最高裁 裁判員「有罪」を覆した高裁無罪判決を初の破棄 - 毎日新聞(2018年7月13日)

https://mainichi.jp/articles/20180714/k00/00m/040/102000c
http://archive.today/2018.07.13-213823/https://mainichi.jp/articles/20180714/k00/00m/040/102000c

鳥取県米子市で2009年、ホテル支配人を殺害したとして強盗殺人罪に問われた同市の無職、石田美実被告(61)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は13日、逆転無罪を言い渡した2審・広島高裁松江支部判決(17年3月)を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。小法廷は「2審判決は間接証拠の総合評価を欠き、1審判決の不合理さを具体的に示していない」と指摘した。
裁判員制度が始まった09年以降、裁判員の有罪判決を覆して全面無罪とした2審判決が最高裁で破棄されるのは初めて。今後、高裁は間接証拠を総合評価してもなお、無罪とできるかどうか審理をやり直す。
石田被告は09年9月、勤務先だったホテルで支配人の首を絞めて殺害し、売上金を奪ったとして起訴された。1審・鳥取地裁は16年、被告が事件翌日に230枚の1000円札を口座に入金した点や、犯行時間帯に現場付近にいたとみられる点などを踏まえ、殺人と窃盗罪を適用し懲役18年とした。これに対して2審は「入金した1000円札が被害金そのものである証拠はない」などとして無罪を言い渡していた。
小法廷は「日常生活で230枚もの1000円札を持ち合わせることは通常なく、被告の犯人性を相当程度推認させる」と指摘。2審判決について「1審判決を分断して個別に検討しており、証拠の総合評価をしていない」と結論付けた。裁判官4人全員一致の意見。【伊藤直孝】

滋賀・日野町事件 元受刑者の死後再審決定 大津地裁 - 毎日新聞(2018年7月11日)

https://mainichi.jp/articles/20180711/k00/00e/040/321000c
http://archive.today/2018.07.14-000201/https://mainichi.jp/articles/20180711/k00/00e/040/321000c


強盗殺人罪無期懲役確定し11年に病死 遺族の請求認める
滋賀県日野町で1984年、酒店経営の女性(当時69歳)が殺害されて金庫が奪われた「日野町事件」で、大津地裁(今井輝幸裁判長)は11日、強盗殺人罪無期懲役が確定し、服役中の2011年に75歳で病死した阪原弘(さかはら・ひろむ)元受刑者の遺族が求めた第2次再審請求審で、再審を開始する決定をした。有罪判決の根拠となった自白などの証拠をほぼ全面的に否定した。死刑・無期判決が確定した事件で、死後に再審が認められたのは戦後初めて。
1審・大津地裁判決(95年)では、阪原さんの自白について「不自然な点が多いほか、秘密の暴露は何一つなく、信用できない」と判断。だが、女性宅にあった鏡に付着した指紋や、遺体と金庫の場所を知っていたことなどを重視し、「犯人性を推認できる」と無期懲役とした。
控訴審の大阪高裁判決(97年)では一転、「自白は基本的根幹部分が十分信用できる」と指摘。阪原さんのアリバイ主張に虚偽性があるほか、間接証拠から「犯人性が認められる」として1審を支持。2000年に最高裁が上告を棄却し、刑が確定した。
今回の決定は自白について、長時間の任意の取り調べで「警察官から殴られたり脅迫されたりした疑いがある」と指摘した。自白に任意性はなく、「事実認定の基礎となるほどの信用性はない」と判断した。
さらに、阪原さんが金庫や遺体の発見場所まで警察官を案内できた理由について、「警察が意図的に断片的な状況を示した可能性がある」とし、警察による誘導を示唆した。
殺害方法についても、女性の背後から首を絞めたとする自白では、殺せないとする弁護側の医師の鑑定書や証言を認定。「死体の状況と自白が合わない」とした。アリバイについても、事件当時、知人宅にいたと証言した関係者がいたことなどから、「虚偽ではない疑いが出てきた」と指摘した。
津地検は「主張が受け入れられず誠に遺憾だ。上級庁と協議の上、適切に対応したい」としており、即時抗告するか検討している。【小西雄介】

【ことば】日野町事件
1984年12月、滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69歳)が失踪し、85年1月に同町内の草むらで遺体で発見。同4月に山林で被害者宅から盗まれた金庫が見つかった。88年、県警は酒店の常連客で同町の阪原弘さんを強盗殺人容疑で逮捕。阪原さんは公判で無罪を主張したが、大津地裁は95年に無期懲役を言い渡し、2000年に最高裁が上告を棄却。再審請求も06年に大津地裁で棄却され、即時抗告したが、阪原さんの病死で審理は11年に終了した。12年に遺族が再び再審請求をしていた。
遺族が引き継ぎ、期限なく請求も
再審請求は、元被告本人が死亡した場合でも遺族が引き継ぐことができ、死後も期限なく請求できる。だが、「死後再審」が認められるのは極めてまれだ。
日本弁護士連合会によると、日弁連が支援した事件で、死後再審が認められて無罪が確定したのは1件のみ。1953年に徳島市でラジオ商(現在の電器店)店主を殺害したとして懲役13年が確定した内縁の妻が79年に死去した後の80年、徳島地裁が再審開始決定を出し、その後の再審で無罪が確定した。
審理が続いている例もある。鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」では、鹿児島地裁が2017年、義姉(91)=懲役10年確定=とともに、93年に死去した元夫=同8年確定=の再審開始を認めた(検察側が特別抗告中)。
一方、死刑囚の死後再審が認められた例はない。三重県名張市で女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」や、東京都豊島区で毒物を飲んだ12人が死亡した「帝銀事件」などは死刑囚の死後も再審請求が続いている。
死後再審でも、無罪となった場合は遺族が刑事補償を受けることができる。【伊藤直孝】

初の司法取引「海外贈賄」…企業、協力で免責 - 読売新聞(2018年7月14日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180714-00050005-yom-soci
http://archive.today/2018.07.13-231719/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180714-00050005-yom-soci


タイの発電所建設に絡む現地公務員への贈賄疑惑を巡り、東京地検特捜部と日本企業との間で日本版「司法取引」(協議・合意制度)の合意が成立したことが関係者の話でわかった。6月にスタートした新制度が適用される初のケースとなる。合意は、日本企業側が不正に関与した社員らに対する不正競争防止法違反容疑での捜査に協力し、特捜部が社員らの刑事責任を追及する一方、法人としての日本企業の起訴を見送る内容とみられる。



関係者によると、特捜部と司法取引で合意したのは、大手発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ(MHPS)」(横浜市)。同社は、三菱重工業(東京)と日立製作所(同)の火力発電事業部門が統合し、2014年2月に設立された。


三菱重工は13年、タイの発電所の建設事業を受注。統合で誕生したMHPSは、中国系企業を通じて資材を海路で運搬したが、タイ南部の港で荷揚げする際、桟橋の使用料名目で港湾関係の現地公務員らから現金を要求され、担当社員らが15年2月、約6000万円を支払ったという。

(「共謀罪」1年)懸念と疑問 残ったまま - 沖縄タイムズ(2018年7月13日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/283043
http://web.archive.org/web/20180713045608/http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/283043

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「改正組織犯罪処罰法」(共謀罪法)の施行から1年が経過した。
この1年間の適用事件は0件だった。野党などが昨年12月に「共謀罪廃止法案」を提出。今年7月10日までに18都道府県41議会が共謀罪の廃止などを求める意見書を国会に提出したほか、各地で市民団体による反対集会が開かれており、安易な共謀罪適用を許さないという国民の監視が届いた結果といえる。
共謀罪法を巡っては、自民、公明両党が参院法務委員会の採決を省略する異例の手続きで採決を強行。国会での論議を回避する形で成立し批判を浴びた。
法の中身についても多くの疑問が残ったままだ。共謀罪に問われる対象はテロ集団や暴力団などの「組織的犯罪集団」とされるが、参院で政府は「周辺者」も適用対象と説明した。一般人も含まれる懸念は拭えない。
対象犯罪は278に上るが、その中には組織犯罪と関係が薄いものも含まれる。それぞれの犯罪へ共謀罪を適用する必要性の説明も尽くされたとは言いがたい。
それどころか国会審議中には、共謀罪法の目的を問う質疑に金田勝年法相(当時)の答弁が二転三転し、疑念を一層深めた。
安倍晋三首相は昨年の通常国会閉会後の会見で共謀罪法について「必ずしも国民的な理解を得ていない」と認めたが、その後も理解を得るような策が講じられる様子はない。

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そもそも共謀罪法はなぜ必要なのか。根本の疑問もいまだ解消されていない。
政府は、東京五輪開催を控え「国際組織犯罪防止(TOC)条約」を締結するための国内法整備を根拠の一つに挙げた。共謀罪法の施行を受けて条約締結。菅義偉官房長官は「国際捜査共助や逃亡犯罪人の引き渡しを相互に求められるようになった」と成果を強調する。
一方、日本弁護士連合会は昨年、TOC締結の要件である「重大な犯罪の合意」などの犯罪化について、現行刑法ですでに規定されていると指摘。条約を締結した187カ国のうち、新法を制定した国は欧州2カ国に限られるとし「共謀罪新設は必要なし」との意見書を提出している。
現行法で限定的な「合意」の犯罪化の適用を大幅に広げた共謀罪。警察など捜査機関が乱用すれば、日常的に、政府に反対する市民団体を監視する法的根拠ともなりかねず懸念される。

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県内では3月、新基地建設に反対する市民団体のリーダーらが、公務執行妨害や威力業務妨害の罪などで有罪判決を受け、その後控訴した。捜査過程ではリーダーらが5カ月間にわたって拘留されるなど、市民運動を萎縮させる狙いをうかがわせる対応が目立った。
まして捜査当局による共謀罪運用の実態をチェックする仕組みはない。捜査権限が無制限に拡大する危険性は残ったままだということを、忘れてはならない。

カジノ法案 非常時に審議強行の愚 - 朝日新聞(2018年7月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13585160.html
http://archive.today/2018.07.14-001410/https://www.asahi.com/articles/DA3S13585160.html

この30年間で最大という水害への対応に、政府・国会をあげてとり組むべきときに、いったい何を考えているのか。
政府与党は、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を審議するため、西日本豪雨の被害がまだ続いている10日に、参院内閣委員会を開いた。公明党から入閣し、法案を担当する石井啓一国土交通相は、約6時間そこに張りつき、カジノを設ける意義などを説明した。
まったく理解できない。驚くことに、死者が200人を超え、なお多くの行方不明者がいる12、13日にも開会した。
今は災害対応に専念する。それが、河川や道路の復旧を所管する石井氏がとるべき行動ではないか。非常識も甚だしい。
野党は審議見送りを申し入れていた。人命を優先し、大臣を拘束すべきではないという当然の判断だ。だが今国会での法案成立をめざす与党が強行した。
石井氏は「委員会の開会中でも秘書官を通じて災害対応の指示ができる」と釈明した。本当に支障はなかったといえるか。10日午前には広島県府中町で榎川が氾濫(はんらん)し、住民に避難指示が出た。詳しい情報はカジノ法案を審議中の石井氏に届いた。被災者はどう見ただろう。
言うまでもなく災害対応は初動が大切だ。救援ヘリによる被災者の救出や航空機での搬送、緊急災害対策派遣隊の出動、支援物資の輸送……。いずれも国交省の仕事である。旧建設省の官僚出身で国交相に就任して約3年になる石井氏が、それを知らないはずはない。
今回の災害は被災範囲が広域にわたり、物流への影響も出ている。多くの人が住まいを失うなか、居住地の確保と物資の輸送は一刻を争う。石井氏だけではない。その認識が政府与党にあるのだろうか。
さらに週刊文春の報道で、西村康稔官房副長官らが米カジノ業者の関係企業にパーティー券を購入してもらっていたことが判明した。西村氏はIR議連の元事務局長だ。同氏は12日の内閣委で事実を認めたうえで「立法過程に影響を与えたことはない」と釈明したが、購入の経緯や他の議員にも同様の供与がないかをただす必要がある。
ギャンブル依存症が増えないか、経済効果はあるのか、外国人旅行者がカジノに想定通り来るのかなどの疑問に、政府はいまだ納得のいく説明ができず、世論の理解も進んでいない。
「人命よりも賭博優先か」。野党のこの批判こそ国民感覚に近い。問われるのは政治の役割は何かという根本的な問題だ。