ゴーン氏再々逮捕は、検察による「権力の私物化」ではないのか(郷原信郎) - Y!ニュース(2018年12月21日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20181221-00108526/

東京地検特捜部は、ゴーン氏、ケリー氏の再逮捕事実での勾留の延長を、東京地裁に請求したが却下され、準抗告も棄却されて、両氏の再逮捕事実の勾留は、12月20日で終了し、両氏は、当初の逮捕勾留事実での「起訴後の勾留」だけとなった。
今日にも、弁護人が保釈請求し、ゴーン氏の保釈の可能性が高まったと見られていた矢先、衝撃のニュースが飛び込んできた。
特捜部が、ゴーン氏を特別背任で再々逮捕したというのだ。
再々逮捕容疑に関する疑問
逮捕容疑は、

  1. ゴーン氏の資産管理会社と銀行の間の通貨のデリバティブ金融派生商品)取引の契約で多額の損失が発生したため、2008年10月、契約の権利をゴーン氏の資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損を負担する義務を日産に負わせた疑い
  2. その際に信用保証に尽力した関係者が経営する会社に対し、2009年6月〜2012年3月の4回、日産の子会社から計1470万ドル(現在のレートで約16億3千万円)を入金させた疑い

の二つだとのことだ。
しかしこれらの特別背任の刑事立件には、多くの疑問がある。
1.の事実は、行為から10年を経過しており、通常であれば、特別背任の時効が完成している。海外にいる期間は公訴時効が停止するが、ゴーン氏の場合、海外にいた期間が3年以上あったということで、一応、時効は完成していないとは言えても、経理書類の保存期間が原則7年、「会計帳簿及びその事業に関する重要な資料」等の保存期間が10年間と定められていることもあって、通常は、犯人の海外渡航期間があったからと言って、10年も前の事件を刑事事件として立件することはしない。
しかも、多額の損失が生じた契約の権利をゴーン氏の資産管理会社から日産に移すことで、日産が損失を被る危険性はあったことは確かだが、実際は、その後、契約は元に戻されているので、損失は発生していない。損失が発生していないのに、特別背任で刑事立件された例というのは、聞いたことがない。
また、その話は、そもそも、銀行側が、担保不足を解消するための措置を要求したことが発端で、それに対応する措置として行われたものだと考えられる。しかもそこには社内手続や取締役会での承認等、様々な経緯があり、それによって、仮に、背任に当たる余地があるとしても、そこに関係する人間の範囲は無限に拡大する。決して、ゴーン氏が一人で行えるような行為ではないはずだ。
2.の事実については、詳細が不明であり、現時点は何とも言えないが、いずれにしても国際的な取引に関連する資金の動きに関する問題なので、単純に刑事事件としてとらえられるような話ではないように思える。
捜査の経緯からして特別背任の刑事立件が予定されていたとは思えない
それ以上に重要なことは、捜査の経緯から考えても、この特別背任の容疑について、刑事立件が予定されていたとは思えないということだ。
ゴーン氏らの逮捕勾留事実は、2015年3月期までの5年間の「退任後の報酬の合意」についての有価証券報告書虚偽記載の事実だった。これについては、ゴーン氏の逮捕当初から、有価証券報告書虚偽記載は「入り口事件」であり、特捜部は、特別背任など「実質的犯罪」の立件を予定しているとの観測があった。もし、特別背任が立件可能なのであれば、当初の逮捕事実で起訴した12月10日の時点で、特別背任で再逮捕したはずだ。
ところが、検察が、勾留満期の12月10日にゴーン氏らを起訴するとともに再逮捕した事実は、2018年3月期までの直近3年間の同じ虚偽記載の事実だった。
しかし、8年間にわたる「覚書」の作成は、同一の意思で、同一の目的で毎年繰り返されてきた行為なのであるから、仮に犯罪に当たるとしても、全体が実質的に「一つの犯罪」と評価されるべきものだ。それを、古い方の5年と直近の3年に「分割」して逮捕勾留を繰り返すというのは、同じ事実で重ねて逮捕・勾留することに他ならず、身柄拘束の手続に重大な問題が生じる。しかも、過去の5年分の虚偽記載を捜査・処理した後に、直近3年分を立件して再逮捕するとすれば、その3年分を再逮捕用に「リザーブ」していたことになる。それは、検察の常識を逸脱した不当な身柄拘束のやり方である。
検察も、本来であれば、そのような実質的に同一事実での逮捕勾留の繰り返しという不当な再逮捕を行いたくはなかったはずだ。しかし、その事実での再逮捕以外に、身柄拘束を継続する方法がなかった。だからこそ、直近3年分の同じ事実での再逮捕を行ったのである。少なくとも、12月10日の時点で、特別背任罪の立件が可能な状況だったとは思えない。
それに、今回の事件の捜査は、地方の地検から検察官の応援派遣を受けているとされている。応援検察官を年末には原庁に戻さなければならない。20日の勾留期間が年末年始にかかる12月10日以降に新たな事実で再逮捕すれば、年末年始休暇返上で捜査を継続することになる。そのような捜査スケジュールは、検察の常識からはあり得ない。その点から考えても、12月10日の時点で特別背任の刑事立件が可能と判断していたのであれば、絶対に、その時点で、特別背任で再逮捕していたはずだ。
検察は、直近3年間の虚偽記載という「無理筋」の再逮捕事実で勾留延長を請求して却下され、準抗告まで行っている。もし、再逮捕後の10日間の捜査で特別背任の立件が可能になったというのであれば、勾留延長など請求せず、その時点で特別背任で再逮捕すれば良かった。
勾留延長請求却下で追い込まれていた検察
勾留延長請求が却下され、準抗告も棄却され、検察は、確実に追い詰められていた。
検察にとって衝撃的だったのは、これまで特捜事件で検察の主張を否定することなどあり得なかった東京地裁が、勾留延長請求の却下によって、検察とは大きく異なる判断を示したことだ。
延長請求を却下したのは、その時点で刑事処分を決めることができず、さらに身柄拘束を続ける必要があることについて「やむを得ない事情」がないと判断されたからだが、それは、そもそも、「有価証券報告書虚偽記載」の刑事事件としての重大性などについて、裁判所が検察の主張を十分に理解してくれなかったためだ。
検察は、準抗告を申立て、他の裁判官の判断を仰いだ。しかし、判断は同じだった。これによって、検察は、再逮捕事実での勾留期間が満了し、当初の逮捕事実での「起訴後の勾留」だけになると、ゴーン氏が保釈される可能性が高いことを覚悟せざるを得なくなった。
もし、保釈されてゴーン氏が公の場に出てくることになると、検察捜査に対して、そして、日産経営陣のクーデターに対して、厳しい批判を行うことは必至だ。代表取締役会長の地位を奪われたとはいえ取締役の地位に残っているゴーン氏が、検察や日産経営陣に対して「反撃」し、国際的批判が一層高まることは、検察にとって重大な「脅威」だったはずだ。
上記のような捜査の経緯から、特別背任での刑事立件には問題があり、再逮捕は予定されていなかったが、勾留延長請求却下、準抗告棄却で、ゴーン氏の保釈が不可避となり、追い詰められた検察が、急遽、「無理筋」を承知で、しかも、捜査班の年末年始休暇をも犠牲にして、特別背任による再逮捕に踏み切ったということだと考えられる。
上記のとおり、今回の、ゴーン氏の再々逮捕は、検察組織内での判断だけで行える「逮捕権」を、検察が「組織防衛」の目的で使ったとすれば、「権力者ゴーンが日産を私物化している」と批判している検察こそ、「権力を私物化」したことになる。
今後のゴーン氏再々逮捕後の検察捜査の展開を、我々は、冷静に注意深く見守っていく必要がある。

政府、沖縄県を通さない交付金を新設 直接市町村に配分 県の自主性を弱める懸念 - 琉球新報(2018年12月21日)


https://ryukyushimpo.jp/news/entry-851997.html
http://archive.today/2018.12.21-074104/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-851997.html

【東京】政府が2019年度の沖縄関係予算案に、沖縄振興一括交付金の補完を名目にした「沖縄振興特定事業推進費」を盛り込むことが20日、分かった。事業費は30億円。関係者によると、県が市町村への配分額を決める一括交付金と異なり、県を通さない新たな交付金として、国が市町村へ直接費用を充てられるという。市町村事業への予算配分で国の直接関与を強め、沖縄県の自主性を弱める懸念も含み、今後議論になりそうだ。
同推進費は予算案で新たに盛り込まれた。
新設の目的として、市町村の事業に迅速・柔軟に対応して推進するとしている。
政府は19年度沖縄関係予算案を3010億円とする方針を固めている。総額では18年度当初予算と同額となるが、このうち一括交付金は前年度比95億円減の1093億円と縮減され、12年度の制度創設以降、最も低い額となる。

(パリ発)警察官たちが大統領府にデモ 「我々は共和国を守ってるんだ、マクロンを守ってるんじゃない」 - 田中龍作ジャーナル(2018年12月21日)

http://tanakaryusaku.jp/2018/12/00019335

ついに警察官までもが立ち上がった―
「このままでは共和国を守れない」。治安組織がガタガタになっているのにもかかわらず、それを改善しようとしない政府に危機感を抱く警察官たちが、20日夜(日本時間21日朝)、大統領府のエリゼ宮にデモを掛けた。
デモを掛けたのは「MPC=怒る警官たちの運動」が中心。MPCは2016年に起きた警察官への火炎ビン襲撃事件を機にできた組織だ。デモには黄色いベストたちも加わった。総勢で約100人。
警察官のデモ隊は、グランパレ前広場を出てエリゼ宮を目指したが、同僚の機動隊員に阻まれた。針路を変え凱旋門に向かったが、またもや機動隊に阻まれたため、シャンゼリゼ通りに座り込んだ。
田中は怒れる警察官たちにインタビューした。フランスという一等国の治安組織が、あまりにお粗末であることに、驚きかつ呆れた。
彼らが口々に語っていたのは、警察予算の不足による機材や装備のひどさだ。ヘルメット、プロテクター、手錠などが満足にないため、自腹を切って揃えなければならない、という。署の車両は故障続きだそうだ。
同僚の機動隊員を背に座り込んだ警察官。写真奥に凱旋門。=日本時間:21日午前7時過ぎ、シャンゼリゼ通り 撮影:田中龍作=

パリ警視庁に勤務する20代の警察官は「黄色いベストの人数がもっと多かったら危なかった」と振り返った。「このままでは共和国を守れない」と深刻な危機感を言葉にした。
彼は感情が激したのか、本音を語った。「我々は共和国を守ってるんだ。マクロンを守ってるんじゃないんだ」と。
手りゅう弾や催涙弾を放つ訓練を3〜4回しただけで、実戦に投入される。未熟なため手加減を知らない。そのためデモ参加者に弾が直接あたって死傷者を出す。
先月から始まった5波にわたる大がかりなデモで、警察官たちは早朝から深夜まで警備にあたってきた。その残業代が払われていないことにも不満が鬱積している。
凱旋門と機動隊を背に座り込んだ警察官(30代)は無念そうに語った。「国家が危ない状況にあった時、我々は一所懸命守ったのに、国家は我々に何もしてくれなかった」。
別の警察官(20代)は「同僚たちは黄色いベストの要求が理解できると言っている」と明かした。
マクロン政権は120〜150ユーロの賃上げを口約束することで警察労働組合の離反を防いだ。月1万数千円の賃上げでも、労組のトップを裏取引で丸め込むことはできる。だが、警察官のマジョリティーを納得させることは難しい。
警察組織と黄色いベストが合流した時、マクロン大統領は治安維持を軍に要請するしかなくなる。

〜終わり〜

    ◇
フランスは日本と同じ社会事情になっています。金持ち優遇のマクロン政権と安倍政権が同じ政治手法を取っているからです。
「アベシンゾーに野垂れ死にさせられる前に、マスコミが報道しない本当のことを伝えたい」。田中はクレジットカードをこすりまくってパリまで来ました。大借金です。ご支援何とぞ宜しくお願い致します… http://tanakaryusaku.jp/donation

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ゴーン前会長を特別背任容疑で再逮捕 東京地検特捜部 - NHK(2018年12月21日 10時42分)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181221/k10011755241000.html

日産自動車カルロス・ゴーン前会長が、10年前のリーマンショックで生じた私的な投資での18億円余りの損失を日産に付け替えるなどしていた疑いがあるとして、東京地検特捜部は日産に損害を与えた特別背任の疑いで再逮捕しました。
東京地方裁判所20日、ゴーン前会長らがみずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載した容疑について、勾留の延長を認めない決定をしていました。

ゴーン前会長、きょうにも保釈 東京地裁、異例の決定 勾留延長を却下 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000126.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0904-51/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000126.html


日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で再逮捕された事件で、東京地裁は勾留期限の二十日、同被告と、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)について、東京地検が請求していた勾留の延長を却下した。地検は同日、決定を不服として準抗告し、地裁は準抗告も退けた。二十一日にも保釈される可能性がある。
世界的なカリスマ経営者の逮捕は衝撃をもって国内外に伝えられ、海外メディアからは長期勾留への批判が高まっていた。検察当局の勾留延長請求が認められないのは異例。ゴーン被告は弁護人を通じ「裁判所には適切にご判断いただいた」とコメントした。
ゴーン、ケリー両被告は十一月十九日、二〇一五年三月期までの五年間、ゴーン被告の実際の役員報酬が計約百億円だったにもかかわらず、日産の有価証券報告書に計約五十億円とうその記載をしたとして、地検特捜部に逮捕された。今月十日には、計約五十億円の不記載罪で起訴されるとともに、直近の一八年三月期までの三年間でも約四十億円を記載しなかったとして、再逮捕されていた。
地検の勾留請求を受けた地裁は翌十一日、十日間の勾留を決定。二十日が勾留の期限だった。
特捜部は不記載だった報酬について、ゴーン被告が退任後に受け取ることを決めていたとみている。両被告は事実関係をおおむね認めているものの、「受け取ることは確定していなかった」と容疑を否認している。


◆地裁、準抗告も退ける
東京地検は勾留延長請求を却下され、即座に東京地裁準抗告したが、地裁は別の部が準抗告審を開き、再度勾留延長を認めなかった。
ゴーン被告らの再逮捕容疑での勾留は、二十日で終了。身柄を拘束する法的根拠は、既に起訴されたことによる「起訴後勾留」だけとなる。
地裁が弁護人からの保釈請求を認めれば、早ければ二十一日にも保釈される可能性が高い。

ゴーン前会長、きょうにも保釈 法の定める条件 厳格判断 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000125.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0906-26/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000125.html

カルロス・ゴーン被告とグレゴリー・ケリー被告について東京地裁は、検察側が求めた勾留延長を認めないという異例の決定を出した。両被告が事実関係をおおむね認めている上、再逮捕容疑は最初の逮捕とほぼ同じ。地裁はこういった事情を考慮し、法律が定める許可条件を厳格にとらえ、さらなる身柄拘束の必要はないと判断したもようだ。
刑事訴訟法は、逮捕された容疑者が十日間勾留された後、裁判官が「やむを得ない事由がある」と判断した場合に限り、延長が認められると定めている。
通常の経済事件などでは、裁判所が勾留延長を認め、容疑者は計二十日間勾留されるケースが多い。
軽微な事件の場合は延長が認められないこともあるが、検察当局が威信をかける特捜事件での却下は異例だ。
ある元特捜検事の弁護士は「却下は聞いたこともない。いつもこちらの要求通りに延長を出してくれていた」と驚く。元裁判官も「大きな事件では延長を認めるのが通例」としつつ、「既に捜査は尽くされていると判断したのだろう」と推察した。
今回の勾留にかかる再逮捕容疑は、ゴーン被告の報酬を虚偽記載したというもの。最初の逮捕も、容疑事実の時期こそ違うが、構図は同じだ。
さらに、両被告は「記載義務はなかった」と否認しているものの、ゴーン被告の報酬の一部を記載しなかったことや、不記載分を退任後に受け取ろうとしていたことなど、事実関係はおおむね認めている。
あるベテラン裁判官は「同じ虚偽記載でも、再逮捕分は時期など内容が異なるから、一度は勾留を認めたのだろう。今回は、延長までして強制捜査を続ける必要はないと判断したのではないか」とみる。
法曹関係者には、「裁判官が世論を意識したのだろう」とみる向きもある。
欧米のメディアを中心に、長期勾留への批判が高まっていることも、地裁の判断に影響した可能性がある。 (池田悌一、蜘手美鶴)

「却下とは」検察衝撃 元判事「捜査機会もう十分」 ゴーン前会長 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000137.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0907-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000137.html

逮捕が世界に衝撃を与えた日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が、保釈される可能性が出てきた。東京地裁東京地検の勾留延長請求を却下した二十日、検察幹部からは「理解に苦しむ」と驚きと怒りが。今後、どのような条件を満たせば、保釈につながるのだろうか。 (山田雄之、蜘手美鶴、小野沢健太)
「裁判所は司法の独立を自ら失った」。ある検察幹部は、勾留延長を認めない決定に、いら立ちをあらわにした。
長期間の勾留は、自白を得るための「人質司法」だとして、海外メディアの批判の的となった。幹部は「決定の大きな要因だと思う。裁判所は世論と離れることを気にした。ゴーン被告でなかったら、延長は認められていた」と憤る。
計八年分の虚偽記載容疑を二回に分けての逮捕に、「捜査の実情を知らなければ、計四十日間の勾留は理解に苦しむのかもしれない」と話す幹部も。別の幹部は「勾留が数日減ることは覚悟していたが、却下とは…」とぼうぜん。「事件の状況や証拠は、容疑事実の年ごとに異なるのだが」と嘆いた。
保釈の可能性が浮上し、上級庁の幹部は「ルノー最高経営責任者の立場があるので、逃亡の恐れはないと思うが、任意の取り調べは難しくなるだろう」と、捜査への影響を案じた。
地検の久木元伸(くきもとしん)次席検事は二十日の定例記者会見で「必要だと思って勾留延長を請求したので、影響はあると思う。最善を尽くしたい」と話した。
一方で、元東京高裁判事の木谷明弁護士は取材に「勾留延長の却下は、驚くべき判断ではない。ゴーン氏は外形的な事実を認めている。争点は、不記載分の報酬支払い約束が確定的なものだったかどうか。その点では最初の五年分も直近の三年分も同じで、もう十分に捜査の機会があったと考えられる」と指摘。「外国からの批判も受け止め、検察からの勾留請求をフリーパスしてきた、従来の裁判所の姿勢を反省する絶好の機会になるのでは」と語った。

プーチン氏「日本の決定権に疑問」 北方領土と米軍基地 - 朝日新聞(2018年12月21日)

https://digital.asahi.com/articles/ASLDN6G0TLDNUHBI02R.html
http://archive.today/2018.12.21-011119/https://www.asahi.com/articles/ASLDN6G0TLDNUHBI02R.html

ロシアのプーチン大統領は20日に開いた年末恒例の記者会見で、ロシアが北方領土を日本に返した場合に米軍基地が置かれる可能性について、「日本の決定権に疑問がある」と述べた。安倍晋三首相はプーチン氏に北方領土には米軍基地を置かない方針を伝えているが、プーチン氏は実効性に疑問を呈した形だ。

北方領土交渉と日米安保条約に関する共同通信記者の質問に答えた。

プーチン氏は、米軍基地問題について「日本が決められるのか、日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘。「平和条約の締結後に何が起こるのか。この質問への答えがないと、最終的な解決を受け入れることは難しい」とし、北方領土に米軍基地が置かれる可能性を含め、日米安保体制がもたらすロシアの懸念が拭えていないとの認識を示した。
日本の決定権を疑う例として沖縄の米軍基地問題を挙げ、「知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに、基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」と話した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる問題を指した発言だ。
プーチン氏は、日本が米国から導入を計画する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」についても、日本の防衛システムではなく「潜在的に米国の戦略核の一部だ」として導入に懸念を示した。
ただ、「平和条約のない現状が正常でないことは双方とも十分に認識している」とし、「我々には正常化が極めて重要だ」と平和条約の交渉には意欲をみせた。
日本外務省関係者は20日夜、プーチン氏の発言について、来年1月の日ロ首脳会談を前に日本側を牽制(けんせい)したとの見方を示した。防衛省幹部はイージス・アショアへの発言について、「ロシア側には日本の防衛のためのものだとこれまでも伝えてきている」とし、「意図が理解できない」と述べた。
一方、日本政府関係者は20日、河野太郎外相とロシアのラブロフ外相による平和条約交渉を来年1月14日にモスクワで行うことを明らかにした。首相とプーチン氏は今月1日の会談で両外相を交渉責任者、森健良外務審議官とモルグロフ・ロシア外務次官を交渉担当者とすることで一致していた。(モスクワ=喜田尚)

防衛費増大に抗議声明 大学教授ら「人権規約に反する」 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000132.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0908-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122102000132.html

米国製兵器の輸入拡大で防衛費が毎年増加している問題で、申惠〓(しんへぼん)青山学院大教授(国際人権法)らが二十日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見し「政府が米国などから莫大(ばくだい)な額の兵器を買い込む一方で、生活保護費や年金の切り下げ、貧弱な教育予算を放置することは、憲法の平和主義、人権保障だけでなく、国際人権規約に反する」との抗議声明を発表した。 (山本哲正)
声明は申さんら十八人の大学教員や弁護士が呼び掛け、東京大大学院の高橋哲哉教授(哲学)、小林節慶応大名誉教授(憲法学)、伊藤真弁護士ら約二百十人が賛同者に名を連ねた。
声明では、安倍政権は史上最高規模の防衛予算を支出し、その補填(ほてん)として補正予算も使っているのは、憲法の財政民主主義に反すると指摘。「主要先進国で最悪の財政状況にある日本にとって、米国の赤字解消のため借金を重ねて巨額の予算を費やすのは常軌を逸している」と批判している。
一方で「政府は生活保護費の減額で予算削減を見込んでいるが、米国からの野放図な兵器購入を抑えれば必要なかった」と指摘。「社会保障や適切な生活水準の権利の実現を後退させることは、国際人権規約に反する」とした。
申さんは会見で「巨額の武器を米国の言い値でローンまで組んで買うのが問題。貧困・格差が広がっており、財政破綻しないように限られた予算をどれだけ防衛費に割くか、真剣に考えないと。中国が軍事力を増やすからと張り合えば、際限のない軍拡競争。十九世紀に逆戻りだ」と話した。 

国際人権規約> 1948年の「世界人権宣言」を条約化し、66年に国連総会で採択され、76年に発効した。社会保障を受ける権利や教育を受ける権利、労働権などを定めた「社会権規約」と、差別の禁止や思想、言論の自由などを定めた「自由権規約」の二つから成る。

目黒女児虐待死事件 「かわいそう」で終わらせないで:東京 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018122102000124.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0910-07/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018122102000124.html

児童養護施設などを退所した若者のアフターケア相談所「ゆずりは」(国分寺市)の高橋亜美所長(45)が今月、三月に発覚した目黒の女児虐待死事件への思いをつづった詩集絵本「はじまりのことば」を、墨田区の出版社「百年書房」のすーべにあ文庫から著した。六月に公表され、数多く報じられた五歳の女児が「もうおねがい ゆるして」などと書いたノートは本人の意思によるものではないとの持論を示し、「かわいそう」で終わらせてはいけないと訴えている。 (井上幸一)
収録された詩では、「5歳の少女が/ひらがなだけの文章を書いて/生きたいと願っていた― 本当だろうか?」と疑問を呈し、(中略)「言われるがまま/覚えたてのひらがなを/使って書かされた/ぬけがら」とつづった。
高橋さんは、あのノートを女児の「心の叫び」とし、「かわいそう」とあおる風潮が虐待の根にある問題を見えづらくすると指摘。虐待している親の回復プログラムを実践してきた経験などから、「子どもを助けるためには、まず親を」と主張し、気持ちがほどけるような「(親や子どもらへの)はじまりのことば」こそが必要とする。
一方で、今回の著書には、少女のノートの文章も収録した。「全ての感情が奪われた抜け殻のような文字から、虐待が命の前に、子どもの魂を奪っていると感じた。すごく心を動かす一方、あそこには心も何もなかった。だから、そういうものとして残すことに意味があると考えた」という。「あのとき流した涙を、一人一人の胸の内に持ち続けてほしい」と呼びかける。

刊行に当たっては、「百年書房」の藤田昌平代表(49)が女児のノートをすぐに文庫化したいと、高橋さんに相談。高橋さんは「児童虐待は、私たちにとって日常にある問題。目黒の事件が特別ではない」と、当初あまり積極的ではなかったという。その後、ノートが誤解、誤読されたまま事件が風化しているとの高橋さんの見解を聞き、「あの時に何を思ったかを残すために、やはり本にまとめることになった」と藤田さんは説明する。
児童養護施設で関わった少年少女の声を代弁してつづった「はじめてはいたくつした」「嘘(うそ)つき」(ともに百年書房刊)に続き、高橋さんの虐待に関する詩集絵本は三冊目。来年以降、これらの本を携えて、朗読や講演などで全国行脚する予定もあるという。
「はじまりのことば」は五百円(税別)。問い合わせは、百年書房=電03(6666)9594=へ。

無償化費50% 高所得層分 幼保試算、低所得世帯には1% - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122102000153.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0911-17/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122102000153.html

政府が来年十月から予定している幼児教育・保育の無償化で、対象となる子育て世帯の所得階層ごとにかかる費用の内訳が二十日、分かった。内閣府が子どもの人数や世帯年収を基に試算した。認可保育所の場合、住民税非課税の低所得世帯に充てられるのは費用全体の1%にとどまる一方、年収六百四十万円を超える世帯に50%が配分されるとの結果だった。
低所得世帯には既に減免措置が導入されているほか、もともと保育所の利用料は収入が多いほど高くなる仕組みのため、結果的に高所得層が恩恵を受ける形となった。政府は無償化を、保護者の収入にかかわらず幼児教育や保育の機会を保障する仕組みだと強調するが、野党は「金持ち優遇策だ」と主張しており、批判を強めそうだ。
試算によると、認可保育所の無償化には全体で年四千六百六十億円かかる。所得階層別に配分額を見ると年収約二百六十万円までの非課税世帯には計五十億円(全体の1%)、三百三十万円までに計百七十億円(4%)など。約四百七十万円を超え約六百四十万円までの世帯には計千五百二十億円(33%)、六百四十万円を超える世帯に計二千三百二十億円(50%)だった。
生活保護世帯は現在も利用料が免除されているので、無償化に伴う新たな費用は生じない。幼稚園についても試算しており、同様に所得の高い層ほど配分される費用が多くなる傾向だった。

大量雇い止め 日系人は置き去りか - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122102000169.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0912-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122102000169.html

シャープ亀山工場の日系外国人の大量雇い止めは、十年前のリーマン・ショックで起きた事態と重なる。政府は新たな外国人労働者の受け入れを急ぐあまり、日系人を置き去りにしてはならない。
シャープ亀山工場では、スマートフォン部品の生産が今年に入って親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業の中国拠点へ移った。このため三次下請け会社を通じ働いていた日系人が次々と仕事を失った。二千九百人にも及んだという。
短期契約を繰り返す非正規雇用の雇い止めは、二〇〇八年のリーマン・ショックによる不況で社会問題になった。日本人だけでなく、多くの日系人が失業して住まいを追われ、帰国を余儀なくされる人たちも続出した。
そもそも日系人は定住者である。一九九〇年に二世や三世の定住資格が認められて以降、南米から多くの人が全国のものづくりの街に仕事を求めてやってきた。職業に制限はなく、来年四月から人手不足のため新たに受け入れる外国人とは位置付けが異なる。
南米からの定住者や永住者は計二十五万人ほど。正規雇用の職を得る人も増えているが、言葉の壁や子の教育など住み続ける上での課題はまだ多い。政府はリーマン後の〇九年、定住支援の取りまとめ組織を設けて共生に取り組む姿勢を示したが、具体策の多くを自治体任せにしてきた。今回の雇い止めでは、三重県が三重労働局から情報を受けながら放置する連携不足も明らかになり、問題発覚後に県は対策チームを立ち上げたばかり。十年たっても日系人が弱い立場にあることを示している。
先の国会で成立した改正入管難民法は、人手が特に足りない産業分野で新たな在留資格「特定技能」を設け、外国人労働者を増やす目的がある。政府は、技能実習生の移行を含めアジア各地からの受け入れを想定し、正規雇用や日本人と同等の報酬など環境整備を急いでいる。日系人を含む外国人の受け入れ・共生を進める対応策は近くまとまるが、特定技能の労働者対策に偏らないか懸念が残る。
三十年近く前に受け入れを拡大した日系人は、今も景気の波に左右されている。特定技能の受け入れとは分けて支援を考えるべきだ。既存の策で足りない面を検証し、より定住しやすい仕組みづくりを進めるべきだろう。この反省がなければ、新たな外国人労働者への対応も場当たり的となり、労働力の「調整弁」として依存する構図は変わらない。

(筆洗)法王フランシスコが来年の終わりごろに訪日し、被爆地の広島と長崎を訪れる - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018122102000128.html
https://megalodon.jp/2018-1221-0926-27/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018122102000128.html

第二次大戦末期のヤルタ会談で、ポーランド共産化に話が及んだ。ソ連スターリンはこう話したと伝えられる。「法王がいったい何個師団を持っていると言うんだ」
ローマ法王バチカンに自前の軍はない。知らないはずはなかっただろうが、独裁者は武器を持たぬ国と法王の力を正しく見積もっていなかったようだ。ポーランド生まれの法王ヨハネ・パウロ二世は冷戦期に、外交と言葉の力で、母国の民主化と冷戦終結の立役者となる。
いまなお師団こそ持たないが、世界の目をひきつける力は持ち続けているであろう。法王フランシスコが来年の終わりごろに訪日し、被爆地の広島と長崎を訪れるという。実現すればヨハネ・パウロ二世以来、二度目の法王訪日だ。
就任後から、核兵器廃絶をくり返し訴えてきたフランシスコである。被爆者と会い、被爆地で撮影された「焼き場に立つ少年」と呼ばれる写真をカードにして配ったことがある。
日本に布教したイエズス会から出た初の法王でもある。若いころから、日本行きを熱望していたそうだ。今年、世界文化遺産への登録で注目を集めた潜伏キリシタンの地を訪れる。歴史の縁と巡り合わせを感じさせよう。
米ロ間で、朝鮮半島で、混迷し停滞する核軍縮である。軍を持たないがゆえに多くを語れる。そんな人の何個師団にも匹敵する力のある言葉が求められる時だろう。

就労外国人 政府の生活支援策 主体性の乏しい寄せ集め - 毎日新聞(2018年12月21日)

 
https://mainichi.jp/articles/20181221/ddm/005/070/130000c
http://archive.today/2018.12.21-001338/https://mainichi.jp/articles/20181221/ddm/005/070/130000c

外国人労働者を巡る政策は、出入国管理と社会統合政策が2本柱だ。前者を先行し、後者を後回しにしてきた安易な姿勢がそのまま示されたと言えよう。
政府は、外国人材を受け入れるための総合的対応策をとりまとめた。生活支援策が中心になっている。
改正入管法は、法務省令に内容を委ねられた部分が多く、国会で議論すべき材料が示されてこなかった。とりわけ、外国人労働者の生活支援策は法律の根幹であるべきだった。それが今回、遅れて出てきた。
対応策は計126項目に上る。項目は大きく、医療や生活サービス、社会保障日本語教育、雇用環境の整備などに分かれている。外国人労働者支援がいかに大きな政治テーマであるかがよく分かる。
泥縄対応の限界示した
しかし、来年4月からの労働者受け入れありきを優先させ、体系立った政策になっていない。支援策の策定を後回しにした政府の泥縄対応の限界と準備不足が表れている。
都道府県庁所在地など全国100カ所に「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を設置する。約20億円の予算を充てるという。
雇用や医療、福祉など外国人の幅広い悩み相談に対し、国の出先ではなく自治体が対応するプランは現実的だ。多言語での対応を掲げていることも理解できる。
ただし、自治体が手を挙げれば設置が認められるのか、設置場所はどこを想定しているのかなど具体的な形が示されていないことに自治体からは懸念の声が出ている。
多言語に対応するための人材確保策も容易ではないだろう。これまでのように自治体に対応を任せきりにすることは許されない。
対応策の中で、とりわけ不安を抱かせるのは、日本語教育をめぐる施策の不十分さだ。
日本人と外国人が円滑にコミュニケーションがとれる環境を作ることは、安定した暮らしを営むうえで不可欠な要素だ。災害大国である日本で安心して暮らすためにも必要だ。
「特定技能」の在留資格を取得するためには、日常会話以上の日本語能力が求められる。そのための能力判定テストを人材受け入れのニーズが高い9カ国で実施すると対応策は記す。だが、送り出し国で試験をどうやって実施していくのか。そのシステムは説明されていない。
受け入れ後の日本語の習得に関しても施策は不十分だ。放送大学やNHKの日本語教材、さらに夜間中学の活用などを羅列している。
だが、既に自治体やNPOなどが取り組みを進めているものが多い。新鮮味に乏しい。
「特定技能」の資格を取得する労働者は、相当の部分が現行の技能実習生から移行するとみられている。日本語教育にコストをかけずに済まそうとしているとすれば問題だ。一定時間の日本語講習を公的に保障する制度の導入を改めて求めたい。
共生策をもっと明確に
全国に700校近くある日本語学校については、悪質な事業者が存在することを前提に管理の厳格化をうたっている。一方で、多くの外国人を迎え入れる以上、財政的支援によって教師の質を高めるなど後押ししていく方策を探ることも重要だ。
126項目の生活支援策は、各省庁が出してきた政策の寄せ集めに過ぎず、十分に吟味されていない。ワンストップの相談窓口にしろ、日本語教育にしろ、どこが主体的に実施していくのかが不明確だ。
外国人労働者との共生を実現しようとする決意も前面に出ていない。法務省が所管することの限界を示している。外国人を社会に統合させていく施策を担うのにふさわしい組織がやはり必要だ。
増加し、滞在も長期化する外国人労働者社会保障の手立てをどう講じていくかが今後大きな課題になる。長ければ10年にも及ぶ労働者の滞在期間のさらなる長期化も見据え、年金や医療などの制度を構築する必要がある。
例えば「特定技能」の場合、転職した場合の保険証の切り替えなどが複雑になる。対応策を見てもこうした課題に対応し切れていない。企業の従業員が加入する健康保険の対象を海外に住む家族に適用するかどうかの法整備も次の国会に委ねられた。課題の早急な解決が必要だ。
理念を明確にし実現するためにも、支援策を国会で議論し、立法化することを求める。

一票の格差 不平等の解消は程遠い - 朝日新聞(2018年12月21日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13820821.html
http://archive.today/2018.12.21-001516/https://www.asahi.com/articles/DA3S13820821.html

最大1・98倍の一票の格差があった昨秋の衆院選について、最高裁大法廷は「法の下の平等を定めた憲法に違反するとはいえない」と判断した。
この間の国会の格差是正の取り組みに合格点を与えた形だ。だがその理由を点検すると、投票する有権者よりも、選ばれる議員・政党の利益や都合をおもんぱかった判決と言わざるを得ず、到底納得できない。
09、12、14年の衆院選を、最高裁が続けて「違憲状態」と断じたのを受け、国会は16年に公職選挙法を改めた。そこで導入が決まったのが、都道府県の人口に比例して議席を配分する方式のひとつである「アダムズ方式」だ。大法廷はこれを「格差を縮小させ、その状態が安定的に持続する」と評価した。
甘さに驚く。実際にこの方式で選挙が行われるのは、20年秋の国勢調査の結果がまとまった後だ。議員への影響を懸念した自民党の主導で先送りされたのだ。昨秋の衆院選は、経過措置として「0増6減」などの小幅な是正をしただけで実施された。なぜそれが「評価」されなければならないのか。
しかもアダムズ方式も万全ではない。人口の多い都道府県への議席の割り当てが少なくなる欠陥をかかえている。
15裁判官のうち4人が、多数意見とは別の見解を述べた。
「2倍もの格差があるのに不平等でないというのは常識に反する」「まだ実施されていない法律を考慮すべきではない」「国会が投票価値の平等に向けて真摯(しんし)に行動していれば、是正は十分可能だった」――。
こちらのほうが真っ当で、胸にすとんと落ちる。
一票の価値が不平等では、国民主権を実現する最も重要な手段である選挙で、反映すべき民意が正確に測れない。統治機構全体の正統性もゆらぐ。
国会はこの原点に立ち、公選法に明記されている「不断の見直し」に取り組み続ける責務がある。今回の合憲判断をお墨付きとして、格差の是正に背を向けることがあってはならない。
実際に心配な動きがある。
自民党改憲項目の中に、市区町村が複数の衆院選挙区に分割されないようにする内容を滑り込ませた。一票の格差縮小のためには分割はやむを得ない措置だが、それをできなくしてしまおうという案だ。区割りの変更を嫌がる議員側の事情を優先させた党利党略そのものだ。
司法がチェックの手を緩め、安易に流れてしまったいま、有権者はこれまで以上に監視の目を光らせなければならない。

(県民投票「実施せず」)住民の投票権奪うのか - 沖縄タイムス(2018年12月20日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/361494
https://megalodon.jp/2018-1221-0915-46/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/361494

新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票について、宮古島市の下地敏彦市長が実施しない考えを明らかにした。
「議会の意思を尊重する」というのが理由だ。
宮古島市議会は18日、県民投票に関する部分を削除した予算案を賛成多数で可決。下地市長が議決のやり直しを求めて「再議」となったが、同様に削除した修正案が賛成多数で可決された。その後、市長は不実施を表明した。
県民投票は学生や弁護士ら市民有志が9万2848筆の署名を集め、県に条例制定を請求したものだ。署名は必要数である有権者の50分の1を大きく上回り、宮古島市でも有権者の1割近い4184筆が集まった。
下地市長には寄せられた署名の重さと、条例や地方自治法に定める執行義務を再確認してもらいたい。
「二元代表制」をとる地方自治体で、選挙によって選ばれた市長が、直接的に「政治責任」を負うのは住民だからだ。
県議会で制定された県民投票条例13条は、投票資格者名簿の調製や投開票の実施を「市町村が処理すること」と定めている。
地方自治法177条は、市町村の義務的経費を議会が否決した際、首長は再議に付し、再び否決された場合は、自ら予算を計上し「支出することができる」と規定している。
住民の基本権である投票権が議会によって奪われることになれば、地方自治は大きく揺らぐ。
下地市長には再考を求めたい。

    ■    ■

市民の「意思表示する権利」を奪うとの指摘に対し、下地市長は「大多数の議員が反対したということは、市民の意見がそこに集約されている」と持論を展開した。論理に飛躍と決めつけがあり、合点できない。
辺野古移設に反対する知事の考え方は県民が広く支持している」とも語ったが、民意がないがしろにされているからこそ、県民投票が必要なのである。
さらに「国の専権事項を侵すような形になる」との見解も明らかにした。基地建設など安全保障に関わる問題に、自治体や住民はどうこう言うべきではないとの考えなのだろうか。その発想もおかしい。
自治体が住民の生活を守る立場から、国に過重負担の軽減と公平・公正な扱いを求めるのは当たり前のこと。
全国の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中しているだけになおさらである。

    ■    ■

県民投票を巡っては、石垣市の中山義隆市長も議会で予算が否決された場合、実施しないことを明言している。宜野湾市議会もすでに反対の意見書を可決しており、実施が危ぶまれている。
自民党の国会議員や県知事は「辺野古反対」の選挙公約を当選後に破り、名護市や宜野湾市の市長は選挙で辺野古の移設の是非を語らなかった。
その上今度は自治体の首長が県民投票を拒否する。
本当にそれでいいのだろうか。