(南端日誌)ゴーン事件と地位協定 - 東京新聞(2019年1月10日)

日本の「人権」に不信感

地位協定の前進の日米行政協定(1952年発効)時代から米国は「日本の司法制度、特に人権擁護に対する関心の度合い」への不信感が強く、それが平等な方向へと改正されたドイツなどと、放置されている日本との差になっているという。
報告書は「(米国には)蛮行を厭(いと)わないおそれのある(日本の)司法官憲に大切な自国民の身柄を委ねることは、基地の効果的運用、兵員の士気の維持に重大な影響を及ぼしかねないとの懸念があると考える」と記す。
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少なくとも日本が前近代的な国家と見なされていることは間違いない。

辺野古工事で防衛省 県に無断で土砂割合変更 - 東京新聞(2019年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011102000141.html
https://megalodon.jp/2019-0111-0933-33/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011102000141.html

埋め立て用土砂が投入され、茶色く濁った海水=昨年12月14日、沖縄県名護市辺野古


沖縄県名護市辺野古(へのこ)での米軍新基地建設を巡り、防衛省が、埋め立て用の土砂について、県の承認を得ずに岩石以外の細かな砂などの割合を増やした仕様に変更し、業者に発注していたことが、県への取材で分かった。県は十一日、埋め立て承認の条件として国と交わした「留意事項」に反するとして、事実関係を公表し、防衛省に現場への立ち入り検査や土砂の提供を求める。 (望月衣塑子、中沢誠)

昨年十二月から始まった辺野古沿岸部での埋め立て工事では、投入された土砂で海が濁った。県側は「埋め立てに投入された土砂は明らかに赤土を含むものと考えられ、環境に極めて重大な悪影響を及ぼす恐れが否定できない」と指摘している。
沖縄防衛局が二〇一三年三月、県に提出した埋め立て承認を求める文書には、埋め立て用土砂に、岩石以外の砕石や砂などの細粒分を含む割合を「概(おおむ)ね10%前後」と明記。県の担当者も「防衛局からは、承認審査の過程で海上投入による濁りを少なくするため、細粒分の含有率を2〜13%とすると説明を受けていた」と明かす。
ところが、沖縄防衛局は一七年十一月、埋め立て用の土砂を調達する際、細粒分の割合を「40%以下」として業者に発注していた。防衛省整備計画局は本紙の取材に「なぜ変更したかは分からない」としている。
一三年十二月の埋め立て承認に当たり、変更がある場合は事前に県と協議することになっているが、県は「防衛省側から説明はなかった」と述べる。
細粒分の割合が増すほど、土砂を投入したとき濁りは起きやすくなる。県は、当初の規格とは異なる土砂が投入されている可能性があるとして、土砂の品質を確認するため現場の立ち入り調査を求めているが、防衛省は「調査を求める法的根拠を示せ」として応じていない。
土砂の搬出作業を確認した土木技術者の奥間政則氏は「見るからに赤土が多く混じっており、国の説明する材質とは異なる。赤土は海に投入すればヘドロ状になり、サンゴを死滅させる恐れがある」と指摘する。
新基地建設を巡っては、防衛省が昨年十二月十四日、辺野古沿岸部で土砂の投入を始めた。計画では、沿岸部を埋め立てて米軍キャンプ・シュワブを拡張し、V字形滑走路を建設する。

<代替わり考 皇位継承のかたち>(4) 大嘗祭に国費 違憲可能性 - 東京新聞(2019年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011102000138.html
https://megalodon.jp/2019-0111-0934-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011102000138.html

天皇家の内部から、こういう発言が出てくるとは感慨深い」。元裁判官の井戸謙一弁護士(64)は、大嘗祭(だいじょうさい)をめぐる秋篠宮さまの発言に時代の変化を感じている。かつて井戸は大阪高裁で、平成の代替わり儀式への国費支出の是非が問われた訴訟の審理を担当した。

大嘗祭は戦前の旧皇室典範や登極令(とうきょくれい)に明文化されていたが、戦後すべての法令から消えた。元内閣官房副長官の石原信雄(92)によると、前回は憲法学者宗教学者らからヒアリングを行い、大論争となった。最終的に政府の責任で、憲法皇位世襲制を定めていることから「公的性格が強い皇室行事」と位置づけ、国費でサポートした。
一九九五年三月、大阪高裁は一審と同様、原告の慰謝料請求などを退けた。ただし、判決の結論に影響しない「傍論」で、大嘗祭と即位礼正殿の儀への国費支出を「ともに憲法政教分離規定に違反する疑いは否定できない」と指摘した。
判決原案を書いたのは、主任裁判官の井戸だった。あえて傍論で憲法判断に踏み込んだ理由を「結論に関係がなくとも、できる範囲で答えるべきだと考えた」と明かす。裁判長ら三人の合議でも異論は出なかったという。
国を相手に儀式への国費支出の合憲性を争う集団訴訟は他になく、全国の千人以上が原告として参加した。原告側は「実質勝訴」として上告せず、判決を確定させた。このため国費支出の合憲性について最高裁の判断は出されていない。
阪高裁判決から二十四年を経て、政府は新天皇大嘗祭を再び国費で行う。一部の有識者から内々に意見聴取しただけで、国民的な議論はなく、前例をほぼ踏襲した。関係経費は二十七億円を超え、前回より五億円近く膨らむ。
「宗教色が強いものを国費で賄うことは適当かどうか」。秋篠宮さまは昨年十一月、五十三歳の誕生日会見で政府方針に疑問を示した。天皇家の私的費用の範囲内で「身の丈に合った儀式」とするのが、本来の姿であるとの持論を語った。
発言の趣旨は、天皇、皇后両陛下の姿と重なる。宗教学者島薗進(70)は「今の天皇は、皇室を現代化する中で、国民の負担軽減と国民との距離を縮めるということを言ってきた。秋篠宮発言の意味は長期的に考えていくべき課題だ」と指摘する。
天皇憲法に定める象徴の地位を安定的に維持するには、国民の理解と支持が不可欠だ。井戸は「皇室行事に国費を使うのは理屈上、筋が通らない。皇室への国民の理解や支持を失わせ、自分たちの地位や立場を危うくするという危機感が発言の背景にあるのではないか」と推し量る。
昨年十二月、国費支出に反対する宗教者と市民約二百四十人が東京地裁に提訴した。原告には大阪訴訟の経験者もおり、最高裁まで争うことも視野に入れる。 =敬称略

<代替わり儀式と住民訴訟> 前回は、県知事らの儀式参列が憲法政教分離原則に反するとして出張費の返還を求める住民訴訟が各地で起きた。最高裁は2002年、大嘗祭の宗教性を認めた上で「目的効果基準」に照らし、目的は「社会的儀礼」であり、効果も特定の宗教を援助したり、圧迫したりするものではないとして、知事らの参列については合憲と判断。04年には即位礼正殿の儀への参列も同様に合憲とした。

勤労統計不正 速やかな解明が必要だ - 朝日新聞(2019年1月11日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13844044.html
http://archive.today/2019.01.11-003454/https://www.asahi.com/articles/DA3S13844044.html

賃金や労働時間の動向の指標となる毎月勤労統計の調査が、長年にわたって決められた方法通りに行われず、データに誤りがあることがわかった。統計法に基づく政府の基幹統計での信じがたい不正で、行政に対する信頼を揺るがす行為だ。
なぜこんなことが起きたのか。過去のデータにどれだけの誤りがあり、その影響はどこまで及ぶのか。徹底的に調べて速やかに公表するべきだ。
毎月勤労統計は従業員5人以上の事業所が対象で、500人未満は抽出、500人以上はすべての事業所を調べることになっている。全数調査の対象は全国に5千以上あるが、その約3割を占める東京都で、厚生労働省が抽出した約500事業所しか調査していなかった。
このルール違反は04年から続いていたという。何らかの事情があったのかもしれないが、ならば調査方法を変更し、対外的に明らかにするのが筋である。自分たちの都合で、勝手にルールを破ることなど許されないのは言うまでもない。
都内の規模の大きな事業所は比較的賃金が高い傾向にある。こうした事業所が一部しか集計に加えられなかったために、賃金のデータは正しく調査した場合より低くなっていたとみられている。
このデータは、雇用保険労災保険の給付金の上限などを決めるのにも使われる。調査方法を勝手に変えたことで、本来の給付額より少なくなった人が多数いるという。全容の解明と被害の救済を急がねばならない。
看過できないのは、厚労省が昨年1月から、東京都の大規模事業所のデータについて、全数調査の結果に近づけるような統計処理を行っていたことだ。
その時点で、調査方法がルールと異なっており、データに問題があるということに、当然気付いていたはずだ。なのに事実を速やかに公表しなかったことは、組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)と言われても仕方ない。
昨年12月20日には厚労相にも報告があがったが、翌21日にはそのことを伏せたまま、従来通りに問題のある統計を公表している。あまりに不誠実で、事態の深刻さを理解していない。
昨年の通常国会厚労省の労働実態調査のずさんさが明らかになり、裁量労働制に関わる法改正が撤回になったことは記憶に新しい。
政府の様々な統計は、政策立案の根拠になるものだ。その大事な統計を扱う自覚と緊張感があまりに欠けている。猛省を求めたい。

<金口木舌>蔑視と同意 - 琉球新報(2019年1月11日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-859712.html
https://megalodon.jp/2019-0111-0938-58/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-859712.html

男性誌「週刊SPA!」が「ヤレる女子大学生RANKING」という順位表を掲載した。記事撤回や謝罪を求める署名活動に多くの賛同が集まり、扶桑社の同誌編集部は謝罪した

▼性の対象として大学名を並べるのは、女子学生を蔑視する感覚の表れだ。女性差別の根強さが反映されている。性行為に至る過程に人権感覚が欠落すれば、性暴力につながる恐れがある
▼2003年にイベント企画サークルに所属する大学生が集団で女性暴行を繰り返していたことが明らかになり、14人が実刑判決を受けた。女子学生を泥酔させ、集団で襲う性暴力事件は近年も起きている
▼米国で公開されている動画「Tea Consent(紅茶の同意)」は性的同意について紅茶を例に挙げて説明する。自分が紅茶を入れたのに相手が寝てしまった場合でも「寝ている相手ののどに無理に流し込んだりしませんよね」と諭す
▼動画はお茶の誘いで相手の同意を確認するのに、より明確な確認が必要な性行為で同意を得ないことのおかしさを際立たせる。同意の重要性が定着しない背景に、男女の不平等な関係性がないだろうか
▼まずは女性への蔑視や差別をなくすことだ。冒頭の男性誌編集長は「『より親密になれる』『親密になりやすい』と表記すべきだった」などと釈明している。問題は表現ではないだろう。道のりは険しい。

加計問題で安倍首相を守った元秘書官、東芝関連会社に天下り - NEWSポストセブン(2019年1月11日)

https://www.news-postseven.com/archives/20190111_844822.html

1月末の通常国会開会を前に、霞が関は慌ただしく動き出している。しかし、そこに“昨年の主役”はいない。経産省出身で第2次安倍政権の総理秘書官を長く務めた柳瀬唯夫氏だ。
加計学園問題では愛媛県職員と首相官邸で面会。「本件は首相案件」と発言した記録が出て国会へ参考人招致されるも、「記憶の限りでは会ってない」と言い逃れして話題となった。
昨年、経産省ナンバー2の経産審議官を退任して霞が関を去った柳瀬氏が12月1日、ある会社の非常勤取締役に“再就職”したという。その会社は、東芝クライアントソリューションという東芝の関連会社である。
国内外のパソコン開発を手がける同社は、もとは東芝の100%子会社だったが、昨年10月にシャープに買収され、東芝の出資比率は20%に下がった。そして柳瀬氏が着任して2日後の12月3日、社名を年始から「ダイナブック」に変更することが発表された。

この一連の流れが、経産省内で物議を呼んでいる。

加計学園問題で有名になった柳瀬氏ですが、経産省内では“原発推進派のエース”と知られていた。だからこそ、原発を手がける東芝の関連会社に再就職することになったのでしょうが、あまりにも分かりやすい構図です。
彼は2004年にエネ庁(資源エネルギー庁経産省の外局)の原子力政策課長になり、政府、財界を巻き込んだ『原子力ルネッサンス』構想を打ち出しました。原発輸出による“原子力外交”を進めたことで、政権から重用されるようになった。その後、震災が起きて原子力政策が見直しされてからも、安倍政権で原発輸出モデルが変わらなかったのは、柳瀬氏あってこそです」(経産省関係者)

柳瀬氏と東芝とは切っても切れない関係にある。

「柳瀬氏は東芝アメリカの原発メーカー、ウェスチングハウス買収を後押しし、同社を原発中心に転換させた張本人です。ウェスチングハウスの破綻が東芝の経営危機を招いたことを考えれば、その責任は柳瀬氏にもあるはず。それが東芝の関連会社に再就職するなんて……省内では驚きが広がっています」(同前)
柳瀬氏が入った直後に社名から「東芝」の文字が消えたことも、奇妙なタイミングだ。一方で東芝製パソコンの代名詞である「ダイナブック」を社名に掲げたことは“露骨”にも映る。元文部官僚の寺脇研京都造形芸術大学教授は、別の問題点を指摘する。
「柳瀬氏ほどの大物官僚ならば、会社から誘いが来たのでしょうから、天下り規制にはかからない。ただし、東芝経産省が事実上救済した企業で、売却先のシャープにしても、経産省が救済に尽力した経緯がある。企業側からすれば、恩義のある官僚を受け入れたことは単なる再就職でなく、御礼も含めた“天下り”だと見るべきでしょう」
ダイナブックは「(経緯については)お答えできない」(広報担当)とのことだった。
加計問題での木で鼻を括った国会答弁で安倍首相を“守った”とされ、いまだ信任厚いという柳瀬氏。まさか、この再就職も“首相案件”というわけではあるまいが。

週刊ポスト2019年1月18・25日号