松橋事件、再審無罪へ 検察側「新たな立証はせず」 - 毎日新聞(2018年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20181220/k00/00m/040/087000c
http://archive.today/2018.12.20-091911/https://mainichi.jp/articles/20181220/k00/00m/040/087000c

熊本県宇城市(旧松橋(まつばせ)町)で1985年に男性(当時59歳)が刺殺された松橋事件で、殺人罪などで懲役13年に服した宮田浩喜(こうき)さん(85)の再審(裁判のやり直し)に向けた3者協議が20日午前、熊本地裁であった。検察側は新証拠の提出を断念し、殺人罪について有罪立証をしない方針を示した。同地裁で開かれる再審公判で無罪が言い渡されることが確実となった。初公判は2月8日で調整している。
3者協議は裁判所、検察側、弁護側が再審公判の進め方を話し合うもので、終了後、弁護団が検察側の方針を明らかにした。検察側は無罪求刑はしないものの、検察がこれまで提出した証拠を踏まえて最高裁が再審開始を認めており、熊本地裁が無罪判決を出すのは確実。主任弁護人の三角恒(こう)弁護士は「速やかな判決を求めたい」と語った。
宮田さんは当初、殺害を認め「シャツの左袖を切り取って凶器の小刀の柄に巻き付け、犯行後に布切れは燃やした」と自白。1審公判の途中から否認に転じ無罪を主張したが、確定判決は自白の信用性を認めた。
宮田さんは2012年に再審請求し、弁護団は確定判決後に熊本地検で証拠を閲覧した際に見つかったシャツ片などを証拠提出した。16年の熊本地裁、17年の福岡高裁は「燃えたはずのシャツ片」や、小刀の形状と遺体の傷が合わないことを示す法医学者の鑑定書を新証拠と認め「自白の信用性が揺らぎ、犯人ではない合理的疑いが生じた」として再審開始を決定。今年10月に最高裁で確定した。
検察側は再審請求審やその抗告審で、シャツ片について「実際に巻き付けられていたものとは別の布」と主張。傷と凶器の鑑定書についても「刺した方向や測定方法などで誤差が生じる」とする法医学者の供述調書を提出し反論していた。【清水晃平】

「松橋事件 再審は誰のために」(時論公論 清永聡 解説委員) - NHK(2018年10月17日)

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/307488.html

30年以上前の殺人事件で、先週、最高裁判所は、再審・裁判のやり直しを認める決定を出しました。「松橋事件」と言われ、犯人とされた男性は今後、この事件で無罪が言い渡される公算が大きいとみられます。
事件は、今の日本の再審制度が抱える問題点をいくつも含んでいます。この事件と制度の課題を考えます。
......

核ごみ処分場誘致派、南大隅町長側に800万円 選挙前 - 朝日新聞(2018年12月20日)

https://www.asahi.com/articles/ASLDL4JB9LDLUTIL023.html
http://archive.today/2018.12.19-234538/https://www.asahi.com/articles/ASLDL4JB9LDLUTIL023.html

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場をめぐり、鹿児島県南大隅町の森田俊彦町長(59)側に2009年、電力業界と関係があるとされる人物や町内の有力者ら3人から現金計800万円が提供されていたことがわかった。3人はいずれも町内への処分場誘致を推進する立場で、町長はその後、このうちの1人に処分場誘致を一任する委任状を書いていた。
現金を渡した3人は取材に「処分場を誘致してもらうため、選挙費用の要請があったので貸した」と話す。一方の森田氏は「個人の借り入れ。政治活動とは無関係」としている。誘致が進まないとして3人が昨年10月、現金を返すよう要求。森田氏は昨年11月、3人に計800万円を返金した。
国内に高レベル放射性廃棄物の最終処分場はない。経済産業省は昨年7月、適地を示す「科学的特性マップ」を初めて公表し、南大隅町はほぼ全域が「好ましい」地域とされている。
町は、前任の町長時代の07年に最終処分場の誘致を検討。森田氏は前任町長が引退表明した後の09年4月の町長選で初当選し、現在は3期目だ。
関係者によると、森田氏側は09年1月、東京都内の専門商社役員や町内の有力者ら3人から計300万円、町長選告示直前の同年4月3日にも同じ3人から計500万円、総額800万円を現金で受け取った。
森田氏の当時の選挙事務所責任者も取材に「選挙費用として受け取った」と証言。選挙運動費用収支報告書には記載しなかったといい、選挙運動に関する収支すべての記載を義務づける公職選挙法に違反していた疑いもある。町の収支報告書の保管期限は3年で、当時の報告書は残っていない。
森田氏は「個人の借り入れ」としているが、記録が残る14年以降の森田氏の資産等報告書の「借入金の総額」に800万円の記載はない。
森田氏は09年5月、現金を渡したうちの1人である東京都内の商社役員に、処分場誘致のための関係先との交渉などを一任するという内容の委任状を書いていた。このことが問題化するなどし、現在は、原子力関連施設の立地を拒否する立場を取っている。(沢伸也、野崎智也)

南大隅町ホームページより
位置及び面積
根占町、旧佐多町の両町で構成された南大隅町は、大隅半島の南部にあり、九州本島最南端の佐多岬を有しています。
北緯31度線を擁する町としては、カイロ、上海、ニューオーリンズニューデリーなどがあります。
南東側は大隅海峡、西側は鹿児島湾(錦江湾)に面しており、三方を海に囲まれた半島の先端の町であり、西には薩摩半島指宿市、南には種子島屋久島等があります。
面積は214平方キロで、鹿児島県全体の2.3%を占めますが、地域内の可住地面積比率は19%となっています。
http://www.town.minamiosumi.lg.jp/soumu/machi/machi/ichi/ichi.html

<税を追う>防衛省、米兵器ローン急増 支払い延期要請1104億円 - 東京新聞(2018年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122002000147.html
https://megalodon.jp/2018-1220-0909-20/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122002000147.html


防衛省が国内の防衛関連企業六十二社に二〇一九年度に納入される装備品代金の支払い延期を要請している問題で、要請総額が千百四億円に上ることが分かった。米国製の高額兵器の輸入拡大で、後年度負担と呼ばれる兵器ローンの返済が急増、一九年度予算で支出削減を迫られていた。企業の多くは要請に反発しており、最終的に支払いを延期できるのは数十億円程度にとどまるとみられる。 (「税を追う」取材班)
立憲民主党白真勲(はくしんくん)参院議員がこの問題に関する質問主意書を提出し、政府が十八日、要請総額を回答した。
複数の関係者によると、防衛省は十一月二日と五日の二回に分け、航空機や艦船の部品を扱う国内のメーカーや商社六十二社を同省に呼んで説明会を開催。一九年度に納入される部品の契約を変更して追加発注をする代わりに、代金の支払いは追加分が納入される二一〜二三年度に一括して行うと提案した。企業の多くは「資金繰りに影響が出る」などと要請に応じていないとされる。
この問題は十一月末に本紙報道で明らかになり、白氏が今月六日の参院外交防衛委員会で「支払いを待ってくれないと、予算がオーバーするのか」と追及。岩屋毅防衛相は「部品の調達量を追加するため」としながらも「過去にこのような事例はない」と異例の措置であることを認めた。
岩屋防衛相は「もし(支払い延期が)可能になっても十億円ぐらいの金額ではないかと思っている」と答弁しており、最終的に数十億円程度にとどまる可能性が高い。防衛省は支払い延期に応じた企業に追加発注する部品代の総額を一九年度予算案に計上する。
防衛省はこれまで、支払い延期要請の総額を明らかにしていなかったが、ある防衛関連商社の幹部は「数量や代金支払時期の変更は、大きな契約変更で内々でやる話ではない」と批判。今回、防衛省が一千億円を超す多額の支払い延期を求めていたことが明らかになり、兵器の輸入増大が防衛費を圧迫している実態があらためて浮き彫りになった。白氏は「米国製兵器の輸入で歳出が大幅に伸び、既存の装備品の大幅な支払い延期を求めるとは、本末転倒だ。新たな防衛大綱も米国製兵器の購入ありきになっていて、防衛省内で本当に必要なものを精査しているのか疑問だ。国会で説明を求めていきたい」と話している。


最高裁、国会に注文も 1票の格差「絶えず改善を」 - 毎日新聞(2018年12月19日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20181219/k00/00m/010/265000c
http://archive.today/2018.12.20-001107/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20181219/k00/00m/010/265000c


「1票の格差」を巡る訴訟で、最高裁大法廷は衆院選では11年ぶりとなる「合憲」判断を示した。最高裁は昨年9月、参院選についても合憲判断を出した。半世紀も続く選挙制度改革を巡る司法と国会の「キャッチボール」は終わるのか。
大法廷は2009年の衆院選を巡る11年判決で、各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」を格差拡大の原因と指摘し、「違憲状態」と判断。その後も国会に厳しい判断を示し続けた。だが今回、最大格差が2倍以上にならないよう国勢調査の度に見直す仕組みを国会が構築した点について「安定的に持続する立法措置を講じた」と評価した。
かつて判決の中で、司法と立法の応酬を「キャッチボール」に例えた元最高裁判事の千葉勝美弁護士は今回の判決を「議員定数の是正は国会議員が最も手をつけにくいテーマ。長年キャッチボールを続けた結果、格差2倍未満を続けられる立法ができた。司法と立法の相互の努力が結実した」と肯定的に捉えた。
それでも、各裁判官の個別意見では、国会への厳しい指摘が目立った。
林景一裁判官は「格差約2倍を最終目標と考えるのは適当ではない」として「違憲状態」と指摘。1票の格差是正について「代表民主制の根幹に関わる問題。(国会は)絶えず改善を目指すべきだ」と促した。
鬼丸かおる裁判官は、格差が1・9倍を超える選挙区が28ある点などから「違憲」と判断。山本庸幸(つねゆき)裁判官は参院選を巡る昨年9月の判決に続き、選挙区の有権者数の全国平均を1とした場合に、0・8を下回る選挙区から選ばれた議員は失職するとの自身の見解を示し、都道府県や市町村を選挙区の単位とすることにも疑問を呈した。
最高裁判事として、格差是正を強く求める少数意見を述べ続けた泉徳治弁護士は「アダムズ方式に基づく選挙区割りはまだ実施されておらず、次の選挙に間に合わない可能性がある。是正を図ったと評価するのは不合理だ。不平等をなくす取り組みを国会に促すためにも、はっきりと違憲と言うべきだった」と多数意見に異を唱えた。 【伊藤直孝、蒔田備憲】
議論の機運高まらず
衆院議員定数を10減する改正公職選挙法などの関連法成立を主導した与党には、最高裁の合憲判断に安堵(あんど)感が漂う。関連法は2020年国勢調査の後、都道府県の議席配分で人口比をより反映しやすい「アダムズ方式」を正式導入するとしており、特に小選挙区では、暫定措置だった「0増6減」にとどまらない制度改正を迫られる。だが、選挙制度には与野党の利害や思惑も複雑に絡むだけに、新方式を具体化する国会の機運は高まっていないのが実情だ。
自民党は19日、最高裁判断に対して「合憲判決は、立法府の努力を評価して出されたと受け止める」とのコメントを発表した。
20年の将来推計人口を基に試算した場合、小選挙区は今後「9増15減」が必要になる。しかし関連法が成立し、計97選挙区で区割りが変更された昨年の衆院選以降、国会に議論を進めようとする空気は乏しい。特に自民党は人口の少ない地方に強い基盤があり、「人口比だけで考えるのは無理がある」(ベテラン議員)とし、地方から都会へ傾斜する抜本的な選挙制度改革には消極的だ。
一方、立憲民主党長妻昭代表代行は19日、記者団に「与党は『これでいい』と思ってもらっては困る。根本的な定数是正に取り組んでほしい」とけん制。国民民主党古川元久代表代行も「司法判断が出たからといって、そのままでいいわけではない。思い切った定数削減やアダムズ方式の導入前倒しをすべきだ」と語った。【田辺佑介】

一票の不平等訴訟 昨年衆院選は「合憲」 最高裁が1.98倍、制度改革評価 - 東京新聞(2018年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122002000136.html
https://megalodon.jp/2018-1220-0912-29/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122002000136.html


「一票の不平等」が最大一・九八倍だった昨年十月の衆院選違憲だとして、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は十九日、「憲法の投票価値の平等に反する状態とは言えない」として「合憲」と判断した。
最高裁は格差が二・三〇倍だった二〇〇九年衆院選以降、一二年衆院選(二・四三倍)、一四年衆院選(二・一三倍)と三回連続で「違憲状態」と判断しており、合憲は〇五年以来となった。十五人の裁判官のうち十一人の多数意見。一九九四年に導入された小選挙区比例代表並立制では、昨年の衆院選で初めて格差が二倍未満に縮小していた。
判決では、国会が一六年以降に進めてきた格差是正の改革を評価。都道府県の人口比を正確に反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」の将来的な導入などを重視し、「漸進的な是正を図ったと評価できる」とした。前回の判決で示した「違憲状態」は、「法改正で解消された」と結論づけた。
原告の弁護士グループ側は十一月の上告審弁論で、「国民が平等に一票を持つべきで、二倍近くの格差を設けていいはずはない」と主張。被告の選挙管理委員会側は「憲法選挙制度の決定を国会の広範な裁量に委ねており、格差を二倍未満とする仕組みは合憲」と訴えていた。
昨年衆院選の「一票の不平等」を巡っては、二つの弁護士グループが全国十四の高裁・高裁支部に計十六件提訴し、そのうち東京や広島高裁など十五件は合憲と判断、名古屋高裁だけが「格差は極めて二倍に近く、看過しえない」として違憲状態と判断した。

衆院選無効訴訟 平等への道はまだ半ば - 東京新聞(2018年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122002000152.html
https://megalodon.jp/2018-1220-0914-09/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122002000152.html

一票の格差が最大で一・九八倍。二〇一七年の衆院選をめぐる一票の不平等訴訟は「合憲」と最高裁大法廷が判断した。二倍ラインを切ればいいのではない。投票価値の平等への道はまだ半ばだ。
代表民主制の基盤は選挙である。国政選挙では、議員一人あたりの有権者数・人口ができる限り、平等に保たれねばならない。それは憲法上の要請である。
そうでないと、ある有権者は一票なのに、ある有権者は〇・五票しかない不平等が生じる。これは違憲の選挙であって、選挙自体を無効にすべきだ−。原告はそう訴えていた。
それゆえ〇九年、一二年、一四年の三回の衆院選はいずれも「違憲状態」と最高裁は判断した。今回は合憲となり、ようやく違憲状態から脱した。だが、格差は前回の二・一三倍が一・九八倍へとわずかに縮小しただけだ。それで合憲とはすんなり納得できない。
最高裁の前提は法改正でアダムズ方式と呼ばれる人口比を反映しやすい議席配分の導入を決めていることだ。その上で〇増六減の定数配分が「漸進的な是正を図ったものと評価できる」と述べた。
甘くはないか。二倍ラインを切ったとはいえ、ほぼ二倍の格差を許容することは看過できない。何しろ二百八十九の選挙区のうち、格差が一・八倍以上の選挙区が九十九もある。反対意見で「違憲」とした鬼丸かおる判事はそれを指摘した。
さらに「違憲・無効」と判断した山本庸幸判事は「法の下の平等を貫くためには格差を生じさせないのが原則。区割りの都合で一、二割の格差が生ずるのはやむを得ない」としている。
さらに言えば、アダムズ方式の手法では、本来は七増十三減の定数是正をしなければいけなかったはずだ。この方法だと自民党が強い地方ほど人数を削られる。だから結果的に〇増六減の小手先の是正に終わったのではないか。
〇増六減が司法の「お墨付き」となる懸念がある。しかもアダムズ方式は万能でないから、格差の縮小には限界がある。だから、立法府はたえず選挙制度の改革には取り組まねばならない。
人口が少ない県の声が届きにくくなるとの懸念もある。だが、通信技術が進歩した現代では杞憂(きゆう)であろう。
何より国会議員は全国民の代表だと憲法がいう。国民の意思を正しく反映する、その精神に基づく選挙でなければならない。

最高裁が衆院選「合憲」 既定の格差是正を着実に - 毎日新聞(2018年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20181220/ddm/005/070/034000c
http://archive.today/2018.12.20-001452/https://mainichi.jp/articles/20181220/ddm/005/070/034000c

昨年10月に実施された衆院選の「1票の格差」を巡り、最高裁が合憲の判定を下した。
最高裁は前回まで3回連続で「違憲状態」の判定を示していた。合憲判断は、2005年衆院選を巡る07年の判決以来、実に11年ぶりだ。
合憲と判定した一つ目の理由は、選挙区間の最大格差が1・98倍で、1996年の小選挙区制導入後、初めて2倍を切ったからだ。一昨年の小選挙区「0増6減」の定数是正に伴い、14年選挙の2・13倍から2倍以内に縮小したことを評価した。
最高裁は、憲法が定める投票価値の平等原則に反するかについて近年、2倍を少し超える格差でも違憲状態と判定してきた。ただし、これまで2倍以上の格差を放置してきたこと自体が異常だったといえる。
二つ目が、各都道府県の小選挙区の定数を人口比が反映しやすい方法で配分する「アダムズ方式」によるさらなる是正を、国会が立法化したことだ。再来年の国勢調査の結果に基づいて導入される予定で、いっそうの是正効果が期待される。
最高裁は、各都道府県に1議席をあらかじめ配分する「1人別枠方式」が、1票の格差を生んでいるとして、国会に見直しを求めてきた。今回の判決で、アダムズ方式によって「1人別枠方式」の定数配分の影響を完全に解消できると評価した。
衆院格差是正を巡ってはいくつかの案が議論されたが、比較的穏健なものとして、この方式が採択された。合憲判定の理由として、この部分こそ重視すべきであろう。
実施されれば相当規模の区割り変更を迫られるため、選挙地盤を守りたい現職議員には抵抗感がある。大都市圏で定数が増え地方に不利になるとして、自民党にはなお反発が根強い。だが、投票価値の平等を優先する以上はやむを得まい。
最高裁は、国会が「0増6減」とアダムズ方式を段階的に実施することについて「選挙制度の安定性を確保する観点から徐々に是正を図った」と理解を示した。
だが、そもそも一昨年の段階でアダムズ方式を直ちに採用すべきだった。あくまで条件付きの合憲判定だと受け止め、国会は既定方針通りに、国勢調査終了後にアダムズ方式を速やかに実現すべきだ。


高校中退者の孤立防げ さいたまのNPO 学習の場提供し支援:埼玉 - 東京新聞(2018年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122002000170.html
https://megalodon.jp/2018-1220-0917-06/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122002000170.html

高校を中途退学した人が社会で孤立するのを防ごうと、国や自治体が中退後の学習支援に力を入れている。県内では、NPO法人「さいたまユースサポートネット」(さいたま市)が国からの委託事業として、5月から学習の場を提供。開始から半年が過ぎ、周知の面など課題も見えてきた。 (浅野有紀)
毎週土曜の夜、さいたま市南区のビルの一室で高校の中退者や通信制高校に通う若者らが勉強机に向かう。同NPOが開く「まなび場 いっぽ」だ。彼らの熱心な質問に、学生ボランティアが寄り添う。
勉強の合間に学生らと囲む夕食では、笑いが絶えない。NPO職員の西田真季子さん(37)は「いっぽは、勉強が義務ではない。居場所として過ごすうちに、その人らしい生き方を見つけてほしい」と話す。
利用者は職員と進路を相談し、高校編入や高校卒業程度認定試験を経て大学や専門学校を目指す。いっぽの開設当初から通う男性(18)は「勉強を教えてくれる場所があって助かる。将来は海外に関わる仕事がしたい」と意欲を見せた。
ただ、中退後に家にひきこもってしまうケースもあり、NPO側から支援を必要としている人に接する機会が乏しいことが課題だ。中退の可能性がある生徒と高校在学中に面会できるのは、校長の理解と家庭の了承が得られた場合に限られている。
西田さんは「中退した時点で把握できるのはごくわずか。情報が途切れた後、社会のどこともつながっていない人を見つけることは難しい」と明かす。
文部科学省は二〇一七年度から、いっぽを含む全国六カ所でモデル事業を展開。委託先にこうした課題の方向性を三年以内に定めるよう求めている。文科省の担当者は「支援の手法を確立させてから全国に広げたい」と話している。
◆情報共有進む高知県 「声掛けできる仕組み必要」
県によると、昨年度の県内の公立高校中退者は、千四百六十九人で中退率は1・2%。中退を未然に防ごうと取り組む事業はあるが、中退した時点で生徒の情報を「いっぽ」などの支援団体に提供するかどうかは、各学校の判断に委ねている。
一方、支援団体と独自の情報共有に乗り出した自治体もある。高知県は、二〇一〇年から県個人情報保護条例の特例として、中退後の進路が決まっていない生徒に限り、本人の同意がなくても個人情報を提供できるようにした。
高知県によると、それまでは、中退時に本人の同意書が必要だったが、年間数件しか集まらなかった。県の担当者は「退学する時は、支援を受けることを前向きにとらえるのは難しい。支援者側から定期的に声掛けできる仕組みが必要」と説明する。
時には本人の意向に反する場合もあるが、支援内容を丁寧に説明して理解を得ているという。年間数件だった支援団体の利用者は、最大四十八人に増えた。今後は退学時に就職したが、辞めてしまった人へのアプローチを課題とする。
若者の自立支援に詳しい宮本みち子・放送大名誉教授は「中退者の中には高卒認定試験があることすら知らなかったケースもある」と指摘。「支援団体と高校だけでなく、地元の団体同士も連携し、当人に適した支援を選べるような体制が求められる」と話している。

女性差別 「変える」意思を持とう - 朝日新聞(2018年12月20日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13819234.html
http://archive.today/2018.12.20-001740/https://www.asahi.com/articles/DA3S13819234.html

この国を覆うガラスの天井は、ことのほか分厚い。そのうえ頭上だけでなく、足場も一段低くしつらえられている。
それが日本の女性を取り巻く悲しい現実だ。2018年は、そこから次々と問題が噴き出した年だった。
いま振り返って特筆すべきなのは、これだけ相次いでなお、差別を根源から問う意識が十分広がっていないことである。
象徴的な例が、東京医科大や順天堂大などの医学部入試だった。女性という理由だけで、男性と同じ出発点にも立てない。明らかな人権問題である。
ある大学の言い訳が根の深さを映した。いわく、女医は家庭の事情で勤務から退きがちだから仕方ない――と。職場の環境を改善するのではなく、入り口で女性を切り捨てる発想は医療に限った話ではない。
社会一般で平等な人格として扱われない。財務省事務次官によるセクハラ問題は、働く女性が職責ではなく「性」で見られていることを露呈した。
政界の無神経ぶりは深刻だ。麻生財務相は「はめられた可能性がある」と言い放った。抗議で集まった女性国会議員らを「セクハラとは縁遠い方々」と評した衆院議員もいた。
差別は時の話題になっても、真の解決策は伴わない。それがパターン化していないか。
たとえば「女性と土俵」。倒れた市長を介抱した女性に「降りて」と促した問題について、日本相撲協会は「不適切だった」とした。だが、女性首長らが女人禁制に異を唱えても、議論を深める動きは見えない。
世界経済フォーラムが今年の男女格差報告書を発表した。日本は149カ国中、110位とされた。指摘されるのは、女性の社会進出の低迷だ。とりわけ国会議員(130位)と、役所や企業などの管理職(129位)の比率が小さい。
政治分野については、日本でも今年春、国会と地方議会の議員選挙を対象に候補者男女均等法ができた。だが、半年余りたっても各政党の動きは鈍い。
政治の後進ぶりは、さまざまな制度に影を落としたままだ。夫婦別姓を認めない。未婚の母親への冷たい税制。時代錯誤の家族観に固執する政治に、女性の選択肢が狭められている。
来年は、候補者の均等法ができてから初となる統一地方選参院選がある。有権者は投票で意思を示すことができる。
女性が平等に参加できない社会では、弱者や少数派も生きづらいだろう。来年こそ、変化を実感する年にできるだろうか。

県民投票不参加表明 市民の権利尊重し再考を - 琉球新報(2018年12月20日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-851232.html
https://megalodon.jp/2018-1220-0918-37/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-851232.html

宮古島市の下地敏彦市長が、辺野古基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票を同市では実施しないと表明した。宮古島市民は、地方自治法に基づく直接請求署名と県議会の議決によって実現した意思表示の権利を奪われることになる。市長は再考すべきである。
宮古島市議会では、補正予算から県民投票実施のための予算を削除した修正案が賛成多数で可決され、再議に付されても同様の結果だった。
表明に際して下地市長は「住民から選ばれた議員が判断したもので、大変重い」と述べ、市議会の判断を尊重する意向を示した。
県民投票条例制定の直接請求で宮古島市有権者の1割に近い4184人が署名した。県民投票に反対した議員はこの民意をくみ取って採決に臨んだのだろうか。市長は市議会の多数決より市民の権利を尊重して、地方自治法に従い専決処分で予算を執行しなければならないはずである。
今回の県民投票条例は、賛否いずれかの多い方が有権者数の4分の1に達した時、知事はその結果を尊重しなければならないとしている。どちらがより多く、かつ4分の1に達するかが焦点となる。
市町村議会で県民投票を巡る議論が続いてきた。二者択一ではなく「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択にすべきという意見や「普天間飛行場の危険性除去が置き去りになる」などの批判がある。
選択肢が多ければ投票率は上がるかもしれないが、あいまいな結果に終わりかねない。それでは住民投票をやる意義は薄れる。県民投票は県民が意思表示の権利を得るとともに、二者択一の真剣な議論をして判断しようという営みでもある。
普天間が置き去りになるというのも筋違いだ。県民投票は「普天間固定化」か「辺野古移設」かの二者択一ではない。県は辺野古の工事は完成まで13年以上かかると試算しており、完成しても普天間の返還は約束されていない。これでは普天間の危険性は長期にわたって続く。普天間の固定化を許さず、運用を停止させ早期返還を実現することは県民挙げて取り組むべき緊急課題である。県民投票を実施しない理由にはならない。
下地市長は記者団に「国全体に関わる問題を一地域で決定するというのは国の専権事項を侵す形になると思う」とも述べた。
軍事については国の言いなりになるしかないと言うのであろうか。それがどのような結果をもたらすかは、現在は基地被害が目立たない宮古八重山も含め、沖縄の近現代史が雄弁に物語っている。
自分たちが再び軍事の犠牲にならないために、自らの未来について自らで判断したい。県民投票はその機会だ。県民投票の是非を論じるのではなく、県民投票を実施する中で真剣に議論すべきだ。


文科省、ベネッセに肩代わり依頼 416万円、識者招き - 朝日新聞(2018年12月19日)

https://www.asahi.com/articles/ASLDL5QBTLDLUTIL045.html
http://archive.today/2018.12.19-053124/https://www.asahi.com/articles/ASLDL5QBTLDLUTIL045.html

文部科学省が昨年、大学の評価のために米国から2人の委員を招いた際、1日あたり約50万円の謝礼を求められたものの、国の基準の約2万円しか支出できず、差額分をベネッセホールディングスの関連法人が負担していたことが関係者の話で分かった。文科省の担当者からはベネッセ側に対し、渡航費の一部も含めて計約416万円の支出を求めるメールが送られていた。文科省は内部監査の結果、「強要も便宜供与もなく問題なかった」と結論づけたが、識者は「癒着を生む恐れがある構図だ」と指摘する。
ベネッセは教育関連の大手で、文科省が小中学生を対象に行っている全国学力調査の採点や集計をグループ会社が請け負っている。2020年度から始まる「大学入学共通テスト」の英語民間試験にも参入するなど、文科省と様々な場面で関係を結んでいる。
文科省によると、教育研究で世界レベルを目指す「指定国立大学」を選定するため、昨年5月から6月にかけて指定国立大学法人部会を開催。海外の有識者の意見も反映させようと、カリフォルニア大バークリー校名誉学長とエール大名誉学長を、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の上山隆大議員の紹介で招いた。
国の規定では、こうした委員に対して支払える手当は1日1万7700円。文科省やベネッセの説明によると、両氏は出席を内諾したが、「その金額では行けない」として1日50万円を提示。上山氏の提案で文科省がベネッセ側に協力を依頼し、ベネッセ側も「助言をもらう目的」で支払いを決めたという。

識者招請費の不足、ベネッセに「支払いを」 文科省 - 日本経済新聞(2018年12月19日)


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39141050Z11C18A2CR8000/
http://archive.today/2018.12.20-002858/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39141050Z11C18A2CR8000/

文部科学省が会議に海外の識者を呼ぶ際、ベネッセグループの関連法人に対し、経費の一部の肩代わりを依頼する内容のメールを送っていたことが19日、同省への取材で分かった。
同省は内部監査の結果、支払いの強要や便宜供与はなかったとしている。そのうえで、費用分担の詳細な記録が無いことなどに問題があったとして、18日に改善を求める通知を省内に出した。
同省は2017年5〜6月、世界レベルの研究を目指す指定国立大を選ぶための会議にエール大名誉学長ら米国の2人の識者を招請。国が規定する日当や渡航費では識者の希望額を満たせなかったため識者を紹介した内閣府総合科学技術・イノベーション会議の上山隆大議員の提案で、ベネッセ側に相談したという。
同社側は2人に自社のコンサルティング業務を委託することを決定。これを受けて同省が「ベネッセ様からお支払い頂きたい額」として、規定で賄えない計約416万円の見積もりを同社側にメールで送った。ベネッセホールディングス広報・IR部は「(識者に)契約費用を直接支払っており、肩代わりという認識はない」としている。