(私説・論説室から)「米国の責任」を語る意志 - 東京新聞(2018年1月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018012202000155.html
https://megalodon.jp/2018-0122-0943-31/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018012202000155.html

カリフォルニア州から届いた年賀状は地元の大学院生、エマ・トーメさん(27)からだった。「明けましておめでとうございます 当銘英麻(とうめえま)」。日本語で名前も漢字をあてた自筆の手紙は力強さにあふれている。昨夏の私たちの出会いを素直に喜んでくれていた。
エマさんの父は一九八〇年代に渡米した沖縄出身者。エマさんも帰省する父と一緒に何度も沖縄を訪ねていたが、米軍基地のことを意識するようになったのは、那覇市の高校で英語指導助手を務めた五年前のことだ。
戦後、米軍支配下にあった沖縄の人びとは雇用でも何でも米軍の影響を受けてきた。基地の話題は口にしないという人は少なくなく、米軍には賛否だけでない複雑な思いがあることを、エマさんは知るようになった。
新基地建設が強行される辺野古キャンプ・シュワブゲート前の集会にも通い、反対の声を上げる人たちに会って気づいた。沖縄の人びとを引き裂いているのは誰なのか、と。
昨夏。ゲート前でエマさんは初めてマイクを握った。「私は沖縄にルーツがあるから基地建設に反対しているのではありません。よその国だけでなく、自国民にも暴力と差別を繰り返してきたアメリカの国民として、基地をなくすことに責任があるからです」
世界中の人と歩もうとするエマさんの言葉が心に突き刺さった。北風に背中を丸めてなんかいないで、私も書く。 (佐藤直子

南城市長選 瑞慶覧氏が初当選 古謝氏に65票差、市政交代 オール沖縄に追い風 - 琉球新報(2018年1月22日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-650596.html
http://archive.is/2018.01.21-165044/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-650596.html

任期満了に伴う沖縄県南城市長選は21日投開票され、無所属新人の瑞慶覧長敏氏(59)=社民、共産、社大、自由、民進推薦=が、無所属現職の古謝景春氏(62)=自民、公明、維新推薦=に65票の僅差で初当選した。2月の名護市長選、秋の県知事選の前哨戦とも位置付けられた選挙で、瑞慶覧氏を支援した「オール沖縄」勢力が弾みをつけた格好だ。
投票率は66・92%。南城市長選は8年ぶりで、前回2010年(74・47%)より7・55ポイント下がった。
瑞慶覧氏は「もっと素敵な南城市にするために市民の声を丁寧に拾っていきたい」と語った。
市長選は現職による市政継続か、新人による市政刷新かが焦点だった。瑞慶覧氏は「市民の声でまちづくり」というスローガンを掲げ、市民と行政職員が直接、話し合う仕組みづくりなどを訴えた。
瑞慶覧氏は出身地であり大票田でもある大里地区で支持を固めたほか、各地区で現市政に不満を抱く市民からの支持を集めた。
当日有権者数は3万4328人(男性1万7226人、女性1万7102人)。投票総数は2万2973。有効投票数は2万2793、無効票は180。

南城市長選開票結果
当11429 瑞慶覧長敏 無新
 11364 古謝 景春 無現
(選管最終)

瑞慶覧 長敏氏(ずけらん・ちょうびん) 1958年10月24日生まれ。市大里仲間出身。琉球大卒。2009年衆院選で沖縄4区に民主党公認で出馬し初当選。12年衆院選は無所属で臨み落選した。

(筆洗)JR常磐線柏駅に停車した電車内で二十代の女性が女児を出産 - 東京新聞(2018年1月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018012202000125.html
https://megalodon.jp/2018-0122-0944-25/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018012202000125.html

浅田次郎さんの最新刊「おもかげ」を読んでいたら地下鉄の車内で意識を失った男性を乗り合わせた人たちが介抱する場面が出てきた。
そんなことが実際にあるだろうか。電車内といえば、見たいものより見たくないものの方が目に飛び込んでくるもので、人を押しのけ席を奪おうという人もいるし、狭い車内で、足を投げ出して座って平気な人もいる。立っている高齢者を目の前に席を譲らずゲームに興じる若い人は珍しくない。
不愉快だが、あまり責めもできぬ。みな自分のことで精いっぱいなのだろう。人のことなどかまっていられぬ。あの小説のようなことは、たぶん起こらず、誰かが倒れたとしても、せいぜい、駅員を呼ぶぐらいなのではないか。自分にしたって倒れたその人に駆け寄れるか自信がない。
その見方は間違っていたかもしれぬ。千葉県柏市のJR常磐線柏駅に停車した電車内で二十代の女性が女児を出産した一件である。
車内に居た四、五人の女性たちが出産を助けて子どもを取り上げている。「おぎゃあ」。その声に車内から祝福の拍手がわいたと聞く。人間は想像以上に優しく温かい。少なくとも、普段は無関心でも、いざというときはそうなれる可能性がある。そう信じる。
人の温かい心を借りて、この世に生まれた赤ちゃんの健やかな成長を祈る。優しい子になるだろう。きっと電車が大好きな。

反トランプ100万人デモ 政府機関 閉鎖続く - 東京新聞(2018年1月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201801/CK2018012202000123.html
https://megalodon.jp/2018-0122-0945-33/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201801/CK2018012202000123.html


【ワシントン=石川智規】トランプ米大統領の就任から一年となった二十日、全米各地でトランプ氏に抗議する「ウィメンズ・マーチ(女性大行進)」が相次ぎ、米メディアによると、参加者は百万人を超えた。同日には連邦政府のつなぎ予算が失効し、政府機関の一部が約四年ぶりに閉鎖。大統領の資質と政権運営の手腕が共に問われる波乱の二年目の幕開けとなった。
抗議デモは、首都ワシントンに加え、ニューヨークやロサンゼルス、シカゴなどの各都市で行われ、トランプ氏の排外主義的な政策や人種差別的、女性蔑視的な言動を非難した。米メディアによると、ニューヨークは約二十万人、ロサンゼルスは約六十万人、シカゴでは約三十万人が参加。二十一日もラスベガスなど他の都市で行われる。
与野党幹部は二十日、政府閉鎖の解消に向けた打開策を協議したが、歩み寄りはみられなかった。共和党上院トップのマコネル院内総務は「二十二日朝までに新たな予算案をまとめる」と表明したが、民主党が応じるかは見通せない。
米紙ワシントン・ポストによると、四百十七ある国立公園は二十日、首都ワシントンのスミソニアン博物館などで開業したものの、ニューヨークの自由の女神像など約三割では職員らが自宅待機となり、運営が休止されたという。
トランプ氏は当初、十九日中にフロリダ州の別荘に入り、二十日に就任一年を祝うパーティーを支援者らと行う予定だった。しかし、政府閉鎖のため旅程を変更。ホワイトハウスで過ごし、ツイッターで「私の大統領一周年の記念日に、民主党は素晴らしいプレゼントをくれた」と、民主党を皮肉った。

(書評)貧困の戦後史 岩田正美 著 - 東京新聞(2018年1月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018012102000174.html
https://megalodon.jp/2018-0122-0946-27/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018012102000174.html

◆放置する政治は変わらず
[評者]橋本健二=早稲田大教授
それまでの「一億総中流」が崩れて「格差社会」が流行語になったのは二〇〇六年。それから十二年、長らく忘れられていた貧困の存在も、注目を集めるようになった。しかし、その本当の深刻さは理解されているのか。昔の貧困に比べればたいしたことはない、景気が回復すれば解消するだろうなどと、軽く考える傾向はないだろうか。
貧困研究の第一人者による本書は、単なる比率や人数などの量ではなく、貧困の「かたち」に注目し、しかも終戦から今日に至る貧困の流れを一貫した視点で描くことにより、読者の認識を大きく改めさせてくれる。
時代により、貧困の「かたち」は変化してきた。終戦直後の戦災者と引き揚げ者、そして「浮浪者」。経済復興途上の失業対策から生まれた日雇い労働者の「ニコヨン」、屑物(くずもの)拾いを業とする「バタヤ」、仮小屋住まいの人々が集まる「スラム」。経済成長下で拡大した野外の労働市場である「寄せ場」と、日雇い労働者の休息の場である「ドヤ」。現代のホームレス、ネットカフェ難民、そして単身高齢者。
貧困のさまざまな「かたち」は、一見すると異質にみえるが、実は共通項が多い。空き缶を集めるホームレスは現代の「バタヤ」であり、ネットカフェ難民はドヤ暮らしの労働者の変形である。そして公営住宅や民間アパートの密集地域の一部は、実質的にはスラム化している。
そして著者によると、まったく変わらないのは、貧困を基本的に個人の努力で対処すべきものとみなし、貧困層を食い物にする企業や組織を放置する政治のあり方である。これは、貧困から脱することのできない人々への差別のまなざしと一体である。
だとすると貧困は、税の使い道の多少の変更などではなく、政治や社会の「かたち」を変えることによってしか解決しないのだろう。量ではなく「かたち」に注目したという本書の最大のメッセージは、おそらくここにある。

(筑摩選書・1944円)

<いわた・まさみ> 日本女子大名誉教授。著書『社会福祉のトポス』など。

◆もう1冊 
金子充(じゅう)著『入門 貧困論』(明石書店)。貧困とは何か。貧困はなぜ生まれるのか。そして、貧困対策としての社会保障について解説。

貧困の戦後史 (筑摩選書)

貧困の戦後史 (筑摩選書)

本社世論調査 改憲案「年内に発議する必要はない」46% - 毎日新聞(2018年1月22日)

https://mainichi.jp/articles/20180122/k00/00m/010/137000c
http://archive.is/2018.01.22-004313/https://mainichi.jp/articles/20180122/k00/00m/010/137000c

毎日新聞は20、21両日、全国世論調査を実施した。自衛隊の存在を明記する憲法改正について「憲法9条の1項と2項はそのままにして自衛隊を明記する」との回答が31%、「9条の2項を削除して自衛隊を戦力と位置付ける」が12%で計43%に上った。「自衛隊憲法に明記する必要はない」は21%と、明記派の半分程度だった。安倍内閣の支持率は44%で、昨年11月の前回調査から2ポイント減。不支持率は38%で同2ポイント増だった。


自衛隊明記に関しては「わからない」も27%あり、国会などで議論が深まれば世論が動く可能性はある。
安倍晋三首相は昨年5月、9条第1項と第2項を維持して明記する案を提起した。しかし、自民党石破茂元幹事長らは、第2項を削除しなければ自衛隊と「戦力」の境界はあいまいなままだと主張している。自民支持層では「1項と2項はそのまま」が41%、「2項を削除」が19%だった。
国会が改憲案を「年内に発議する必要はない」は46%で、「年内に発議した方がよい」の36%より多かった。ただ、自民党憲法改正推進本部は年内の発議を目指しており、自民支持層も51%が年内を望んでいる。
大災害や外国からの攻撃で国政選挙ができなくなった場合に、国会議員の任期延長を認める緊急事態条項を憲法に新設する改正には「反対」が46%で、「賛成」の33%を上回った。
2015年の慰安婦問題に関する日韓合意について、韓国の文在寅ムン・ジェイン)政権は「真の問題解決にならない」として、日本に自発的な謝罪を求めた。こうした韓国政府の対応に「納得できない」は78%を占め、「納得できる」は6%。核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、米国や韓国と連携して圧力を最大限に高める日本政府の方針を「評価する」は58%、「評価しない」は24%だった。【吉永康朗】

調査の方法
1月20、21日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った固定電話と携帯電話の番号に調査員が電話をかけるRDS法で調査した。固定では、福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村の電話番号を除いた。固定は、18歳以上の有権者のいる800世帯から479人の回答を得た。回答率60%。携帯は18歳以上につながった番号888件から524人の回答を得た。回答率59%。