言わねばならないこと(106)沖縄は「戦利品」ではない 女性史研究家・宮城晴美さん - 東京新聞(2018年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018011102000193.html
https://megalodon.jp/2018-0111-1319-41/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018011102000193.html

米国の女優たちがプロデューサーらをセクハラで訴え、日本でも性犯罪に厳しい目が向けられる中で問いたいのです。性暴力は許さないという怒りは、沖縄で起きている米軍の性犯罪にもつながっていますか。米軍の犯罪は異次元だとみて思考を止めていませんか。
戦後発行された新聞や証言、公文書などから米軍の性犯罪史を調べています。実は、被害は沖縄戦から連綿と続いている。捜査や裁判で米側を優遇してきた日米地位協定と、性暴力を助長する軍隊の体質とが生み出す構造的犯罪なんです。
一昨年、うるま市で二十歳の女性が殺された事件でも、加害者の元海兵隊員は「(自分は)罰せられないと思っていた」と弁護人に語っている。地位協定に守られていると思っていたんですね。根っこにあるのは沖縄は戦争で勝ち取った「戦利品」という意識。そこには女も含まれます。
沖縄の戦後は米軍の支配下で始まり、新憲法も及ばなかった。過酷な沖縄戦を共通体験とし、戦後生まれの私も、祖父母や両親から戦争体験を受け継ぐように生きてきた。県民が辺野古(へのこ)の新基地建設に反対するのは、戦争につながる基地を否定し、平和な島を取り戻したいからです。
でも、工事を強行する安倍政権は巧妙に県民を分断しようとしています。河野太郎外相は沖縄で県内の若者を米国留学させ、県内の米軍基地でも英語学習を進めると語った。これは宣撫(せんぶ)工作です。政策的に米軍の理解者を増やそうとするのですから。
本土復帰して半世紀近いのに、沖縄では今も米軍ヘリが落ち、空から落下物が降ってくる。それでも政府は危機感も示さない。沖縄を米軍から切り離さず「戦利品」であり続けさせることが自分の町で起きたらどうなのか、全国の皆さんに想像してほしいのです。

<みやぎ・はるみ> 1949年生まれ。著書に「母の遺(のこ)したもの−沖縄・座間味島『集団自決』の新しい事実」など。琉球大などで講師を務める。

「成年後見利用で失職は違憲」 元警備員男性、国など提訴 - 東京新聞(2018年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018011002000233.html
https://megalodon.jp/2018-0111-1318-42/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018011002000233.html

適切な財産管理をしてもらうために成年後見制度を利用した後、利用者の就業を禁じる警備業法に従って警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県知的障害者が十日、勤務していた県内の警備会社に社員としての地位確認を、国に慰謝料として損害賠償百万円の支払いを求める訴訟を岐阜地裁に起こした。制度利用者の就業を認めない警備業法の規定は、職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどと訴えている。 (井上仁、下條大樹)
原告は三十代男性。代理人弁護士によると、軽度の知的障害などがあるが、二〇一四年四月、県内の警備会社に入社した。会社側も知的障害があることを理解して雇用したという。男性は各現場で主に、通行人や車の誘導をした。
男性は家庭内のトラブルに悩んでおり、自身の財産管理をしてもらうため成年後見制度を利用することに。一七年二月、財産管理をする「保佐人」が付くことになり、翌月に会社を退職した。制度利用の手続き中に、警備業法の規定で、退職せざるを得ないことを知ったという。
男性が退職を余儀なくされたことを弁護士が知り、男性に連絡。弁護団をつくって不当性を法廷で訴えることにした。
男性側は訴訟で「成年後見制度は自身の財産管理を支援する制度で、その能力の有無や程度によって警備員の適性を判断する警備業法の規定には、合理性がない」と主張する。
男性が勤めていた警備会社の担当者は「勤務態度も真面目で、辞めてほしくなかった」と話した。退職は「警備業法の規定があったため」とし、会社としても本意ではなかったという。

成年後見制度> 認知症や知的障害、精神障害などによって、物事を判断する能力が十分でない成人に代わり、家庭裁判所に選ばれた親族や弁護士らが財産管理や契約などを担う制度。不動産や預貯金などの管理、介護などのサービスを受ける際の契約、遺産の協議などで、当事者が不当な不利益を被らないようにする。高齢化社会を迎えることから利用促進が期待されている。2000年に従来の禁治産、準禁治産制度を廃止して導入された。

原発即時ゼロ法案 小泉元首相ら野党連携へ - 東京新聞(2018年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011102000129.html
https://megalodon.jp/2018-0111-1317-52/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011102000129.html

脱原発自然エネルギーを推進する民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」は十日、国内原発の即時廃止を目指す「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表した。国会内で記者会見した顧問の小泉純一郎元首相は「安倍政権で原発ゼロを進めるのは難しい」と断言し、他の勢力を結集し脱原発を進める意欲を強調した。同様の法案提出を目指す立憲民主党など野党も連携する意向で、国会内外で脱原発に向けた法案提出の機運が高まった。 (大野暢子)
法案の「基本方針」には、運転中の原発を直ちに停止し、停止中の原発は今後一切稼働させないと明記。原発の新増設も認めず、核燃料サイクル事業からの撤退も盛り込んだ。
今後は太陽光や風力などの自然エネルギーに全面転換し、二〇三〇年までに全電力の50%以上、五〇年までに100%を目標に掲げる。国には「責務」として、目標の達成に必要な措置を求めた。今後、各政党に法案への賛同を促し、二十二日に召集予定の通常国会への提出を目指す。
脱原発を巡っては、立憲民主党が同様の法案提出を目指す。原自連は法案発表後、立憲民主幹部らと意見交換して連携を確認。今後、希望の党など野党各党との意見交換も予定する。
安倍政権は原発再稼働を進めてきたが、東京電力福島第一原発事故から三月で七年を迎えるのを前に、政党と民間との間で脱原発を目指す連携が再び強まる。
小泉氏は十日の会見で、「自民党には安倍晋三首相が(原発政策を)進めているから仕方ないなという議員が多いだけ。来るべき首相が原発ゼロを進める方針を出せば、がらっと変わる。野党がどう出るかだ」とも指摘し、自民党総裁選や国政選挙での原発政策の争点化に期待を寄せた。
原自連会長で城南信用金庫顧問の吉原毅氏も会見で自然エネルギーへの転換に関して「経済界としても大ビジネスチャンス。テロで原発が狙われることもなくなる」と訴えた。
原自連は昨年四月に発足し、二百以上の民間団体や企業などが加盟。十日の会見には小泉氏とともに顧問を務める細川護熙(もりひろ)元首相らも出席した。

経団連次期会長「再稼働は必須
国内の原発四十基のうち、現在稼働しているのは関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の計四基。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、他の原発も再稼働させる方針。経済界も「再稼働は必須」と安倍政権に歩調を合わせる。
稼働中とは別の十基について、原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断し、このうち関電大飯原発3、4号機(福井県)と九電玄海原発3、4号機(佐賀県)が三月以降に再稼働する見通し。
一方、適合と判断された四国電力伊方原発3号機(愛媛県)については先月、広島高裁から今年九月末までの運転を禁じる仮処分命令が出された。伊方を含めて全国十四の原発を巡り、運転差し止めを求める訴訟が起こされている。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十日の記者会見で「安全性の確認された原発のみ、地域の理解を得ながら再稼働を進める政府の一貫した方針は変わらない」と強調した。
経団連の次期会長に内定した原発メーカー日立製作所の中西宏明会長も九日、再稼働は必須との考えを記者団に示した。 (生島章弘)

夫婦別姓提訴 「法の欠陥」はないのか - 東京新聞(2018年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011102000132.html
https://megalodon.jp/2018-0111-1316-58/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011102000132.html

夫婦同姓の民法規定は「合憲」と最高裁大法廷が判断して二年余り。今度は姓を変えた男性らが原告となり夫婦別姓制度を求め、提訴した。戸籍法を使い、法の欠陥を突く訴訟だ。注目しよう。
二〇一五年十二月に最高裁が現行の夫婦同姓制度を合憲としたのは次の言葉に尽きる。
<家族は社会の基礎的な集団単位で呼称を一つに定めることは合理性がある>
確かに合理性があることは否定しないし、家族が同姓であることに有利な点が多い事実も否定しない。だが、社会が多様化し、女性が社会進出した現代、旧姓を捨て去ることに不都合を覚え、実際に不利益をこうむる人が多いことも事実なのだ。
一九九六年には法制審議会が希望すれば各自の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」案を答申した。それでも強硬に反対する人々は明治民法の「家制度」が頭から離れないのではと疑うほどだ。
今回、東京地裁に提訴したのはソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長らだ。
「96%が夫の姓」と訴えた過去の訴訟とは異なり、視点が違う。「法の欠缺(けんけつ)」を突いている。難しい法律用語だが、欠陥の意味である。民法ではなく、戸籍法を使っている。
(1)日本人同士の結婚(2)日本人と外国人との結婚(3)日本人同士の離婚(4)日本人と外国人との離婚−。このうち(1)以外では事実上、同姓か別姓か選択できるのだ。
(2)の日本人と外国人の結婚は別姓の選択が可能−。つまり日本人同士の結婚の場合のみ別姓を選べない。おかしい。そんな「法の欠缺」がある。原告側はそう主張している。

ここで憲法を持ち出そう。婚姻について定めた二四条である。「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」。むろん一四条では「法の下の平等」を書いている。
そうなると日本人同士が結婚する際に夫婦別姓を選択できないのは憲法違反だ−。これが青野さんらの言い分なのだ。
昨年九月から全国の裁判所の裁判官や職員の旧姓使用を認める運用が始まっている。判決や令状で同一人物かを確かめるためだ。弁護士も戸籍姓で登録し、旧姓で活動できる。民間企業などでも、もはや当たり前だ。
判決で「当たり前の扉」が開くだろうか。時代はもうそこまで来ている。

阪大入試ミス 慢心が救済を遅らせた - 東京新聞(2018年1月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011102000131.html
http://archive.is/2018.01.11-041724/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011102000131.html

大学入試は受験生にとり人生の重大事である。大学のミスはあってはならず、万一起きたら速やかに救済せねばならない。大阪大学の失態は日頃の慢心が招いた結果ではないか。猛省そして救済だ。
昨年二月に実施した入試の物理で出題と採点のミスが明らかになり、大阪大は不合格とした三十人をあらためて合格とした。
外部から再三にわたりミスの指摘がありながら、放置していたのはもっての外と言うほかない。大学入試への信用を損ねる事態である。大学界全体で大阪大の反省材料を共有し、再発防止機能を高めねばならない。
ミスが判明したのは、音波に関する問題だった。三つの正答があるのに、一つのみを正答として扱った設問があり、さらにその解答を前提にして次の問いが立てられていた。連鎖して誤りとなった。
昨年六月、高校教員らの大学入試問題検討会の場で、ミスの可能性が指摘された。八月には予備校講師から同様の指摘がメールで届いた。いずれに対しても、問題作成責任者と副責任者の教授二人のみで検討し、訂正しなかった。
昨年十二月、詳細に論証したメールが外部から寄せられた。他の教員四人を交えて検討し、ようやく誤りを確認したという。最初の指摘から半年が過ぎていた。あまりにお粗末な対応ぶりである。
再発防止に向けて、大阪大は原因を究明する調査委員会を置くという。外部の声を軽んじた問題作成責任者らの個人的な過信にとどまらず、組織内の情報共有や危機管理のあり方にまで踏み込み、徹底的に検証してほしい。
追加合格となった三十人はショックを受けているに違いない。他大学に進んだ学生の転入学や、他大学や予備校に通うのに要した諸費用の補償、慰謝料の支払いなどには誠実に対応せねばならない。
合否を左右する大学入試のミスが後を絶たないのはなぜか。二〇一五年には、中京大マークシート式の問題で誤った選択肢を正解とするミスが判明し、六人を追加合格にした。大阪府立大では採点を間違え、八月に二人を追加合格にした。大学界は受験生の人生を大切にすべきである。
大学入試センター試験が十三日に始まり、今年の受験シーズンが本格化する。出題と採点、合否判定の態勢はもとより、合格発表後にミスの疑いが浮上するといった非常事態への備えは万全か。
全ての大学はいま一度よく点検してほしい。失敗は許されない。


県立高校の地毛証明 多様性認める環境を - 琉球新報(2018年1月11日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-644436.html
http://archive.is/2018.01.11-042109/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-644436.html

なぜこれほどまで黒い直毛にこだわるのか。管理強化ではなく、多様性に配慮し自由な教育環境を整えてほしい。
もともと髪の色が薄かったりくせがあったりする生徒が、生まれつきのものであることを証明するための「地毛証明書」を、県立高校全60校のうち52校(86・7%)が生徒に提出させていることが本紙の調べで分かった。
証明書を求める理由として学校側は「染髪やパーマだと誤解して、地毛の生徒に不要な生徒指導をすることを避けるため」と説明している。生まれつきを証明するため、保護者の面談や署名、幼少時の写真提出を求めている。
しかし、地毛など身体的特徴はプライバシーにかかわる。日本も批准している国連の「子どもの権利条約」第16条は、子どものプライバシー・通信・名誉の保護を定めている。証明書の提出を求めるのは、子どもの権利条約に反する可能性がある。
証明書を提出した生徒から「染髪やパーマを疑われ、自分を否定されて嫌だった」との声が挙がる。髪の色は個人によって違うものだ。
昨年、大阪の府立高校で生まれつき茶色っぽい髪を黒く染めるよう教諭らにしつこく強要され、不登校になったとして、女子生徒が府に損害賠償を求める裁判を起こした。生徒は指導に従ったが、髪を理由に授業や文化祭、修学旅行の参加を禁じられた。生徒指導を逸脱した著しい人権侵害だ。
そもそも国際化が進む中で「髪は黒」という考えは、時代錯誤といえる。教室には外国にルーツを持つ生徒もいるだろう。
地毛を確認する背景に、染髪を禁止する校則がある。染髪禁止の理由は「社会が求める高校生像に反している」「学習活動に集中するため」「ルールだから」という回答が多かった。
違反した場合、猶予期間を決め黒く染め直してくるよう指導する。染めた色を戻さなかった場合「帰宅指導」として教室に入れない、式典に参加させないなど学校活動への参加を制限すると答えた学校が18校(30・0%)あった。17校(28・3%)は髪を染めて卒業式に来た生徒はその場で黒いスプレーで染め直させていた。
裁量権は学校側にあるにしても、そこまで規制する権限があるのか疑問だ。どんな校則が必要なのかは本来、学校側が生徒や保護者の声に耳を傾けながら決めるものだろう。時代の変化に応じて見直してもいいはずだ。「ルールだから」という理由で思考停止してはいけない。
学校は画一的ではなく、それぞれの個性を互いに尊重し、自分らしさを持った人材を育てる場である。個性よりも統制が重視される場ではない。何よりも「子どもの最善の利益が第一に考慮される」(子どもの権利条約第3条)場でなければならない。

<金口木舌>心に届く言葉の力 - 琉球新報(2018年1月11日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-644437.html
http://archive.is/2018.01.11-041643/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-644437.html

わずか31文字が果てしない想像力をかき立てる。そんな短歌の魅力を分かりやすく伝える本が出版された。県出身のモデルで女優の知花くららさんと歌人永田和宏さんの対談本「あなたと短歌」である

▼知花さんは好きな10首のうち、歌壇界トップの一人、馬場あき子さんの作品を選んだ。「石垣島/万花艶(なまめ)ひて/内くらき/やまとごころは/かすかに狂う」
▼咲き乱れる花の色とは対照的に、沖縄に感じる罪の意識を詠んだ歌だ。「沖縄出身の私でも、沖縄の問題はとても複雑で扱いが難しい。でも、決してないことにはしてほしくない」と知花さん。この歌がうれしくもあったという
▼上京間もない頃、戦争への思いのギャップから好きな男性と居酒屋で大げんかした。その経験を基に「相手に『何かを伝えたい』と思ったときは、自分の視点も保ちながら相手に届く言葉を探して丁寧に紡いでいくことが大切なんだと学んだ」と記す
漫才コンビウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんは那覇市でのライブで「漫才は社会で『空気』のような存在の人に色を付ける役割がある」と語った。辺野古新基地建設に反対する人々にも、お笑いで「色を付けたい」と言う
▼深まる沖縄と本土の溝。それを埋める言葉の力を信じたい。言葉は相手の心に届いてこそ、意識を変える力になる。お互いを“つなぐ表現”がもっと必要だ。