秋田県警が雇用率水増し「眼鏡」を障害者に算入 - 河北新報(2018年9月15日)

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201809/20180915_41045.html
http://archive.today/2018.09.16-014803/https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201809/20180915_41045.html

秋田県警は14日、眼鏡を掛けて通常に勤務している行政職員8人を視覚障害者として2018年度の障害者雇用率に算入していたと発表した。いずれも障害者手帳の取得要件に該当しない程度の視力で、「法定雇用率に合わせて人数を調整し、水増ししていた」と認めて謝罪した。県警によると、少なくとも書類が残る15年度から、警務課の判断で不適正な算入を続けていた。
全職員が提出する健康状態の申告書類に記された裸眼視力を基に、警務課の複数の担当者が対象とする職員を選んでいた。
中央省庁の障害者雇用水増し問題を受けた県警の調査で発覚した。8人は障害者として申請されていたことを知らなかった。この8人以外に、病気などで手帳を取得している2人を障害者雇用の対象とした。
三浦潔警務課長は「障害の基準を定めた国のガイドラインを十分に理解できていなかった面もあるが、悪質と言われても仕方ない」と話した。
県と県教委も14日、障害者手帳を持たない計26人を誤って雇用率に算入していたと明らかにした。退職した職員を算入したケースもあった。修正後の雇用率は県、県教委、県警のいずれも法定雇用率を下回る。
佐竹敬久知事は14日の県議会の答弁で「制度に関する認識が甘かった。来年度以降、経験者採用試験に障害者枠を新設するなどして対応したい」と述べた。

(余録)「過去から学べない者は、過ちを繰り返す」… - 毎日新聞(2018年9月16日)

https://mainichi.jp/articles/20180916/ddm/001/070/194000c
http://web.archive.org/web/20180916005829/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-803622.html

「過去から学べない者は、過ちを繰り返す」−−。米国の哲学者、ジョージ・サンタヤーナの言葉だが、過ちが生かされないのが現実だ。ならば過去の失敗から学ぶのをやめてみては? そんな不真面目な考えが、ある実験から導かれた。
集団を、衝動買いの回避体験をふり返るグループと衝動買いの失敗体験をふり返るグループとに分ける。さらにふり返る件数が多い組と少ない組とに細分化する。ふり返った後、今いくらまでなら欲しい物をクレジットカードで買うか、と尋ねる。米バンダービルト大ケリー・ホーズ博士の研究だ。
衝動買いの回避体験を少ない件数ふり返ったグループだけ、他より浪費をしないという結果が出た。成功体験も、数が多過ぎると思い出すのに苦労をし、うまく役立てられない。少ない件数なら個々の体験が鮮明で、次に生きるようだ。
一方、衝動買いのグループは、件数に関係なく失敗を思い出したことで気分が落ち込み、散財に流れた。失敗からは学べず、成功が次の過ちを防ぐ、ということらしい。
金融危機の引き金となった米大手証券、リーマン・ブラザーズの破綻から丸10年。歴史的失敗から何を学ぶか、といった議論が盛んだ。衝動買いと重ねるのはさすがに乱暴だが、失敗に学べない人間としては、発想の転換も一案かもしれない。
過去の成功体験が見当たらなければ、子や孫の幸福な将来を思い描く。それにつながる行動を選ぶ。「未来から学ばない者は、過ちを繰り返す」は、どうだろう。

バチカン 人権を尊ぶ改革断行を - 朝日新聞(2018年9月16日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13681007.html
http://web.archive.org/web/20180916010051/https://www.asahi.com/articles/DA3S13681007.html

12億人のカトリック信者を擁するバチカンローマ法王庁)が、子どもへの性的虐待問題で揺れている。
米国や欧州など世界各地で、多くの聖職者が手を染めていた実態が次々にわかった。混乱のなか、教会内から公然とローマ法王への辞任要求が出る異例の事態に発展している。
この問題は何十年も前から報告されてきた大罪であり、カトリック教会が抱える最大の人権侵害だ。国連の委員会は、被害者が何万人にも及ぶとした。
法王は、今度こそ真相を徹底究明し、問題に終止符を打たなければならない。関係国の司法手続きにも協力しつつ、加害者らを厳格に処分し、有効な防止策を講じる必要がある。
カトリック教会は本来、人権を守るとりでであるべき存在だ。軍事独裁などによる弾圧から人々をかくまう事例は多い。最近も、欧州の政府が拒む地中海上の移民・難民を、教会が仲介して上陸させた。
そうした人道的な功績の一方で、性的虐待の事実を教会は長く隠蔽(いんぺい)してきた。加害者の神父らをひそかに異動させる。被害者に圧力をかけてもみ消す。そんな行いが蔓延(まんえん)していた。
欧州外から1300年ぶりに就任した現職のフランシスコ法王は及び腰だった歴代法王と比べ、問題解決に積極的だ。訪問先の国々で被害者らに謝罪を重ね、加害者の聖職者資格を剥奪(はくだつ)する措置などをとってきた。
それでも対応の遅さや不十分さを指摘する声は多い。高齢化する被害者も増えるなか、速やかな対応が求められている。
懸念されるのは、教会内の「改革派」と「保守派」による権力抗争だ。
現法王はバチカンでの行政職経験がなく、官僚主義に批判的だ。バチカン銀行の金融不祥事などタブー視されてきた暗部にも挑む「改革派」とされる。
同性愛や離婚にも柔軟さを示し、世界中で高い人気を誇るが、保守派の高位聖職者らは不満を強めているとみられる。
そんな組織内の対立で問題への対処を滞らせることは許されない。人権侵害はただちに是正されねばならない。
バチカンには、宗教団体にとどまらない影響力がある。冷戦の終結で役割を果たしたほか、現法王も米国とキューバの国交回復を仲介するなど、平和外交で存在感を示している。被爆国日本にも高い関心を寄せ、来年中の訪日に意欲的だ。
あらゆる人権を尊重する組織にバチカンを生まれ変わらせられるか。世界が注目している。

「夏休み明け 子どもの居場所は」(くらし☆解説西川 龍一 解説委員) - NHK(2018年9月5日)

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/304729.html
http://web.archive.org/web/20180916010245/http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/304729.html

木村草太の憲法の新手(88)判事の懲戒申し立て 根拠薄弱、表現の自由侵害 - 沖縄タイムズ(2018年9月16日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/315567
https://megalodon.jp/2018-0916-1002-44/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/315567

7月24日、東京高裁の林道晴長官が、岡口基一判事の懲戒を申し立てた。この申し立ては、根拠が薄弱な上に、裁判所内でのハラスメントが疑われる。「一判事の懲戒」というにとどまらず、表現の自由など、憲法価値の観点からも検討すべき問題だ。
申し立ての理由は次のようなものだ。岡口判事はツイッターで、犬の所有権を巡って争われた民事訴訟のニュースを紹介した。具体的には、「公園に放置されていた犬を保護し育てていたら、3カ月くらいたって、もとの飼い主が名乗り出てきて、『返してください』、『え? あなた? この犬を捨てたんでしょ? 3カ月も放置しておきながら…』、裁判の結果は…」との記載と共に、元の所有者が勝訴したニュース記事へのリンクを付した。
林長官は、このツイートが「犬の所有権が認められた当事者(もとの飼い主)の感情を傷つけ」るから、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に該当し、懲戒理由になると主張する。
確かに、このツイートは、「この犬を捨てたんでしょ? 3カ月も放置して」と、もとの飼い主に対して疑問を投げかけている。しかし、これは新たな飼い主の主張を要約したものにすぎない。また、「裁判の行方は…」と、裁判所による公平な判断があることを示している。ツイートを読んだ人は、もとの飼い主の側にも、犬と離れざるを得なかった事情があり、裁判ではそれが主張されているであろうことを容易に想像できるはずだ。
つまり、このツイートは、もとの飼い主を揶揄(やゆ)したり批判したりするものではなく、それを読む人に対し、もとの飼い主への否定的評価を示す内容では必ずしもない。このツイートにより、懲戒が必要なほどに当事者の感情が害されたと認定するのは無理だろう。
もっと言えば、この程度の発言で懲戒処分となるのであれば、もはや、裁判官は、裁判例を紹介するエッセーや論文を書けなくなるだろう。一方の当事者の主張を紹介するだけで、懲戒対象となってしまうからだ。これは、あまりに非常識な帰結だ。
なぜ、高裁はこれほどひどい申し立てをしたのか。高裁は、過去にも、岡口判事のツイッターへの投稿に注意を出してきた。また、岡口判事は、申し立てに先立ち、林長官から、ツイッターを止めないなら分限裁判にかけて判事を辞めさせる、と脅されたと主張している。それが事実なら、今回の申し立ては、犬の飼い主の感情の保護ではなく、岡口判事のツイッターを止めさせるためのハラスメントだと理解すべきではないか。
もちろん、職務上の秘密を暴露したり、訴訟当事者の名誉を毀損(きそん)したりした判事には、懲戒処分が必要だ。しかし、今回のツイートにそうした悪質性はない。むしろ、さしたる根拠もなく、ツイッターを全てやめさせるためにハラスメントをしたとすれば、表現の自由の侵害だ。
判事も一人の個人であり、人権がある。表現の自由を侵害する脅迫や懲戒申し立てことこそが、裁判官の「品位を辱める行状」ではないか。今回、懲戒処分を受けるべきは、岡口判事ではなく、林長官ではないだろうか。(首都大学東京教授、憲法学者

(沖縄県知事選 子どもの貧困対策)未来照らす具体性問う - 沖縄タイムズ(2018年9月15日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/315332
http://web.archive.org/web/20180915074126/http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/315332

これまでの知事選ではほとんど語られなかった「子どもの貧困対策」が、今回の知事選で争点の一つとなっている。
基地や経済の陰に隠れがちだった貧困問題が主要テーマに浮上したのは、沖縄の子どもの相対的貧困率が29・9%と、全国の2倍を超える状況であることが明らかになったからだ。
この数字は2016年1月、県の実態調査によりはじき出されたもので、県民に大きな衝撃を与えた。と同時に見えにくいといわれた貧困が可視化され、「県子どもの貧困対策計画」や民間の子ども食堂設置の動きなどへとつながった。
知事選は安倍政権が支援する佐喜真淳前宜野湾市長と、翁長雄志前知事の後継として「オール沖縄」勢力が推す玉城デニー衆院議員との事実上の一騎打ちだ。
佐喜真氏は「1人当たりの県民所得を全国並みの300万円まで引き上げ、子どもの貧困の撲滅を目指す」と主張する。子どもの保育料や給食費、医療費の無償化も掲げている。
一方の玉城氏は「子どもの貧困対策を最重要政策として取り組み、県の貧困対策計画の着実な実施」を訴える。中高校生のバス通学無料化、子育て世代包括支援センターの設置も目指す。
どちらも魅力的な政策には違いないが、有権者が知りたいのは、その具体性と実効性である。

■    ■

佐喜真氏は政策発表の記者会見で、子どもの保育料や給食費などの無償化の財源として、米軍再編交付金を例に挙げた。
再編交付金は基地受け入れの見返りとして政府が支払うものだ。辺野古新基地建設についての是非を語らないまま再編交付金を持ち出すのはフェアとはいえない。しかも再編交付金には10年という期限がある。その後はどうするつもりなのか。
玉城氏が着実な実施を掲げる貧困対策計画について、県は先日、取り組み状況を公表した。盛り込まれた34指標のうち25で改善が見られたものの、大学等進学率や高校卒業後の進路未決定率など五つは後退という結果だ。
県の高校生調査で明らかになったのは、経済上の理由から大学進学を諦める生徒の姿だった。計画の推進に必要なもの、足りないものについても語らなければならない。

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深刻な子どもの貧困の根っこには、沖縄戦による荒廃や米軍統治下における法制度の不備がある。
本土との格差を是正しようと始まった沖縄振興計画も社会資本の整備や産業振興に重点が置かれ、教育や児童福祉といった子どもへの視点が薄かった。
沖縄は出生率日本一の「子宝の島」だ。だからこそ社会の宝である「子どもを大事にする島」を目指すべきだ。
どうすれば子どもたちの未来を明るく照らすことができるのか。次期振計も含め、「灯台」としての政治の役割を競い合ってもらいたい。

池宮城秀意記念賞 世界に沖縄の今伝えよう - 琉球新報(2018年9月16日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-803622.html
http://web.archive.org/web/20180916005829/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-803622.html

琉球新報社は2018年の「琉球新報池宮城秀意記念賞」に、米軍普天間飛行場辺野古移設反対を訴え、発表された「海外識者103人声明」を選定、15日に贈呈した。
声明への賛同者を募る活動で1万5千人の署名も集めており、沖縄の問題を世界に知らしめた。同賞にふさわしい活動と功績をたたえたい。
池宮城秀意記念賞は2008年9月15日の創刊115年を記念して創設された。国籍を問わず国外を活動の拠点とし、ジャーナリスト活動や研究活動などを通して「沖縄問題」を広く世界に知らしめ、その打開のために貢献している個人や団体に贈られる。
5年ごとに表彰し、第1回の08年受賞はインターネットで沖縄問題に関する日本語の記事や論文を英語で世界に発信している「アジア太平洋ジャーナルジャパンフォーカス」だ。13年は内定したが、授与に至らなかった。
「海外識者103人声明」は当初、14年1月に言語学者ノーム・チョムスキー氏、アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーン氏ら29人が呼び掛け人となって声明を発表したのが始まりだ。1カ月前の前知事の辺野古埋め立て承認を「県民の苦しみを恒久化させる裏切り」と批判し、沖縄での新基地建設に反対し、普天間飛行場の即時返還を求める姿勢を明確にした。
声明は瞬く間に広がった。「平和研究の父」とされる政治学者ヨハン・ガルトゥング氏ら著名な識者らが次々と賛同し、日本国憲法の条文数と同じ103人が名を連ねるまで拡大したのだ。
こうした動きは沖縄の人々を勇気づけた。世界の良心が沖縄に目を注ぎ、決して孤立していないことを示したからだ。その後も声明を重ね、今月には4回目となる声明を発表した。新基地建設を即座に中止し、沖縄を非軍事化するよう求めており、4年前を上回る133人が名を連ねた。
賞に名を冠している池宮城秀意は戦後の米統治時代から本土復帰後にかけて琉球新報の編集局長、社長などを務め、沖縄世論をリードしてきた。沖縄が置かれた差別的状況に憤り、広い視野から解決を訴えた。戦時中は反戦を訴え、治安維持法違反容疑で逮捕され、投獄されたこともある。常に反権力の立場に立ち続けた反骨のジャーナリストだ。
15日の贈呈式で、アメリカン大学教授のピーター・カズニック氏は「沖縄の皆さんは軍事主義と闘う世界の人たちに勇気を与えている。この賞は皆さんと一緒に受けた賞だ」と述べた。詩人で小説家のジョイ・コガワ氏は「受賞を機に沖縄の物語がさらに世界に広がっていくと信じる」と語った。
辺野古新基地建設など、沖縄は現在も厳しい状況に直面している。問題を打破するためには、この賞が目指す世界に知らしめる取り組みを繰り返すしかない。決して孤立せず、あきらめることなく。