性差別、職業選択の自由侵害 女子減点「違憲の疑い」 - 東京新聞(2018年8月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018080502000121.html
https://megalodon.jp/2018-0805-0949-32/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018080502000121.html

東京医科大(東京都新宿区)が一般入試で女子受験者の得点を一律に減点していた疑惑は、性別を理由とした恣意(しい)的な得点操作といえるだけに、性別などによる差別を否定した憲法に違反している可能性が高いとの指摘が出ている。憲法学者で女性の人権に詳しい仏教大の若尾典子教授=写真、仏教大提供=に聞いた。 (聞き手・川田篤志

憲法上の問題は。

「『法の下の平等』で性別などによる差別を否定した憲法一四条に違反している疑いが強い。不正操作は『妊娠や出産を機に職場を離れる女性が多く、系列病院の医師不足を回避する目的』と報道されている。事実なら明らかに女性差別だ。受験では大学の裁量権は認められるが、テストの点数を操作するのはその範疇(はんちゅう)を超えている」

−差別された受験生にとって不利益は大きい。

職業選択の自由を規定する憲法二二条にも違反している疑いがある。医者になるには医大や医学部を卒業し、国家試験に合格しなければならない。大学に入れなければその機会を奪われる。間接的に見えるかもしれないが、女性の労働権も侵害しているのでは」

−東京医科大特有の問題なのか。

「私も二十年前に女子学生に、受験の面接で男性教授から『結婚や出産で医者を辞めないか』と聞かれた、と相談された。昔からあった問題が表面化していなかっただけで、本当に根が深い問題だ。医学教育のあり方が問われている」

日本国憲法
14条1項

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

22条1項

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


週のはじめに考える 思い出そう ムーミン - 東京新聞(2018年8月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018080502000149.html
https://megalodon.jp/2018-0805-0950-35/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018080502000149.html

丸くてかわいらしいムーミン。作品が描く童話の底辺には、北欧の人たちが大切にしている寛容の考え方があります。今、思い出したい心です。
「来館者第一号は日本人でした」
フィンランドに昨年六月オープンしたムーミン美術館のミーナ・ホンカサーロ学芸員が開口一番、こう説明してくれました。
ムーミンシリーズの作者トーベ・マリカ・ヤンソンさんはこの国に一九一四年に生まれました。そこに開館した美術館=写真=は、関連作品が展示され多くの日本人が訪れる“聖地”になっているようです。

◆戦争の不安が生んだ
日本では愛らしいキャラクターとほのぼのとした世界を描いた作品とのイメージが強いですが、作品が生まれた背景には厳しい現実がありました。
九作あるシリーズの第一作が出版されたのは四五年、第二次大戦中に書かれました。フィンランドも戦争に巻き込まれていました。
「空襲におびえて創作意欲もなくなり、どうしたら心の平穏を保てるかを考えたとき童話の執筆を思い立ちました」
美術館ガイド、常世田美喜子さんは語ります。恐怖と不安が生み出した戦争の影が作品なのです。
第一作はムーミンたちが洪水に遭います。洪水は戦争の不安そのものです。ムーミンムーミンママがムーミンパパを捜すストーリーは、父親や男兄弟が出兵し母子が残された当時の家庭の状況を反映しているようです。
第二作は彗星(すいせい)が迫ってきます。彗星は広島、長崎の原爆投下の影響を受けているともいわれます。
作品に通底する思いがあります。それは分け隔てなく他者を受け入れるという感受性です。ヤンソンさん自身はスウェーデン語を母語としたフィンランド人です。フィンランド語を使う人が大勢の社会では少数派です。
だから弱い立場の人たちに視線が向く。作品には多くの種族が登場しますが、仲良しです。戦争を経験し、より一層その思いが作品に込められた気がします。
注目する登場人物が第八作「ムーミンパパ海へいく」の魔物のモランです。シーツを頭からかぶったような姿で周囲に不気味がられています。モランを知る者はおらず誰も好きではありません。
ムーミンも恐怖を感じていますが、交流することでモランの孤独感を理解し同情します。常世田さんは「お互いが歩み寄ることで誰もが分かり合えることを悟ることができる。それを表しています」。
他者を受け入れ平等に接する精神は北欧に共通しています。支え合いの制度である社会保障にも生かされています。外国人も受けられる支援は同じです。
残念ながら日本ではこの寛容さが失われつつあるように思えてなりません。

◆不寛容が社会を分断
非正規で働く人が増え正社員と所得格差が生まれています。生活保護受給者への風当たりも強まっている。貧困や孤立の先に子どもたちへの虐待が起こっています。
しかし、貧困に陥るのは自己責任と切り捨てる気分が広がっていませんか。今と将来への不安から、人とかかわりを持つ余裕も関心もなくなっています。
他者への無理解は社会の分断を生みます。分断が進めば、社会から支え合いの気持ちがなくなります。それは社会保障を支える基盤がなくなることでもあります。
その北欧が今、寛容さを試される事態に直面しています。中東やアフリカなどからの移民が増えているのです。フィンランドスウェーデンでは反移民を掲げる政党に一定の支持が集まっています。両国とも近く行われる国会議員選挙の最大の争点になりそうです。
美術館には高さ二・五メートルの五階建てのムーミン屋敷のジオラマが展示されています。ヤンソンさんが仲間たちと毎週土曜の夜に集まって楽しみながら三年を費やして作ったそうです。「誰でも友達になれるというヤンソンの哲学を象徴しています」と常世田さんは言います。
屋敷では多くの登場人物たちが楽しそうに暮らす。直面する困難を乗り越える力に満ちている。ムーミンを知る人はもちろん、知らない人の心の中にもムーミンは住んでいる。ただ、それは大きくなったり小さくなったりするのだと思います。大きくする心を持ちたい。思い出そう、ムーミン

子どもの悩み 夏の間に受けとめて - 朝日新聞(2018年8月5日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13622388.html
http://archive.today/2018.08.05-005113/https://www.asahi.com/articles/DA3S13622388.html

いじめ、級友や先生とのあつれき、勉強、進路――。悩んでいる子にとって、学校を離れていられる夏は貴重な時間だ。
2学期が近づくと、そういう子たちは不安定になりやすい。9月1日は18歳以下の自死が年間で最も多い日でもある。
だから、休みの間にゆっくり気持ちを落ち着かせ、一歩踏みだして、だれかに悩みを打ち明けてほしい。そして、大切な命を守るため、相談しやすい環境を整えるのは大人の責任だ。
何よりまず、親や先生には話しにくいときでも、他の大人が耳を傾けてくれる場があることを、子どもたちに伝えよう。
「チャイルドライン」や「24時間子供SOSダイヤル」のほか、地元の弁護士会や市区町村の教育委員会も、相談窓口や担当者を置いている。
その連絡先をネットでひろめる。チラシにして祭りや花火大会で配る。PTAや自治会などでもできるとり組みだ。
相談をうける人は、事実確認や指導を急がず、まずはじっくり耳を傾け、苦しい気持ちを分かちあうよう心がけたい。
「いじめ対策の法律ができたのをきっかけに、学校現場は親の話はよく聞くようになった。しかし、当事者である子どもたちは十分に話を聞いてもらっていない」。関西学院大桜井智恵子教授は指摘する。
だから、桜井さんが調査相談専門員をつとめる兵庫県の「川西市子どもの人権オンブズパーソン」では、親から相談が寄せられた場合でも、できるだけ子ども本人に会って、直接話をするようにしている。
この川西のオンブズパーソンや東京都世田谷区が設ける「せたホッと」は、公的な第三者機関として、教育や福祉、法律などの専門家をそろえている。本人の意向を踏まえ、学校などに働きかけて人間関係を解きほぐす手助けもする。
「せたホッと」では、弁護士会の法律相談に取り次いだり、学生ボランティアを学校に派遣したりすることもある。
他の自治体もこうした例を参考に、子どもにかかわる内外の機関と連携を強め、相談に備えてもらいたい。SNSなど身近な相談方法を用意する工夫も必要だ。「相談してよかった」と思ってもらうことが次の相談を呼び、多くの子を救うことにつながるに違いない。
親を心配させたくない、弱い姿を見せたくないと、一人で悩みを抱え込んでしまう子も多いと聞く。助けを求めるのも勇気であり、大切な人を悲しませない優しさなのだと伝えたい。

<金口木舌>日本語の会話には英単語が多く出てくる。中学生の頃、英語教師に・・・ - 琉球新報(2018年8月5日)


https://ryukyushimpo.jp/column/entry-775792.html
http://archive.today/2018.08.05-005325/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-775792.html

日本語の会話には英単語が多く出てくる。中学生の頃、英語教師に「だから皆さんは英語を習得しやすい」と言われた。納得したが、できないままだ

▼言い訳でしかないが、英単語にはよく知られた意味以外にも違う語義があるものだ。「長い」の「long」は「熱望」や「切望」も意味する。直訳すると「昨日を熱望する」と歌う曲がある
ビートルズの「イエスタデイ」だ。「Now I long for yesterday」とつづる。「ビートルズ全詩集」(内田久美子訳)は「今はただ幸福だった昨日が懐かしい」と訳す
▼恋の歌だと思っていた。作ったポール・マッカートニーが若くして亡くなった母を歌ったと語ったこともあるようだ。いずれにせよ、過ぎた日々に向き合う意味だ
▼この曲の入ったアルバムが英国で発売されたのは1965年8月6日。広島への原爆投下から20年後のこと。そう教えてくれたのは広島で活躍するヴィオラ奏者の沖田孝司さんだ。6月に沖縄市で開いたミニコンサートで語った。過去に向き合う心の大切さをさりげなく説いた
▼原爆で焼き尽くされた街の復興は、緑濃き街再びと立ち上がった人々の力による。失われた一つ一つの命の無念が基にある。体験者の減少による記憶の風化が言われる。曲が歌い継がれるように、私たちはいつまでも語り継がねばならない。