九電が初の出力制御 “原発ありき”で太陽光にシワ寄せの愚 - 日刊ゲンダイDIGITAL(2018/10/13)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/239486

九州電力は13日、太陽光発電などの事業者に対し、発電の一時停止を求める「出力制御」を実施。停止要請は離島を除いて全国で初めてだ。
「13日は好天で太陽光発電の供給が増えると予想しました。一方、今の時季は冷暖房が使われない上、週末は工場やオフィスが休みで電力需要が落ち込みます。需給バランスを維持するため、太陽光、風力の出力制御をお願いすることになりました」(九電・報道グループ担当者)
九州は日照条件がよく、余剰の土地も多いため太陽光発電が他地域に比べ普及している。九電によると、今年8月末段階で九電に導入されている電力量は、原発8基に相当する807万キロワットに上る。一方、九電は川内(鹿児島県)、玄海佐賀県)の原発4基を再稼働させている。電力需要が下がるシーズンの好天日に太陽光発電に頑張られては、供給過多になり、ブラックアウト(大規模停電)が起きるという理屈だ。だが、原発やその他の電力でなく、なぜ太陽光を抑制するのか。
「電力の供給制限は国のルールに基づいて7段階で行っています。火力、水力、関東への送電など5段階の策を講じましたが、供給過多は解消されない見通しで、6段階目の太陽光、風力の制限に至りました。原子力? 最終の7段階目です」(前出の九電担当者)
原発を一時的に止め、また再稼働させるのが簡単ではないのは分かるが、こうなると、そもそも九州で4基もの原発再稼働が必要だったのかという疑問が湧く。「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武氏が言う。
「今回の太陽光発電の停止は、現行事業者の収益を圧迫するだけでなく、これから投資を検討している人にもブレーキになり、太陽光など再生可能エネルギーの普及を妨げないか心配です。九州のように再エネに有利な地域では、再エネの普及と同時に脱原発をしないと、需給バランスの問題が生じてしまう。今回のように供給調整が必要な事態は、今秋や来春に再び必ず起こります。それを見越して、原発をあらかじめ停止することも検討すべきです」
原発のしがらみさえなければ、九州は再エネの最先端を走るポテンシャルがあるのに……。歯がゆいばかりだ。

九州電力 太陽光の出力制御実施 大規模停電回避へ - 毎日新聞(2018年10月13日)

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20181014k0000m020122000c
http://archive.today/2018.10.14-024605/https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20181014k0000m020122000c


九州電力は13日、九州域内の一部の太陽光発電を一時的に止める「出力制御」を離島以外で初めて実施した。九州の幅広い地域で晴天となったため、太陽光の発電量が増えて需給バランスが崩れ、大規模停電(ブラックアウト)に陥るのを防ぐのが狙い。13日は43万キロワット分を抑制する計画だったが、14日はそれを上回る62万キロワット分の太陽光を制御する予定だ。
14日は発電量が最大となる午前11時〜11時半の時間帯に需要が758万キロワットにとどまる一方、供給力は1242万キロワットに達する見通し。揚水発電の水のくみ上げ動力などとして226万キロワットの電力を使うほか、九州と本州をつなぐ送電線「関門連系線」で196万キロワットの電力を送る措置を講じても、62万キロワット分の電力が余ってしまうため、連日の出力制御を決めた。
対象件数は非公表としているが、初回の13日が九州北部中心だったため、鹿児島や熊本、宮崎などの太陽光が多いとみられる。出力制御は国のルールに基づくもので、原発や水力、地熱よりも先に太陽光発電を抑制する。
13日は午前11時半〜午後4時に出力制御を実施。遠隔制御で電力が送電線に流れないようにするなどした。需要が最大(851万キロワット)となった同日午後0時半〜1時の時間帯には、32万キロワット分の事業用の太陽光を止めた。トラブルの報告はないという。国は今後、審議会などで出力制御の実施が妥当だったか、詳細な経緯を検証する方針だ。
2012年の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)開始以降、太陽光は全国的に急増。特に土地が安く日照条件が良い九州は普及が進んでおり、今年8月末の導入量は原発8基分に相当する807万キロワットに上っている。FIT導入前の11年度末に比べ、10倍超の規模だ。
電力は、企業や家庭の使用量(需要)と発電量(供給)が常に一致しないと周波数が乱れ、最悪の場合、発電所の連鎖停止でブラックアウトにつながる恐れがある。北海道地震のように電力不足のケース以外に、電力が余る場合でも発生する。そこで全国の電力大手は日々、需給バランスを調整している。
九州は太陽光の拡大に加え、川内(せんだい)、玄海原発4基(計414万キロワット)が今年8月から同時稼働し、供給力がさらに上昇。冷房需要が落ち込む今秋にも出力制御を実施する可能性が高まっていた。【浅川大樹】

伊方原発 再稼働迫る中の訓練 実効性に疑問の声 大分 - 毎日新聞(2018年10月13日)

https://mainichi.jp/articles/20181013/k00/00e/040/232000c
http://archive.today/2018.10.14-022251/https://mainichi.jp/articles/20181013/k00/00e/040/232000c

高齢者避難に不安も
四国電力伊方原発愛媛県伊方町)の重大事故を想定した大分県原子力防災訓練が12日、大分市佐賀関などであった。伊方原発は「日本一細長い」とされる佐田岬半島の付け根に立地。事故が起きれば、原発西側の住民約4700人が孤立する恐れがある。27日には再稼働が予定されている。今回は初めて佐伯市を避難ルートに加えたが、「大津波が大分側を襲ったら……」「高齢者が訓練通りに動けるのか」などと訓練の実効性に対し、疑問の声が漏れた。【田畠広景、柳瀬成一郎】
原発事故
事故は震度6強の地震が発生し、原子炉が停止、放射性物質が流出したと想定。広瀬勝貞知事は内閣府中村時広愛媛県知事ら関係機関13カ所を結ぶテレビ会議に出席した。中村知事は「避難受け入れにご協力を」と要望。広瀬知事は「港湾は大丈夫と聞いている。受け入れの連絡をしている」と応じた。
大分への海路避難訓練は今回で4回目。住民計40人がフェリーなどに分乗し、大分市佐賀関と佐伯市に避難を始めた。
最短45キロのまち
正午前、民間のフェリーで大分市佐賀関の佐賀関港に約20人が到着した。2本の柱状の検知器を通り抜ける「ゲート型モニター」をくぐり、放射性物質が付着していないことを確認。さらにバスでの内陸輸送を検証するため、由布市の挾間公民館に向かった。伊方町民からは巨大地震後の海路避難への不安が聞かれた。同町の向井範幸さん(62)は「母は心臓が悪い。体の不自由な人に配慮した別の避難ルートがあってもいいのでは」。自営業、山下一生さん(62)は「大地震で、むしろ大分が無事なのだろうか」とこぼした。
また、今回は新たに、放射性物質が操業中の漁師に付着した場合を想定した除染訓練も初めて実施。左腕に付着した漁師に扮(ふん)する県職員に、保健師が「マスクと手袋を付けて、ウエットティッシュでぬぐって」と丁寧に指導した。佐賀関地区の女性(81)は「原発からの近さが気になる。再稼働は心配です」と吐露した。
津波がきたら……
佐伯市では松山海上保安部の巡視船で約20人が佐伯港に到着し、放射性物質の付着の確認など同様の検査があった。検査を終えた住民はバスで市保健福祉総合センター和楽に到着し、保健師らの問診を受けた。
ここでは受け入れ先の懸念の声。佐伯港付近は南海トラフ地震で最大7.40メートルの津波が想定される。伊方町の山中宏さん(71)は「受け入れ先も大混乱しているはず。逃げ場の不安がつきまとう」と話す。さらに、山中さんが住む正野地区は約300人が住むが、半数が高齢者だ。訓練通りに逃げられるのかどうか。悩みは深い。

中高吹奏楽部5割 土曜に5時間活動 文化部活動調査 - 東京新聞(2018年10月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018101402000113.html
https://megalodon.jp/2018-1014-1001-45/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018101402000113.html


文化部活動が盛んな中学校・高校を対象とした文化庁の抽出調査で、吹奏楽部の約五割が土曜日に五時間以上活動するなど、一部で練習が長時間に及んでいることが分かった。コンクール出場に向けた準備などが理由とみられる。同庁は、生徒や教員の負担軽減のため策定中の文化部活動に関する指針に、休養日や活動時間に関する目安を盛り込む方針だ。
目立った活動実績がある国公私立の中学・高校を抽出し八〜九月にアンケートを実施。六十八校の三百五十九部から回答を得た。
学校が休みの土曜日に活動している部は、全体の約半数。吹奏楽部は二十七部のうち48・1%が、土曜の平均活動時間が五時間以上だった。演劇部(二十六部)は15・3%、美術・工芸部(三十一部)は9・7%、合唱部(十七部)は5・9%で、吹奏楽部の割合の高さが目立った。
平日の活動状況を全体に尋ねたところ、毎日活動している部が28・1%と最も多く、一日だけが19・8%、二日間が18・4%と続いた。一日当たりの活動時間は一〜二時間未満が52・6%と過半数を占め、二〜三時間未満が30・9%、一時間未満は11・1%だった。
部活動を巡ってはスポーツ庁が今年三月に「週二日以上の休養」などを盛り込んだ運動部活動の指針を策定した。文化庁は、これを参考に「文化部版」の年内策定を目指している。

単純労働に新在留資格案 政府「移民」打ち消し躍起 - 東京新聞(2018年10月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018101402000121.html
http://web.archive.org/web/20181014005453/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018101402000121.html

外国人受け入れを拡大するため、新たな在留資格創設を盛り込んだ入管難民法改正案の骨子が十二日、示された。禁じてきた単純労働分野での就労を想定しており、深刻な人手不足に悩む経済界の要請に、政府が折れた形だ。一部の新資格は在留期限を更新し続けることが可能に。政府は「移民政策とは異なる」と繰り返し強調し、来年四月の導入を見込むが、国会審議は波乱含みだ。
サービス業や農業、建設など慢性的な人手不足に悩む業界は、外国人の登用に積極的だ。大戸屋ホールディングス(東京)では、パート・アルバイト店員の15%以上が外国人。広報担当者は「都市部だと店員の半分以上の店も多い。外国人店主は珍しくない」と話す。
「覚える仕事は多いけど、もっと働きたい」。東京都文京区のコンビニで働く女性は、流ちょうな日本語で語る。ネパール西部の少数民族出身で、日本語学校に通う。就労は原則週二十八時間以内とされる留学生の資格で滞在。「日本にいられる期間が限られている。長時間働きたい」と訴える。
新制度では、一定の技能を持つ「特定技能1号」と熟練者対象の「特定技能2号」が創設される。2号では家族の帯同も認め、条件を満たせば日本で住み続けられるようになる。
一方、政府関係者は、保守層の反発が強い「移民」受け入れとされることに、警戒感をあらわにする。「移民とは明確に異なる」「受け入れは人手不足への対応」。山下貴司法相は十二日の閣議後会見で語気を強めた。
政府は一九八八年、第六次雇用対策基本計画で「単純労働者の受け入れは、十分慎重に対応する」という基本方針を閣議決定。長年堅持し、技能実習生や留学生といった、表向きは就労を目的としない在留資格を持つ外国人に単純労働を担わせてきた経緯がある。
自民党には官邸主導で外国人受け入れ拡大策を決めたことに「拙速な進め方だ」(保守派議員)との不満も。安倍晋三首相は「移民政策ではない」と繰り返すが、野党は「移民を受け入れるか受け入れないか、国家の大きな転換点だ」(立憲民主党長妻昭代表代行)とけん制する。立民と国民の支持団体である連合も「日本人の雇用が失われる」と法案に難色を示す。
政府、与党は二十四日召集見通しの臨時国会で改正案を成立させる方針だ。

子の監禁 家族を孤立させない - 朝日新聞(2018年10月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13722590.html
http://archive.today/2018.10.14-010356/https://www.asahi.com/articles/DA3S13722590.html

障害や病気のある子を親が長年、自宅で監禁する。そんな事件が相次いで発覚した。
子の人権を踏みにじる行為であり、親が刑事責任を問われるのは当然だ。ただ、親は周囲の目や声を気にして子の監禁に走った面もある。自治体などの対応は鈍く、異変に気づく機会がありながら見過ごしていた。
困難を抱える家族を孤立させず、不安や悩みを相談できる態勢を整える。地域の関係機関が情報を共有し、連携して対処する。そのことを肝に銘じたい。
兵庫県三田市で、重度の知的障害の男性(42)が自宅に建てられたプレハブ小屋の中の檻(おり)に閉じ込められていた。男性は今年初めに保護され、父親が監禁罪で懲役1年6カ月執行猶予3年の有罪判決を受けた。
市の第三者委員会が先月まとめた検証報告書によると、監禁は二十数年に及んだ。末期がんの母親を担当した介護関係者が父親から「長男を座敷牢に入れている」と聞いたことが端緒となり、市の障害福祉課職員らが家庭を訪問。檻の中にいる長男を確認したが、外傷がないなど他の虐待の例と異なり、状態が急変する可能性は高くないと判断。警察にも通報しなかった。
一家は長男が15歳だった1991年に三田市に転入。市は相談に応じていたが、長男が18歳の時、別の担当に移され、その後は放置された。医者も、長男を一度も対面で診療せず向精神薬を20年以上処方し続けた。
すぐに保護しなかった市職員の人権意識の乏しさと行政の縦割り。無責任な医師の対応。報告書から浮かび上がるのは、基本を欠いた関係者の姿勢だ。
大阪府寝屋川市でも昨年末、統合失調症の女性(33)が自宅のプレハブ部屋に閉じ込められ、カメラで監視されていたことがわかった。食事を十分に与えられなかった女性は遺体で発見され、両親が監禁と保護責任者遺棄致死罪で起訴された。
小6から休みがちだった女性は中学校には1日も登校しておらず、同級生は担任に「異変」を訴えた。17歳になった01年に統合失調症と診断され、その後、監禁が始まったという。
市教委はどう対応したのか。市は当時の担任らに聞き取りをしたが、三田市のような本格検証は見送った。それで本当に再発を防げるだろうか。
「外出させてもらえないなど『見えない檻』にいる障害者がいない自治体はない」。三田市の報告書はこう指摘した。人権保護を徹底するためにも、二つの事件から教訓を導き、それを広く生かさねばならない。

社会保障改革 「本丸」から逃げるな - 朝日新聞(2018年10月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13722579.html
http://archive.today/2018.10.14-010452/https://www.asahi.com/articles/DA3S13722579.html

安倍首相がこれからの3年で断行するとした社会保障改革の議論が始まった。
将来の社会保障の姿をどう描き、必要な財源をどう確保するのか。医療、介護、年金、子育てなどの各分野を広く見渡し、「給付」と「負担」を一体で考える。そんな骨太な議論が期待される。
だが、首相が「全ての世代が安心できる社会保障へ」と意気込むわりに、今の議論の進め方はばらばらで、テーマも限定的な印象だ。
議論が始まった未来投資会議と経済財政諮問会議はともに、首相が議長を務める。未来投資会議は主に成長戦略を議論する場だ。社会保障改革もその一環と位置づけ、高齢者の雇用拡大や新卒一括採用といった雇用慣行の見直しを中心に検討するという。
経済財政諮問会議はすでに、給付と負担のあり方を含む重点政策の取りまとめを2年後に先送りすると決めている。当面は健康づくりや予防の推進などを中心に議論する予定だ。
いずれも必要な取り組みではある。意欲のある高齢者が働ける環境を整え、制度の担い手を増やすことは大事だ。
だが、国民が最も知りたいのは、少子高齢化が進むなかで制度を維持するために、給付をどこまで抑えねばならないのか、負担はどれだけ増えるのかだ。医療や介護の保険でカバーする範囲の見直し、患者や利用者の負担引き上げが、政府の改革工程表の検討メニューに挙げられながら、どこまで踏み込むかがわからないことが、将来に対する不安をよんでいる。
一方で、目標としながら一向に実現しない「待機児童ゼロ」のように、今の施策が十分なのかという問題もある。今後増えると予想される一人暮らしの高齢者への対応も考えねばならない。そうした社会保障の全体像を考えることこそ、改革の「本丸」のはずだ。
それには、多岐にわたる論点を包括的に議論する、新たな検討の場が必要ではないか。
65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年度には、社会保障給付費の対GDP(国内総生産)比は今の21・5%から約24%に上昇する。政府は5月に、そんな長期推計を初めて公表した。消費税を来年10%に上げれば安心とは言えない現状を示しながら、そのことへの対応を議論する場がいまだにないのは、怠慢というほかない。
継ぎはぎの改革で「安心」は得られない。困難な課題に向き合ってこその社会保障改革だ。