辺野古土砂、12月14日に投入方針 防衛相表明 - 日本経済新聞(2018年12月3日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38454430T01C18A2EAF000/
http://archive.today/2018.12.03-020801/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38454430T01C18A2EAF000/

岩屋毅防衛相は3日午前、防衛省内で記者団に米軍普天間基地沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、14日に埋め立て海域への土砂投入を始める意向を表明した。台風被害で使用許可が得られていない県内自治体の港を使わず、周辺の民間の港を使用する。同日、県に通知し土砂の積み込みを始めた。土砂を投入すれば原状回復は困難になる。県が反発を強めるのは必至だ。

岩屋氏は「1日も早い普天間基地の移設、返還を実現するために辺野古移設に向けた工事を進めたい」と強調。土砂投入の実施時期は作業の進捗や気象状況で変動する可能性があるとも説明した。

土砂の搬出には本部港に近く自治体の許可が必要ない「琉球セメント」の桟橋を使用する。辺野古の埋め立てに使う土砂は沖縄県北部の本部町で採取し、本部港から搬出する想定だった。沖縄防衛局の委託業者が使用許可を求めていたが同町は台風の被害などを理由に書類を受理しない状況が続いていた。別の港を使うのは、これ以上の工事の遅れを避ける狙いがある。

政府と沖縄県は11月末まで移設を巡り1カ月の協議を続けてきた。双方の主張は平行線に終わった。県は11月29日に、埋め立て承認の効力を停止した石井啓一国土交通相の決定への対抗措置として総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た。協議期間が終わり双方の対立が改めて深まっている。

県は2月24日に県民投票を実施する。結果に法的拘束力はないが、玉城デニー知事は移設反対の民意を示す機会と位置づける。

(政界地獄耳)ブッシュの死と政治の貧困 - 日刊スポーツ(2018年12月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812030000150.html
http://archive.today/2018.12.03-013827/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812030000150.html

★米国第41代大統領ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュが94歳の生涯を閉じた。第2次大戦ではパイロットとして活躍。テキサス州選出の下院議員を務めたあと、国連大使や中国公使、CIA長官などを務めたのちレーガン政権の副大統領を務めた。共和党の予備選では元上院院内総務のボブ・ドール、息子のブッシュ政権で国防長官に就任したドナルド・ラムズフェルドに勝利し、88年の大統領選挙では民主党マサチューセッツ州知事だったマイケル・デュカキスを破り当選した。

★ブッシュの最大の功績は冷戦終結宣言だろう。89年、12月、マルタ会談でソビエト連邦ゴルバチョフ共産党書記長と会談し、冷戦の終結を宣言した。1991年1月17日の多国籍軍によるイラク空爆により、湾岸戦争が始まる。対日政策では日米構造協議でコメや牛肉などの自由化を強く求め、自動車には輸出規制を取るなど歴代共和党政権としては厳しい対応だったが、当時の日本はバブル期ともいえた。

★時の政権は海部内閣。湾岸戦争での多国籍軍参加を強く促されたものの、結果90億ドル(当時の日本円で約1兆2000億円)を拠出したが、国際的評価は得られなかった。戦後、PKO協力法によりペルシャ湾の機雷除去を目的として海上自衛隊の掃海艇派遣を実現させたことを考えると、ブッシュ政権時にやりえなかったことを日本は既にクリアしてしまっている。ブッシュは1期でビル・クリントンに政権を明け渡したが、当時の政治や政治家がしっかりしていたことが分かる。まだ、世代的にも先の大戦の経験者が多く、今の政治のレベルからみれば極めて上質な政治が展開されていたのではないか。また世界の国民が平和を希求する目標が明確にあった時代だった。ブッシュの死とともに政治の世界的貧困を憂う。(K)※敬称略

衆院議長「裁定」 与党は重く受け止めよ - 東京新聞(2018年12月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018120302000142.html
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入管難民法などの改正案の衆院通過を巡り、衆院議長が再質疑を求める異例の発言を行った。審議の在り方を憂う事実上の「裁定」だ。与党は重く受け止め、強引な議会運営を改めるべきである。
外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が衆院を通過した十一月二十七日、大島理森衆院議長が与党の国対委員長を呼び、来年四月予定の施行前に政省令を含めた法制度の全体像を政府に報告させた上で法務委員会で質疑するよう求めた。
衆参にかかわらず、議長として個別の法案審議の在り方に注文を付けるのは異例だ。法制度の全体像が明らかにならないまま、衆院を通過させなければならない大島氏としては、やむにやまれぬ気持ちだったのだろう。
議長発言の中で最も重要な点は「政省令事項が多岐にわたると指摘されている」と述べたことだ。
改正案は外国人労働者の受け入れ見込み数や対象職種などを成立後に定めるとしている。これらは制度の根幹部分であるにもかかわらず、野党の追及に対し、政府側は「検討中」と繰り返した。
法律に明記せず、政府が政省令で勝手に決めればいいと考えているのなら、唯一の立法機関である国会を冒涜(ぼうとく)するものだ。
法案審議の過程では、失踪した外国人技能実習生の実態調査結果の集計を法務省が誤っていたことも明らかになった。
大島氏は今年七月に発表した所感で、財務省の森友問題を巡る決裁文書改ざんや厚生労働省による裁量労働制に関する不適切データの提示などを、法律制定や行政監視における立法府の判断を誤らせる、と厳しく指摘したばかりだ。
正しい情報の提供は法案審議の大前提であるにもかかわらず、安倍内閣は同じ過ちを繰り返したことになる。国民の代表である国会を、どこまで愚弄(ぐろう)するのだろう。
残念なことは不備のある法案や情報であるにもかかわらず、短時間の審議で衆院を通過させたことだ。与党としての矜持(きょうじ)はどこに行ってしまったのか。
かつて与党が衆院の委員会採決を強行した後、議長が補充質疑などを求める裁定を下したこともあった。
今回の「裁定」は来年の通常国会での再質疑を求めるものだが、せっかく裁定するのなら、衆院通過前に委員会審議のやり直しを求めることはできなかったのか。
現状は立法府の危機にほかならない。大島氏は議長としての指導力を一層、発揮すべきである。

(私説・論説室から)沖縄独立論をあざけるな - 東京新聞(2018年12月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018120302000144.html
https://megalodon.jp/2018-1203-1017-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018120302000144.html

九月の沖縄県知事選で辺野古新基地反対の民意を重ねて示すも、建設を強行する国。沖縄の苦難解消の糸口は一向に見えない。
そんな「構造的差別」の打破には「沖縄のことは沖縄で決める」との自己決定権の確立と行使しかない。そう考える県民が増えている。近年は「独立」も真剣に議論される。
二〇一三年に設立された県民有志の「琉球民族独立総合研究学会」によると、県民投票で支持を得て県議会の議決後に知事が独立を宣言、国連が認めれば独立は可能という。
その暁には非武装中立を「国是」に米軍、自衛隊の全基地を撤去。国際機関誘致や中継貿易を軸にアジアの懸け橋として発展を遂げることを構想する。一定の説得力はあろう。本土側からは「中国に乗っ取られるだけ」とあざける声が聞こえそうだが、考えてみる。
中近世の五百年近く、琉球王国は中国と朝貢関係にあったとはいえ侵略されたことは一度もない。逆に中国は職能集団を移住させたり琉球からの留学生を厚遇したりと関係を重視した。「利害対立要因がなく友好が保たれた」と比屋根照夫・琉球大名誉教授。政治状況は全く異なるにせよ、歴史的な琉中関係は今後も簡単には崩れないと思う。独立学会などは現在の尖閣問題は棚上げで良いとする。
しかし、「ならばどうぞ独立を」とは決して言うまい。沖縄をそこまで追い込んだのは本土の側。その責任は重い。 (白鳥龍也)

福島事故後 ドイツの取り組み取材 今月、都内2館で上映:首都圏 - 東京新聞(2018年12月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201812/CK2018120202000169.html
http://archive.today/2018.12.03-011933/http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201812/CK2018120202000169.html

東京電力福島第一原発事故を受け、脱原発に向かうドイツ。その取り組みから日本の将来へのヒントを探ろうと、現地の市民や地域の活動を取材したドキュメンタリー映画「モルゲン、明日」が十二月、東京都武蔵野市アップリンク吉祥寺など都内二館で上映される。映画のタイトル「モルゲン」はドイツ語で「明日」。群馬県みなかみ町在住の坂田雅子監督(70)は「小さな一歩が大きな変化に結び付く。明日に向かってともに一歩を踏み出しましょう」と呼び掛ける。 (石井宏昌)
「映画作りの動機は『なぜ』という疑問」と話す坂田監督。福島第一原発事故後、「どうしてこんなことに」と原発や核問題をテーマに取材。ビキニ環礁のあるマーシャル諸島など核実験被害地、原発が多く立地するフランスなどを巡り、二〇一四年にドキュメンタリー「わたしの、終わらない旅」を発表した。
今作品では「脱原発に向かうドイツと、事故当事者なのに原発再稼働が始まっている日本との違いは何か」という疑問の答えを探すため、一五〜一七年にドイツ各地で取材を重ねた。
脱原発や環境問題の有識者、風力や太陽光発電など再生可能エネルギーに取り組む市民や地方自治体、電力会社、政治家、修道僧、教育現場などさまざまな立場の五十人以上にインタビューし、映画では十数人の声を中心に紹介している。
坂田監督は「ドイツを脱原発に導いたのはメルケル首相の力だけでなく市民の草の根運動があったから。地方の小さな村で住民が出資して風力発電所を設置した事例もある」と指摘。「一人一人の力は小さいが集まれば社会を動かすことができる。日本でも、私たちでも、できるということを伝えたい」と話した。
上映は二館とも午前。アップリンク吉祥寺が十四〜二十日で、十八日までの各日、上映後に坂田監督がゲストと対談予定。二十二〜二十八日は渋谷区のアップリンク渋谷で、二十四、二十七、二十八日に対談を企画する。問い合わせはアップリンク渋谷=電03(6825)5503=へ。

パワハラ防止の法制化 職場環境を変える一歩に - 毎日新聞(2018年12月3日)

https://mainichi.jp/articles/20181203/ddm/005/070/004000c
http://archive.today/2018.12.03-012117/https://mainichi.jp/articles/20181203/ddm/005/070/004000c

職場でのいじめ・嫌がらせなどのパワーハラスメントパワハラ)について、厚生労働省は法律で企業に防止措置を義務付ける方針を固めた。2019年の通常国会へ関連法案の提出を目指す。
パワハラとは、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えることを指す。
被害者に仕事への意欲を失わせ、うつ病など精神疾患を引き起こす要因となっているのがパワハラだ。休職や退職、自殺に至ることもある。経営者にとっても生産性の低下や人材流出を招くなど損失が大きい。
17年度の精神障害による労災認定は506件で、パワハラなど「対人関係」によるものが112件を占める。労働局に寄せられる相談では「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万2000件を超える。この6年間はパワハラ関連の相談がトップを占めている。
セクハラや妊娠・出産した女性へのマタニティーハラスメントに関しては、男女雇用機会均等法で相談窓口設置といった防止措置が企業に課されている。しかし、パワハラ対策は自主努力に委ねられている。
大企業ではパワハラ対策に取り組むところが増えているが、従業員99人以下の中小企業では26%しか対策を実施していない。人間関係が緊密なため声を上げにくく、企業も取り組む余裕がないためという。
法制化によって企業に課せられる防止措置は、相談窓口の開設や社内規定の整備などが想定されている。さらに、悪質な企業名の公表、再発防止のための社員研修の義務化なども盛り込むべきだ。
労組側からは具体的なパワハラ行為を法律に例示した上で禁止規定を明記することを求める声も強い。実際にパワハラ被害にあっても、企業が形式的に相談窓口や社内規定を設けていれば免責される可能性があるためだ。
ただ、経営者側は必要な指導もパワハラと訴えられることへの懸念が強い。個々のケースによっては判断が難しい場合もあるだろう。
パワハラのない職場環境を作るのは労使双方にメリットとなる。まずは現実的な法制化でパワハラ抑止の一歩を踏み出すべきである。

(大弦小弦)言論の自由とは何か… - 沖縄タイムス(2018年12月3日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/353385
https://megalodon.jp/2018-1203-1023-23/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/353385

言論の自由とは何か、と聞かれたら、迷わずあの有名な一節を引く。「あなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命を懸けて守る」。残念ながら、今回はこう言わないといけない。「賛成だ。だがあなたがそれを主張するのは好ましくない」

秋篠宮さまが新天皇即位に伴う行事「大嘗祭(だいじょうさい)」について、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当か」「憲法との関係は」と疑問を呈した。神道の行事で、確かに政教分離の原則に反する恐れが強い

▼趣旨には賛同するが、皇族が政治に影響を与えることもまた、避けなければならない。どちらも、国家神道や皇室が戦争を導いた反省から生まれた憲法の原則である

▼2年前の天皇陛下の退位メッセージも今回も、明らかに政治的な力がある。それなのに護憲派が発言を擁護し、政権批判に利用することに疑問を感じる

▼原則を都合よく使い分けるのは危ない。皇室制度をどうするかは、皇室に寄り掛からず、国民が責任を持って結論を出す必要がある。原則通りだとそうなる。同時に、当事者の意見が反映されない仕組みには心が痛む

▼国民多数が支持しているという理由で、少数の皇族の人権を奪うことは正当化できるのか。段階的にでも、個人を解放すべきではないか。考えるほどに、制度の非人道性が浮かび上がる。(阿部岳)

(防衛大綱見直し)専守防衛を踏み外すな - 沖縄タイムス(2018年12月3日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/353392
https://megalodon.jp/2018-1203-1021-14/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/353392

政府は新たな防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を今月中に策定する。
陸・海・空という従来の領域にとどまらず、「宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を横断的に活用した防衛力」を優先的に整備するのだという。
10年先を見通して策定された今の大綱を5年間早めて改定するのはなぜなのか。
安全保障環境の急激な変化に対応するためだと政府は説明するが、その場しのぎのつじつま合わせ、という印象はぬぐえない。
ブエノスアイレスで開かれた日米首脳会談でトランプ米大統領は冒頭、「米国の戦闘機F35などを数多く購入することに感謝している」とあけすけに語った。
政府はF35Aの追加購入のほか、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの新規導入も検討している。
対日貿易赤字の解消を求めるトランプ政権の要求に応え、すでに地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入も決めている。
2019年度概算要求ではイージス・アショア2基の取得経費として2343億円が計上された。極めて高額な輸入兵器だ。
費用対効果や必要性の検証も不十分なまま、米国の貿易不均衡解消のためにトップセールスで高額兵器を購入するのは、本来の装備調達のあり方から逸脱している。
高額兵器の取得を優先したため、2019年度防衛予算の概算要求は過去最大の約5兆3千億円に膨らんだ。

    ■    ■

もっと懸念されるのは、海上自衛隊護衛艦「いずも」を改修し空母機能を持たせる案が検討されていることだ。
想定しているのは、「いずも」の広い甲板を利用し、垂直着艦のできるF35Bを運用することである。
政府は憲法9条のもとで「専守防衛」を安全保障の基本方針としている。歴代内閣は、攻撃型空母は保有できない、との立場を堅持してきた。
「いずも」について岩屋毅防衛相は「できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と言う。
だが、憲法が禁じる空母と「多用途護衛艦」の線引きはあいまいだ。
「いずも」の空母化が進めば、米軍伊江島補助飛行場内にある強襲揚陸艦の甲板を摸した着陸帯を日米が共同利用するはずだ。
専守防衛」の方針変更は、地域の軍拡に拍車をかけ、一段と緊張を高める。安倍政権が憲法9条改正に意欲的なだけになおさらである。

    ■    ■

石垣島が侵攻された場合を想定し、島しょ奪回のための作戦を分析した「機動展開構想概案」の存在が最近、明らかになった。
赤嶺政賢衆院議員(共産)が入手し、11月29日の衆院安全保障委員会で取り上げた。
島しょ奪回作戦は、軍事上の兵力配置を分析しているが、そこに住む住民への影響には触れていない。
大事なのは緊張緩和であり、日中の関係改善の気運を後戻りさせるようなことがあってはならない。

学童保育の防災対策 行政の関与が足りない - 琉球新報(2018年12月3日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-843011.html
http://archive.today/2018.12.03-012740/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-843011.html

いざというときに子どもたちの命を守れるのか。支援すべき行政の責任は重い。
県内の学童保育(放課後児童クラブ)の防災対策を巡り、琉球新報と県学童保育連絡協議会が実施した二つのアンケートから、不安を覚える実態が浮かび上がった。
アンケートは学童保育施設と自治体を対象に別個の質問をした。防災対策にばらつきがあり、現場が苦慮している姿が明らかになった。
県内の学童保育は民設民営が9割を占める。公設公営・公設民営が8割の他府県とは異なり、行政の支援が乏しい。子どもの居場所づくりに貢献してきた学童保育の役割を再認識し、自治体はもっと積極的に関わっていくべきだ。
学童保育対象のアンケートは、県内447カ所のうち44%の195カ所が回答した。
防災マニュアルは89%が作成している。だが「緊急時の連絡体制が保護者と共有できていない」が43%、「災害時に児童引き渡しの取り決めがない」が27%だった。マニュアルを作っても不十分となっている可能性が高い。
法的に義務付けられている火災訓練、防災訓練ができていない学童保育はそれぞれ8%、12%あった。非常用の備蓄なしは64%に上った。
現場からは「業務が多くマニュアルが作れない」「訓練を実施しているが正しいか分からない」「専門家とのつながりがない」との切実な声が寄せられた。人手も設備も不足する中で、他機関との連携が取れず、孤軍奮闘している施設も多いのではないか。
一方、自治体調査は学童保育がある27市町村を対象にした。国が条例で定めるのが望ましいとする4項目のうち、「防災訓練」は27、「消防訓練」は26市町村が定めた。だが、「マニュアル作成」は9、「連絡体制の整備」は14にとどまった。全4項目を条例化したのは8市村だけだった。
自治体も兼務の担当者が多く、防災対策が学童保育施設任せになっている。しかし、2015年度の「子ども・子育て支援新制度」で市町村が実施主体と明記された。日本も批准した「子どもの権利条約」でも「守られる権利」がうたわれている。子どもの命を守るという当事者意識を持って取り組むべきだ。
効果的な実践例もある。糸満市の複数の学童保育は共同でマニュアルを作成した。名護市はマニュアルのひな型を提供している。行政や地域、学校と連携することで、学童保育側の負担が減り、子どもたちの安全が確保できる。
学童保育は他府県では1960年代から公設化が進められた。米統治下にあった沖縄はその流れから取り残された。日本復帰後も道路などの社会資本整備が優先され、福祉施策は立ち遅れた。
歴史的背景によって学童保育は民間頼みが続いてきた。今後は自治体が本腰を入れて、公的支援を充実させていかなければならない。

<金口木舌>平和を祈る - 琉球新報(2018年12月3日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-843012.html
http://archive.today/2018.12.03-012513/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-843012.html

2012年、ジャーナリストの山本美香さん=当時(45)=はシリア内戦の取材中に銃撃され、死亡した。その前年に出版した著書「戦争を取材する 子どもたちは何を体験したのか」(講談社)は小学生向けノンフィクションだ

▼多くの命を奪う戦争の愚かさを、平易な言葉で伝える。生ぬるい爆風、血や遺体、物が焼けるにおい。映画と現実の戦争の違いを挙げ「これらの感覚は何年たっても忘れることはできない」と記した
▼1943年、米軍によって奄美大島沖で撃沈された航路船・嘉義丸。今年10月、初対面した体験者らの記事が掲載された。記事を読んだ鹿児島市の男性が本紙に連絡し、その証言をこの欄で紹介した。これが新たな呼び水になった
▼身内に体験者がいると、別の読者から情報が寄せられた。11月26日、体験者の真栄田栄子さん(93)=今帰仁村=と仲本康子さん(77)=本部町=の初対面がかなった
▼真栄田さんは共に乗船した親族4人を失った。その後、わずかな物音で寝床から飛び起きるようになった。当時2歳半の仲本さんは攻撃直後の記憶はないが、海や川を恐れ今も入ることができない。心の傷は残る
▼山本さんの著書にも、テロの現場を体験し不眠に苦しむ8歳の少年が描かれている。「生きていて良かった」と互いの手を重ねた嘉義丸の2人。平和を祈り、傷を温め合うように見えた。