沖縄の今、高校生が実感 全国60人 辺野古、普天間へ - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122802000253.html
http://web.archive.org/web/20181228091338/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122802000253.html

島袋文子さん(手前左)の話に耳を傾ける高校生ら=沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前で

米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)での埋め立て作業が続いている。沖縄で今、何が起きているかを学ぶため、東京都や埼玉、長野、沖縄県など各地の高校生ら約六十人が辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前をはじめ県内を回った。沖縄戦の体験者から話を聞き、普天間飛行場を見て、基地負担の重みを体感した。 (村上一樹)
沖縄を訪れたのは「高校生平和集会in沖縄」(主催・同実行委員会)の参加者で、二十二〜二十四日に基地周辺や戦跡を巡り、交流を深めた。
二十三日はゲート前で、辺野古在住の島袋文子(しまぶくろふみこ)さん(89)の話に耳を傾けた。島袋さんは十五歳の時に沖縄戦を体験し、基地建設に抗議する座り込みを続ける。
「死体の浮いた池の、血が混ざった泥水を飲んで生き延びた。日本軍の盾にさせられ命を落とした中学生もたくさんいた。二度と悲惨な戦争をしてはいけないという思いで、毎日座り込んでいる」。島袋さんの言葉に、涙を流す高校生もいた。
前名護市長の稲嶺進さんはゲート前で高校生らに訴えた。「新基地が完成すれば、今後も基地の被害に苦しめられる。次世代の子どもたちに、負担を押しつけるわけにはいかない」
その後、二〇〇四年に米軍ヘリが墜落した宜野湾市沖縄国際大学に足を運んだ。大学屋上からは、普天間飛行場や輸送機オスプレイが間近に見えた。
東京都多摩市の高校三年、大庭暁人(あきと)さん(18)は、基地負担について「沖縄だけの問題ではない。日本の問題として、国民全体で議論していかなくてはいけないと思った」と受け止めた。
埋め立てられる予定の辺野古・大浦湾の近くで生まれ育った高校二年、渡具知和奏(とぐちわかな)さん(16)=名護市=は、今回の交流について「本土の人にも、自分の目で見て心で感じて、沖縄がこれからどうあるべきかを考えてもらいたい」と語る。渡具知さんは毎週末に家族でろうそくを持ってキャンプ・シュワブ前に立ち、新基地反対を訴えている。
高校生平和集会は広島、長崎市などで定期的に開かれている。沖縄での開催は一五年以来、六回目。


大学の屋上から普天間飛行場や輸送機オスプレイを見る全国の高校生ら=沖縄県宜野湾市の沖縄国際大で(いずれも村上一樹撮影)

沖縄県民投票 全有権者参加の道探れ - 東京新聞(2018年12月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122902000137.html
https://megalodon.jp/2018-1229-0954-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122902000137.html

辺野古新基地の是非を問う沖縄県民投票を巡り、一部の市が意義を疑問視し実施を拒否・保留する事態となっている。県、市は協議を重ね全有権者参加の道を探ってほしい。分断と対立は無意味だ。
県民投票は県民有志が約九万三千筆の有効署名を集め県に請求。県議会が条例案を可決し来年二月二十四日に行う。辺野古埋め立てを賛成、反対の二者択一で問う。
県が経費を負担し四十一市町村に投開票を委ねる。ただ十二月議会で、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市など七市町が実施経費を含む予算案を否決した。
予算は義務的経費であり、議会が否決しても市町村長が執行できる。だが、宜野湾、宮古島両市の市長は議会判断を尊重し投開票を行わない意向を示した。与那国町長は否決された予算を執行する考え。残り四市は流動的だ。
六市には県内の約35%に当たる有権者がいる。これらの市で投票が行われないとしたら県民投票の意義は大きく損なわれる。
新基地の是非だけでは、返還対象の普天間飛行場の扱いについて県民の意見が反映されないとの宜野湾市などの反対理由も分かる。
しかし、知事選や国政選挙で繰り返し示された新基地反対の民意を無視し政府は今月から、埋め立ての土砂投入を強行している。
十月の就任後、玉城デニー知事は工事を中止した上で普天間の危険性除去を含む沖縄の基地の在り方について政府に話し合いを申し入れてきた。県民の意思を確認するため、あらためて民意を問う意義は大きい。
県民投票条例は投開票を市町村の義務としている。県は必要に応じ反対派の市長に勧告、是正要求をするが、同時に投票の狙いを粘り強く説明する必要がある。市長側も、直接民主主義の意義などを考慮し慎重に最終判断すべきだ。
二〇一九年度の沖縄関係予算編成で、政府は使途に県の裁量権が大きい一括交付金を大幅に減額する一方、市町村に直接交付できる費用を新設した。基地建設に従順な市町村を、県を飛び越え「一本釣り」するつもりなのかと疑う。県民投票を巡る対立まで沖縄分断策に利用されるとしたら、残念極まりない。
辺野古埋め立てについては、県民投票の実施まで中止を求める米大統領あて嘆願サイトへの署名がきのう現在十七万筆に迫るなど世界が注目する。基地負担軽減に沖縄が一丸となって対応することに、私たちも支援を惜しむまい。

<金口木舌>辺野古で「対話」発信を - 琉球新報(2018年12月29日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-855307.html
https://megalodon.jp/2018-1229-1001-32/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-855307.html

沖縄で対話の重要性を説くかもしれない。中東和平のため紛争の解決を訴え、コロンビアなど国内の政治対立が激化する国々に赴き、積極的に調停役を務めてきたローマ法王フランシスコが来年末に沖縄を訪れる可能性があるという

▼かつて神の名の下に聖地奪還をうたって十字軍遠征を実施し、異教徒を殺戮(さつりく)したほか、異端審問で多くの人を排除した暗い過去のあるキリスト教。2000年に当時の法王は「カトリック教会の名誉を汚した行いに許しを求める」と謝罪するなど、対話と平和を求める努力を続ける
玉城デニー知事の政治信条は「対話」。米軍普天間飛行場辺野古移設問題を巡り、政府と集中協議に臨むなど対話を重視してきた
▼対する政府は「国民のため」(岩屋毅防衛相)と、沖縄を再び捨て石にするかのような姿勢で新基地建設を強行する。辺野古移設問題は深刻化する沖縄と政府の対立の象徴になっている
▼地元の民意より、米側への配慮を優先する日本政府は「どの程度主権を持っているか分からない」(プーチン・ロシア大統領)と世界の指導者にも見透かされている。異様な対米追従は隠しきれない
▼沖縄では宗教者たちが過剰な基地負担の押し付けに抗議し、辺野古新基地建設の中止を求めて立ち上がっている。ローマ法王辺野古の現場で対話の重要性と戦争反対を世界に発信してほしい。

少子化対策 子どもの未来へ視線を - 東京新聞(2018年12月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122902000138.html
https://megalodon.jp/2018-1229-0955-39/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122902000138.html

チグハグ感は否めない。子育て支援策のことである。妊婦の医療や未婚のひとり親への税制で冷たい対応が露呈した。政府・与党には社会を担う子どもたちを社会で育てようとの気概が見えない。
一年前、安倍晋三首相は「今年の漢字」に「挑」を選んだ。北朝鮮の脅威と並び少子高齢化を挙げ「この国難に挑むため、総選挙に挑んだ年だった」と説明した。
子育て支援少子化対策の柱だ。政府・与党のその思いは変わっていないはずではなかったか。
ところが一見別々に見える制度のほころびに同じ疑問がわく。
妊娠中の女性が受診した際に「妊婦加算」という自己負担が増える制度が問題となった。今年四月の診療報酬改定で新設された制度で、医療機関は妊婦を診察すると報酬が上乗せされる。妊婦や胎児には投薬などで配慮が必要だ。それを医療機関に促すことが狙いだったが、一方的な負担増に「妊婦税」だと批判が出た。
診療報酬は医学的な観点から必要な医療に報酬をつける制度だ。妊婦に配慮した医療を評価しようとの考えは理解するが、患者目線が足りなかった。
費用負担の多寡ではない。それを求める発想に出産や子育てを社会から歓迎されていないと感じる人もいるだろう。制度は見直しが決まったが、当然である。
与党の対応も指摘する。税制改正大綱で自民・公明両党が対立した項目が、未婚ひとり親の税を軽減する寡婦(夫)控除改革だった。
婚姻歴のあるひとり親が受ける控除を同様に認めようというものだったが、見送られた。自民党の伝統的な家族観がそれを阻んだ。
結婚観も家族の形も多様化している社会の変化を理解しているだろうか。それに親の婚姻歴は子どもとは関係ない。むしろ深刻化する子どもたちの貧困をどう防ぐかに政治は知恵を絞るべきだ。
教育・保育や福祉政策に限らず、子育て支援の視線が必要な政策分野は多いはずだ。政策を考え制度をつくる際には、子育て支援の視線でも見直してみる。そんな意識が大切ではないか。
子育て支援政策を総動員しているとのメッセージを絶えず発する責任が政府・与党にはある。
首相は今月、「今年の漢字」に「転」を選び「未来を好転させるかどうかは私たち自身にかかっている」と述べた。子どもたちはまさに私たちの未来だということを忘れるべきではない。

「川越少年刑務所、注意義務怠る」  受刑者の自殺で弁護士会警告書 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000247.html
http://web.archive.org/web/20181228102314/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000247.html

川越少年刑務所(埼玉県川越市)に収容されていた男性受刑者=当時(23)=が二〇一五年一月に自殺したのは、自殺防止の注意義務を怠ったからだとして、埼玉弁護士会は二十八日、同刑務所に警告書を出したと発表した。文書は二十六日付。
弁護士会によると、男性は一三年十月に入所。大声を出したり、自殺を図ったりして、同年十二月から個室で謹慎させられる「閉居罰」を繰り返し受け、自殺直前の一四年十二月には六十日の罰を科された。
男性は同年十月には、日弁連に対して「精神疾患のため閉居罰は取り消してほしい」と人権侵犯救済を申し立てていた。埼玉弁護士会が調査を始める前に保護室内で自殺した。
弁護士会は、保護室に二十四時間稼働の監視カメラがあるのに自殺を防げなかったことは、注意義務に違反し、男性の権利を侵害したとして警告書を出した。会見した柘植大樹弁護士は「自死する危険性があることは十分に予見できた」と指摘した。
川越少年刑務所担当者は「受刑者が亡くなったのは極めて遺憾であり、職員に対する保安事故防止の指導を徹底する」と話した。

幼保無償化、来年10月から 給付型奨学金は20年度 政府正式決定 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122802000252.html
http://web.archive.org/web/20181228091616/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122802000252.html


政府は二十八日、幼児教育・高等教育の無償化について関係閣僚会合を開き、三〜五歳児は原則全世帯、〇〜二歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に、来年十月からスタートさせることを正式に決めた。高等教育無償化では二〇二〇年度から、大学などに通う低所得世帯の学生に、返済不要の給付型奨学金を支給することを決めた。
教育を受ける機会を保障するとともに、子育て世帯の負担軽減を図ることで少子化対策につなげる。来年の通常国会に子ども・子育て支援法の改正案などを提出し、早期成立を目指す。
安倍晋三首相は会合で「国の社会保障を若者もお年寄りも安心できる全世代型に転換する。無償化は重要な第一歩だ」と述べた。
認可保育所などは完全無料とする。私立幼稚園の一部は月額二万五千七百円、認可外保育所を利用する三〜五歳児は三万七千円、〇〜二歳児は四万二千円の上限を設けた上で利用料を補助する。給食費は無償化されず、全額保護者の実費負担。
ベビーシッターや病児保育施設なども認可外保育所と同様の扱いになる。保育士の人数や施設面積など、国が定める指導監督基準を満たすことが条件だが、経過措置として施行から五年間は基準を下回る施設も対象とする。総費用は年間約七千七百六十億円を見込む。
二〇年度からの高等教育無償化についても制度の詳細を決めた。大学、短大、専門学校、高等専門学校に通う低所得世帯の学生に、返済不要の給付型奨学金を支給する。住民税非課税世帯の場合、国公立大は自宅生が年間約三十五万円、自宅外約八十万円。私立大は自宅生約四十六万円、自宅外約九十一万円などとする。あわせて授業料減免も実施。国立大は約五十四万円免除し、私大は最大約七十万円減額する。
住民税を支払う世帯でも一定の年収を下回れば、住民税非課税世帯の三分の二もしくは三分の一の額を支援する。年収が低くても一定の資産があれば対象外となる。

<教育無償化>安倍晋三首相が昨年の衆院選で目玉公約に掲げた経済政策パッケージの柱の一つ。来年10月に予定している消費税率10%への引き上げに伴う税収増加分を財源に、幼児教育・保育は来年10月、高等教育は2020年4月から始める。家庭の所得にかかわらず教育を受ける機会を保障し、少子化対策につなげることが狙いだが、自治体や保護者からは「無償化より待機児童対策を優先すべきだ」との意見もある。

外国人就労拡大で新省令案 報酬を日本人と同等以上 - 東京新聞(2018年12月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122902000118.html
https://megalodon.jp/2018-1229-0959-54/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122902000118.html


外国人労働者の受け入れを拡大する新制度で法務省は、報酬を日本人と同等以上の額とし、預貯金口座に振り込むとする契約や受け入れ先の基準のほか、新たな在留資格に必要な技能水準に関する省令案などをまとめ、二十八日にパブリックコメント(意見公募)を始めた。来年一月二十六日まで。施行は同四月一日
案は今月二十五日に政府が決定した新制度の基本方針などの内容を反映したもので、新制度の細部を定めている。山下貴司法相は二十八日の閣議後記者会見で「幅広く意見を聞きたい。国会でも、丁寧に説明したい」と述べた。
契約や受け入れ先の基準に関する新省令案では、日本人と同等以上の報酬額や、差別的な取り扱いをしないこと、本人が捻出できない場合、帰国費用を負担することなどを規定した。
受け入れ先は法令違反をしていないことや悪質ブローカーの介在がないことが条件。報酬は不正を防ぐため口座への振り込みとし、住宅確保や口座開設、日本語学習機会提供といった生活支援計画策定を義務付けた。著しい法令違反があると新資格の外国人を五年間受け入れられなくなる。
新資格の技能水準に関する省令案は「分野別運用方針で定める水準を満たす」と記載した。
また、上陸基準省令の一部を改めて、新資格の対象者を十八歳以上と規定した。入管難民法施行規則も改正。一回の申請に対して与えられる在留期間について、新資格のうち「特定技能1号」は一年か六カ月、もしくは四カ月、「同2号」は三年か一年、もしくは六カ月とした。1号は通算五年在留でき、2号は更新を続けることで長期在留が可能となる。

<死刑を考える>(下)〜飯塚事件より〜 - 東京新聞(2018年12月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122902000121.html
https://megalodon.jp/2018-1229-0953-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122902000121.html

「私はまだ死刑確定の新参者。時間はあるから、慌てなくてもいいですよ」
二〇〇八年九月、暑さが残る福岡拘置所。その日の死刑囚はいつもより明るかった。面会室のアクリル板越しに、弁護人らに見せたA4判の紙。確定順に死刑囚の名前が並ぶ中、自身の名前は後ろの方に記されていた。
再審請求の準備を焦る弁護人をなだめるように、「私はやってないから、必ず罪は晴れます」。しかし、この面会から三十九日後、久間三千年(くまみちとし)死刑囚の刑は想定外の早さで執行された。七十歳だった。
一九九二年二月、福岡県飯塚市で登校中の女児二人=いずれも当時(7つ)=が誘拐され、殺害された通称「飯塚事件」。直接的な証拠がない中、久間元死刑囚は事件から二年七カ月後に逮捕された。「一切やっていない」。ただの一度も自白しなかった。
だが、被害者の遺留品が見つかった山間部では、車で通りがかった男性が路肩に止まった車と男を目撃していた。タイヤのホイールキャップのラインや、窓ガラスの色つきフィルム、後輪のダブルタイヤ…。すれ違ったわずか数秒で十数個の特徴を言い当てた。証言はいずれも久間元死刑囚の車を指していた。
一審福岡地裁は「犯人であることは合理的な疑いを超えて認定できる」と死刑を言い渡した。当時は画期的とされたものの、精度が低く、後に足利事件などの冤罪(えんざい)につながった旧式のDNA型鑑定も判決を支えた。〇六年十月、刑は最高裁で確定した。
飯塚市から約二十キロ離れた現場の山間部は、狭い国道が山を縫うように走る。記者が車で現場を通ったが、カーブに次ぐカーブで前方から目が離せない。仮に不審な車が止まっていたとしても、細かく観察できる自信はなかった。
「取り返しがつかんなと思った」。一審から弁護人を務める岩田務弁護士(73)が、執行の日を振り返る。
当時、死刑は確定から執行まで五、六年かかるのが一般的で、約二年で執行されるのは予想外だった。DNA型鑑定に誤りがあることを示そうと、再審請求に必要な新証拠を探している最中だった。
結局、再審請求は刑の執行から一年後の〇九年に申し立てた。福岡地裁福岡高裁とも再審開始を認めず、弁護団は今年二月、最高裁に特別抗告している。
久間元死刑囚の刑が執行されてから今年で十年。女児たちの通った小学校は今春、廃校になった。女児の捜索に加わった近所の男性(82)は「結局、何があったのかは誰にも分からん」。久間元死刑囚の妻は事件後も引っ越すことなく、今も当時の家で暮らす。

<真実有れば、自信を持って闘えるのが強み><冤罪を雪(そそ)ぐことができずに残りの生涯を屈辱に苦しんで生きることになったら、その方が辛(つら)いのです>
久間元死刑囚が妻に宛てた手紙からは、自身の疑いを晴らしたい思いがにじむ。久間元死刑囚がこの言葉を妻に直接伝える機会は、もう訪れない。
 (この連載は、奥村圭吾、蜘手美鶴が担当しました)

渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も−映像公開 - 時事ドットコム(2018年12月28日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122800890&g=pol
http://archive.today/2018.12.28-102838/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122800890&g=pol

韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省が「証拠」として当時の映像の公開に踏み切った。同省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った。日本の正当性を世論に訴える狙いだが、泥沼化する恐れもある。
防衛省は当初、映像公開について「韓国がさらに反発するだけだ」(幹部)との見方が強く、岩屋毅防衛相も否定的だった。複数の政府関係者によると、方針転換は27日、首相の
「鶴の一声」で急きょ決まった。

韓国政府は11月、日韓合意に基づく元慰安婦支援財団の解散を決定。元徴用工訴訟をめぐり日本企業への賠償判決も相次ぎ、首相は「韓国に対し相当頭にきていた」(自民党関係者)という。
そこに加わったのが危険な火器管制レーダーの照射。海自機への照射を否定する韓国の姿勢に、首相の不満が爆発したもようだ。
首相の強硬姿勢は、2010年9月に沖縄県尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で対応のまずさを露呈した旧民主党政権の教訓も背景にある。
当時、海上保安庁が撮影した映像を菅内閣は公開せず、海上保安官がインターネット動画サイトに投稿して騒ぎが拡大。首相は13年12月の党首討論で「出すべきビデオを出さなかった」と批判した。政府関係者は今回の首相の胸の内を「後で映像が流出するのも嫌だから『出せ』と言っているのだろう」と解説した。

韓国艦レーダー照射で動画を公開 防衛省 - 毎日新聞(2018年12月28日)

https://mainichi.jp/articles/20181228/k00/00m/010/178000c
http://archive.today/2018.12.28-111517/https://mainichi.jp/articles/20181228/k00/00m/010/178000c

韓国海軍の駆逐艦海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、防衛省は28日夕、当時の動画データを、同省ホームページで公表した。
公開された動画は20日午後3時過ぎ、石川県能登半島沖を飛行する哨戒機から、韓国海軍の駆逐艦などが航行する様子を撮影。「離隔する。一旦離隔する」「めちゃくちゃすごい音だ」などと機長らによる緊迫したやりとりが収められている。
レーダー照射は攻撃の前段階として目標に電波を当てて追跡するもの。「ロックオン」と呼ばれて、攻撃の意思がなくても、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為とされる。防衛省はデータを解析し、複数回にわたってレーダー照射を受けたと結論づけていた。
一方、韓国国防省のこれまでの説明内容は変遷している。当初、北朝鮮の漂流漁船を捜索するために、全てのレーダーを使ったと主張。その後、防衛省から反論されると、火器管制レーダーについては「光学カメラを稼働させただけ」などと使用自体を否定するなど、双方の主張は平行線をたどっていた。
岩屋毅防衛相は28日午前の閣議後記者会見で、海自は国際法などにのっとり、韓国側が主張する低空飛行などの危険行為はなかったことを動画データで示すとの考えを示していた。
岩屋防衛相は、動画データの公開に踏み切った理由について「日韓関係の修復は最終的に必要だが、自衛隊側に問題があるような韓国側の言いぶりは遺憾だ。国民に誤解なきよう、きちんと説明する必要がある」と語っている。
これに関連して、菅義偉官房長官も28日午前の記者会見で、韓国側の最近の動向に関して「日韓関係に否定的な動きが相次いでいることは大変残念だ」と述べた。 【中澤雄大/統合デジタル取材センター】

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

海自機、周波数証拠は「機密」 =駆逐艦撮影中にレーダー照射−防衛省 - 時事ドットコム(2018年12月29日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122900193&g=soc
http://archive.today/2018.12.29-050815/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122900193&g=soc

海上自衛隊のP1哨戒機が韓国駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた問題。防衛省が公表したP1が撮影した13分の映像には、眼下の駆逐艦を監視中、突然照射され「FCコンタクト」(火器管制レーダー探知)」「砲はこちらに向いていない」などの音声が記録され、機内の緊迫した状況が収められている。映像公開を受け、韓国側はP1が収集したレーダー照射の周波数の情報を公開するよう日本側に求めているが、防衛省幹部は「周波数データはP1の監視能力の手の内をさらすことになる。電子戦能力でもあり機密だ」と述べた。

◇監視ターゲットは2隻 
「2隻ともに1000ヤード(約900メートル)間隔」。映像は機長へのこの報告から始まる。撮影日と場所は20日午後3時ごろの能登半島沖の日本海。天候は晴れ。波の高さは1メートル程度で比較的穏やかな海面だった。視程も20キロと見通し良く、厚木航空基地(神奈川県)から飛来したP1のクルーの眼下には日本のEEZ内で活動する韓国警備救難艦と韓国駆逐艦がいた。EEZ内で何をしているのか。監視は2隻の艦番号の確認から始まった。
まず韓国警備救難艦に近づき撮影。救難艦の左前方に北朝鮮籍とみられる漁船。それをはさむように救難艦の搭載ゴムボート2隻が見える。P1が警備救難艦を通過し、駆逐艦に向かう直後に艦船までの一定の距離の接近を知らせるけたたましい音が機内に響く。
P1は一定の距離を保ちゆっくりと駆逐艦の艦尾を通過。艦尾の甲板にヘリコプターを搭載していないか確認した。「特異事象等なし」とクルーが報告した。

◇高度上げ撮影中、状況一変
P1はさらに駆逐艦を撮影するために旋回して回り込み後方から接近。駆逐艦からの無線による呼び掛けにも備えた。艦船への接近を知らせる音が再び鳴る。右舷真横を飛行し、船首に書かれた艦番号「971」を確認。全景をカメラに収めるために飛行高度を上昇させ、駆逐艦から約5000メートル離れて撮影中に状況が一変した。
「あー出しています」「FC(火器管制レーダー)系出している」。映像が始まって約6分後、クルーが火器管制レーダーの照射を探知した瞬間の声が流れる。やや早口になった口調からも緊張感が伝わる。「避けたほうが良いですね」「砲の指向等(向き)を確認する」と進言と報告が飛び交う。危険回避のために機長の「いったん離隔する(離れる)」の声も記録されている。
映像には、レーダー照射の電波が強く、「めちゃくちゃすごい音だ」「この音、覚えておいてください」、「砲はこちら向いていない」などのやりとりもあるが、いずれも緊張感の中にも落ち着きが感じられ、高い練度がうかがえる。
機長が「一応呼び掛けようか」と韓国駆逐艦への無線による交信を指示。英語で「韓国海軍艦艇 艦番号971」「こちらは日本国海上自衛隊 貴艦のFCアンテナがわれわれを指向したことを確認した」「貴船の行動目的は何ですか」と繰り返したが応答はなかった。

◇決定的証拠は機密
公表されていない海自側の決定的な証拠は、駆逐艦の火器管制レーダーの電波(周波数)を記録したデータだ。防衛省幹部は「どの程度、正確に電磁波(周波数)を受信できるかはP1の能力に関わることで、公表できない」と話す。相手のレーダーの周波数を正確に把握すれば、電波妨害などの電子戦にも使用できるため、自衛隊内でも収集したデータは機密扱いになっている。
海自幹部は「韓国側が最初に謝罪していれば早々に幕引きしていた。韓国側が、回答できないレーダーの情報を求めるのは想定内。不可解な説明を積み重ね、引くに引けない状況なのだろう」と指摘した。

◇P1哨戒機
P1哨戒機 海上自衛隊の哨戒機。P3Cの後継機で、海面に投下したソノブイによる潜水艦の探知・追尾や、赤外線センサーによる洋上の目標の探知能力がある。国産で全長38メートル、乗員11人。日本周辺海域の警戒監視や北朝鮮の競取り監視にも投入されている。

◇火器管制レーダー
火器管制レーダー 攻撃目標の方位、距離、高度などを測定する水上艦などに搭載されているレーダー。目標を最終的に絞り込むもので、広範囲を照射する水上捜索レーダーとは異なり、ピンポイントで照射する。得られたデータはミサイルや火砲の発射装置に送信される。照射を受けた側はセンサーで電波の周波数などを受信し、認識することが可能(時事通信社編集委員 時事総研 不動尚史)。

関連サイト)