辺野古への土砂投入は安倍政権が反対の動きを封じるための“三文芝居”だ! 工事はまだ止められる - litera_web(2018年12月14日)

https://lite-ra.com/2018/12/post-4428.html

国による弾圧が、きょう、沖縄で繰り広げられた。「辺野古新基地建設反対」を掲げた玉城デニー氏が、与党候補に約8万票もの差をつけ沖縄県知事となって約2カ月半。本日11時、政府は辺野古の新基地建設をめぐって、はじめて護岸で囲んだ埋め立て予定区域に土砂を投入した。
これは、沖縄県民が選挙で示した民意を踏みにじるだけではなく、政府が違法の上に違法を積み重ねるという、およそ正当性がまったく見当たらない工事だ。
まず、沖縄県による埋め立て承認撤回に対し、防衛省沖縄防衛局が行政不服審査制度を悪用し“私人”になりすまして執行停止申し立てをおこなうという暴挙をはたらいたが、これを受けて石井啓一国土交通相は執行停止を決定。二重の違法行為に打って出た。
しかも、執行停止申し立ての決裁文書に印を押した遠藤仁彦・沖縄防衛局次長は国交省からの出向者であり、新基地建設のために国交省の幹部や職員がなんと18人も防衛省に出向していることが判明。防衛省国交省が一体化し、まさしく“自作自演”で違法の執行停止をおこなったのである。
さらに、きょう土砂投入をはじめると政府が表明した3日には、午前中から防衛局は民間企業である「琉球セメント」が所有する桟橋へ土砂の搬入作業を開始。この「琉球セメント」の大株主である宇部興産が安倍首相と深いつながりをもつ企業であることは既報の通りだが (詳しくは https://lite-ra.com/2018/12/post-4409.html)、民間の桟橋を使った搬入は、仲井真弘多・元知事が埋め立て承認の際に条件とした「留意事項」に反する行為だ。その上、海へ投入する土砂についても、防衛局が性状検査の結果を示しておらず必要な承認を受けていない。
こうした点から工事の即時中止を求め「土砂投入を認められない」とし、県は12日に行政指導をおこなったばかり。昨日には玉城知事が再び菅義偉官房長官岩屋毅防衛相に直談判をおこなったが、菅官房長官の返答は「沖縄県の置かれている立場は十分に理解しているつもりだが、工事は引き続き進めさせていただく」というものだった。
一体、菅官房長官は何を十分に理解しているというのだろう。従来どおりの「辺野古が唯一の解決策」という主張を押し通しただけで、たんに「対話には応じた」という既成事実をつくったにすぎず、その内容は「何と言おうと工事は進める」という、対話などとは呼べないゼロ回答だ。しかも、玉城知事はこの日、安倍首相との面会を要望していたが、11月28日に面会したばかりという理由で拒否したのである。
そして今朝、県からの訴えも、新基地建設に反対するために集まった市民たちの抗議も無視して、安倍政権はついに沖縄の海へ土砂を投入したのだ。
この暴挙に対し、玉城知事はきょう、このようなコメントを発表した。
「数々の違法な行為を行い、法をねじ曲げ、民意をないがしろにし、県の頭越しに工事を進めることは、法治国家そして国民に主権があるとする民主主義国家において決してあってはならないことであります。
国が、地方の声を無視し、法をねじ曲げてでも国策を強行するやり方は、地方自治を破壊する行為であり、本県のみならず、他の国民にも降りかかってくるものと危惧しております」
安倍政権による民主主義の破壊行為──。しかし、予定通り粛々と土砂投入をはじめた安倍政権のこの蛮行に、怒りの声だけではなく、諦めにも似た感想も出てきている。「最終局面を阻止できなかった」「もう後戻りできないところまで来てしまった」「土砂が投入された以上、工事は止められない」──。
海上から取材したジャーナリスト・青木理が語る土砂投入の本当の目的
だが、諦めるのはまだ早い。いや、というよりも、こうした諦めムードをつくり出すことこそが、今回の土砂投入における安倍政権の狙いなのである。
きょう、朝から土砂投入の様子を海上から取材したジャーナリストの青木理氏も、こう話す。
「土砂の投入がはじまったという意味では、たしかにきょうは大きな節目ではありますが、しかしその実態は、一部海域にわずかな土砂を入れただけ。むしろ土砂投入を進めるにも問題が山積している状態です。
たとえば、埋め立てには大量の土砂が必要で県内だけではなく県外から持ってくる必要があるが、そのなかに外来生物が混入していないか、混入の恐れがあるときには知事が土砂の搬入や使用中止を勧告する権限がある。さらに、基地建設現場の海底に軟弱地盤があることがわかっており、地盤の改良工事が必要な状態。でも、設計変更には知事の承認を得なければならない。つまり、すぐに工事が進展するわけではけっしてない。
ようするに、きょうの土砂投入というのは、来年2月の県民投票を前に沖縄県民から“抵抗しても無駄”という感情を引き出したり、アメリカに“進めていますよ”とアピールするためのもの。『もう基地建設は止められないんだ』と諦めさせるための、たんなる三文芝居なんですよ」
たしかに青木氏が指摘するように、政府が土砂投入を進めているのは全体のごく一部。沖縄タイムスの4日付の記事によれば、埋め立て区域は全体で160ヘクタールだが、今回、土砂投入が計画されている区域は約7ヘクタールで全体の約4%でしかない。
しかも、辺野古の工事に詳しい沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏の話では、今回、土砂投入が狙われている辺野古側に必要な土砂総量は約319万立方メートルで、沖縄県内の土砂は129立方メートルだが、「365日休みなく作業しても、搬入だけで3〜4年はかかる」という(しんぶん赤旗4日付)。
先の県知事選でも与党推薦候補者陣営の一部は「もう工事は止められない」というデマを喧伝していたが、これはあきらかな嘘であり、実際に工事は止まってきた。玉城知事も、きょう発表したコメントのなかで「国は、一刻も早く工事を進めて既成事実を積み重ね、県民をあきらめさせようと躍起になっていますが、このような行為は、逆に沖縄県民の強い反発を招き、工事を強行すればするほど県民の怒りはますます燃え上がるということを認識するべきであります」と述べている。
工事は止められる。いや、県民の民意を踏みにじる新基地建設は、絶対に止めなければならない。これは沖縄だけの問題ではなく、強硬的な姿勢でなんでも自分の思い通りになると信じてやまない、民主主義を壊しつづける安倍政権とすべての国民の問題である。(編集部)

辺野古土砂 きょう投入 玉城知事・菅氏会談決裂 - 東京新聞(2018年12月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121402000142.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0923-26/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121402000142.html

米軍普天間飛行場の移設先として、埋め立て用の土砂が投入される沖縄県名護市辺野古の沿岸部=13日午後(ドローンから)

沖縄県の米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を巡り、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十三日、玉城(たまき)デニー県知事と官邸で会談し、予定通り十四日に建設予定海域に土砂投入を始める方針を伝えた。玉城氏は工事の中止を重ねて求めたが、菅氏は「計画通り行う」と応じなかった。政府と沖縄県の対立が一段と激化するのは確実。埋め立てが進めば原状回復は困難になるため、新基地問題は重大な局面を迎える。
玉城氏によると、菅氏は「沖縄県の置かれている立場は十分理解しているつもりだが、工事は引き続き進める」と明言。玉城氏は「非常に残念だ。強硬な姿勢に県民が大きな憤りの声を上げるだろう」と政府の対応を厳しく批判した。
菅氏との会談に先立ち、玉城氏は防衛省岩屋毅防衛相とも会談。玉城氏は、県の埋め立て承認撤回の効力を停止した石井啓一国土交通相の判断を「違法」と指摘し、土砂投入を始めないよう求めた。岩屋氏は「気象状況などにもよるが、予定通り開始したい」と強調した。
県が埋め立て承認撤回の効力停止を不服として審査を申し立てた総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は、十四日に初会合を開く。来年二月二十八日までに結論を出す。県は二月二十四日、新基地の賛否を問う県民投票の実施を予定している。
政府の計画では、土砂を投入するのは、辺野古沿岸部の埋め立て予定海域南側の護岸で囲まれた約六・三ヘクタールの区域。当初の計画では、土砂は沖縄本島北部の本部(もとぶ)港(本部町)から搬出することになっていたが、岸壁の使用許可権限を持つ同町が、台風被害を理由に使用を認めない方針だったため、名護市安和(あわ)の民間会社の桟橋を使って土砂を船で搬出した。 (中根政人)

(「宝の海」土砂投入)保護こそ未来への責任 - 沖縄タイムス(2018年12月14日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/359156
https://megalodon.jp/2018-1214-0924-55/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/359156

そこまでやるか。
そこまで強引に工事を進めるのか。
玉城デニー知事が民主主義の原則に沿って「話し合いによる解決」を求めているのに、そこまで県民の代表を小ばかにしたような態度をとるのか。
名護市辺野古の新基地建設工事を巡り、岩屋毅防衛相は玉城知事と会談し、予定通りきょう14日、沿岸部に土砂を投入すると通告した。
安倍晋三首相の言う「沖縄に寄り添う」という言葉が、出任せの巧言令色のたぐいでないのなら、首相は工事を中止し、沖縄で知事に会うべきだ。さらに記者会見を開いて沖縄の記者団の積もり積もった疑問に正面から答えるべきである。
米軍普天間飛行場辺野古移設は、米軍にとっては「日本政府の予算で、望む場所に望む基地ができる」ことを意味するが、沖縄にとっては基地の北部集約化であり、恒久化を意味する。
当初、日米両政府が合意した案は、既存の米軍基地内に新たなヘリポートを整備するというものだった。それがいつの間にか、米国の思惑と日本政府の判断、地元の意向が複雑に絡み合って、V字型の滑走路などを持つ巨大基地へと変わっていったのだ。
辺野古に移せば、辺野古で事件事故が起き、何の解決にもならない」
1年前、米軍ヘリの部品が落下する事故があった、宜野湾市の保育園の保護者がそう語っていた。

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防衛省は、県の埋め立て承認撤回で中断していた工事を先月、再開させた。国交相が撤回の効力を一時的に止める執行停止を決定したからだ。
防衛省の申し立てを、同じ国の機関である国交省が認めるというもので、県は自作自演のような決定を「違法」として、国地方係争処理委員会に審査を申し出ている。
三者機関である係争委の話し合いはこれからだが、土砂投入の日に初会合が予定されているのは偶然なのか。
埋め立て承認の際、国と交わした環境保全などの「留意事項」が守られていないことも懸念される。ジュゴンの保護対策一つをとっても、3頭のうち2頭の行方が分からなくなっているなど影響が心配される。留意事項に従い工事を中止し、ジュゴン調査を進めるのがあるべき姿だ。
「空の主権」も取り戻せていないのに、今度は県の自然環境保全指針で厳正な保護を図るランク1の海が埋め立てられようとしている。
軍事基地建設のため、約260種の絶滅危惧種を含む5800種以上の海洋生物が生息する「宝の海」に土砂を投入するのは、愚行以外のなにものでもない。

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県の試算によると、埋め立てに5年、軟弱地盤の改良に5年、その後の作業に3年、新基地完成までは13年もかかる。政府が強調する普天間の一日も早い危険性の除去は、説得力を欠いている。
玉城知事は記者会見で、なぜ新基地建設に反対するのかをあらためて説明し、県の考えを分かりやすく全国に発信すべきだ。

今日辺野古土砂投入 傍若無人の一語に尽きる - 琉球新報(2018年12月14日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-848444.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0927-41/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-848444.html

「丁寧な説明」も、「県民に寄り添う」こともなく、法や規則の解釈をねじ曲げて今日まできた。政府は、米軍普天間飛行場の移設先とする名護市辺野古の新基地建設に向け、14日に埋め立て予定地へ土砂を投入すると明言した。
玉城デニー知事は13日、菅義偉官房長官と面談し、土砂投入の中止を求めたが、菅氏は工事強行の姿勢を崩さなかった。沖縄の民意に耳を貸さず、県の行政指導も意に介さない姿勢は傍若無人の一語に尽きる。
沖縄防衛局は土砂を積んだ台船を辺野古の護岸近くに停泊させた。県は国土交通相の埋め立て承認撤回の執行停止は違法で無効だとして工事の中止を行政指導した。
そもそも土砂搬入に至る経緯も国は必要な手続きを踏んでいるとは言えない。県による埋め立て承認撤回で工事の法的根拠は消えたが、政府は行政不服審査制度を使って工事を再開した。審査は沖縄防衛局が国交相に申し立て、同じ政府内で申し立てを認めたもので、行政法研究者110人が「違法行為」「制度の乱用」と指摘した手法だ。国は県と約1カ月の集中協議の間も工事を止めずに準備を進めた。
その後、県に提出した計画で搬出場所としていた本部港が使えないことから計画の変更申請をせずに名護市安和の琉球セメントの桟橋から土砂を搬出した。土砂の採取場所は「本部地区」と指定しているにもかかわらず、防衛局は採取場所を県に報告していない。さらに安和から搬出された土砂は有害物質の検査結果が示されていない。まさに「何でもあり」だ。
沖縄の声を無視し、遮二無二、新基地建設を進める政府が、言い訳として使っているのが辺野古普天間の固定化かの二者択一論だ。
政府は「世界一危険な」普天間飛行場を返還させるのは辺野古への移設しかないと主張する。本当にそうだろうか。
普天間は主に海兵隊ヘリコプターの運用基地だ。危険を除去するには即刻、運用を止めることしかない。その上で訓練の分散移転など策は多くある。
仮に辺野古新基地が完成しても、普天間の即時返還にはつながらない。米政府は、辺野古新基地の滑走路の短さなどを理由に、那覇空港滑走路の使用など八つの条件をつけている。満たさなければ普天間飛行場は返還されないと、稲田朋美防衛相(当時)も国会で明言しているのだ。
政府は土砂投入を見せつけることで県民の諦めを誘い、米国に対しては年内の工事進展を強調しようとしている。
今のような高圧的姿勢をとり続けるならば、県民の反発はさらに強まり、ほかの在沖米軍基地の存続さえ危うくなる。政府は土砂投入をやめて、基地負担の軽減という普天間返還の原点に戻って、形だけではない本当の意味での対話を県との間で進めるべきだ。

データ入力、無断で丸投げ=69万件、マイナンバー記載分も−国税庁 - 時事ドットコム(2018年12月14日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018121400804&g=soc
http://archive.today/2018.12.14-113041/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018121400804&g=soc

国税庁は14日、源泉徴収票などのデータ入力を委託した会社が、国内の別の業者に無断で再委託していたと発表した。再委託されたのは約69万件分で、うち少なくとも約55万人分のマイナンバー(社会保障と税の共通番号)が記載されていた可能性がある。現段階では、再委託先からの漏えいは確認されていないという。
同庁によると、問題があったのはシステム開発会社「システムズ・デザイン」(東京都杉並区)。2017年度から源泉徴収票など約138万件のデータ入力を受注していたが、業務量が増えたことから、東京、大阪両国税局の発注分を国内の3業者に再委託したという。また、作業見本として源泉徴収票など134件の画像を各社のパソコンで保管していた。
国税局が11月に行った定期監査で発覚。既に契約を解除しており、入札参加資格も停止する。

外国人就労の基本方針判明 大都市集中回避へ措置 - 東京新聞(2018年12月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121402000138.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0929-42/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121402000138.html

改正入管難民法などの成立を受けた外国人労働者受け入れ拡大の新制度の全容が、政府関係者への取材で分かった。制度の方向性を定める基本方針には、大都市圏に外国人が集中しないような措置を講じると明記。分野別運用方針では、国会答弁と同じく来年四月から五年間の累計で最大三十四万五千百五十人を受け入れ、農業と漁業は派遣の雇用形態も認めるとした。外国人への支援内容を盛り込む総合的対応策には各種行政サービスの多言語化推進を記載した。
政府は二十五日にも基本方針を閣議決定し、分野別運用方針なども年内に定める。一方、昨年までの十年間に技能実習生を含む外国人労働者百二十五人が労災で死亡したことが厚生労働省の集計で判明。外国人の労働環境の検証や改善が進まない中での新制度導入に批判が強まりそうだ。
基本方針によると、外国人が大都市圏などに過度に集中しないよう「必要な措置を講ずるよう努め」、失踪者が出ないよう関係機関が連携する。
人手不足で受け入れが必要なことを客観的かつ具体的に示すよう関係省庁に求め、分野別運用方針に書き込む受け入れ見込み数を、大きな経済情勢の変化がない限り、上限として運用する。
報酬額は日本人と同等以上を求め、新在留資格「特定技能1号」の外国人への支援内容として、出入国時の送迎や住宅確保、生活オリエンテーション実施、日本語習得支援、行政手続きの情報提供などを挙げた。
分野別運用方針には受け入れ対象の十四業種を記載。業種ごとの技能試験のほか、共通の日本語能力判定テスト(仮称)を新設するとした。現行の日本語能力試験で基本的な日本語を理解できる「N4」以上と認定されれば代替できる。
雇用形態はフルタイムで原則直接雇用だが、季節で仕事量が変わる農業と漁業は派遣も可能。業種ごとに主な業務内容も示し、介護は訪問系サービスを対象外とした。同一業種内や業務内容が似ていれば転職も認める。
総合的対応策では、行政や生活の相談に多言語で応じる一元的窓口の創設を支援すると規定。多言語化推進の項目としては医療、災害情報を国から自治体へ伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)、一一〇番、運転免許試験などを示した。
新制度に関する省令の骨子案も判明。受け入れる外国人は十八歳以上とし、一時帰国を希望した際は休暇を与え、本人が帰国旅費を捻出できない場合は負担することを受け入れ先に義務付ける。

外国人の医療 不正ありきは差別生む - 東京新聞(2018年12月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121402000165.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0931-24/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121402000165.html

「日本で働く外国人が増えると不正に医療保険を利用する」−。政府はそんな見方を前提に医療保険制度の改善を考えているようだ。外国人への差別や偏見を助長しかねない議論は慎むべきだ。
まるで性悪説に立つような議論は、外国人労働者を隣人として受け入れる姿勢に欠ける。今後、年金制度も含め社会保障の適用ルールの議論が始まるが、監視する相手としか見ないのなら共生はおぼつかない。
外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正入管難民法が成立した。その中で出てきた議論が、来日した外国人が公的健康保険を不適切に利用する懸念からの防止策である。
日本の企業で働く外国人は主に健康保険(健保)に入る。母国にいる家族も被扶養者と認められれば母国や日本で健保を利用できる。受診のために来日して高額医療を受けることもできる。こうなれば外国に住む家族のために費用がかさみかねないという。
また、日本への留学生は国民健康保険国保)に加入するが、偽りの在留資格で加入したり、複数の人が同じ保険証を使い回す「なりすまし」の懸念がある。本人確認の必要性を政府は言い始めた。
こんな点が問題視されている。
社会保障は支え合いの制度だ。不適切な利用は許されないし制度の穴はふさがねばならない。日本人との公平性に配慮しながら制度改善を進めることは必要である。
だが、外国人という理由でこうした不適切利用が横行するかのような前提で議論がされている。
厚生労働省は昨年三月、日本で高額医療を受けた外国人について、医療費の使われ方を調べた。国保加入から半年以内に高額医療を受けた人の中で明確な不適切利用は見つからなかった。
政府は一月から、国保へ加入間もない外国人が高額医療を申し込む際、窓口となる自治体が在留資格と実態を確認する調査を試験的に始めた。資格と実態が違う場合は自治体から入管当局に通報する仕組みで違和感を覚える。
しかもこの調査も九月に法相が、在留資格を取り消した事案はないと説明した。不正が続出するとの懸念は取り越し苦労だろう。
むしろ働く外国人は医療保険の保険料を払う貴重な存在になる。政府がやるべきは、加入すべきなのに未加入の企業への指導や制度の周知ではないのか。
外国人を信頼しない姿勢では、前向きな制度議論はできない。

 

離合集散続く野党 闘うべき相手間違えるな - 毎日新聞(2018年12月14日)

https://mainichi.jp/articles/20181214/ddm/005/070/029000c
http://archive.today/2018.12.14-002623/https://mainichi.jp/articles/20181214/ddm/005/070/029000c

衆院の野党会派「無所属の会」が解散することになった。岡田克也代表ら所属13議員の多くは立憲民主党の会派に合流するとみられる。
岡田氏らは立憲と国民民主党の再結集を目指してきた。だが、そもそも所属議員の理念や政策が一致せず、寄せ集めと批判されてきた旧民進党勢力が元のさやに収まって有権者の支持が戻るとは思えない。会派の解散は現実的な判断だろう。
ただし立憲は来秋の消費増税に反対している。無所属の会には民主党政権時代に自民、公明両党と増税に合意した時の首相だった野田佳彦氏らもいる。重要政策をあいまいにしたままの合流では再び批判を招く。肝心なのは、むしろその点だ。
立憲、国民両党にも注文がある。 先の臨時国会では、政府が提出した改正入管法に両党は一致して反対した。法務省のデータの不備を指摘し、外国人労働者の多数の自殺など今の技能実習制度の実情を明らかにした点は評価していい。
ところが与党が強行した改正入管法の採決に際し、国民は参院法務委員会での付帯決議採択を与党と協議して立憲側が不信を募らせた。一方で国民は衆院安倍晋三内閣の不信任決議案の提出を主張するが、立憲は同調しなかった。
国民は立憲との違いをアピールしようとし、野党第1党の立憲は野党内での主導権を保とうとする。来夏の参院選での候補者調整に向けた主導権争いも背景にあるようだが、闘う相手を間違えていないか。
国会の空洞化はますます深刻だ。無論、責任は十分な審議時間を確保せず、数で押し切る与党にある。しかし立憲と国民との間に昨秋分裂した時のしこりがいまだに残り、コップの中の争いを続けているとしたら、あまりに内向きだ。競い合うべきは国民本位の政策である。
特に会派の議員数が増える立憲の役割は重い。右寄りの安倍政権に対抗して立憲はさらに左に振れ、反対ばかりしている印象が一段と強まっている。再三指摘してきたように、右と左の間の「真ん中」が空いた政治状況が望ましいとは思わない。
成立したとはいえ、立憲も外国人労働者受け入れのあるべき姿をきちんと提示すべきだ。それが来夏の参院選にもつながっていくはずだ。

未婚ひとり親の住民税軽減 年1万7500円の手当新設 - 東京新聞(2018年12月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201812/CK2018121402000136.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0932-35/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201812/CK2018121402000136.html

自民、公明両党は十三日、結婚歴がないひとり親に対し、税制上の支援策を講じることで合意した。住民税を軽減する仕組みを導入する。これで二〇一九年度の税制見直しの議論は全て決着し、両党は税制改正大綱の原案を了承した。両党は十四日に大綱を正式決定する。
この問題を巡っては、公明党が配偶者と死別・離婚した寡婦(夫)に認められている所得税や住民税の軽減を、結婚せずに子供を産み、育てている人にも拡大するよう要望。これに対し、伝統的な家族観を重視する自民党が難色を示していた。
調整の結果、配偶者と死別・離婚した寡婦(夫)について年間所得金額が百二十五万円以下の場合に住民税を非課税とする制度を、未婚のひとり親についても適用することで歩み寄った。
大綱には、今回は見送られた所得税の軽減についても来年の税制見直しで改めて議論することを明記する方針。また、年収三百六十五万円までの未婚のひとり親を対象に年一万七千五百円の手当を新設し支給する。
大綱の柱は、来年十月の消費税増税に伴う対策。自動車関係税では、毎年かかる自動車税を千〜四千五百円引き下げ、燃費性能に応じて支払う新税「環境性能割」を軽減する。一方、燃費性能の高い車を優遇する「エコカー減税」は、対象を絞り込む。住宅の購入・改築に関しては、年末の借入金残高の1%を還付する「住宅ローン減税」の期間を十年から十三年に延長。十一〜十三年目にかけて、最大で建物価格の2%分を戻す。
ほかにも、大都市に集中する法人事業税の一部を国が吸い上げ、地方に再配分する制度の新設や、ふるさと納税の高額返礼品を事実上規制する仕組みの創設などを盛り込む。

<ひとり親への税制支援> 婚姻歴があって配偶者と死別・離婚した人には「寡婦寡夫)控除」が適用され、所得税で最大35万円、住民税で最大30万円が所得から差し引かれて納める税金が減る。寡婦寡夫は所得125万円(給与収入は約204万円)以下であれば住民税が非課税となり、非課税世帯を基準とすることの多い各種の公的給付も受けやすくなる。一方、未婚者に税制上の特別な措置はなく、子供1人の場合、住民税がかからないのは所得70万〜90万円程度までとなる。

(私説・論説室から)増税恐怖症 - 東京新聞(2018年12月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018121202000182.html
http://web.archive.org/web/20181212064645/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018121202000182.html

10%への消費税増税を控え、政府はさまざまな軽減対策を打ち出している。次から次とよく考えつくものである。
なにしろ増税を言い出せば選挙に負けること請け合いだし、政権も倒れかねない。必死である。この点は野党も変わらない。
税は再分配するものだ。どこに使われるのか、にもっと関心が集まっていい。
消費税増税分は法律に年金、医療、介護、少子化対策に使うことが明記されている。事実上の目的税だ。
税率10%になると低年金者約八百万人に最大月五千円の給付制度が始まる。低所得高齢者の介護保険料の軽減も実施される。
これまでの引き上げで既に基礎年金額のうち、税金で賄う分が三分の一から二分の一になった。これも増税による充実といえる。「社会保障と税の一体改革」の成果である。
増税は敬遠したいから目がいきがちだが、負担を受け入れるにはそれに見合う給付かをセットで考える必要がある。
国民が高い税を理解しているスウェーデンは情報公開を進め、どんな負担ならどんな給付があるかを明確にしている。だが、かの国を参考にできない。それを可能にしているのは政府が国民から信頼されているからだ。
モリカケ問題を挙げるまでもなく、わが国政府の信頼度は低い。かくして政府の増税恐怖症はなくならない。 (鈴木 穣)

優生手術救済 検証と謝罪が問われる - 朝日新聞(2018年12月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13810814.html
http://archive.today/2018.12.13-221011/https://www.asahi.com/articles/DA3S13810814.html

まだ課題が山積みだ。救済制度のあり方だけでなく、過去の検証と謝罪が問われている。
優生保護法のもと、障害のある人たちが不妊手術を強いられた問題で、与党のワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟が救済法案に関する基本方針をまとめた。
被害者の請求に基づき、一律の一時金を支給する。制度を周知するため、障害者手帳の更新時に案内したり、医療機関福祉施設から申請を呼びかけてもらったりすることが示された。
個別の通知は見送られた。手術について周りに知られたくない人もいて、郵便などで知らせると混乱しかねないという。
プライバシーへの配慮は重要だ。だが、障害のため被害を自覚しておらず、事情を知る親は他界した人も少なくない。
いまの案では十分な救済を期待できない。知的障害者の団体は、守秘義務がある公務員が直接伝えることを提言するという。残された記録では氏名や連絡先もわからないケースの追跡調査とともに、幅広い救済につながるよう、関係者でさらに知恵を絞ってほしい。
被害者からの請求は、厚生労働省に置く認定審査会が審査する。医学や法律、障害者福祉の専門家がメンバーとして想定されているが、問題を長年放置してきた厚労省に認定を求める形となるだけに、被害者側は反発している。納得を得られる仕組みが必要ではないか。
救済法案では前文で、被害者が受けた心身の多大な苦痛に触れつつ「我々は、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」とうたうことになった。
「我々」とは誰なのか。与党WT座長の田村憲久衆院議員(自民)は「政府と国会が含まれる。広くは地方自治体、優生思想という風潮があったことからすると社会も含まれるかもしれない」と説明する。旧優生保護法議員立法で成立し、政府の方針に従って自治体が競うように手術を推進した経緯を踏まえた発言だろう。
人権を踏みにじる政策がなぜ立案され、歯止めがかからないまま2万5千人もの人に優生手術が行われてしまったのか。その過程と責任の所在を明らかにする検証作業が欠かせない。
基本方針は「調査のあり方について法案の国会への提出までに検討する」と触れただけだ。過ちを二度と繰り返さないためにも、早急に検証態勢を整えるべきだ。
被害者側は国による謝罪を求めている。その思いにこたえなければならない。

<金口木舌>ご飯論法の不誠実 - 琉球新報(2018年12月14日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-848445.html
https://megalodon.jp/2018-1214-0934-27/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-848445.html

今年話題になった言葉に贈られる「新語・流行語大賞」のトップテンに「ご飯論法」が入った。国会審議で繰り返された論点のすり替えをやゆした言葉だ

▼「朝ご飯を食べましたか」と聞かれ、パンを食べていたのに「ご飯は食べていません」と答えるのは明らかに不誠実だ。政府は高度プロフェッショナル制度導入や入管難民法改正などを巡る野党の追及に対し、こういった答弁を繰り返した
毎日新聞が先月、言い換えを多用して印象を操作する安倍政権の体質を特集した。韓国人元徴用工訴訟に関し徴用工を「労働者」と言い立てた。移民は「外国人材」、自由貿易協定を意味するFTAは「TAG」(物品貿易協定)、武器輸出は「防衛装備移転」と言い換えている
▼沖縄に関わる言い換えでは、2016年に名護市安部で起きたオスプレイ墜落事故が思い浮かぶ。日本政府は事故機が大破したにもかかわらず「不時着」「着水」と発表し、矮小化(わいしょうか)した
▼これらは戦時中の「大本営発表」を想起させる。日本軍の敗走を「転進」、全滅を「玉砕」と美化し、戦争の実態を国民に隠した
▼権力者が問題を覆い隠した先に何が起きたか。沖縄戦で20万人を超える人が亡くなった。日中戦争から敗戦までに軍民合わせて310万人が犠牲になっている。主権者の一人として、論点のすり替えを見過ごすことはできない。