(政界地獄耳)マイナンバーカード普及が進まぬ理由 - 日刊スポーツ(2018年12月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812260000128.html
http://archive.today/2018.12.26-045202/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812260000128.html

マイナンバーカードの普及率が伸び悩んでいる。別にカジノに入る時の身分証明書に使えるとうたわれてもほとんどの国民にはありがたさにつながらない。総務省は7月現在、日本住民の11・5%しか所持していないと発表した。16年の制度開始以来国民の信頼を得られているとは言い難い。免許証で事足りる、住基カードを持っているからなどの理由から不要と感じる人も多いだろう。住基カードは作成に数千円かかるがマイナンバーは無料でできる。それなのに普及しない。

総務省のホームページを見るとマイナンバーカードのICチップには地方税関係情報や年金給付関連情報などプライバシー性の高い個人情報は記録されないとある。一方で個人情報が満載なのでむやみにコピーなどしてはいけないとしながら、税申告などでコピーの提出を強要される。いずれにせよ、個人情報が詰まっているマイナンバーカードは簡単に人に見せたりコピーさせるものではなく、安易な情報の漏えいを防ぐよう再三の注意が記されている。

国税庁は14日、東京、大阪両国税局からデータ入力を委託されていた業者がマイナンバー法が禁じている別業者へ繁忙を理由に下請けに出していた。マイナンバーなど個人情報が含まれる約70万件の書類を流していたと発表した。国税庁は「納税者におわび申し上げる」としている。あれだけ情報の管理には気をつけろと国民に喚起しながら結局、国税庁が漏えいの元締めだったという話だ。下請けなど委託業者は法に基づき処分されるだろうが、国税庁のホームページを見ても国民にわびのひとつもない。それどころか役人はおとがめなしなのではないか。このちぐはぐな説明と対応に不要論を感じる人も多いだろう。誰も責任を取らない体質の好例だ。(K)※敬称略

さいたま市、9条俳句掲載へ 作者「諦めず闘って良かった」 - 東京新聞(2018年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122690070044.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0909-49/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122690070044.html

憲法九条を詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を巡り、作者の女性(78)がさいたま市に句の掲載と損害賠償を求めた訴訟で、市の賠償を命じた判決が確定したことを受け、同市は二十五日、一転して俳句を掲載する意向を示した。判決では掲載義務はないとしたが、記者会見した細田真由美教育長は「司法判断を踏まえ、作者の気持ちに配慮した」と説明した。 (藤原哲也)
女性は「一審判決が出た直後に決断してくれればなお良かったが、小さなことでも訴えて諦めずに闘うことで結果が出たことは非常に良かった」とのコメントを出した。
細田教育長は会見で、作者の人格的利益を侵害したとする判決確定部分について「真摯(しんし)に受け止め、謝罪する」と語った。九条俳句の掲載時期は「できるだけ早く」としている。
判決によると、女性はさいたま市大宮区の公民館で活動する句会のメンバー。公民館だよりは月報で、会が優秀と認めた俳句一句を掲載していたが、二〇一四年六月に女性が詠んで選出された句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の内容を公民館側が「世論を二分する内容で、掲載は公民館の公平性、中立性を害する」として拒否した。
女性は一五年六月にさいたま地裁に提訴。今年五月の二審東京高裁判決は「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをし、女性の利益を侵害した」として市に慰謝料五千円の賠償を命じた。最高裁は今月、女性と市双方の上告を退けた。
一連の問題は、本紙の読者投稿「平和の俳句」(二〇一五〜一七年)が始まるきっかけになった。

◆作者の意に市が配慮

<武蔵野美術大の志田陽子教授(憲法)の話> 公民館に求められる政治的中立性とは、市民がさまざまな問題意識を持ち寄れる純粋な受け皿であることだ。裁判所が人格的利益の侵害を認めた一方、掲載請求権には踏み込まなかったことは煮え切らない判断だった。さいたま市が「違法性を認められた以上、作者の意に沿うべきだ」としたことは意義深く、評価したい。

さいたま市、九条俳句掲載へ 教育長が直接謝罪へ 市長との面談には応じず:埼玉 - 東京新聞(2018年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122602000149.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0911-51/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122602000149.html

最高裁決定を受け、憲法九条について詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を一転して決断し、発表したさいたま市。二十五日に会見した細田真由美教育長は作者の女性(78)に直接謝罪する意向を示す一方、訴訟を支援してきた「『九条俳句』市民応援団」などが求めてきた清水勇人市長との面談には今後も応じない意向を示した。(藤原哲也、井上峻輔)
細田教育長は会見冒頭、上告棄却を「残念に思う」とし、市の主張が一部認められたことは意味があったとした一方、女性への謝罪と俳句の掲載方針を説明。謝罪方法については「作者の考えも伺いながら、どのように行うのか検討して決めたい」と慎重に述べた。
その上で、この訴訟を契機に市民のための生涯学習振興や公民館活動を充実させる考えもあり、掲載を決めたと説明。今後は多様な市民の意見を取り入れるため、公民館だよりの編集に市民が参加する仕組みを設ける意向も示した。
清水市長と作者の女性の面談については、公民館業務は市教育委員会の所管で、自身が清水市長から教育行政の全権を委任されていると強調した。
女性は弁護士を通じ「最高裁の決定を受けてすぐにこのような発表があったのは、市も決定を真摯(しんし)に受け止めたと考えている。長い人生の終盤で解決までに時間もかかり大変だったが、今後の社会に少しでも役立てれば幸いです」とのコメントを出した。
神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「最終的に掲載を決めたことは評価したいが、最高裁まで行かないと動かなかったのは残念だ」と話す。行政が市民活動に介入する事例が各地で相次ぐ中で「九条俳句訴訟は大きな問題提起になった」と指摘。「市の違法性を認めた今回の判決から、行政が政治的な忖度(そんたく)をすることが問題だという考えが広まってほしい」と述べた。

九条俳句、さいたま市が一転掲載へ「司法の判断従った」 - 朝日新聞(2018年12月25日)

https://www.asahi.com/articles/ASLDT5FQ4LDTUTNB00S.html
http://archive.today/2018.12.26-001129/https://www.asahi.com/articles/ASLDT5FQ4LDTUTNB00S.html

「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句が公民館だよりに掲載されなかったことを巡り、作者の女性(78)がさいたま市と争い、不掲載を違法とした判断が最高裁で確定したことを受け、掲載を拒んできた市は25日、句を掲載することにしたと発表した。対応が不十分だったと認めて女性に謝罪するという。
女性が2014年に集団的自衛権の行使容認に反対するデモを詠んだ句は、地元の句会で秀句とされたが、従来秀句を掲載してきた公民館だよりに掲載されず、女性が市を提訴。裁判で市は、句が「世論を二分するテーマで政治的中立に触れる」と主張してきた。
20日付の最高裁決定では、集団的自衛権の行使について世論が分かれていても、不掲載の正当な理由とはならないとして女性の人格的利益の侵害を認め、市に5千円の賠償を命じる一方、市に掲載義務はないとした東京高裁判決が確定した。25日に会見した細田真由美教育長は、掲載に転じた理由を「掲載義務はないとの主張は認められたが、女性の心情に配慮した」「掲載が公民館の中立性を害するとは言えないとの司法の判断に従った」などと述べた。(森治文)

さいたま市、9条俳句掲載へ「作者の気持ちに配慮」 不掲載は違法との判決確定受け、女性に謝罪の方針 - 埼玉新聞(2018年12月26日)

 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181226-00010000-saitama-l11
http://archive.today/2018.12.26-001559/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181226-00010000-saitama-l11

憲法9条を詠んだ俳句の公民館だより掲載を巡り、作者の女性(78)が埼玉県さいたま市に慰謝料と俳句の掲載を求めていた訴訟で、同市の細田真由美教育長は25日、会見を開き、不掲載を違法と判断した東京高裁の判決が確定したことを受け「作者の気持ちに配慮する」として、女性に謝罪し、俳句を公民館だよりに掲載する市の方針を発表した。

9条俳句訴訟、さいたま市の賠償確定へ 最高裁、女性と市の上告退ける 女性、支援に感謝
訴訟を巡っては、同市大宮区の三橋公民館が2014年6月、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句を公民館だよりに掲載しなかったとして、作者の女性が15年6月、慰謝料や俳句の掲載を求めて市を提訴した。17年10月、一審のさいたま地裁判決は「思想や信条を理由に不公正な取り扱いをした」として、市に慰謝料5万円の賠償を命令。二審となる今年5月の東京高裁判決も不公正な取り扱いをしたと認め、「掲載しなかったことに正当な理由はない」と判断し、市に慰謝料5千円の賠償を命じている。女性が求める俳句の公民館だよりへの掲載については一審、二審とも退けており、市と原告双方が上告していた。
最高裁は今月20日付で、「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない」との決定を下し、双方の上告を棄却。二審の東京高裁判決が確定していた。
細田教育長は、俳句の作者には公民館だよりに俳句掲載の請求権がなく、市に掲載義務がないとしつつ「作者の人格的利益を侵害したとして、損害賠償を命じた二審判決が確定した点を真摯(しんし)に受け止め、謝罪する」と表明。「作者の気持ちに配慮し、市のこれからの公民館のあるべき姿につなげたい」とし、できるだけ早い時期に、俳句を公民館だよりに掲載するとした。
市は今後、損害賠償金5千円と、遅延損害金の支払い手続きに入るとしている。

外国人就労「最大34万人」基本方針


2018年12月26日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122602000142.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0927-30/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122602000142.html


政府は二十五日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定した。高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年四月から五年間で最大三十四万五千百五十人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める態勢整備が課題だ。
閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。
基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は十四業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。報酬額は日本人と同等以上を求め、同一業務や業務内容に共通性がある場合は転職を認める。
基本方針は改正法施行後二年を目途に検討し、必要があれば見直す。
分野別運用方針には業種別の受け入れ見込み数や業務内容、新資格取得に必要な技能試験の開始予定時期などを記載。共通の日本語能力判定テスト(仮称)も新設し、当面はベトナムなど九カ国で実施する。

◆拙速制度 準備遅れ 14「業種」→「分野」言い換えただけ

政府が二十五日に閣議決定した外国人労働者受け入れ拡大の方策のうち、受け入れ見込み数などを定めた分野別運用方針は、受け入れ人数の詳しい内訳を示さなかった。改正入管難民法に基づく新たな在留資格の取得に必要な技能試験を来年四月の法施行時に実施するのは、受け入れ十四分野のうち三分野にとどまった。急ごしらえの新制度に実務的な準備が追いつかず、政府の国会答弁との矛盾が目立った。
運用方針が示した外国人受け入れ人数は、十一月の政府試算とまったく同じ数字。「十四業種」を「十四分野」という表現に変え、分野内の業務の種類を示しただけだった。
十一月の政府試算を巡っては、野党が国会審議で積算根拠となる詳しい内訳を示すよう求めたのに対し、山下貴司法相は「分野の切り分けと受け入れ見込み数を各省庁が精査中だ」と説明した経緯がある。
今回の運用方針では野党の疑問は解消されず、来年一月二十三日の衆院法務委員会の閉会中審査で追及の標的になることは確実だ。
新たな在留資格「特定技能1号」の取得試験を来年四月から行うのは、介護、宿泊、外食の三分野。介護分野は過去の技能実習生の受け入れ期間が特定技能1号への移行に必要な三年間に満たず、宿泊、外食分野は実習制度の対象外で、三分野とも試験をしなければ四月に特定技能者を受け入れることができない。
残る十一分野では「三年間の技能実習の修了者が特定技能1号に毎月、移行してくる」(法務省筋)。このため、試験の実施を急がず「一九年秋以降」や「一九年度内」に行う方針だ。
山下法相は国会審議で、新たな在留資格技能実習制度とは「別物だ」と力説していたが、今回の運用方針では実習生から特定技能への移行を期待していることが明らかになった。 (坂田奈央、村上一樹)

外国人共生策 羅列で終わらせるな - 朝日新聞(2018年12月26日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13827464.html
http://archive.today/2018.12.26-001721/https://www.asahi.com/articles/DA3S13827464.html

改正出入国管理法の成立を受けて、政府はきのう、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」と、新たに設けられた在留資格「特定技能」の運用方針を正式決定した。
共生策には126もの施策が並ぶ。だが詳細は未定・不明なものが多く、準備不足ぶりがかえって際立つ形となった。これまでも政策目標に掲げられながら、掛け声倒れに終わっているものもある。今後、どうやって実効性を確保するのか、政府の取り組みが問われる。
とりわけ懸念が大きいのは、言葉の問題だ。
一定レベルの日本語が使えなければ、仕事だけでなく、生活ルールの周知や地域住民との交流にも支障をきたす。病気やけが、犯罪に遭った時のことを考えても言葉は極めて大切だ。
にもかかわらず政府は従来、外国人が多い自治体やNPOに対応を丸投げしてきた。今回、そうした活動に対する「支援」を打ち出したものの、具体的にどんなことを、いかなる手続きで進め、どれくらいの予算を投じるのか、共生策から読み取ることはできない。
今でさえ十分とはいえない、日本語を教える人材の数と質をどう確保するかも不透明だ。NHKの日本語講座や音声翻訳アプリの利用促進などが盛り込まれているが、果たしてどれだけ役に立つだろうか。
外国人受け入れを進めてきたドイツなどでは、国が責任をもって数百時間の語学研修を実施している。彼我の違いは明らかだ。同様の仕組みを今からでも検討・実践すべきだ。
劣悪な労働環境の改善も、早急に取り組むべき課題である。
新設される「登録支援機関」が、受け入れ企業の委託を受けて外国人労働者の苦情対応や転職支援などにあたることになっているが、運営資金は企業が負担する。そのような組織に本当に外国人の側に立った支援が期待できるのか。国会でも指摘されたが議論は深まらず、いまも疑念は残ったままだ。
政府が「真に必要な業種にのみ認める」としていた派遣労働も、農業と漁業で導入されることになった。直接雇用に比べて目が届きにくいのは明らかだ。
労働法令に違反する行為があっても、これまで政府は多くを見逃してきた。姿勢を改め監視の実をあげることなしに、信頼回復はないと知るべきだ。
今回の決定を踏まえた国会審議が来月に予定されている。政府案の単なる説明ではなく、制度の改善・充実につなげる場にしなければならない。

就労外国人 政府の基本方針 安心して働ける環境こそ - 毎日新聞(2018年12月26日)

https://mainichi.jp/articles/20181226/ddm/005/070/095000c
http://archive.today/2018.12.26-003005/https://mainichi.jp/articles/20181226/ddm/005/070/095000c

政府は、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた基本方針を閣議決定した。併せて受け入れ14業種ごとの運用方針と、外国人労働者を支援するための総合的対応策も決めた。
基本方針の策定義務は、改正入管法に盛り込まれており、遅ればせながら年内に示した形だ。
基本方針は、深刻化する人手不足に対応するため、外国人を受け入れる必要性を強調する。中には、議論を呼ぶ項目が盛り込まれている。
経済状況などが変化した場合、関係機関の協議によって特定の分野について受け入れを止めることも一つだ。14業種は、製造業からサービス業まで幅広い。景気から受ける影響はさまざまだ。政府は、労働者の送り出しが見込まれる9カ国と2国間協定を結ぶ予定だ。相手国との信頼関係を維持するためにも、情報の共有を密にする必要がある。
新制度下での労働者の受け入れに当たっては、企業の姿勢が大事だ。景気に便乗して、解雇するなど差別的な処遇が認められないのは当然だ。政府は日本人と同じ待遇を企業に求め、法務省令に盛り込む方針だ。厳しく指導していく責任がある。
特定技能の資格を持つ労働者が、賃金の高い東京など大都市に集中する恐れがあることも、基本方針は課題に挙げた。地方の人手不足解消という目的が果たせなくなるからだ。新制度は同一業種内の転職を認めており、転居に制限がない。
基本方針には、新資格を得た外国人が大都市圏に過度に集中しないよう必要な措置を講じると書き込まれた。労働力に偏在があれば、業種ごとに企業や業界、官庁などで作る協議会で話し合うという。ただし、努力規定にとどめたのは、実効性がある対策が難しいからだろう。
新制度の土台になるとみられている技能実習制度では、地方の零細企業が、低賃金での雇用に依存しているような例が問題になっている。
まず、企業が低賃金体質を改めるのが先だ。地方自治体も、外国人が落ち着いて働ける生活環境の支援に力を入れる必要がある。
突貫工事的に作成された基本方針は中身が薄く、法務省令の制定も年越しになった。海外の労働者に選ばれる国になるためにも、政府がその最終責任を負うべきだ。

(未婚の親支援)また「先送り」するのか - 沖縄タイムス(2018年12月26日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/364193
https://megalodon.jp/2018-1226-0925-39/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/364193

家族の変容や多様化に向き合うことなく、改革は再び先送りされた。
自民、公明両党は2019年度税制改正で、シングルマザーら未婚のひとり親への「寡婦控除」拡大を見送った。住民税軽減などでは合意したものの、税制の見直しという恒久措置には踏み込まなかった。
寡婦控除は配偶者と離婚したり、死別したりしたひとり親の所得から一定額を差し引き、所得税や住民税を軽くする仕組みである。現行制度は、さまざまな事情から結婚せずに子どもを育てるひとり親は対象としていない。
未婚の親に適用されないのは不当な差別だとの声は強く、昨年の与党税制協議会で19年度改正で結論を出すと決めていた。厚生労働省も「子どもの福祉を考えれば、親の結婚経験の有無を問わず経済的な支援が重要だ」とし税制改正を要望していた。
ところが19年度税制改正大綱で決まったのは、住民税が「非課税」となる基準の緩和と、低所得のひとり親に年1万7500円の手当の給付である。
これにより格差は一定程度解消するかもしれない。ただ当事者が望んでいたのは財政支援ではなく、法改正で真正面から寡婦の定義を変えることだった。
見送りの背景にあるのは、法律婚にこだわる伝統的家族観だ。税制改正議論の中で、自民党から「未婚を助長しかねない」との反対意見が上がったのは残念というしかない。

    ■    ■

寡婦控除は戦争で夫を失った妻の生活を支えるため1951年に創設された。しかし現状は母子世帯になった経緯で「離婚」の次に多いのが「未婚の母」である。その割合は「死別」を上回っている。
NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が、未婚のひとり親を対象に実施したアンケートからは「妊娠を知ると男性が去っていった」「妻子がいた」など、多くが望んでひとり親になったわけではないことが分かる。 
厚労省の2016年の調査では、未婚のシングルマザーの平均世帯年収は177万円で、母子家庭全体の200万円より低い。経済的に厳しい母子世帯の中でも、さらに厳しい状況に置かれているのだ。
未婚を選択せざるを得なかった事情や家計の苦しさを知れば、「助長」などという冷ややかな言葉は出てこないはずだ。 

    ■    ■

婚外子相続差別を巡り最高裁は13年、「家族観が変わり、相続分を差別する根拠は失われており、法の下の平等を定めた憲法に反する」との違憲判断を下した。
「子どもに選択の余地がない理由での差別は許されない」との決定は、未婚の親に寡婦控除が適用されず子どもに不利益を及ぼすのも合理性を欠く差別ということになる。
自治体が先行する形で保育料などの「みなし適用」が進んでいる。家制度の残滓(ざんし)ともいえる控除制度の改革は、国が率先して取り組むべき課題だ。

(大弦小弦)日本の低迷ぶりは相変わらずだ。世界経済・・・ - 沖縄タイムス(2018年12月26日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/364192
https://megalodon.jp/2018-1226-0923-49/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/364192

日本の低迷ぶりは相変わらずだ。世界経済フォーラム(WEF)が発表した男女格差の度合いを国別に順位付けた2018年の「ジェンダーギャップ指数」。日本は149カ国のうち110位だった

▼政治、経済、教育、健康の4分野があり、前年より順位を上げたが主要7カ国では最下位。特に政治・経済分野で国会議員や女性閣僚、管理職登用など女性の進出が後退した

▼16年に女性活躍推進法が施行されたものの、女子を不利に扱う医学部の不正入試やセクハラの行為自体を禁止する法整備が進まないなど、世界に後れを取る要素ばかりが目に付く

▼簡単に改善されるものではないが、格差を身近なところからなくそうと動いた人もいる。菓子製造・販売ナンポー社長の安里睦子さんは、預貯金の法人口座名義に旧姓を使えるよう金融機関に働き掛け、使用が認められた

▼結婚で名字が変わる場合、書類など膨大な書き換え作業が必要なことや、キャリアを積んできた旧姓で仕事をしたい思いで打診。女性経営者として直面した壁に風穴をあけ、女性起業家を後押ししたいという安里さんの熱い思いだった

▼WEFは現状のままでは世界全体で男女平等の達成に108年かかると指摘する。格差なく働く環境や法整備は急務だが、働く側の意識や行動で格差をなくしていくことも必要だ。(赤嶺由紀子)

子どもの貧困対策 次世代への投資が大切だ - 琉球新報(2018年12月26日)


https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-853860.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0921-32/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-853860.html

沖縄の子どもの貧困は極めて深刻な状況にある。貧しさ故にハンディを背負わされる子どもを1人でも減らすよう、あらゆる方策が必要だ。
今年もさまざまな角度から子どもの貧困の実態が明らかになった。
7月、県の未就学児の調査結果が公表された。1歳、5歳の保護者の2割以上が経済的に困窮しており、困窮度が高いほど制度やサービスのニーズが高まるのに利用できていなかった。ひとり親世帯はより深刻だった。
同じく7月に公表された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、県内の児童生徒は学力が全国平均を下回るだけでなく、地域との関わり、家族間のコミュニケーションが乏しいことも浮き彫りになった。親の労働環境や経済的貧困との関係が強く示唆された。
最近発表されたスポーツ庁の調査でも、県内の児童生徒の校外クラブ加入率が全国平均の半分強にとどまることが分かった。「貧困率の高さも関係するのではないか」と関係者が指摘するように、貧困が背景にある可能性が高い。
こうした状況を受けて今年、県知事選挙をはじめとした各首長選挙で子どもの貧困対策が重要政策として掲げられた。
玉城デニー知事は、県民に約束した待機児童の解消や保育料無料化、中・高校生のバス無料化などを早期に実現してもらいたい。
内閣府の沖縄予算では、子どもの居場所づくりに重点を置く「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」を継続し、新規事業の予算も計上している。沖縄に特化した対策として評価したい。政府は、米軍基地や自衛隊基地の建設など軍事面ではなく、子どもの未来のためにこそ税金を投じるべきではないか。
本紙が今月報じた県内の学童保育施設で防災対策が十分なされていないという問題も、政治の弱さが背景にある。
他府県の学童保育施設は公設が主流であるのに、沖縄は民間頼みになっているからだ。
沖縄は数多くの課題を抱えているが、その中で、過重な米軍基地の負担、振興政策の在り方、子どもの貧困が重要なテーマとなっている。沖縄戦、そして軍事優先の米国統治があり、現在も基地の過重負担が、負の遺産として重くのしかかっている。
しかし、過去の沖縄振興策は社会資本整備に偏ってきた。そこへ自主財源の乏しさもあって教育福祉政策で後れを取ってきた。沖縄振興の仕組みを根本的に見直すことが必要だ。
沖縄の子どもの貧困は、基地の過重負担などが複雑に絡み合った歴史的構造的問題と認識する必要がある。
また、雇用や勤労者の所得向上には民間の努力も求められる。多角的なアプローチによって、社会全体で貧困対策を進めたい。