きを踏んだ結論なのだろうか。
すでに不参加を表明した4市とうるま市有権者数はあわせて36万3千人にのぼり、県全体の31・7%を占める。
4〜5市の不参加のまま県民投票を実施すれば、県民投票としての意味が薄れる。投票の結果、過半数が埋め立てに反対だったにしても、全国的には一部の「不参加」だけが強調されるだろう。
県民投票に賛成する県民の中からは、ここに来て条例の改正による実施時期の延期などさまざまな声が浮上し始めている。だが、玉城知事は条例の改正について「さまざまな課題があり難しい」と否定した。
このまま推移すれば県民のやる気が失せていくおそれがある。
県民投票の成功は一にも二にも、下から大きなうねりをつくり出すことができるかどうかにかかっている。

    ■    ■

分裂状態のまま投票を実施した場合、「こんな状態で投票しても意味がない」と棄権する人が増え、投票率が5割を割ることも考えられる。最悪の事態だ。
そうなった場合、県議会野党から知事の責任を問う声が浮上するだろう。
4月21日には衆院沖縄3区の補欠選挙、夏には参院選が控えている。
辺野古での土砂投入が進む一方で、二つの選挙が県民投票と複雑に絡み合っているため、条例改正による実施時期の延長も選択肢の見直しも、容易でないのは確かだ。
県議会で与野党がもう一度、腹を割って話し合い、その中から一致点を見いだすことはできないものか。
「県民投票は対立と分断を深める」という指摘があるが、知事が「結果に従う」ことを明言し、結果にかかわらず普天間飛行場の危険性除去に全力を尽くすことを約束すれば、県民投票はプラスに作用する。

    ■    ■

県は「県民投票条例の施行によって県及び市町村は県民投票に関する事務を執行する義務がある」として、不参加を表明した自治体に対し「是正の要求」を行うことも検討している。
ここで思い起こしたいのは、県民投票実現のため署名集めに奔走した若い人たちの熱意である。彼ら彼女たちは思い通りにいかない現状を深く憂慮しているはずだ。
県や県議会は、その思いに向き合い、あらゆる手を尽くして現状打開に努めてもらいたい。

外国人労働者 どう受け入れるか - 北海道新聞(2019年1月9日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/265209
http://archive.today/2019.01.12-003118/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/265209

在留資格を新設して外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が成立し、4月1日の新制度スタートに向け、政府は受け入れ対象業種や人数といった制度の根幹に関わる議論を進めている。検討が遅れているのは、外国人労働者の子どもに対する教育体制の整備や、労働者への差別・搾取といった人権問題の改善だ。受け入れ後の混乱を避けるためにも、事前の準備が不可欠で、どういった支援や制度づくりが必要なのか、専門家に聞いた。
■人権侵害防ぐ態勢整えて 外国人労働問題に詳しい弁護士・小野寺信勝さん
弁護士の立場から、外国人技能実習生の法的支援に長く携わってきました。低賃金や長時間労働をはじめ、差別・暴力、送り出し機関や仲介業者による中間搾取など、技能実習制度は多くの問題を抱えています。政府が一貫して否定してきた、単純労働者の事実上の受け入れに限って言えば、新しい在留資格の創設は一定の評価はできます。
ただ、課題山積の技能実習制度が新制度の土台として温存されたことで、今後も人権侵害が起き続ける可能性があります。
熊本県弁護士会で2006〜14年、主に九州の事件を担当しましたが、深刻な人権侵害だらけでした。長崎のある監理団体の規定には罰金・罰則があり、実習生が異性と交際したら50万円に加えて来日前に支払った保証金の没収および強制帰国、門限を破ったら1万円、社内でつば・たんを吐いたら5千円と決められていました。熊本では日本人の宿舎費が8千円なのに、実習生は3万5千円という差別がありました。鹿児島のある宿舎は和式トイレの上に木の板を敷き、その上でシャワーを浴びるという劣悪な生活環境でした。
こうした問題を実習生が日本の社会団体や報道機関に訴えてはいけないという規定さえありました。訴えたことが分かった場合、保証金を没収すると記されていました。技能実習制度は民間同士でやりとりするため、被害が表面化しにくい構造的な問題があります。実習生がいる自治体や地域社会がもっと実習生への関与を強め、地域全体で支えていく必要があります。
韓国にはかつて、日本の技能実習制度を参考にした「産業研修生制度」がありましたが、人権侵害や失踪が社会問題化したため、04年に「雇用許可制」という政府主導の新制度を新設し、その後旧制度を廃止しました。雇用許可制は、韓国政府が2国間協定を締結した送り出し国に事務局を置き、韓国政府が主体的に受け入れに関与するため、ブローカーが介入しにくくなっています。受け入れ過程を透明化した韓国の制度は外国人に高く評価されています。日本が今の制度を続けていれば、アジアの人材が来てくれなくなる可能性もあるでしょう。
日本の産業は、地方を中心に、すでに外国人労働者が不可欠な状況になっています。政府はこの現実に正面から向き合い、外国人が「労働者」として必要であることを認め、人権侵害が起きないしっかりとした受け入れ態勢を整えるべきです。
日本に最長10年住む人が、なぜ「移民」ではなく、なぜ家族の帯同が許されないのでしょうか。「移民政策ではない」という政府の主張と「国際貢献」という建前を支えるためだけに技能実習制度を残したことで、悲劇が繰り返される恐れがあります。(経済部 佐々木馨斗)
■子どもの言語教育に力を 東京学芸大国際教育センター教授・吉谷武志さん
本の学校には、言語や宗教など多様な文化的背景を持つ子どもが多く在籍しています。国籍にかかわらず、日本語の理解が十分ではない子どもに適切な教育を提供するのは国として当然です。彼らは将来、日本社会を支える人材となり得ます。小学校から高校まできちんと通い、学べる体制が必要なのです。
日本語教育の中で難しいのは、「話せる」ことと「日本語を理解する」ことは大きく違うのに、その区別が分かりにくいことです。私たちは外国籍の子どもが日本語で会話できるようになると安心してしまいます。問題行動でも起こさない限り、その子への注意が薄れ、「見えない子」になってしまうのです。
言語には「生活言語」と「学習言語」があります。友達と遊びや買い物ができても、日本語を深く理解しているとは限りません。特に国語や社会の授業で使われる日本語は難しい。分析し、以前学んだことと関連付けて理解するには、語彙(ごい)や文法など高い言語能力が必要です。
高学年にもなると、子どもは授業の日本語の意味を理解していないのに、分かっているように振る舞ってしまうことがあります。家庭では子どもよりも日本語が不慣れな両親がおり、上手ではない日本語の中で育っていく。学校の授業以外で正確な日本語を学ぶ機会を持たないまま、成長してしまうのです。
このような子どもが中学や高校に進み、付いていけなくなる例が多く報告されています。文部科学省は「日本語指導が必要な子」について詳しく調査する必要があるでしょう。日本語で会話はできても学習に付いていけない子、家族の中に正しい日本語を話せる人がいない子。家庭環境も含めて調べるのです。
改正入管難民法が施行され、在留期間に上限のない特定技能2号の労働者が増えるのは時間の問題です。本州の工場から道内の工場に外国人労働者が配置転換されれば、その子どもたち複数人が一気に道内の学校に入学することも十分あり得ます。
どのように多様な背景を持つ児童生徒を迎え入れるのか、どういった教育支援を行うのか。まだ外国人労働者が少ない北海道でも、今から検討を始めて早すぎることはありません。北海道を勤務場所として選んでもらうためにも、外国籍の子どもの教育に力を入れることは必要なことであり、「人材争奪戦」といった意味合いも出てきます。
異文化について学ぶ機会を外国籍の子どもが与えてくれるという考え方もできます。日本の子どもにとっても視野を広げる良い経験になるでしょう。今、企業は英語を日常的に使える「グローバル人材」を求めています。日本語をきちんと学んだ外国籍の子どもが成長すればグローバル人材にもなり得るのです。(報道センター 袖山香織)

JOC竹田会長 五輪招致で汚職に関与容疑 仏メディア報道 - NHK(2019年1月11日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190111/k10011775211000.html
http://archive.today/2019.01.11-101502/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190111/k10011775211000.html

フランスの裁判所がJOC=日本オリンピック委員会竹田恒和会長について、来年の東京オリンピックパラリンピックの招致をめぐる汚職に関わった疑いで、起訴するかどうかを判断するための手続きを始めたことが分かりました。
これはフランスの検察当局が11日、NHKの取材に対して明らかにしたものです。
それによりますと、JOCの竹田恒和会長について来年の東京オリンピックパラリンピックの招致をめぐる汚職に関わった疑いで、フランスの裁判所が先月10日に、起訴するかどうかを判断するための手続き、「予審手続き」を始めたということです。
この日に予審判事がフランスで竹田会長本人を聴取したということで、今後も竹田会長の聴取を続ける見通しだとしています。
竹田会長をめぐっては、オリンピックの招致に絡んでフランスの検察当局が贈収賄などの疑いで少なくとも2016年から捜査していました。
具体的には、国際陸上競技連盟の前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に、およそ2億2000万円が振り込まれていたことをめぐる捜査でした。
これについてJOCは「招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかった」とする調査結果を発表していました。
今回の「予審手続き」についてフランスの有力紙、ルモンドはこのシンガポールの会社への支払いが汚職の疑いにあたると伝えています。
フランスの「予審手続き」とは
フランスの「予審手続き」とは、検察の請求に基づき裁判所が容疑者を裁判にかけるかどうか審査する手続きです。
フランスでは「重大」または「複雑な」事件が起きた場合、検察による捜査の結果を受けて裁判所の予審判事が容疑者から話を聞いたり、証拠を精査したりして、犯罪の十分な証拠があるかどうか審査します。
予審判事は審査の過程で必要に応じて容疑者の身柄を拘束できるほか、捜索や押収、証人の尋問を行えるなど強力な権限を持っています。
審査の結果、犯罪の十分な証拠があると判断された場合には裁判が開かれますが、証拠が十分でなかったり、犯罪の疑いなしと判断されれば手続きは打ち切られて免訴され、裁判は開かれません。
竹田会長「聴取は事実 否定した」
竹田会長は「東京2020年招致活動に関し、その調査協力として担当判事のヒヤリングをフランス・パリにて受けました。招致委員会はコンサルタント契約に基づき正当な対価を支払ったものであり、贈賄にあたるような不正なことは何も行っていないことを私は説明いたしました。ヒヤリングにおいて新しい事実が判明したというようなこともありませんでした。東京オリンピックパラリンピック競技大会に向けてご支援いただいている国民の皆様に大変ご心配をおかけしておりますが、私は疑念を払拭(ふっしょく)するために、今後とも調査に協力するつもりです」とするコメントを発表しました。
竹田会長 五輪・パラ誘致で中心的役割
竹田会長は71歳。
馬術の選手としてオリンピックには1972年のミュンヘン大会と次のモントリオール大会に出場しました。
その後、JOCで選手強化などに携わり、常務理事を経て2001年から会長に就任し、2012年からはIOC=国際オリンピック委員会の委員も務めてきました。
東京オリンピックパラリンピックの招致では当時の招致委員会トップの理事長を務めるなど中心的な役割を果たしました。
おととしにも任意で事情聴取
JOCの竹田会長をめぐっては、東京オリンピックパラリンピックの招致に絡んでフランスの検察当局が贈収賄などの疑いで捜査に乗り出し、おととしにはフランスの要請に基づいて、東京地検特捜部が、竹田会長をはじめ招致委員会の関係者から任意で事情を聴いたことも明らかになっています。
具体的には、日本の銀行口座から、国際陸上競技連盟の前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に、日本円でおよそ2億2000万円が振り込まれていたことをめぐる捜査でした。
これに関して竹田会長は「フランスの捜査に協力するということで、話をした。JOCの調査結果を話しただけだ」などと説明しました。
またJOCは「招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかった」とする調査結果を発表していました。
東京五輪・パラ組織委「コメント差し控える
竹田恒和会長が副会長を務めている東京オリンピックパラリンピック組織委員会は「報道で初めて知ったので詳しい状況は分からず、この件についてのコメントは差し控えたい」としています。
小池東京都知事「動向見守る」
東京都の小池知事は都庁内で記者団に対し、「先ほど、第1報を伺っただけで、情報を十分に持ち合わせていない。今後、情報収集をしていきたいが、大変驚いている。困惑しており、今後の動向を見守っていきたい」と述べました。
また、来年に迫った東京オリンピックパラリンピックへの影響を問われたのに対し、「いま、何が、どういう形で行われているのか、確認をしていきたい。まず、そのことから始めたい」と述べました。
五輪招致をめぐる疑惑と経緯
2020年東京オリンピックパラリンピックの招致をめぐっては、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会がロシアの一連の組織的なドーピングを調査していた中で、2016年1月、日本側が国際陸上競技連盟などに多額の協賛金を支払ったと疑惑が持ち上がりました。
その後、フランスの検察当局が捜査を開始し、5月には、日本の銀行口座から国際陸連のラミン・ディアク前会長の息子に関係すると見られるシンガポールの会社に、東京大会招致を名目に2回に分けて合わせておよそ2億2000万円が振り込まれたとして、贈収賄の疑いで捜査していると公表しました。
検察当局は、東京が開催都市に選ばれた2013年9月、ディアク前会長がIOC=国際オリンピック委員会の委員を務めていたため開催地の決定に影響力を行使できる立場にあった、と指摘していました。
一方、当時、招致委員会の理事長を務めていたJOCの竹田会長は振り込みを認めたうえで「招致計画づくり、ロビー活動など多岐にわたる招致活動のコンサルタント料で、正式な業務契約に基づく対価として行ったものだ。なんら疑惑をもたれるような支払いではない」などと主張していました。
そのうえでJOCは、シンガポールの会社との契約に違法性がなかったどうかを調べるため、弁護士2人と公認会計士1人からなる調査チームを5月25日に設置し、調査チームは契約に関わった当時の招致委員会のメンバーから聞き取りを行ったり、会社の実態をシンガポールで調べたりして、違法性の有無や実態解明につとめてきました。
そして調査チームは9月に調査結果を報告し、当時の招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかったと結論づけた一方で、手続きの透明性に問題があったと批判していました。

JOC会長の五輪招致不正疑惑 IOC内にも懸念広がる 昨秋から捜査本格化の情報 - 毎日新聞(2019年1月11日)

https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20190111/k00/00m/050/208000c
http://archive.today/2019.01.12-003303/https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20190111/k00/00m/050/208000c

2020年東京五輪パラリンピック招致を巡る不正疑惑で、日本オリンピック委員会JOC)の竹田恒和会長(71)は11日、フランス司法当局から聴取を受けたことを認めた上で「不正はなかった」と改めて疑惑を否定した。JOC関係者によると、国際オリンピック委員会IOC)も懸念しているといい、IOCは同日、「仏司法当局と緊密に連絡を取りながら状況を注視している」とコメントした。
当時、招致委員会の理事長を務めた竹田会長はJOCを通じて「ヒアリングで新しい事実が判明したというようなことはない。国民の皆様に大変心配をかけているが、疑念を払拭(ふっしょく)するために今後とも調査に協力する」などとコメントを発表した。
JOC関係者によると、昨秋ごろから、IOC内では仏司法当局が捜査を本格化しているとの情報が広がっていたという。竹田会長はフランスの代理人と契約し、昨年末にはJOC顧問弁護士とともにパリを訪れており、この時に聴取が行われたとみられる。
不正疑惑はロシアの組織的なドーピング疑惑が端緒だった。仏司法当局は15年にセネガル人で国際陸上競技連盟前会長のラミン・ディアク氏がドーピングを黙認する代わりに現金を受け取っていた疑いで捜査を始め、東京五輪の招致疑惑も浮上した。ディアク氏は招致活動時、IOCの有力委員だった。
JOCは弁護士ら第三者を交えた調査チームを設けた。16年9月の報告書で、招致委がディアク氏の息子パパマッサタ氏と親しいイアン・タン氏が経営するシンガポールの「ブラックタイディングス社」にコンサルタント料として約2億3000万円(当時のレート)を振り込んでいたことを公表したが、「違法性はなく、フランスの刑法上犯罪を構成するものでもない。IOC倫理規定への違反も見いだすことはできない」と結論づけた。
竹田会長は16年5月、国会から参考人招致され「情報収集などの正式な業務契約に基づく対価」と一貫して主張した。竹田会長は17年にも任意で仏司法当局の聴取に応じ、容疑を否定しており、疑惑は収束したとみられていた。しかし、IOCは11日、バッハ会長がディアク氏の母国であるセネガル政府に協力を求める文書を送付したことも明らかにしており、JOC関係者は「IOC内でも捜査の行方を深刻に受け止めていると聞く」と指摘した。
フランスでは民間同士の賄賂のやりとりでも贈収賄罪が成立する。招致委側が、五輪招致を共謀したと認められれば罪に問われる可能性もあり、当局は集票を目的とした民間人同士の贈収賄容疑で調べているとみられる。【田原和宏、浅妻博之】

東京五輪招致の不正疑惑を巡る経緯
<2016年>

1月14日 国際陸上競技連盟前会長のラミン・ディアク氏の汚職疑惑を調査する世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が公表した報告書で、2020年東京五輪招致を巡り「日本側が国際陸連に協賛金を支払った」と指摘。

5月11日 東京五輪招致委員会がディアク氏の息子パパマッサタ氏に関係する口座に多額の送金をしたと、英紙ガーディアンが報道。

 同12日 フランス検察当局が送金に関して汚職資金洗浄などの疑いで捜査を行っていることが判明。

 同13日 招致委理事長だった日本オリンピック委員会JOC)の竹田恒和会長が、イアン・タン氏が代表を務めるシンガポールコンサルタント会社「ブラックタイディングス社」と契約して、2億3000万円を送金したことを認める。

 同16日 竹田会長が、衆院予算委員会参考人として出席。「海外コンサルタントとの契約は一般的」と正当性を強調する。

 同18日 竹田会長が第三者を交えた調査チームをJOC内に設置する考えを表明。

9月1日 調査チームが報告書を公表してブ社との契約に違法性はないと結論付ける。

<2017年>

2月8日 東京地検特捜部がフランス検察当局からの捜査共助要請を受けて竹田会長から任意で事情聴取をしていたことが判明。

<2019年>

1月11日 フランス検察当局が竹田会長の刑事訴訟手続きを開始したことが判明。

竹田会長「訴追」が招く東京五輪の危機(郷原信郎さん) - Y!ニュース(2019年1月11日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20190111-00110913/

フランスの司法当局が、日本オリンピック委員会JOC竹田恒和会長を東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「東京五輪」)招致に絡む贈賄容疑で訴追に向けての予審手続を開始したと、仏紙ルモンドなどフランスメディアが報じている。
カルロス・ゴーン氏が特別背任等で追起訴された直後であり、この時期のフランス当局の動きがゴーン氏に対する捜査・起訴への報復との見方も出ている。
このJOCによる五輪招致裏金疑惑問題については、2016年にフランス当局の捜査が開始されたと海外メディアで報じられ、日本の国会でも取り上げられた時点から、何回かブログで取り上げ、JOCと政府の対応を批判してきた。

東京五輪招致疑惑の表面化

問題の発端は、2016年5月12日、フランス検察当局が、日本の銀行から2013年7月と10月に、2020年東京オリンピック招致の名目で、国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏の息子に関係するシンガポールの銀行口座に約2億2300万円の送金があったことを把握したとの声明を発表したことだ。
この問題が、AFP、CNNなどの海外主要メディアで「重大な疑惑」として報じられたことを受け、竹田会長は、5月13日、自ら理事長を務めていた東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会(2014年1月に解散、以下、「招致委員会」)としての支払の事実を認めた上で、「正式な業務契約に基づく対価として支払った」などと説明した。しかし、この説明内容は極めて不十分で、東京五輪招致をめぐる疑惑に対して、納得できる説明とは到底言えないものだった。
フランス検察当局の声明によれば、送金した先がIAAF前会長の息子に関係する会社の銀行口座であるという事実があり、それが2020年五輪開催地を決定する時期にあまりに近いタイミングであることから、開催地決定に関して権限・影響力を持つIOC委員を買収する目的で行われた不正な支払いだった疑いがあるとのことだった。問題は、招致委員会側に、そのような不正な支払いの意図があったのか否かであり、そのような意図があったのに、それが秘匿されていたのだとすれば、JOCが組織的に開催地決定をめぐる不正を行ったことになり、東京五輪招致をめぐって、極めて深刻かつ重大な事態となる。
私は、ブログ記事【東京五輪招致をめぐる不正支払疑惑、政府・JOCの対応への重大な疑問】で、この問題を詳しく取り上げ、JOCの竹田会長は、まさに、招致委員会の理事長として今回の約2億2300万円の支払を承認した当事者であり、支払先に際してどの程度の認識があったかに関わらず、少なくとも重大な責任がある。招致委員会が組織として正規の手続きで支払った2億2300万円もの多額の資金が、五輪招致をめぐる不正に使われた疑惑が生じており、しかも、支払いを行った招致委員会のトップが、現在のJOCのトップでまさに当事者そのものである竹田会長なので、「外部の第三者による調査が強く求められる」と指摘した。
その上で、同ブログ記事の末尾を、以下のように締めくくった。

五輪招致をめぐる疑惑について、徹底した調査を行ったうえ、問題があったことが明らかになっても、それでもなお、東京五輪を開催するというのが国民の意思であれば、招致を巡る問題を呑み込んだうえで国民全体が心を一つにして、開催に向けて取り組んでいくべきであろう。
今回の招致委員会をめぐる疑惑について、客観的かつ独立の調査機関を設けて徹底した調査を行い、速やかに招致活動をめぐる問題の真相を解明した上で、東京五輪の開催の是非についての最終的な判断を、国政選挙の争点にするなどして、国民の意思に基づいて行うべきではなかろうか。

外部調査チームによる調査報告書公表
しかし、その後の政府、JOCの対応は、それとは真逆のものだった。
国会での追及を受けたことなどから、その後、JOCは、第三者による外部調査チームを設置し、2016年9月1日に、「招致委員会側の対応に問題はなかった」とする調査報告書が公表された。しかし、それは、根拠もなく、不正を否定する「お墨付き」を与えるだけのものであった。それについて、日経BizGate【第三者委員会が果たすべき役割と世の中の「誤解」】で、以下のように指摘した。

フランスで捜査が進行中であり、今後起訴される可能性があるという段階で、国内で行える調査だけで結論を示したということになるが、その調査はあまりに不十分で、根拠となる客観的な資料もほとんど示されていない。
この報告書では、「招致委員会がコンサルタントに対して支払った金額には妥当性があるため、不正な支払いとは認められない」と述べているが、そもそも金額の妥当性に関する客観的な資料は何ら示されていない。世界陸上北京大会を実現させた実績を持つ有能なコンサルタントだというが、果たして本当に彼の働きによって同大会が実現したのかという点について全く裏が取れていない。
また、招致が成功した理由や原因、コンサルティング契約に当たって半分以上の金額を成功報酬に回した理由も、何1つ具体的に示されていない。そのような契約が「適正だった」と判断することなど、現時点ではできないはずだ。
結局のところ、疑惑に対して納得のいく説明を行えるだけの客観的な資料が全くない状態で、専門家だとか中立的な第三者などによる何らかのお墨付きを得ることで、説明を可能にしようとした、ということでしかない。

BOC会長のリオ五輪招致疑惑による逮捕
そして、2017年10月5日 リオデジャネイロオリンピックの招致をめぐって、ブラジルの捜査当局が、開催都市を決める投票権を持つ委員の票の買収に関与した疑いが強まったとして、ブラジル・オリンピック委員会(BOC)のカルロス・ヌズマン会長を逮捕したことが、マスコミで報じられた。
NHKニュースによると、ブラジルの捜査当局は、先月、リオデジャネイロへの招致が決まった2009年のIOC国際オリンピック委員会)の総会の直前に、IOCの当時の委員で開催都市を決める投票権を持つセネガル出身のラミン・ディアク氏の息子の会社と息子名義の2つの口座に、ブラジル人の有力な実業家の関連会社から合わせて200万ドルが振り込まれていたと発表していた。捜査当局は、ヌズマン会長が、「贈賄側のブラジル人実業家と収賄側のディアク氏との仲介役を担っていた」として、自宅を捜索するなど捜査を進めてきた結果、2009年のIOC総会の直後、ディアク氏の息子からヌズマン会長に対して、銀行口座に金を振り込むよう催促する電子メールが送られていたことなどから、票の買収に関与した疑いが強まったとして逮捕したとのことだった(日本では報じられていないが、その後、起訴されたとのことである)。
このニュースは、日本では、ほとんど注目されなかったが、私は、【リオ五輪招致をめぐるBOC会長逮捕の容疑は、東京五輪招致疑惑と“全く同じ構図”】と題するブログ記事を出し、リオ五輪招致疑惑と、東京五輪招致疑惑とが全く同じ構図であることを指摘し、以下のように述べた。

BOC会長が逮捕された容疑は、リオオリンピック招致をめぐって、「IOCの当時の委員で開催都市を決める投票権を持つセネガル出身のラミン・ディアク氏の息子の会社と息子名義の口座に、約200万ドルが振り込まれていた」というもので、東京オリンピック招致をめぐる疑惑と全く同じ構図で、金額までほぼ同じだ。
IOCの倫理委員会は、「疑惑が報じられた昨年からフランス検察当局の捜査に協力し、さらに内部調査を継続している」としているが、その調査は、当然、東京オリンピックをめぐる疑惑にも向けられているだろうし、IOCの声明の「新たな事実がわかれば暫定的な措置も検討する」の中の「暫定的な措置」には、東京オリンピックについての措置も含まれる可能性があるだろう。
JOCは、「その場しのぎ」的に、第三者委員会を設置し、その報告書による根拠もない「お墨付き」を得て問題を先送りした。それが、今後の展開如何では、開催まで3年を切った現時点で、“本当に東京オリンピックを開催してよいのか”という深刻な問題に直面することにつながる可能性がある。
今後のBOC会長逮捕をめぐるブラジル当局の動き、オリンピック招致疑惑をめぐるIOCと倫理委員会の動きには注目する必要がある。

以上のような経過からすると、今回、フランス当局の竹田会長の刑事訴追に向けての動きが本格化したのは当然のことと言える。東京五輪招致をめぐる疑惑について、フランス当局の捜査開始の声明が出されても、全く同じ構図のリオ五輪招致をめぐる事件でBOC会長が逮捕されても、凡そ調査とは言えない「第三者調査」の結果だけで、「臭いものに蓋」で済ましてきた日本政府とJOCの「無策」が、東京五輪まで1年半余と迫った今になって、JOC会長訴追の動きの本格化するという、抜き差しならない深刻な事態を招いたと言えよう。
今日、竹田会長は、訴追に関する報道を受けて、「去年12月に聴取を受けたのは事実だが、聴取に対して内容は否定した」とするコメントを発表したとのことだが、問題は、フランス司法当局の竹田会長の贈賄事件についての予審手続が、どのように展開するかだ。
フランスでの予審手続は、警察官、検察官による予備捜査の結果を踏まえて、予審判事自らが、被疑者の取調べ等の捜査を行い、訴追するかどうかを判断する手続であり、被疑者の身柄拘束を行うこともできる。昨年12月に行われた竹田会長の聴取も、予審判事によるものと竹田会長が認めているようなので、予審手続は最終段階に入り、起訴の可能性が高まったことで、フランス当局が、事実を公にしたとみるべきであろう。
ということは、今後、フランスの予審判事が竹田会長の身柄拘束が必要と判断し、日本に身柄の引き渡しを求めてくることもあり得る。この場合、フランス当局が捜査の対象としている事実が日本で犯罪に該当するのかどうかが問題になる。犯罪捜査を要請する国と、要請される国の双方で犯罪とされる行為についてのみ捜査協力をするという「双方可罰性の原則」があり、日本で犯罪に該当しない行為については犯罪人引渡しの対象とはならない。
今回、フランス当局が捜査の対象としている「IOCの委員の買収」は、公務員に対する贈賄ではなく、日本の刑法の贈賄罪には該当しないが、「外国の公務員等」に対する贈賄として外国公務員贈賄罪に該当する可能性はあるし、招致委員会の理事長が資金を不正の目的で支出したということであれば、一般社団法人法の特別背任等の犯罪が成立する可能性もあり、何らかの形で双罰性が充たされるものと考えられる。
いずれにせよ、フランスの裁判所で訴追されることになれば、旧皇族竹田宮の家系に生まれた明治天皇の血を受け継ぐ竹田氏が「犯罪者」とされ、JOC会長職を継続できなくなるだけでなく、開催前の東京五輪招致の正当性が問われるという危機的な事態になることは避けられない。