愛媛県知事のひと刺しで安倍官邸に激震 始まりは週刊朝日特報 - AERA dot.(2018年4月10日)

https://dot.asahi.com/dot/2018041000066.html

疑惑の始まりは2017年7月23日に配信された週刊朝日のオンライン記事だった。安倍政権がひた隠しにしてきた、15年4月2日に首相官邸で行われた今治市の企画課長や愛媛県職員らと政府関係者による面会で、政府側の出席者が柳瀬唯夫首相秘書官(当時、現在は経済産業審議官)だったことをスクープした。
その加計学園問題で新たな事実が発覚し、政界に激震が走っている。
朝日新聞は4月10日、15年4月の官邸での面会後に、愛媛県の職員が作成した記録文書が存在すると報道した。記事によると、文書には柳瀬氏が述べた言葉として「本件は、首相案件」と書かれていた。
報道を受けて同日夕、愛媛県中村時広知事が記者会見を開催。中村知事は、自らヒアリング調査をしたと説明したうえで、「当時の担当職員が、備忘録として書いた文書であると判明した」と、文書の存在を認めた。ただ、文書そのものは県庁内では確認できていないという。
中村知事の“ひと刺し”発言を受けて、朝日はデジタル版で文書の全文を報道。そこには、次のような生々しいやりとりが書かれていた(肩書は当時のもの)。

〈かなりチャンスがあると思っていただいてよい〉(藤原豊地方創生推進室次長)

加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった〉(柳瀬唯夫首相秘書官)

〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい〉(同)

政府関係者は言う。
「すでに永田町では、朝日のスクープで政局がおきるとの話でもちきりだ。安倍首相は、加計学園による獣医学部の新設計画をはじめて知ったのは昨年1月20日だったと国会で答弁しているが、それが完全にウソだったことになる。これでは(森友疑惑の)昭恵夫人ではなく、首相の証人喚問をしなければならなくなる。それくらい大きな話だ」
加計学園問題では、官邸での面会で話された内容は最大の謎となっていた。この日から、それまで門前払いだった加計学園獣医学部新設構想が大きく動き始め、トントン拍子で17年1月に国家戦略特区の事業者に決まった。前述した週刊朝日のスクープ記事には、今治市関係者の言葉として、こう書かれていた。

〈「面会の後、今治市では『ついにやった』とお祝いムードでした。普通、陳情など相手にしてもらえず、下の担当者レベルに会えればいいほう。国会議員が同行しても、課長にすら会えない。それが『官邸に来てくれ』と言われ、安倍首相の名代である秘書官に会えた。びっくりですよ。『絶対に誘致できる』『さすがは加計さんだ、総理にも話ができるんだ』と盛り上がったというのは有名な話です」〉
柳瀬氏は面会の事実について、週刊朝日の報道後、国会で「記憶にございません」と7回以上繰り返した。10日の朝日の報道を受けてあらためてコメントを書面で発表したが、そこでも「自分の記憶の限りでは、愛媛県今治市の方にお会いしたことはありません」と面会の事実を否定した。
菅義偉官房長官は、関係省庁に対して愛媛県とのやりとりに関する文書について調べるよう指示したというが、何と応じるのか。
野党が柳瀬氏の追及を強めるのは必至だ。前出の政府関係者は言う。
「先週から、森友学園問題から加計学園に話題が移っていくという情報が流れていた。それが、この話だった。自民党幹部からは『安倍に対抗する勢力が、文書を入手して出したんじゃないか』といった声も出ていて、『秋まで政権は持たない』『安倍首相なら解散を打ってくるかもしれない』との声が、すでに出ている」
今年はじめまでは秋に予定されている総裁選で「安倍3選確実」との見通しが支配的だったが、風向きは一気に変わった。安倍政権は最大の危機を迎えている。

「加計」愛媛県文書 獣医学部15年4月「出発点」 柳瀬氏らの助言通り次々 - 東京新聞(2018年4月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018041390065719.html
http://archive.today/2018.04.13-025058/http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018041390065719.html


加計学園」が愛媛県今治市に開設した獣医学部を巡り、県や市、学園幹部らが首相秘書官や内閣府幹部と二〇一五年四月に面会した際に県が作成した文書を検証すると、その後の学部開設計画が秘書官らの助言に沿うように進んでいたことが分かった。政府関係者は、「首相秘書官らとの面会が『加計ありき』の出発点だった」と証言する。
県の文書によると、県や市、学園の幹部が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)や藤原豊・地方創生推進室次長(同)と面会した際、二人は過去十五回退けられていた構造改革特区に代わり、国家戦略特区の活用を提案。柳瀬氏は「既存の獣医大学との差別化を図った特徴を」、藤原氏も「例えば公務員獣医師の養成や、ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しもしっかり書き込んで」と踏み込んだアドバイスを送った。
その二カ月後の一五年六月、県と市は助言通りに、国家戦略特区に切り替え、内閣府獣医学部開設を申請。提案書には柳瀬氏らの助言に応える形で、「これまでの大学の獣医師養成と異なる国際水準の獣医学部」「ライフサイエンス分野への貢献」「公務員獣医師の確保」と記されていた。
ほかにも「提案内容は幅広い方が熱意を感じる」という藤原氏の発言を受けるように、県や市は、獣医学部だけでなく「水産物・食品の輸出ワンストップ支援センターの設置」という構想まで盛り込んでいた。
注目すべきは、面会後の県や市の動きだ。
面会時、藤原氏は「遅くとも五月の連休明けには(特区の)募集を開始。ついては二、三枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談したい」と求めていた。
国家戦略特区の募集開始は四月二十八日。今治市の出張記録によると、その二日後、市の担当部長ら三人が獣医学部設置の協議のため内閣府を訪ねている。
柳瀬氏の「本件は首相案件になっており、藤原次長の公式ヒアリングを受ける形で進めてほしい」との発言も同様だ。県と市は内閣府に申請した翌日、藤原氏が参加する特区ワーキンググループ(WG)のヒアリングを受けている。WGでは、県の担当局長が「地域入学枠や奨学金貸与を使い、公務員獣医師の充足を図る」と藤原氏の指摘した卒業後の見通しを示した。
獣医学部開設を巡っては、国家戦略特区に切り替えて状況は一変。一七年一月に特区が認められ、加計学園は今月、開学した。
柳瀬氏は面会を否定。安倍晋三首相は十一日の衆院予算委員会でも「プロセスは適正だった」と従来の主張を繰り返した。しかし、県文書の内容について「コメントを差し控えたい」と明言を避けている。

混迷深まる「政と官」 不都合な事実隠したツケ - 毎日新聞(2018年4月14日)

https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/005/070/021000c
http://archive.today/2018.04.14-001749/https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/005/070/021000c

まるで泥沼の様相だ。森友学園加計学園問題、自衛隊イラク派遣の日報問題等々をめぐって連日のように新事実が発覚している。
きのうは加計問題に関し、2015年4月、当時の首相秘書官が愛媛県側などに「首相案件」と発言したと記録した文書が農林水産省にもあったことが確認された。対応は全て後手に回っており、政府のガバナンス(統治)は危機的状況にある。
なぜこんな事態に陥ったのか。いずれも問題発覚後、きちんと調査もせずに安倍政権に不都合な事実を強引に否定しようとしてきたからだ。そのツケが一気に回ってきている。
例えば加計問題だ。安倍晋三首相は官邸の関与を疑うなら証拠を出せと言ってきた。ところが重要証拠と思われる愛媛県の文書が見つかると、今度は「国としてコメントする立場にない」と国会で答弁する。
これでは事実確認が進むはずがない。そもそも議論の大前提となる事実が認定できないこと自体、行政機能に欠陥があると言うべきだ。
森友問題は首相がいきなり妻昭恵氏らの関与を強く否定するところから始まった。だが、その後も関与の疑いは晴れず、首相答弁とのつじつま合わせのために財務省は決裁文書を改ざんしたのではないかとの疑問も消えないままだ。
裁量労働制を違法適用したとして東京労働局が特別指導した野村不動産の問題も同じだ。同社社員が特別指導前に過労死し、労災認定を受けていた事実が報道された後も、厚生労働省はそれをしばらく認めようとしなかった。これも働き方改革関連法案の成立に不利になると政治的な配慮をしたからだろう。
安倍政権は官僚の幹部人事を官邸が取り仕切ることで各省に強い影響力を行使してきた。官僚が首相らにおもねる「政と官」のいびつな関係はさらに深刻になり、官僚の政治化、つまり官僚が立場を踏み外して政治と一体になる兆しがある。国会で質問する野党議員に対し、首相秘書官がヤジを飛ばしたのが象徴的だ。
国会は事実確認に集中せざるを得ない状態になっている。自民党からも「挙証責任は政府側にある」との声が出始めているのは当然だろう。泥沼から抜け出すには、まず首相が根本的に姿勢を改めることだ。

(余録)「不幸も独(ひと)りで来れば… - 毎日新聞(2018年4月14日)

https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/001/070/138000c
http://archive.today/2018.04.14-001609/https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/001/070/138000c

「不幸も独(ひと)りで来れば、歓迎される」はギリシャのことわざという。ミソは「独りで来れば」というところで、不幸はいつも2人連れ、3人連れでやって来る−−つまり悪いことは重なるものだという意味である。
中国にも「禍(わざわ)いは単(ひと)り行かず」ということわざがあるから、災難がいくつも重なるというのは洋の東西を問わぬ人類普遍の“法則”のようである。英語にも「災いはもう一つの災いの背中に乗ってやって来る」という言い回しがある。
そんな二つや三つなどという生やさしいものではない。それこそ不祥事や失態の団体ツアーが来訪したような昨今の安倍政権と中央省庁である。はてさてこの災いのあちこちでの同時発生、人知ではかれぬ超常現象か、それとも……
森友・加計、イラク日報問題で新たな疑惑が連日発覚する中でのことである。渦中の財務省では事務次官のセクハラ疑惑が週刊新潮に報じられ、働き方改革の司令塔である厚生労働省でも幹部が不適切発言やセクハラで処分を受けた。
何と国会でヤジを飛ばして注意された経済産業省出身の首相秘書官もいる。政権をとりまく疑惑の嵐の中、あちらでもこちらでも国家機関のタガが外れたような役人の行(ぎょう)状(じょう)である。規律も何もどこへやらという高慢と放縦が情けない。
続く役人の失態に足を引っ張られる政権だが、ではこの災いの群発をもたらしたのは誰なのか。役人に忠誠や忖度(そんたく)ばかりを強い、その誇りや良心という国の宝を破壊したのは誰かを考えてみたらよかろう。

性教育 生徒を守るためにこそ - 朝日新聞(2018年4月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13450015.html
http://archive.today/2018.04.13-225620/https://www.asahi.com/articles/DA3S13450015.html

現実をふまえない現場介入はやめるべきだ。
東京都足立区の中学校が3月に、当時の3年生に性教育の授業をした。「産み育てられる状況になるまで性交を避けて」と説く趣旨だった。ところが一人の都議がこれを問題視して議会で質問し、都教育委員会が区教委を指導する事態になった。
学習指導要領にない「性交」「避妊」などの語句を使ったのは不適切だ。性交を助長する可能性があり、発達段階にふさわしくない――との理由だ。
的外れと言うほかない。
高校生になると人工妊娠中絶の件数がはね上がることは、厚生労働省の統計から明らかだ。16〜49歳を対象とした日本家族計画協会の意識調査では、「避妊法は15歳までに知るべきだ」と考える人が7割に及ぶ。卒業を控えた3月は、避妊の重要さを教える適切な時期だ。
東京都と足立区だけの問題ではない。性教育のあり方を改めて考える機会にすべきだ。
たしかに中学の指導要領は性交を扱っていない。ところが、性感染症の防止にコンドームが有効なことは教えよと解説に書く。言葉を使わずに、どうやって理解させろというのか。
多くの国では義務教育の期間中に、もっと具体的に、わかりやすく教えている。オブラートに包んでいては、未成年の妊娠リスクの重さは伝わらない。
全国の公立高で妊娠・出産を理由とする自主退学が15〜16年度に674件あったことが、先ごろ報道された。うち32件は学校側の勧告によるという。
出産しても通学を続けられる環境を整えるのが教委と学校の務めであり、退学勧告が理不尽なのは言うまでもない。
同時に、早すぎる妊娠・出産が学業や進路の選択を狭め、貧困に陥る危険を高めることは、きちんと教えねばならない。自分を大切にするために、性に関する知識は欠かせない。
今回と似た事例が15年前にもあった。同じ都議らが旧都立七生(ななお)養護学校性教育を非難し、都教委は教諭らを「指導要領に反した」と厳重注意した。
その当否が争われた裁判で、東京高裁は都議や都教委の行動の一部を違法と判断。性教育一般についても、生徒らの意識や社会状況を踏まえ「従来に比べてより早期に、より具体的に指導することが要請される」との考えに理解を示している。
ネットで簡単に雑多な情報が手に入る時代だ。誤った、ゆがんだ知識から子どもたちを守るために、学校で正確な知識を授ける。それが大人の責務だ。

海賊版サイト 拙速、危険な政府対策 - 朝日新聞(2018年4月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13450014.html
http://archive.today/2018.04.14-002026/https://www.asahi.com/articles/DA3S13450014.html

他人の労苦の成果を横からかすめ取るような行いは許しがたい。だからといって、こんなやり方で対抗しようとすれば、将来に大きな禍根を残す。
政府がきのう、インターネット上で漫画や雑誌などを無料で読める「海賊版サイト」に対する緊急対策を決めた。
人々がこうしたサイトにアクセスするのを、ネット接続事業者(プロバイダー)が遮断しても違法にはならない、との見解を打ち出したのだ。さらに三つのサイトを明示し、「当面の措置として遮断するのが適当」と踏みこんだ。「事業者の自主的な取り組み」としつつ、事実上の要請と言っていい。
サーバーが海外にあるなどの理由で、海賊版サイトには有効な手を打てないのが現実だ。被害額は数千億円にのぼるとの推計もあり、権利を日々侵される漫画家、出版社のいら立ちや悩みは、十分理解できる。
だが、プロバイダーが接続を遮断するためには、顧客のアクセス先を逐一確認する必要がある。憲法が保障する「通信の秘密」の侵害になりかねない、まさに劇薬だ。
日本では、幼い子供の心身に回復できない傷を残す児童ポルノのサイトに限り、11年から遮断対象としている。刑法の「緊急避難」の考えに基づく措置で、プロバイダー、関係省庁、憲法学者らが2年にわたって議論し、ルールを整備した。
しかし今回の対策は、そうした過程抜きに唐突に決まった。政府は海賊版サイトも緊急避難の理屈で説明できるというが、法律家の間では否定的な声が多い。「通信を無断でチェックしたのは問題だ」と客から抗議された場合などのリスクを、「自主的な取り組み」をしたプロバイダーに押しつけるものでもあり、あまりに無責任だ。
プロバイダーでつくる業界団体は「影響の少ない他の手段も考えられる」などとして、政府の対策を批判する声明を出した。業者の協力がなければ実効性はない。「緊急避難」を理由にすれば規制の対象を恣意(しい)的に広げられるという、あしき前例を生むだけになる。
政府も「乱用は避けなければならない」と言ってはいる。だが児童ポルノの遮断も、その前提で行われた。当時の約束を軽々と破る姿を目の当たりにして、懸念はぬぐえない。
積み重ねてきた議論を軽視し、丁寧な説明を嫌い、自らの考えを押し通す。そんな政権の姿勢が、今回の対応にもあらわれている。出直して、不信と混乱の解消に努めるべきだ。