辺野古埋め立て 米大統領に直接「工事停止」請願の動き - 日刊ゲンダイDIGITAL(2018年12月15日)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243853

安倍政権は14日、沖縄の民意を無視し辺野古埋め立て土砂の投入を強行したが、トランプ大統領に直接「埋め立て停止」の請願をする動きが出ている。
来年1月7日までに10万筆以上の署名が集まれば、米政府は請願を受け付けるという。署名は請願サイト「We The People」で集めているが、昨夜の時点で2万筆を超えた。署名者の居住地や国籍は問わない。
署名を始めたハワイ在住のロブ・カジワラさんは「作業を許せば沖縄県民の反米感情は高まり、米国と沖縄の関係は永久に損なわれるだろう」としている。
安倍政権が聞く耳を持たない中、トランプに直接、沖縄の声を届ける意義は大きい。

請願サイト「We The People」
Stop the landfill of Henoko / Oura Bay until a referendum can be held in Okinawa
https://petitions.whitehouse.gov/petition/stop-landfill-henoko-oura-bay-until-referendum-can-be-held-okinawa

辺野古へ土砂投入 第4の「琉球処分」強行だ - 琉球新報(2018年12月15日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-849072.html
https://megalodon.jp/2018-1215-0911-29/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-849072.html

この光景は歴史に既視感を覚える。沖縄が経験してきた苦境である。
政府は、名護市辺野古沿岸に米海兵隊の新基地を造るため埋め立て土砂を投入した。昨年4月の護岸着工以来、工事を進める政府の姿勢は前のめりだ。9月の知事選で新基地に反対する玉城デニー知事誕生後わずか約1カ月後に工事を再開し、国と県の集中協議中も作業を進めた。手続きの不備を県に指摘されても工事を強行し土砂を投入したのは、基地建設を早く既成事実化したいからだ。
県民の諦めを誘い、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票に影響を与えたり、予想される裁判を有利に運ぼうとし
たりする狙いが透けて見える。
辺野古の問題の源流は1995年の少女乱暴事件にさかのぼる。大規模な県民大会など事件への抗議のうねりが沖縄の負担軽減に向けて日米を突き動かし、米軍普天間飛行場の返還合意につながった。
ところが返還は県内移設が条件であるため曲折をたどる。関係した歴代の知事は県内移設の是非に揺れ、容認の立場でも、使用期限や施設計画の内容などを巡り政府と対立する局面が何度もあった。
5年前、県外移設を主張していた仲井真弘多前知事が一転、埋め立てを承認したことで県民の多くが反発。辺野古移設反対を掲げる翁長県政が誕生し玉城県政に引き継がれた。県内の国会議員や首長の選挙でも辺野古移設反対の民意が示されている。
今年の宜野湾、名護の両市長選では辺野古新基地に反対する候補者が敗れたものの、勝った候補はいずれも移設の是非を明言せず、両市民の民意は必ずしも容認とは言えない。本紙世論調査でも毎回、7割前後が新基地建設反対の意思を示している。
そもそも辺野古新基地には現行の普天間飛行場にはない軍港や弾薬庫が整備される。基地機能の強化であり、負担軽減に逆行する。これに反対だというのが沖縄の民意だ。
その民意を無視した土砂投入は暴挙と言わざるを得ない。歴史的に見れば、軍隊で脅して琉球王国をつぶし、沖縄を「南の関門」と位置付けた1879年の琉球併合(「琉球処分」)とも重なる。日本から切り離し米国統治下に置いた1952年のサンフランシスコ講和条約発効、県民の意に反し広大な米軍基地が残ったままの日本復帰はそれぞれ第2、第3の「琉球処分」と呼ばれてきた。今回は、いわば第4の「琉球処分」の強行である。
歴史から見えるのは、政府が沖縄の人々の意思を尊重せず、「国益」や国策の名の下で沖縄を国防の道具にする手法、いわゆる植民地主義だ。
土砂が投入された12月14日は、4・28などと同様に「屈辱の日」として県民の記憶に深く刻まれるに違いない。だが沖縄の人々は決して諦めないだろう。自己決定権という人間として当然の権利を侵害され続けているからだ。

<金口木舌>約束まであと2カ月 - 琉球新報(2018年12月15日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-849080.html
https://megalodon.jp/2018-1215-0912-37/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-849080.html

強者の歓心を買いたいのか、弱者をいじめたいのか。あるいは両方か。米軍普天間飛行場移設問題で、政府が辺野古沿岸部への土砂投入を開始した

▼名作「クリスマス・キャロル」では冷酷で頑迷な金貸し、スクルージが過去や未来の自分を見せられて改心する。沖縄の組踊「雪払い」では、娘をいじめていた継母が悔い改める
▼「善」が最後に輝く物語は古今東西を問わず感動を呼ぶが、民意を無視して工事を強行する政府を見ていると、現実を悲観したくなる。玉城デニー知事と協議のテーブルに着きながら着々と準備を進めてきたのは不誠実極まりない
▼「日米合意を守る」「普天間飛行場の危険性除去のため」と政府は繰り返す。米国との約束は必死に守ろうとするが、沖縄側に実現に向けた努力を約束した普天間飛行場の「5年以内の運用停止」はどうか。米側に遠慮して交渉すらしていない
辺野古新基地建設を進める政府が錦の御旗として掲げるのは、仲井真弘多元知事による埋め立て承認だが、承認を得る際の事実上の前提条件だったのが、期限まであと2カ月に迫った「5年以内の運用停止」。承認を強調するなら、運用停止の約束を全力で実現させるのが筋というものだ
安倍晋三首相が、武器を売り付けるトランプ米大統領への優しいまなざしの何分の1でも、沖縄に向けてくれればいいのだが。

政府「奇策」連発 普天間22年返還困難 辺野古土砂投入 - 東京新聞(2018年12月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121502000141.html
https://megalodon.jp/2018-1215-0914-33/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121502000141.html

政府は十四日、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設先、名護市辺野古(へのこ)沿岸部で土砂投入を始めた。埋め立てが本格化し、原状回復は困難になった。辺野古移設に反対する県は反発。来年二月に実施する県民投票で民意を明確にし、対抗する構えだ。玉城(たまき)デニー知事は辺野古沖合に存在が指摘される軟弱地盤の改良工事を巡り、将来的に知事権限を行使する考えも示した。日米両政府による一九九六年の普天間返還合意から二十二年を経て移設問題は新たな局面に入った。
玉城知事は県庁で記者会見し「激しい憤りを禁じ得ない。一刻も早く工事を進めて既成事実を積み重ね、県民を諦めさせようと躍起になっている」と政府を批判。「民意をないがしろにして工事を進めることは、法治国家や民主主義国家ではあってはならないことだ」とも語った。

菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「全力で埋め立てを進めていく」と明言。岩屋毅防衛相は記者団に「抑止力を維持しつつ沖縄の負担を軽減するためには、辺野古という方法しかない」と強調した。二〇二二年度とされる普天間飛行場返還は達成困難との認識も示した。
土砂投入の現場は、埋め立て予定海域南側の護岸で囲まれた約六・三ヘクタールの区域。午前九時ごろ、土砂を積んだ運搬船が桟橋として用いる護岸に接岸し、土砂をダンプカーに積み替え、午前十一時ごろ海に向けて投入した。作業は夕方まで続き、現場周辺には早朝から反対派の市民らが詰めかけ、抗議活動を展開した。
◆怒り増幅
沖縄県名護市辺野古への土砂投入に向けては、政府は奇策とも言うべき手法を連発し、県側の怒りを増幅させてきた。国の機関が「私人」として国に救済を求めたり、公共の港でなく民間企業の桟橋から土砂を搬出したりした。
辺野古沿岸部の埋め立ては、県が八月末に承認を撤回したため工事が中断。沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき撤回の効力停止を申し立てると、石井啓一国土交通相はそれを認めた。
不服審査法は、行政機関から不利益処分を受けた私人の救済を図る制度。防衛省は沖縄防衛局を「私人と同じ」と主張したが、私人が米軍基地を建設できるはずがない。玉城デニー知事は政府内の手続きを「自作自演」と批判した。
政府が十一月に工事を再開した後の手続きも、地元の理解を得ようとする姿勢を欠いた。当初、沖縄本島北部の本部(もとぶ)港(本部町)から土砂を搬出する計画だったが、岸壁の使用許可権限を持つ同町が「台風被害で受け入れ不可能」と使用を認めない方針を示した。
すると、政府は自治体の許可が不要な民間セメント会社の桟橋を使い、船に土砂を積み込んだ。玉城氏は「十分な事前説明や届け出もないままで、甚だ遺憾」と作業停止を求めたが、政府は聞き入れなかった。
◆責任転嫁
土砂投入後も政府の高圧的な姿勢は変わらない。岩屋毅防衛相は記者会見で、二〇二二年度とされる普天間飛行場返還の目標が遅れる可能性に触れ「一度承認された埋め立て許可が撤回されるなどの変遷があった」と県に責任を転嫁するような発言をした。 (小椋由紀子)

沖縄の市民、闘志新た 辺野古ルポ「諦めない。止めないと」 - 東京新聞(2018年12月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121502000129.html
https://megalodon.jp/2018-1215-0916-08/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121502000129.html

政府は十四日、沖縄県名護市辺野古(へのこ)の新基地建設に向け、沿岸部への土砂投入を始めた。米軍キャンプ・シュワブ演習場に隣接した砂浜では、市民たちが集まり、怒りの声を上げた。その様子に、警備員が境界のフェンス越しに目を光らせる。夏のような日差しが照り付ける中、集まった人たちは美(ちゅ)ら海に向かって「諦めない」と誓った。 (神谷円香)
宜野湾(ぎのわん)市の吉岡千絵さん(40)はこの日、午前八時すぎにカヌーで砂浜を出発し、土砂投入が行われる区域へ向かった。海上保安庁に警告されるのは、いつものこと。投入の様子は見えなかったが、土砂を運んできたとみられるダンプカーを見て「どんどんなし崩しになっていく。止めないと」と決意した。
琉球大への進学を機に熊本県から沖縄に移り、二〇〇四年からは仕事の合間を縫い、基地移設に反対する活動を始めた。当初関わった人たちの中には、亡くなった人もいる。県外からも人が集まるようになった。移設を巡る地元の移り変わりを見てきた。
市民の力で食い止めた部分もあるが、工事は進み、海に土砂が入れられる段階にまで来てしまった。「今日の土砂投入は、もう後戻りできないと印象づけようとする、政府のパフォーマンス。これからどうやって移設を止められるかを考えることが大切」と冷静に受け止めた。
翁長雄志(おながたけし)前知事の妻樹(みき)子さん(63)も抗議の声を上げた。「翁長の名前が玉城(たまき)デニー知事の邪魔になる」と表に出るのをやめようと思ったが、「黙っていられない、あまりにも情けなくて」と、辺野古入りを前夜に決めた。「翁長の女房ではない、一県民として来た。諦めるなんてとんでもない。県民は負けない」と国への闘志を新たにした。
糸満市の住職岡田弘隆さん(72)は「原発は地元同意がなければ稼働できないのに、基地は民意が反対してもできるのはおかしい」と憤った。「米トランプ政権は、世界のリーダーだったオバマ前大統領のような役割を放棄している。沖縄の基地は米国自身の負担になり、あと十年で米軍は沖縄から退くのでは」と推測した。
砂浜とは対照的に、辺野古の住宅街では、この日も静かな時間が過ぎた。住民の女性は「本当は基地はなくしてほしいですよ。でも、本当の気持ちだけでは生活できないから」とつぶやいた。以前はキャンプ・シュワブ演習場前も散歩で通っていたが、移設に反対する人がテントを設け、座り込むようになると「反対派だと思われるから、もう通れない」と複雑な思いを明かした。

辺野古土砂投入「構造的差別」変わらず - 毎日新聞(2018年12月14日)

https://mainichi.jp/articles/20181214/k00/00m/010/197000c
http://archive.today/2018.12.15-001656/https://mainichi.jp/articles/20181214/k00/00m/010/197000c

辺野古移設に「ノー」を突き付けた沖縄県知事選からわずか2カ月半。政府はなりふり構わず移設の実現に突き進み、土砂投入に踏み切った。米軍普天間飛行場の県内移設問題は後戻りできない局面に突入した。
多くの沖縄の人たちが今、憤りや悔しさ、無力感を抱き、辺野古の海が埋められていく光景を見ている。県内での代替施設建設を条件に日米が普天間飛行場の返還に合意して22年半。この間、沖縄側が「苦渋の決断」で受け入れた計画は簡単にほごにされた末、選挙で何度も示した民意も無視され続けてきた。
果たして全国の米軍専用施設の約70%が集中する沖縄で、新たな基地の建設にもろ手を挙げて賛成した人がどれほどいただろうか。「普天間飛行場が返ってくるならば」と容認したか、「なぜまた沖縄に」と反対したか――。政治的立場に関係なく「これ以上の基地はない方がいい」というのが本音であり、民主党政権が県外移設を模索した後は「移設反対」の明確な意思表示が続いてきたはずだ。
それでも安倍政権は「日米の合意事項」として移設計画の見直しを拒み、米国との約束を果たすためには民意を踏みにじることもいとわない。「唯一の解決策」「沖縄に寄り添う」と繰り返すだけで移設を強行する「民主主義国家」の有りようを、沖縄だけでなく、多くの国民が疑問に感じ始めているのではないか。
埋め立ては始まったが、今後の工事はなお難航が予想される。「普天間辺野古か」といった不幸な選択をいつまで沖縄に背負わせ続けるのか。政府が普天間飛行場の運用停止と移設計画の見直しを米国に求めなければ、沖縄が過重な基地負担を「構造的差別」ととらえる構図は変わることがない。【遠藤孝康】

辺野古の土砂投入始まる 民意は埋め立てられない - 毎日新聞(2018年12月15日)

https://mainichi.jp/articles/20181215/ddm/005/070/056000c
http://archive.today/2018.12.15-001836/https://mainichi.jp/articles/20181215/ddm/005/070/056000c

わずか2カ月半前に示された民意を足蹴(あしげ)にするかのような政府の強権的姿勢に強く抗議する。
米軍普天間飛行場辺野古移設工事で、政府は埋め立て予定海域への土砂投入を開始した。埋め立てが進めば元の自然環境に戻すのは難しくなる。ただちに中止すべきだ。
9月末の沖縄県知事選で玉城デニー氏が当選して以降、表向きは県側と対話するポーズをとりつつ、土砂投入の準備を性急に進めてきた政府の対応は不誠実というほかない。
名護市の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では移設反対派が抗議活動を行ったが、土砂の搬入に抵抗しようにも手出しのできない海路で事前に運び込まれていた。そのために民間の桟橋を使う奇策まで講じ、力ずくで工事を強行したのが政府だ。
そこまでして埋め立てを急ぐのは、来年2月の県民投票までに既成事実化しておきたいからだろう。反対票が多数を占めても工事は進めるという政府の意思表示であり、国家権力が決めたことに地方は黙って従えと言っているのに等しい。
政府側は県民にあきらめムードが広がることを期待しているようだが、その傲慢さが県民の対政府感情をこわばらせ、移設の実現がさらに遠のくとは考えないのだろうか。
実際、移設の見通しは立っていない。工事の遅れに加え、埋め立て海域の一部に軟弱地盤が見つかったからだ。県側は軟弱地盤の改良に5年、施設の完成までには計13年かかるとの独自試算を発表した。
それに対し政府は2022年度完成の目標を取り下げず、だんまりを決め込む。工事の長期化を認めると、一日も早い普天間飛行場の危険性除去という埋め立てを急ぐ最大の根拠が揺らぐからだろう。10年先の安全保障環境を見通すのも難しい。
結局は県民の理解を得るより、米側に工事の進捗(しんちょく)をアピールすることを優先しているようにも見える。
沖縄を敵に回しても政権は安泰だと高をくくっているのだとすれば、それを許している本土側の無関心も問われなければならない。
仮に将来、移設が実現したとしても、県民の憎悪と反感に囲まれた基地が安定的に運用できるのか。
埋め立て工事は強行できても、民意までは埋め立てられない。

辺野古に土砂投入 民意も海に埋めるのか - 朝日新聞(2018年12月15日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13812446.html
http://archive.today/2018.12.14-212437/https://www.asahi.com/articles/DA3S13812446.html

安倍政権が沖縄・辺野古の海への土砂投入を始めた。
これまで進めてきた護岸の造成工事に比べて環境に及ぼす影響はより深刻で、米軍普天間飛行場の移設問題は新たなステージに入ったといえる。
辺野古ノー」の民意がはっきり示された県知事選から2カ月余。沖縄の過重な基地負担を減らす名目の下、新規に基地を建設するという理不尽を、政権は力ずくで推進している。
「いつまで沖縄なんですか。どれだけ沖縄なんですか」
先月の安倍首相との会談で玉城デニー知事が発した叫びが、あらためて胸に響く。
■まやかしの法の支配
政府の振る舞いはこの1年を見るだけでも異様だった。
3月、辺野古の海底に想定していなかったマヨネーズ並みの軟弱な地盤が広がっていることがわかった。防衛省による地質調査で判明しながら政府は結果を2年間公表せず、情報公開請求でようやく明らかになった。
そればかりか、8月末に県がこの問題に加え、他の違法行為や取り決め違反を理由に埋め立て承認を撤回すると、行政不服審査法を使って2カ月後に効力を停止させる挙に出た。
本来、行政によって国民の権利が侵害された場合に備えて設けられた手続きだ。それを持ちだし、県と政府(防衛省)の間の争いを、政府の一員である国土交通相に「審査」させ、政府に軍配をあげさせる。行政法の学者などから批判や抗議の声があがったのは当然である。
土砂投入にあたっても、県が「使われる土砂が環境基準にかなうものか、国が約束していた確認手続きがとられていない」などと指摘しても、政権は聞く耳をもたなかった。
中国や北朝鮮を念頭に、日ごろ「民主主義」や「法の支配」の重要性を説く安倍首相だが、国内でやっていることとのギャップは目を覆うばかりだ。
■思考停止の果てに
その首相をはじめ政権幹部が繰り返し口にするのが「沖縄の皆さんの心に寄り添う」と「辺野古が唯一の解決策」だ。
本当にそうなのか。
辺野古への移設方針は99年に閣議決定された。しかし基地の固定化を防ぐために県側が求めた「15年の使用期限」などの条件は、その後ほごにされた。そしていま、戦後間もなく米軍が行った「銃剣とブルドーザー」による基地建設とみまごう光景が繰り広げられる。
中国への備えを考えたとき、沖縄は死活的に重要な位置にあり、だから辺野古が必要だと政府は言う。だが米国は、沖縄駐留の海兵隊のグアム移転に取り組むなど戦略の見直しを進めていて、「抑止力」をめぐる考えも変わってきている。
状況の変化に目を向けずに、辺野古固執し、県民の反感に囲まれた基地を造ることが、日本の安全に真につながるのか。国内外の専門家が疑義を寄せるが、政権は「思考停止」の状態に陥ったままだ。
無理に無理を重ねて工事を急ぐ背景に、来年の政治日程があるのは間違いない。
2月に埋め立ての賛否を問う県民投票が行われる。4月は統一地方選衆院沖縄3区の補選が予定され、夏には参院選も控える。それまでに既成事実を積み重ねて、県民に「抵抗してもむだ」とあきらめを植えつけ、全国の有権者にも「辺野古問題は終わった」と思わせたい。
そんな政権の思惑が、土砂の向こうに透けて見える。
■「わがこと」と考える
何より憂うべきは、自らに異を唱える人たちには徹底して冷たく当たり、力で抑え込む一方で、意に沿う人々には経済振興の予算を大盤振る舞いするなどして、ムチとアメの使い分けを躊躇(ちゅうちょ)しない手法である。その結果、沖縄には深い分断が刻み込まれてしまった。
国がこうと決めたら、地方に有無を言わせない。8月に亡くなった翁長雄志前知事は、こうした政権の姿勢に強い危機感を抱いていた。沖縄のアイデンティティーを前面に押し出すだけでなく、「日本の民主主義と地方自治が問われている」と繰り返し語り、辺野古問題は全国の問題なのだと訴えた。
ここにきて呼応する動きも出てきた。東京都小金井市議会は今月、普天間飛行場の代替施設の必要性などについて、国民全体で議論するよう求める意見書を可決した。沖縄で起きていることを「わがこと」として考えてほしいという、沖縄出身の人たちの呼びかけが実った。
沖縄に対する政権のやり方が通用するのであれば、安全保障に関する施設はもちろん、「国策」や「国の専権事項」の名の下、たとえば原子力発電所放射性廃棄物処理施設の立地・造営などをめぐっても、同じことができてしまうだろう。
そんな国であっていいのか。苦難の歴史を背負う沖縄から、いま日本に住む一人ひとりに突きつけられている問いである。

(政界地獄耳)誰かが欠ければ誰かが暴走 - 日刊スポーツ(2018年12月15日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812150000226.html
http://archive.today/2018.12.15-014625/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812150000226.html

★政治家は朝食会や食事付きの会合で食事に手を付けないとか、箸をつけただけで残したとすれば、午後には重病説が流れる世界。ことに大物政治家の不在は尾ひれがつきやすい。これが与党幹事長の場合はなおさらだ。自民党幹事長・二階俊博は国会会期中の先月28日午前、自民・公明両党は慣例の与党幹事長・国対委員長会談を腰痛を理由にドタキャン。その後も国会には現れず、自らが会長を務める日本インドネシア友好議連としてのインドネシア訪問も中止となった。

★12日、自民党部長会議で総裁・幹事長室から「インフルエンザは全快したが、その際の検査で高血圧気味であったため医師と相談し、念のため今週はドックに入った。特に何か対処が必要な病状があるわけではないのでご安心ください」との報告があった。党内も野党も自民党幹事長が国会会期中から不在など考えられないとしながらも、二階重病説は水面下に潜り始める。なぜなら二階は79歳。来年2月で80になる。つまり何が起こってもおかしくない年齢だ。

自民党関係者が言う。「そういえばその前の幹事長・谷垣禎一も自転車で転んでそのまま入院。つい最近やっと表舞台に出てきたが既に政界は引退している」。加えて二階の役割と立ち位置は副総理兼財務相麻生太郎官房長官菅義偉とで安倍政権を支えるという絶妙なトライアングルの中で成立している。「互いにけん制する3人が政権を持たせている。誰かが欠ければ誰かが暴走するからだ」(自民党閣僚経験者)。どこかが欠けてもその穴埋めは不可能だろう。つまりその時は政権が崩壊しかねない。別の議員は「当然今も、二階のいない間にいろいろまとめてしまおうという動きはあるだろう。一角が弱体しただけでもバランスは崩れる」。終わりの始まりは既に進行中なのか。(K)※敬称略