勤労統計不正 予算組み替え検討 あすにも調査結果公表 - 東京新聞(2019年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019011002000277.html
https://megalodon.jp/2019-0110-1613-48/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019011002000277.html

賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、政府が二〇一九年度予算案の組み替えを検討していることが十日、分かった。統計結果を算定基準とする雇用保険の失業給付などに少なくとも数十億円の過少給付が出ており、その支払いに必要となる国庫負担分の財源を確保する。
政府は関係省庁に対し、一九年度予算案に影響するものがないか調査するよう指示した。影響額は数十億円からさらに膨らむ見通しで、政府は総額の精査を進めた上で予算案組み替えを最終判断する。厚労省は十一日にも、これまでに判明した事実関係を公表する。
また、十数年間にわたり、抽出データを全数調査に近づけるための統計上の処理すらしていなかったことも判明。過去の結果が大きく変動し、統計自体の信頼性が損なわれる恐れが出てきた。
予算案は先月二十一日に閣議決定されたばかり。一度閣議で決定した予算案の見直しは極めて異例の対応となる。勤労統計は政府の経済指標などでも活用されており、今月下旬からの通常国会で野党は追及する姿勢だ。
政府関係者は「過少給付額が分かればすぐに支払い対応せざるを得ず、その裏付けとなる財源が必要だ」としている。

勤労統計の誤り 行政への信頼が揺らぐ - 北海道新聞(2019年1月10日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/265461?rct=c_editorial
http://archive.today/2019.01.10-001559/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/265461?rct=c_editorial

賃金や労働時間の動向を把握する「毎月勤労統計調査」について、厚生労働省が2004年から不適切な調査を行っていた。
実態を正確に反映した統計は、政策立案の土台である。
しかも勤労統計は、最低賃金や年金の審議会資料から、国内総生産(GDP)の算出に至るまで幅広く活用される基幹統計だ。
これにごまかしがあれば、さまざまな政策の妥当性が疑われ、行政自体への信頼が揺らぐ。
現実に、勤労統計を算定基準とした雇用保険労災保険の過少給付が明らかになった。
労働者にとって、大切なセーフティーネットであり、あってはならない事態だ。
政府は深刻に受け止め、問題の全容を究明し、再発防止に全力を挙げなければならない。
勤労統計調査は、厚労省都道府県を通じて毎月実施し、5人以上を雇用する事業所を対象に労働者1人当たりの基本給や残業代などを調べている。
従業員500人以上の事業所はすべて調査するのがルールだ。
ところが、厚労省は、東京都内で該当する約1400事業所のうち3分の1程度しか、都に調べさせていなかった。
あまりにずさんだ。なぜルール違反が行われたのか、動機を含め徹底的に解明する必要がある。
雇用保険の失業給付上限額も、労災認定された場合に支払われる休業補償給付も、勤労統計の平均給与額に左右される。
賃金水準が高い東京の大企業の数が実際より少ないと、金額が低く算定される可能性がある。
厚労省は調査を急ぎ、不足分を速やかに支払うべきだ。
問題発覚後の対応も不誠実と言わざるを得ない。
根本匠厚労相は昨年12月20日に問題の報告を受けたが、厚労省は翌日、誤りを伏せたまま、10月分の確報値を公表した。
11月分の速報値もきのう、是正せずに公表し、担当者は「規則により発表することが決まっている」と説明している。危機感が全くうかがえない。
近年、厚労省のずさんなデータの扱いが相次いで発覚した。
昨年、裁量労働制で働く人の労働時間に関する異常なデータが見つかり、政府が裁量労働制の拡大を断念したことは記憶に新しい。
もはや厚労省は自浄能力に見切りをつけられても仕方あるまい。第三者機関による徹底検証も検討するべきだろう。

憲法論議 「上からの改憲」の無理 - 朝日新聞(2019年1月10日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13842493.html
http://archive.today/2019.01.10-000703/https://www.asahi.com/articles/DA3S13842493.html

「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」
安倍首相がこう語ったのは2017年の憲法記念日のことだ。首相は先日のNHK番組で「気持ちは全く変わりがありません」と述べ、憲法改正への意欲を改めて示した。
一方で、首相は「スケジュールありきでない」とも付け加えた。ならば、その言葉通り、期限を切って議論を進めようという姿勢は、もうやめるべきだ。
17年10月の衆院選で自民、公明両党が3分の2超の議席を維持すると、自民は9条への自衛隊明記など改憲4項目の具体化を急いだ。ところが昨年3月に財務省の公文書改ざんなどが明らかになると内閣支持率は低下。党内では「改憲どころではない」との空気が強まった。
首相は9月の党総裁選で3選を果たすと、国会での議論にてこ入れをしようと、下村博文氏ら自身に近い議員を憲法に関係する党や国会の要職に起用した。しかし、下村氏が「憲法議論をしないのは国会議員の職場放棄」と言い放ったことに、野党が反発。結局、昨年は年間を通じて衆院憲法審では実質審議は行われなかった。
その直接の原因は与野党の対立にあったとしても、首相をはじめ自民の「改憲ありき」の前のめりな構えに、国民の支持や理解が広がらなかったことが大きいのではないか。
首相は自衛隊明記にこだわるが、理由として強調するのは「自衛隊員の誇り」という情緒論だ。9条が改正されても自衛隊の役割は何も変わらないというなら、何のための改正なのか。朝日新聞が昨年の憲法記念日に合わせて行った世論調査で、53%がこの案に反対と答えたのも無理はない。
仮に多くの国民が改正の必要性を感じていたら、野党も議論に応じないわけにはいかなかっただろう。
昨年の憲法をめぐる動きを振り返ると、憲法に縛られる側の権力者が自ら改憲の旗を振るという「上からの改憲」が、いかに無理筋であるかを証明したといえよう。
昨年は、憲法改正国民投票を実施する際のテレビCMについて、法で規制すべきかどうかに改めて焦点があたった。自主規制が期待された日本民間放送連盟が、規制は困難と表明したからだ。
野党はCMを出す資金力の差が投票の行方を左右しかねないとして規制を求めている。自由闊達(かったつ)な議論と運動の公平性をどう調和させるか。多角的な視点から検討が必要な課題だ。

性差別発言ワーストは麻生氏 政治家対象に学者ら主催のネット投票 - 東京新聞(2019年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011002000126.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0906-56/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019011002000126.html


政治家の性差別的な言動が相次いでいるのを受け、学者らの有志が特に問題があると考えた2018年中の12の発言についてインターネットで投票を呼び掛け、9日、結果を発表した。ワースト1位には、「(セクハラ発言されて)嫌ならその場から帰ればいい」など、4月に発覚した財務次官(当時)のセクハラ問題をめぐる麻生太郎財務相の一連の発言が選ばれた。
主催したのは、学者や弁護士ら八人でつくる「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」。昨年末から今月六日までに二千二十六人(女性千二百八十一人、男性六百六十三人、無回答など八十二人)が参加した。一人二票までで、投票総数は三千九百三十三票。
麻生氏の発言は、千二百八票を集めた。ほかに「本人(セクハラ被害を受けた女性記者)が申し出てこなければ、どうしようもない」「財務省担当はみんな男にすればいい」などとも述べていた。投票理由に、政界で高い地位にある人物が差別を擁護するような発言を繰り返した社会的な影響の大きさを挙げる人が多かったという。
二位は、杉田水脈(みお)衆院議員(自民)が月刊誌「新潮45」八月号に寄稿した「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」(千四十五票)、三位には加藤寛治衆院議員(自民)が五月の細田派会合で発言した「必ず三人以上の子どもを産み育てていただきたい」(三百六十六票)が選ばれた。
呼びかけ人の一人、中央学院大皆川満寿美准教授(ジェンダー論)は「平等な社会の実現には政治の力が必要。政治家にも政党にも、差別を終わらせる時期だという認識を持ってほしい」と話している。結果は、同会のホームページで公表している。

支給停止9年目「再開を」 埼玉朝鮮初中級学校 県補助金めぐる問題:埼玉 - 東京新聞(2019年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201901/CK2019011002000169.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0909-09/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201901/CK2019011002000169.html

在日コリアンの子どもたちが通う「埼玉朝鮮初中級学校」(さいたま市大宮区)に対する県の補助金支給再開を求め、県内の大学教員らでつくる有志の会が活動を続けている。支給停止が二〇一八年度で九年目を迎えた中、県の対応を「北朝鮮拉致問題と子どもの教育を受ける権利は関係なく、不当な差別だ」と批判。声明発表や県への働き掛けをしながら、勉強会の開催などを通じて問題の周知にも努めている。 (井上峻輔)

「生徒たちは自分たちが埼玉人だと自覚しているのに、行政に差別をされて県を愛せるのか」
昨年十二月にさいたま市内で有志の会が開いた勉強会で、埼玉朝鮮初中級学校の鄭勇銖(チョンヨンス)校長は訴えた。
同校は日本の小中学校に相当する教育を行い、朝鮮にルーツを持つ約二百人が学んでいる。県は一九八二年度から補助金を出してきたが、二〇〇九年度の九百万円を最後に一〇年度以降は支給していない。鄭校長は「今の中学三年に当たる生徒は一度も県からの補助金をもらわずに学んで卒業していく」と語る。
上田清司知事は昨年の県議会六月定例会の一般質問での答弁で、補助金不支給の理由として、財務状況が適正でない▽「拉致問題が解決されるまでは予算執行を留保すべきだ」という県議会の付帯決議がある▽在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)と朝鮮学校の関係性が教育基本法で禁じる「不当な支配」に当たる懸念−の三点を挙げた。
有志の会は、長年の不支給を問題視する県内の大学教員や市民団体関係者らが一七年十一月に結成。一八年四月に支給再開を求める声明を県に提出し、その後も県との交渉を続けている。
十二月の勉強会では、不支給理由の一つとされる「不当な支配」について、会の共同代表で埼玉大教育学部の中川律准教授(憲法学・教育法学)が解説した。
北朝鮮とつながりの深い民族団体「朝鮮総連」と朝鮮学校の関係について、中川准教授は「宗教系私立学校や民族学校が、設立経緯や理念と密接に関係する外部団体から影響を受けることは『不当な支配』に該当しない」と指摘。むしろ、行政がその関係を問題視して介入することが「不当な支配」に該当する疑いが強いとして、県の対応を「民族に基づく差別としか言えない」と批判した。
有志の会は補助金再開を「差別のない埼玉をつくる一歩」ととらえ、今後も県への働き掛けを続けていくという。

「働き方」法 周知不足? 残業規制中小4割「知らない」 - 東京新聞(2019年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201901/CK2019011002000136.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0912-46/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201901/CK2019011002000136.html

この4月から順次施行される「働き方改革関連法」に盛り込まれた「時間外労働の上限規制」(大企業への施行は今年4月、中小企業は1年遅れの2020年4月)の内容について中小の39%が知らないと回答していたことが、日本商工会議所(三村明夫会頭)が9日発表した調査で分かった。
このほか、正社員と非正規の待遇差解消を目指す「同一労働同一賃金」(中小への施行は二一年四月)は47%が知らなかった。危機感をもった日商は各企業の準備に向けて「窓口相談や専門家派遣など働き方改革推進支援センターや都道府県が実施している支援策を一層積極的できめ細かく実施していく」としている。
「時間外労働の上限規制」への対応にあたっての課題については、「業務量に対して人員が不足」「年末年始や年度末など特定の時期に業務が過度に集中する」といった「人手不足」や「業務の繁閑」に関する項目が多数挙がった。
このほか、この四月に企業規模にかかわらず導入される「年次有給休暇の取得義務化」は24・3%が知らないと回答した。
調査は日商東京商工会議所が、同法施行に先立ち、中小の準備状況を調べる一環として実施。昨年十月下旬から十二月上旬に全国の中小二千八百八十一社を対象に訪問調査をして、二千四十五社から回答を得た(回答率は71%)。

働き方改革関連法のポイント

  • 時間外労働の上限規制=年360時間、月45時間を上限とし、繁忙期は例外的に単月で100時間未満、2〜6カ月平均で80時間まで→今年4月から(中小企業は2020年4月から)
  • 同一労働同一賃金=正社員と非正規の給与、賞与、福利厚生などの不合理な待遇差を解消する→2020年4月から(中小企業は21年4月から)
  • 年次有給休暇の取得義務化=年10日以上の年次有給休暇取得を義務付けられる労働者に対し、年5日について使用者が時季を指定して取得させる義務を課す→企業規模にかかわらず今年4月から

安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞(2019年1月10日)

https://mainichi.jp/articles/20190110/k00/00m/010/220000c
http://archive.today/2019.01.10-122755/https://mainichi.jp/articles/20190110/k00/00m/010/220000c

米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡って、安倍晋三首相が6日のNHK番組で「土砂の投入にあたって、あそこのサンゴは移している」と述べたことが波紋を広げている。実際に防衛省沖縄防衛局が移植したのは土砂投入区域外の一部のサンゴ。首相による「印象操作」と受け取られかねない発言だけに、政府は打ち消しに懸命だ。
辺野古沿岸部で昨年12月14日に土砂投入が始まったことを踏まえ、番組の司会者は「沖縄県民の理解をどう得るか」と質問。首相はサンゴの移植に言及するとともに、「絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、砂をさらって別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしている」とも述べた。
沖縄県水産課などによると、埋め立て予定海域全体では約7万4000群体のサンゴの移植が必要。このうち県が許可して沖縄防衛局が移植したのは絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体だけで、いずれも今回の土砂投入区域にあったサンゴではないという。
沖縄防衛局は昨年12月、土砂投入が始まっていない埋め立て予定海域の約3万9600群体の移植許可を申請したが、県は許可していない。沖縄防衛局が移植対象にしているのは直径1メートル以上のサンゴと一部の希少サンゴなど。県は「移植対象や移植先の選定が不適切」と環境保全措置の不備を埋め立て承認の撤回理由に挙げている。玉城デニー知事はツイッターで「現実はそうなっていない」と首相の発言を批判した。
菅義偉官房長官は10日の記者会見で「土砂の投入に関して、埋め立て区域に生息していた移植対象のサンゴはすべて移植しており、環境保全措置にも最大限配慮しながら対応している。(首相は)そういう趣旨の発言をされたのだろう」と説明した。ただ、土砂投入区域には沖縄防衛局が移植対象にするサンゴはなく、その意味で「あそこのサンゴ」という首相の発言は正確性を欠く。
サンゴの生態に詳しい東京経済大の大久保奈弥准教授は「サンゴを移植しても長期生存率は低い。環境保全措置としては不十分だ」と政府の対応を疑問視している。【佐野格、木下訓明】

安倍晋三首相の6日の発言
土砂を投入していくにあたって、あそこのサンゴは移している。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、行っているということだ。

ファクトチェック フェイク監視 - 琉球新報

https://ryukyushimpo.jp/special/entry-799530.html

安倍首相発言、波紋広がる 土砂投入巡り「サンゴ移植している」 現工区は対象外、識者批判 (2019年1月10日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-859359.html
https://megalodon.jp/2019-0110-1630-15/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-859359.html

安倍晋三首相が6日、NHKのテレビ討論番組で「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」と発言したことが波紋を広げている。沖縄防衛局は移植対象のサンゴを1メートル以上の大きさや絶滅危惧種の希少種のみに絞っており、その他の小さなサンゴは移植されないまま埋め立てられているのが現状だ。識者は「防衛局が決めた移植対象の基準に科学的根拠はない」と指摘する。安倍首相は環境保全に努めていると強調したが、海草藻場は移植せずに埋め立てを進めており、識者は「サンゴ以外にも多くの生物が生き埋めにされている」とみている。

辺野古県民投票の経費は市町村負担? 正しくは沖縄県が全額交付(2019年1月9日)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-858773.html
https://megalodon.jp/2019-0110-1627-56/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-858773.html

× 市町村が経費負担
 県が全額交付

名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、市町村議会で投票事務の経費を盛り込んだ予算案が否決される事態が相次いでいることに関し、インターネットのSNSでは、市町村が経費を支出するという誤解に基づく書き込みが拡散している。県民投票にかかる経費は全て県が支出する。
SNSでは「県がやろうって言ってるのに、なぜ各市町村に予算を負担させるの?」「県が全ての経費を負担すべきだ。全額、県が負担するのが筋だ」などと書き込まれている。

<金口木舌>ファクトチェック広がる予感 - 琉球新報(2019年1月10日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-859124.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0920-26/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-859124.html

年初から予言めくが、今年は日本のジャーナリズムにとって大きな転換点になるかもしれない。報道の在り方に新たな潮流が出てくるのではないか

▼沖縄を除く全国で4月に統一地方選挙が実施される。夏には参院選がある。衆参同日選も取り沙汰される。そんな中、ネット上を飛び交うさまざまな情報の真偽を検証する新聞報道が相次ぐのでは、という予感がある。いわゆる「ファクトチェック」だ
▼本紙は昨年9月の沖縄県知事選の期間中、初めてファクトチェックを実施した。選挙後、地方紙を中心に多くの記者から、取り組みの経緯や手法、課題などについて問い合わせがあった
▼実は戸惑いを感じた。そんなに注目されることなのか。こちらとしてはただ、誤った情報を有権者に届けたくない、読まれる記事を書きたい、との思いで取り組んだ
▼記者たちは「従来の選挙報道の枠では考えられない」「どうしてネットメディアではない新聞社にファクトチェックができたのか」と畳み掛けるように聞いてきた。既存の枠を打破したい、貪欲な記者魂を強く感じた
▼本紙の取り組みは知事選で終わらない。県民投票を巡る間違った情報の検証に加え、新年から連載「沖縄フェイクを追う」も始めた。選挙イヤーの今年、他県でもファクトチェックを取り入れる新聞が出てくるはずだ。新たな可能性にわくわくする。

(政界地獄耳)政府が誘導する「沖縄県民投票妨害」 - 日刊スポーツ(2019年1月10日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901100000093.html
http://archive.today/2019.01.10-013407/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901100000093.html

沖縄県議会で昨年10月に成立した住民投票条例に基づき2月24日、辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票が行われる。ところが宮古島市宜野湾市沖縄市が投票事務を拒否する考えを示した。またうるま市議会は8日の臨時会で投票事務費用を否決したが市長の判断待ち。糸満市議会は同日の臨時会で事務予算を可決した。これでは県民なのに投票できない人とできる人が生まれてしまう。または市長の考えと市民が同じだということになる。そもそも市長が県民の投票権を奪う権利などないのではないか。これでは憲法14条1項が定める「法の下の平等」に反することになる。

★3市長が辺野古埋め立てに賛成しようが、県民の意思を問うている時に自らの意思と違うから協力しないなど法律は想定していない。そもそも県民投票実施に向けて県内の市民で作る「『辺野古』県民投票の会」が条例制定を直接請求するため昨年5月から2カ月間、県内各地で署名を集め有効署名数は既定の4倍の9万2848筆に上った。つまり、県民の意思は既に示されているし、1日、同会が県民対象の電話世論調査したところ投票と回答した人が73・6%に、市長が不参加を表明している宜野湾市でも賛成は約73%だった。このように市長が反対しようとも市内に住む県民の反対票が上回る可能性があることを避けるため、総務省自民党や官邸が知恵を出したのではないかとおもわれている。

保守系3市長らの拒否権の行使は法的根拠の希薄ないかがわしい判断と言わざるを得ない。つまり市長がその善しあしに関わるべきことではないのだ。市長や市議会の判断で投票権が行使できなくなる状況に、市民が「投票権を奪うな」と声を上げるのは当然のこと。だが、この健全な地方自治を政府は後押ししてくれることはない。本来は県民投票の結果を見てから判断すべきことを政府は県民投票実施の妨害という形で誘導する。多分、県民投票での民意が明確に表れることを嫌っているのだろう。大きな政策のわりに小さくせこい対応にあきれる。(K)※敬称略

(不参加表明3市に) 自治体は主体的判断を - 沖縄タイムス(2019年1月9日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/369384
https://megalodon.jp/2019-0109-1037-04/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/369384

県民投票に対し態度を保留していた市で対応が分かれている。
名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、糸満市議会は8日、再議に付されていた予算案を審議した。採決の結果、可否同数となったため、議長裁決で可決した。
上原昭市長は「議会の判断を尊重して実施する」と県民投票に参加する意向を表明した。
賛成した大田守議長は「条例も法律。法にのっとって判断した」と述べた。議長判断を歓迎したい。
うるま市議会は同日、島袋俊夫市長が再議に付した予算案を再び否決した。市議会は夜になって県民投票条例に反対する意見書を賛成多数で可決。島袋市長はその後、記者会見したが、態度を明らかにしなかった。
沖縄市の桑江朝千夫市長は7日の記者会見で「市議会が2度にわたって否決したことは大変重い」と県民投票には参加しないことを表明した。
桑江市長は市民の投票権が奪われることについて「市長の判断に委ねられているものを執行しているだけだ」と市長の裁量内との判断を示したが、市民は投票権を奪われることまで容認していない。
首長が不参加を表明しているのは宮古島市宜野湾市沖縄市の3人。3市合わせた有権者数は約2割に上り、影響は大きい。
再議が否決された石垣市の中山義隆市長も不参加の意向を示している。

    ■    ■

桑江市長は「丸でもバツでもない人たちの思いを無視している」とも強調する。
桑江市長が想定する人たちには、棄権する選択肢があるし、白票を投じる意思表示の方法もある。県民投票を否定する理由にはならない。
不参加の3首長も予算案を否決した与党議員らも自民党などが推す政治家である。
自民党県連は2017年の県連大会で、「普天間飛行場の危険性を除去するため、基地の機能移転並びに訓練の分散移転を図りつつ、辺野古移設を容認し、早期返還の実現を図る」とはっきり辺野古容認へ方針転換した。
県民投票に参加してなぜ堂々と賛成票を投じないのか。それが不思議でならない。沖縄の将来に責任を持つのであれば、県民投票で態度を鮮明にすべきだ。
政府・自民党サイドから県民投票に参加しないよう何らかの圧力がかかっているのでは、と疑わざるを得ない。

    ■    ■

県民投票に反対の首長らは「普天間の危険性除去が原点」としてそれに言及していないことが不満のようだ。
危険性除去には誰も反対していない。辺野古新基地によって危険性を除去するのか、その他の方策を探るのかが県民投票なのである。
玉城デニー知事は9日、2度不参加を表明している宮古島市の下地敏彦市長と面談し再考を促す考えだ。知事が乗り出すのは初めてである。
玉城知事は県民投票の意義を真(しん)摯(し)に訴え、説得に努めてもらいたい。と同時に、あらゆる事態を想定した対応を急ぐべきだ。

県民投票不実施に「不服」 市民、沖縄市へ審査請求 - 琉球新報(2019年1月9日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-858856.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0914-40/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-858856.html

【沖縄】新基地建設に向けた名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、沖縄市の桑江朝千夫市長が投票事務を実施しないと表明したことについて、市民に県民投票をさせないことは憲法が定める平等権を侵害し、不当だとして、市内の男性(62)が8日、行政不服審査法に基づく審査を沖縄市に申し立てた。男性は投票事務を実施するよう求めている。
行政不服審査は、行政機関の決定に不服がある場合の救済制度。ただ、裁決までには半年から1年がかかり、男性は「投票までに結論が出ることは難しく、これで投票ができるようになるとは思っていない。ただ、市民として不満があることをこういう形ででも表明したかった」と話した。
請求書で男性は、県民投票の実施は地方自治法の要件を満たして直接請求されており、投票をさせないことは平等権の侵害に当たると主張した。行政機関の義務とされているにもかかわらず、これを行わないことは投票権を奪う行政の不作為だと訴え、これを改め、投票の実施を求めている。
市長リコールと訴訟視野に行動/連絡会沖縄市支部
沖縄】桑江朝千夫沖縄市長が県民投票の不参加を表明したことを受け、新基地反対県民投票連絡会沖縄市支部は8日、沖縄市の中頭教育会館で、対応を協議する集会を開いた。市民の投票権が奪われた場合、桑江市長の解職を求める署名活動や、市長相手に損害賠償請求の集団訴訟を起こすなど、県民投票の実施に向けた行動をすることを提起した。
集会には115人が参加した。市民からは「県民投票に反対した市議も訴訟の対象にできないか」と提案する声もあった。
15日には沖縄市の農民研修センターで県民投票の実施を要求する集会を開く。

工事停止署名20万超 ローラさんらの思い 力に - 琉球新報(2019年1月10日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-859148.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0917-59/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-859148.html

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、県民投票が行われるまで埋め立て工事を止めるよう求めるホワイトハウスへの請願署名が20万筆を超えた。
新基地建設に反対する沖縄の人々に対し、海を越えて共感の輪が広がっていることは心強い限りだ。
トランプ大統領宛ての請願署名は昨年12月8日にホワイトハウスの請願サイト「ウィー・ザ・ピープル」で始まった。米ハワイの沖縄県系4世ロバート梶原さんが発起人だ。30日以内に10万筆を超えたので、ホワイトハウスから何らかの回答が届くことになる。
署名の数が短期間でここまで伸びたのは、人気モデルのローラさんや県出身のタレントりゅうちぇるさん、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんら著名人が趣旨に賛同しSNSで声を上げたことが大きい。
7日には、英ロックバンド「クイーン」のギタリストで天文学者ブライアン・メイさんがツイッターなどで署名を呼び掛けた。
ローラさんは写真共有アプリのインスタグラムで「美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから、ホワイトハウスにこの声を届けよう」「たくさんの人のサインが必要なんだ」と訴えた。
正々堂々と、おかしなことをおかしいと言える勇気と見識に対し、多くの人が感銘を受けたのではないか。
ところが、ローラさんの呼び掛けの後、ネット上では「国際情勢を勉強しろ」「危険性がそのままでいいのか」などと中傷するコメントが少なからず投稿された。
抑止力の観点からは、海兵隊を沖縄に置かなければならない理由はない。海兵隊は戦後、本土に駐留していた。岐阜、山梨両県から第3海兵師団が沖縄に移駐したのは1950年代のことである。本土で基地反対運動が激化したためだ。米軍が支配する島だったから沖縄に来た。
海兵隊の沖縄駐留は「NIMBY=Not In My Back Yard(自分の裏庭には来るな)」という、本土サイドの政治的な事情に起因している。普天間固定化か新基地かという二者択一の話でもない。
「勉強しろ」と暴言を浴びせる前に、事大主義とは一線を画したローラさんの姿勢から学ぶべき点は多いはずだ。
ネット上では、政治的な発言でも政府に迎合するものなら問題にならず、国と対立する内容だとバッシングが起きるきらいがある。
戦前、戦中、国に逆らう言動をした者が「非国民」と糾弾されたことをほうふつとさせる。極めて危険な傾向だ。
日本政府は県民の声には耳を傾けようとしないが、米国政府の言うことには従う。多くの人の署名は決して無駄ではない。

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(「沖縄」を考える 土砂投入)「袋だたき」気にせず発言続ける 坂本龍一さん - 朝日新聞(2019年1月9日)

ジョージ・クルーニーは人権問題の抗議活動でスーダン大使館の敷地に平然と入り逮捕されました。アーティストは発言や行動に影響力があり『炭坑のカナリア』のような存在です。」

首相サンゴ移植発言 フェイク発信許されない - 琉球新報(2019年1月9日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-858590.html
https://megalodon.jp/2019-0110-0919-13/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-858590.html

安倍晋三首相がNHK番組「日曜討論」で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の埋め立てについて「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」と、事実と異なる発言をした。一国の首相が自らフェイク(うそ)の発信者となることは許されない。
NHK解説副委員長の質問に対して首相は、土砂を投入している区域のサンゴは移植しており、砂浜に生息する絶滅危惧種を砂ごと移す努力もしていると述べた。これらは事実ではない。
現在土砂が投入されている区域ではサンゴの移植は行われていない。埋め立て海域全体で約7万4千群体の移植が必要で、終わっているのは別の区域の9群体のみだ。他のサンゴ移植は沖縄県が許可していない。砂ごと生物を移す事業も実施していない。
首相の発言は準備されていたはずである。簡単に確認でき、すぐに間違いと指摘されることを、なぜ堂々と言うのだろうか。県民の意向を無視し違法を重ねて強行している工事の実態から国民の目をそらすため、意図的に印象操作を図っているのではないか。
首相は「全く新しく辺野古に基地を造ることを進めている」との誤解が国民にあると述べ「誤解を解かなければいけない」として、危険な普天間飛行場を返還するために辺野古に基地を造るのだと強調した。
この点についても多くの疑問や批判が沖縄側から出されてきた。移設先が県内でなければならない理由はないこと、普天間にない軍港や弾薬庫などの機能が備えられること、新基地の完成時期が見通せないこと、完成しても普天間が返還される保証がないことなどだ。
これらに対する説明を避けたまま、政府は普天間固定化か新基地かという身勝手な二者択一論を押し付けてきた。それが今回も繰り返された。
政府首脳による事実と異なる発言はこれまでも続いてきた。菅義偉官房長官普天間飛行場返還合意のきっかけを、少女乱暴事件ではなく事故だったと強弁し続けた。
普天間飛行場の5年以内の運用停止について首相は「最大限努力する」と約束していたが、実現の見通しのない空手形だった。これも意図的なうそだったのではないか。
首相が頻繁に口にし、今回も最後に述べた「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添っていく」「理解を得るようさらに努力する」という言葉も、フェイクにしか聞こえない。
今回、もう一つ問題があった。事前収録インタビューであるにもかかわらず、間違いとの指摘も批判もないまま公共の電波でそのまま流されたことだ。いったん放映されると訂正や取り消しをしても影響は残る。放送前に事実を確認し適切に対応すべきだったのではないか。放置すれば、放送局が政府の印象操作に加担する形になるからだ。