与野党、「共謀罪」採決にらみ攻防=17日に職権で委員会質疑 - 時事ドットコム(2017年5月16日)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017051600932&g=pol

共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐり、衆院法務委員会は16日の理事会で、安倍晋三首相が出席して17日に審議を行うことを鈴木淳司委員長(自民)の職権で決めた。民進党は、与党が17日の同委で採決する場合、金田勝年法相の不信任決議案を提出して対抗する方針だ。
民進党は理事会で、17日に法案審議を行うことについて「採決しないと確約しない限り承服できない」と主張。これに対し自民党は「答えられない」と述べるにとどめ、具体的な対応方針を明らかにしなかった。

共謀罪法案 5識者が意見 維新参考人も反対 - 東京新聞(2017年5月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017051690135723.html
http://megalodon.jp/2017-0516-1925-11/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017051690135723.html

衆院法務委員会は十六日、犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案についての参考人質疑を行い、有識者五人が意見を述べた。反対の立場が三人、賛成の立場が二人だった。
反対の立場では、自民、公明両党とともに修正案を提出した日本維新の会が推薦した成城大の指宿信(いぶすきまこと)教授(刑事訴訟法)が「過去のテロ事件をなぜ防げなかったのかの反省なしに、法案を用意するのは合理性を欠く」と述べた。海渡(かいど)雄一弁護士(民進党推薦)は「既遂処罰が基本の刑法体系を覆し、自由が制限される」と指摘。加藤健次弁護士(共産党推薦)も反対意見を述べた。
暴力団対策に関わってきた木村圭二郎弁護士(自民党推薦)は賛成の立場から「要件は厳格で、組織犯罪とテロ対策に必要だ」と訴えた。賛成の立場は、ほかに中央大の椎橋(しいばし)隆幸名誉教授(公明党推薦、刑事訴訟法)。

(政界地獄耳)すべての政治が五輪に持ち込まれている - 日刊スポーツ(2017年5月15日)

http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1823703.html
http://archive.is/2017.05.15-090419/http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1823703.html

★これほどまでに、20年東京五輪パラリンピックが政治利用されるとは思わなかった。思えば13年9月7日、ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会の招致活動の最終プレゼンで、首相・安倍晋三は「東京は世界で最も安全な都市の1つです。それは今でも、20年でも一緒です。フクシマについて案じる向きには、私が皆さんにお約束します。状況はコントロールされています。東京には、いかなるダメージもこれまで与えたことはなく、今後も与えることはありません。汚染による影響は福島第1原発の港湾内の0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされています」と安全宣言をした。
★その12日後、首相は福島第1原発の視察をしたが、厳重な防護服に身を包み世界の失笑を買う。15年1月30日の衆院予算委員会で首相は、福島第1原発の状況について「今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々を思うと、収束という言葉を使う状況にはない」と明言。これでプレゼンが方便だと分かる。
★そして首相は今年1月23日、衆院の代表質問の答弁で「(国際組織犯罪防止)条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピックパラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と、共謀罪を成立できなければ五輪開催が難しいとまで言い出した。続けて今月3日には「憲法9条改正は、五輪が開かれる20年までに」と、関連性のない五輪と憲法改正を結びつけた。政治を持ち込まないどころか、すべてが五輪に関連付けられて進められている。国民にとっては、東京五輪パラリンピックは楽しみな存在ではなくなっていきそうだ。(K)※敬称略

日本で演じる心の葛藤 「日比国際児」フィリピンに数万人 - 東京新聞(2017年5月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051502000208.html
https://megalodon.jp/2017-0516-0117-33/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051502000208.html

日本人男性とフィリピン人女性との間に生まれ、父親を知らないままフィリピンで暮らす子どもたちが今月来日し、関東地方など各地で演劇を披露している。劇を通して、心の葛藤を伝えるためだ。この来日公演はほぼ毎年5月に行っており、今年で20年目を迎える。最大の目的は父親捜し。「会いたい」と願いながら各地を訪れている。 (浅野有紀)
マニラで女性の自立を支援する非政府組織(NGO)「ドーン」などによると、二〇〇四年ごろまで、興行ビザで多くのフィリピン人女性が来日。ホステスとして働く店で出会った男性客との間に子どもを授かっても、男性に家庭があると認知を受けられず、おなかの子とやむなく帰国する。
こうして生まれた子どもは、ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC=日比国際児)と呼ばれる。JFCネットワーク(東京)によると、その数はマニラ一帯で一万人、フィリピン全土では数万人とみられる。成長するにつれ、周りの子と肌の色や名前が違うことに気付く。出自を知るため、「父親に会いたい」との思いを抱く子も。
そんな胸の内を舞台で表現してもらおうと、ドーンが一九九八年に「劇団あけぼの」を設立。JFCが所属する。演目は「クレイン・ドッグ〜ルーツを探して〜」。主人公の翼の生えた犬が、父親の鶴を捜して旅に出る物語で、自身もJFCの劇作家ミチコ・ヤマモトさんが描いた。
日本での公演は、東日本大震災のあった一一年を除き、毎年続けている。今年は五人が十三日に来日し、十四日の愛知県春日井市を皮切りに、活動の支援者がいる京都大、関西大、埼玉大、千葉大、神田外語大などを巡り、公演する。
公演の合間に、子どもたちが心待ちにしているのは父親との面会の時間。協力する、さいたま市NPO「みんなの夢の音楽隊」代表今川夏如(なつゆき)さん(38)は、延べ三十人の父親との面会に立ち会ってきた。「学校でいじめられたり、父親に捨てられたと考えたり、自信を持てない子が多い。そんな子が目を輝かせてお父さんに成績表を見せ、『こんなに頑張っているよ』とうれしそうに笑うんです」
約束の時間に父親が現れないこともあり、子どもにはぎりぎりまで内緒にしておくという。一方で、日本の家族に内緒で学費を工面したり、仕送りしたりする父親もいる。
日本人男性のモラルが問われるJFCの存在。今川さんは「根底には、出稼ぎに頼らざるを得ないフィリピンの貧困がある。興行ビザを安易に発行してきた日本の責任も重い」と指摘する。

◆関東での公演は、22日午後5時半から埼玉大工学部シアター教室(さいたま市桜区下大久保)、24日午後0時10分から千葉大総合学生支援センター(千葉市稲毛区弥生町)、25日午後4時から川崎市ふれあい館(川崎市川崎区桜本1)、27日午前11時から神田外語大ミレニアムハウス(千葉市美浜区若葉1)である。

「ヤマトの仕打ち許せない」 沖縄本土復帰45年 - 東京新聞(2017年5月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051502000207.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0907-58/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051502000207.html

沖縄県は十五日、過重な基地負担への複雑な思いを抱えたまま、本土復帰四十五年を迎えた。「ヤマトの仕打ちは、琉球人として許せないよ」。米軍普天間(ふてんま)飛行場の名護(なご)市辺野古(へのこ)沖への移設に反対する団体「沖縄意見広告運動」に在京委員として携わる読谷(よみたん)村出身の山内勝規さん(66)=東京都三鷹市=は、基地建設現場の対岸で十四日に開かれた集会の後方に立ち、政府への憤りを隠せずにいた。
集団就職で東京に渡って五十年近く、常に沖縄を思いながら生活し、意見広告運動に二〇一〇年の立ち上げから関わっている。全国紙や在米紙、県内の新聞などに意見広告を掲載し新基地建設反対を訴える。
意見広告運動の賛同金は個人は一口千円。沖縄出身者の小学生の孫が「オジーの古里がかわいそう。許せない」とお年玉から賛同金を出してくれたこともあった。年金生活者が経済的に厳しい中「三百円でも出したい」と申し出たこともあった。集会の現場で賛同者の気持ちを思い返し、山内さんの目に涙があふれた。
集会には、めいと義理の姉と参加したが、山内さんにも孫がいる。「薩摩侵攻から続けられてきた沖縄への仕打ちを子どもたちの代に残してはいけない。誇り高く豊かで、自活できる沖縄にしていくためには基地はいらない」と語り、今後も普天間の閉鎖、辺野古新基地建設阻止に向けて活動を続ける構えだ。
賛同金の応募は、「沖縄意見広告運動」のホームページから。

特定秘密の事前指定 参考人から批判続出 衆院審査会で質疑 - 東京新聞(2017年5月16日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051602000115.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0907-38/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051602000115.html

衆院情報監視審査会は十五日、政府による特定秘密保護法の運用を巡り、参考人質疑を行った。有識者からは、具体的な情報がないまま事前に特定秘密とする「あらかじめ指定」や行政文書がないケースが多い点に批判が相次いだ。機密情報を扱う首相官邸の元幹部は政府対応を擁護した。
ジャーナリストの春名幹男氏はあらかじめ指定に関し「(秘密を記録した)文書の作成前から特定秘密に指定することは合理的ではない」と見直しを求めた。
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」理事長の三木由希子氏は、政府が二〇一五年末までに指定した特定秘密四百四十三件のうち、百六十六件に秘密を記録した行政文書がなかったことを問題視。国会によるチェック態勢の根幹に関わるとし「情報管理と文書管理がどうなるか、懸念を覚える」と強調した。
元内閣情報官の三谷秀史氏は、特定秘密をあらかじめ指定することで、情報機関と情報源の間で信頼関係が構築されると指摘。「情報源を守れない組織は信頼されない」と訴えた。

9条の思い 国連に届け 市民団体初シンポ - 東京新聞(2017年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051402000119.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0907-17/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051402000119.html

「地球憲章」づくりを目指す市民グループ「9条地球憲章の会」は十三日、初のシンポジウムを東京都内で開いた。憲法九条が掲げる戦争放棄や戦力不保持に対し、海外から寄せられた賛同のメッセージが報告される一方、安倍晋三首相の改憲提案を危ぶむ声が上がった。
同会は三月に発足。九条の理念を生かした地球憲章を各国の市民に作ってもらい、戦争のない世界の実現を目指している。
この日の報告によると、趣意書を各国語に翻訳して賛同を呼び掛けたところ、現時点で国内外の計二百三十七人が賛同を表明。このうち海外は欧米、アジア、アフリカなど十三カ国・地域の五十一人に達した。
海外からのメッセージには「九条に示された戦争に終結をもたらす試みは、平和への最善の希望」(米国)、「日本国憲法に示された非戦・非武装の道は、戦争の恐怖をなくす最も賢明な判断」(モロッコ)などと、九条の根幹部分に共感した声が多い。
元米兵でオハイオ大名誉教授のチャールズ・オーバービーさんからは「九条は全人類の幸福にとって、とても重要。世界中の憲法に広げるため、粉骨砕身の努力を」とのビデオメッセージが届いた。
自衛隊憲法に明記する首相の改憲提案に対しては、代表の堀尾輝久・東大名誉教授が「私たちは怒りを共有している」、浦田賢治・早大名誉教授は「米国のテロとの戦争に日本が参加する道につながる」と懸念を示した。
同会は引き続き賛同者を募りながら、「日本版」地球憲章の作成をスタートさせる予定。将来的には「世界共通版」の地球憲章を国連で採択する構想も描いている。 (安藤美由紀)

憲法70年 国民分断する首相方針 - 朝日新聞(2017年5月16日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12938862.html?ref=opinion
http://megalodon.jp/2017-0516-0906-55/www.asahi.com/articles/DA3S12938862.html?iref=comtop_shasetsu_01

衆参両院で3分の2を超える自民、公明、維新など「改憲勢力」の数の力で、安倍首相が提案した憲法9条改正を発議させる――。そうした構図が見えてきた。
首相は先週末、自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長に対し、衆参の憲法審査会に提案する案のとりまとめを急ぐよう指示した。それに先立つ同本部の幹部会では首相補佐官が、自公維による国会発議が首相官邸の意向だと発言したという。
一連の首相の指示は二つの意味で筋が通らない。
ひとつは、憲法改正を発議する権限は国会にあるということだ。行政府の長である首相が自らの案を期限を切って示し、強引に動かそうとするなら、「1強」の暴走と言うしかない。
二つ目は、衆参の憲法審査会で現場の議員たちが培ってきた議論の基盤を崩すことだ。
憲法改正原案を審査する役割を持つ憲法審は、2000年に設置された旧憲法調査会以来、小政党にも平等に発言機会を認めるなど、与野党協調を重んじる運営を続けてきた。
憲法は国の最高法規だ。通常の法案や予算案以上に、その扱いには幅広い政党間の合意形成が求められる。
だからこそ憲法審の議員たちは、与野党を超えた合意づくりを心がけてきた。その関係を、首相が壊したのは今回が初めてではない。
第1次政権だった07年の年頭会見で「憲法改正を私の内閣でめざしたい。参院選でも訴えたい」と表明。与野党の協調ムードを踏みにじった。
それでも首相の前のめり姿勢は変わらない。12年末には改憲の国会発議のハードルを衆参の3分の2以上の賛成から過半数に下げる96条の先行改正を持ち出し、野党や世論の反発を受けて封印した。
改憲にこだわる首相の姿勢と国民の思いには落差がある。
本紙の世論調査では、今回の首相の改憲提案を47%が「評価しない」とし、「評価する」の35%を上回った。首相の言う9条改正についても「必要ない」が44%で、「必要だ」は41%だった。民意は二分されている。
首相に一番力を入れてほしい政策を聞くと、社会保障29%、景気・雇用22%と続き、憲法改正は5%に過ぎなかった。
憲法改正は、多くの国民が必要だと考えた時に初めて実現すべきものだ。
首相の意向だからと、世論を二分する改正を数の力で押し通せば、国民の間に深い分断をもたらす恐れがある。

沖縄復帰45年 犠牲いつまで強いるか - 朝日新聞(2017年5月16日)

2017年5月16日
http://www.asahi.com/articles/DA3S12938863.html?ref=opinion
http://megalodon.jp/2017-0516-0904-53/www.asahi.com/articles/DA3S12938863.html?iref=comtop_shasetsu_02

日本に復帰して45年がたった沖縄は、いまも過重負担にあえぐ。国土のわずか0・6%に、米軍専用施設の7割がある。
朝日新聞などが実施した県民世論調査で、この基地の集中を「本土による沖縄への差別だ」とみる人が54%にのぼった。
先の大戦で本土を守る「捨て石」にされて以来の苦難を身をもって知り、あるいは経験者の姿や話を直接見聞きしてきた世代を中心に、こうした思いが広がるのは当然だろう。
政府はことあるごとに「沖縄の基地負担軽減」を口にする。だが名護市の稲嶺進市長は「県民が実感できる状況にない」と話す。これも、ごく自然な受けとめということができる。
米軍普天間飛行場の移設のための埋め立て工事が、同市辺野古沿岸部で先月から始まった。県が求める協議に応じず、所定の手続きも踏まず、6割を超す「辺野古ノー」の民意を無視しての着工である。近年、沖縄以外のどこで、このような乱暴な措置がとられただろうか。
辺野古の他でも、負担軽減とは正反対の事態が相次ぐ。
約1年前、ウォーキング中の女性を襲って殺害したとして米軍属が起訴された。夏以降、本島北部のやんばるの森で、オスプレイが使うヘリコプター着陸帯の建設が強行され、年末にはそのオスプレイが名護市安部の海岸に落ちて大破した。
先月、恩納村の米軍基地内にあるダム工事現場で工事業者の車に流れ弾が当たり、先月と今月には米軍嘉手納基地でパラシュート降下訓練が行われた。危険な訓練なので別の基地に集約し、そこでのみ実施するという日米合意は無視された。
軍用機による騒音や環境汚染は日々発生・継続している。翁長知事はきのう発表した「復帰の日コメント」で、基地の存在を「沖縄の更なる振興発展の最大の阻害要因」と指摘した。
沖縄県民は敗戦直後に公民権を停止され、国会に代表を送れなかった。平和主義や基本的人権の尊重をうたう憲法を、施行から四半世紀遅れて、復帰の年にようやく手にしたものの、基地がもたらす現実の前に、その理念はかすんで見える。
この島の人々の声に耳を傾けよう。まだ間に合う。政府は辺野古沿岸の埋め立て工事を中止し、すみやかに沖縄県との話し合いの席に着くべきだ。
国民一人ひとりも問われる。無理解、無関心から抜けだし、沖縄の歴史と現実にしっかり向きあう。知ること、考えることが、政権のかたくなな姿勢を改めさせる力になる。

沖縄復帰45年と安倍政権 「償いの心」をかみしめて - 毎日新聞(2017年5月15日)

https://mainichi.jp/articles/20170515/ddm/005/070/006000c
http://archive.is/2017.05.15-074206/http://mainichi.jp/articles/20170515/ddm/005/070/006000c

「償いの心」を沖縄振興の原点に据えたのは、本土復帰の日に初代沖縄開発庁長官に就任した山中貞則・元自民党衆院議員である。
地上戦の甚大な被害と米軍統治という沖縄の苦難の歴史を理解し、寄り添う姿勢は県民の共感を呼んだ。
本土復帰から45年を迎えた。いま安倍政権がそうした思いを受け継いでいるだろうか。
日本の国土面積の0・6%の沖縄県に全国の米軍専用施設面積の70・6%が集中している現状が、沖縄へのしわ寄せを物語る。本土の約400倍の負担である。
反基地運動などを背景に米軍施設が大幅に縮小されてきた本土とは異なり、沖縄では施政権が返還された後も米軍はとどまった。その結果、全土に占める割合は返還時の6割弱からむしろ増えてしまった。
こうした推移に政治の反応は鈍かった。復帰から首相は24人を数えるが、沖縄米軍問題に取り組んだのは復帰22年後に就任した村山富市首相になってからだ。それまで沖縄への関心といえば復興と格差だった。
続く橋本龍太郎首相が米軍普天間飛行場返還に合意したが、21年を経てなお実現していない。沖縄との溝を埋める努力を政府が十分に果たしてこなかったことが大きな要因だ。
とりわけ安倍政権の沖縄に対する冷淡さは際立っている。
翁長雄志(おながたけし)知事は安全保障の重要性を共有しつつ「負担は沖縄だけで背負うのではなく、国民全体で考えるべきだ」と訴える。しかし、安倍政権はその声に耳を傾けず、沖縄との対立を法廷闘争に持ち込んだ。
日米安全保障条約は米国の対日防衛義務と日本の米軍受け入れを定める。だが、その受益は本土が受け、負担は沖縄がかぶるいびつな構図になっているのは疑いようがない。
沖縄の痛みを共有せずに対話より裁判での決着を目指し、法律や行政手続きに問題がなければ既定路線を突き進む安倍政権の手法に、沖縄が反発するのは当然だろう。
20年以上にわたって沖縄が受け入れない政策を、安全保障は国の専管事項だと言って押し通すには、もはや無理がある。
沖縄の民意に反して強行すれば禍根を残すだけだ。沖縄の声を聞く「心」が、いま大事なのではないか。

日本の平和主義 不戦が死文化しないか - 東京新聞(2017年5月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051602000133.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0903-40/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051602000133.html

自衛のための戦争なら何でも許される−、そう考えるのは誤りである。振り返れば、日本に限らず「自衛」の名を借りて、侵略戦争を引き起こしてきたからだ。
一九四六年六月。新憲法制定の帝国議会における吉田茂首相の答弁を振り返ってみよう。<近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変しかり、大東亜(太平洋)戦争しかりであります。今日わが国に対する疑惑は、日本は好戦国である。いつ再軍備をなして復讐(ふくしゅう)戦をして世界の平和を脅かさないともわからないということが、日本に対する大なる疑惑であり、また誤解であります>
だから、九条を定め、この誤解を正さねばならないという吉田の主張である。導き出されるのは、九条は自衛戦争も含めた一切の戦争と戦力を放棄したという、憲法の読み方である。
もっとも主権国家である以上、自衛権をも否定するものではないと解されてきた。そして、政府は自衛のため必要最小限度の実力を保持することは憲法上認められるとしてきた。その実力組織こそが自衛隊だった。
学問の上では違憲・合憲のやりとりは今も続くが、国民の生命や自由を守るための実力組織としての存在は、国民から支持を得ているのは間違いない。
ところが、安倍晋三政権下で他国を守る集団的自衛権の行使の問題が起きた。歴代の内閣法制局長官が「憲法改正をしないと無理だ」と述べたのに、一内閣の閣議決定だけで押し通した。「憲法の破壊だ」と声が上がったほどだ。安全保障法制とともに「違憲」の疑いが持たれている。
今までの個別的自衛権は自国を守るためであったし、自衛隊は「専守防衛」が任務であった。それなのに任務が“突然変異”してしまった。他国や同盟国の艦隊などを守る任務は明らかに九条の枠内から逸脱している。歴代の法制局長官もそう指摘してきた。
安倍首相は九条一項、二項はそのまま残し、三項以降に自衛隊を書き込む改憲案を提唱している。もともと不意の侵入者に対する自衛権だったのではなかったか。もし米軍とともに他国まで出掛けていく自衛隊に変質していくのなら、九条の精神は死文化すると言わざるを得ない。
平和憲法を粗末にすれば、「自衛」の名を借りた、自衛戦争をまた引き起こす恐れが出てくる。

(筆洗)カーネーションさえいらないかもしれない。電話で、魔法の言葉を唱えればいい。「元気だよ」 - 東京新聞(2017年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017051402000128.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0924-47/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017051402000128.html

その俳優の母上はとにかく、息子をほめるのだそうだ。「おまえは本当に役者に生まれてきたような子だよ」「おまえはなんてうまい役者だろう」「おまえは最高だよ」。「蒲田行進曲」「熱海殺人事件」などの風間杜夫さんのおかあさん。
ある日、終演後の楽屋にやって来るなり、息子の名演に喜びのあまり、こう大声を出した。「仲代達矢よりよかったよ。勝ったね」。隣の楽屋には共http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/edit?date=20170516#演の仲代さんがいる。風間さんがどんなに肝を冷やしたことか。
たとえ、それが聞こえたとしても、仲代さんは怒らず、ほほ笑んだのではないかと想像する。仲代さんにも同じ「記憶」がある。
俳優座時代の若き日、イプセンの「幽霊」で大役をつかんだ。上演中、どうも客席が騒がしい。騒ぎのもとは仲代さんのおかあさん。舞台を指さして、「アレ、私の息子なんです。いい男でしょ。アレ息子!」
いずれも『この母ありて』(木村隆さん・青蛙房)から拝借した。母の日である。どの母も子の成長、幸せに喜びを爆発させる。笑う。母とはそういう生き物である。そして子どもは母の喜びに照れくさく感じつつも、勇気づけられ、励まされ、その道を歩んでいく。母の笑いは子の道を照らす。
なにも名優にならずとも母の笑いは手に入る。カーネーションさえいらないかもしれない。電話で、魔法の言葉を唱えればいい。「元気だよ」

(書評)スウィングしなけりゃ意味がない 佐藤亜紀 著 - 東京新聞(2017年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017051402000177.html
http://megalodon.jp/2017-0516-0911-25/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017051402000177.html

◆非政治性を貫く格好よさ
[評者]須賀しのぶ=作家
格好いい。主人公たちが頻繁に口にする言葉こそが、この小説の心臓だ。
ナチス時代、若者による抵抗運動はいくつかあるが、この小説の題材となっているスウィングボーイズは、他の組織とは明確に異なる一面を持っている。定番のビラ配りや、ナチスの青年組織であるヒトラー・ユーゲントへの抵抗といった積極的な運動は一切しない。彼らはただ、ナチスに頽廃(たいはい)音楽の烙印(らくいん)を押されたジャズに熱狂しているだけだ。理由はただ「格好いい」から。一方で、ナチスと彼らが押しつけるものはダサさの極みだと忌み嫌う。
スウィングボーイズの多くは、いわゆる良家の不良少年だ。主人公エディも特権を享受した悪ガキだが、同じくジャズを愛し、理解する者ならば、ユダヤ人もユーゲントのスパイもあっさりと迎えいれる。
戦争が激化し、ジャズが禁じられ、生活からあらゆるものが失われていっても、それは変わらない。知恵を絞り、ユダヤ人の友人らとともに海賊版のレコードをつくって売りさばくあたりは痛快で、一貫した姿勢がまさに格好いい。この軽やかさは政治に無関心だからこそとも言えるが、無関心を貫くことにも彼らの意志がある。仲間が反ナチのビラを配ろうとするのを止めようとして、エディはこう言っている。
「これさ、ユーゲントとどこが違うんだ。なんで一々青年が先頭に立って旗を掲げなきゃならないんだ。ドイツよ目覚めよ、かい? いっぺん目覚めた挙句(あげく)こうなってるんだろ?」
ナチスは、憎悪と闘争で拡大した。彼らを憎み、戦うことに意味を見いだそうとする者もまた、同じ道を辿(たど)りかねないことを彼は知っているのだ。
押しつけられた、イケてない価値観に踊らされることなく、自ら選びとったスウィングジャズで最後まで踊り続ける。その姿は、あの時代におそろしいほど似てきた現代に生きる我々に、格好いいとはどういうことかを教えてくれる。
(KADOKAWA・1944円)

<さとう・あき> 1962年生まれ。作家。著書『天使』『ミノタウロス』など。

◆もう1冊 
J・A・グライムズ著『希望のヴァイオリン』(宇丹貴代実訳・白水社)。楽器とともにホロコーストを生き抜いた演奏家たち。

スウィングしなけりゃ意味がない

スウィングしなけりゃ意味がない

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