いま読む日本国憲法(33)第50条 立法権の担い手守る - 東京新聞(2016年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016112902000189.html
http://megalodon.jp/2016-1129-0945-49/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016112902000189.html


国会議員が会期中、逮捕されない「不逮捕特権」を定めた条文です。
歴史上、強大な権力を持つ専制君主が、都合の悪い人物を不当に逮捕したり、逮捕すると圧力をかけたりするケースは数多くありました。こうした干渉から、立法権を担う議員の自由な活動を守るために生まれたのが不逮捕特権です。
あくまでも国会開会中の特権で、閉会中に不逮捕特権はありません。
さらに、五〇条は「法律の定める場合」は例外とする規定を設けています。これに基づき、国会法は三三条で、国会外の現行犯と、議院の許諾があった場合は逮捕を認めています。
許諾の議決を経て逮捕された例は、戦後十六件十五人にのぼっています。多くは「政治とカネ」にかかわる事件に関与した疑いがかかったケースですが、衆院が二〇〇三年三月、政治資金規正法違反容疑で坂井隆憲衆院議員の逮捕許諾を議決して以降、十三年以上議決は行われていません。
五〇条は、会期前に逮捕された議員を会期中、釈放する規定も設けています。ただ、衆院事務局によると、この釈放要求を議決したことはありません。
自民党改憲草案も、五〇条はほぼ現行通りとしています。
憲法不逮捕特権のほか、議員の活動を保障する特権として、相当額の歳費(給料)を受け取る「歳費受領権」(四九条)と、国会内での演説や投票行動について国会外で責任を問われない「免責特権」(五一条)を定めています。


 ◇  
憲法の主な条文についての解説を、随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。

市長逆転有罪 迷走のつけは市民に - 東京新聞(2016年11月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112902000178.html
http://megalodon.jp/2016-1129-0938-21/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112902000178.html

現金計三十万円を設備業者から受け取ったとして受託収賄などの罪に問われた現職市長の裁判で、名古屋高裁が一審の無罪判決を破棄し、逆転有罪を言い渡した。迷走の出口となるだろうか。
全国最年少市長として知名度の高かった岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(32)の裁判は、異例の展開をたどってきた。
プール水浄化設備の導入をめぐり、設備業者(贈賄罪などで懲役四年確定)が「飲食店で市長に現金を渡した」とする一方、市長は一貫して現金の受け取りを否定。検察側が現金授受の場と主張する業者との会食の事実については争いがなく、控訴審の焦点も、設備業者の証言が信用できるか否かに絞られていた。
一審の名古屋地裁は、巨額融資詐欺で取り調べを受けていた業者が「余罪の追起訴を免れるため虚偽供述をした疑いがある」とまで踏み込み、「現金授受があったと認めるには合理的疑いが残る」と判断。市長を無罪とした。
一方、控訴審名古屋高裁は裁判所の職権で設備業者の証人尋問を実施。「虚偽だとするとかえって説明困難」などと指摘し、「現金を渡した」とする証言は信用できると結論付けた。
収賄罪は身分犯であり、大臣なら大臣の権限に、国会議員なら国会議員の権限に見合った賄賂の相場があるともいわれる。藤井被告が市長に当選する前の市議時代に受け取ったとされる三十万円が、その立場に見合った賄賂の額ではないとみる議論もあった。
その一方、大臣級の政治家周辺も含め、検察が起訴しない“政治とカネ”の巨額のスキャンダルがしばしば発覚し、政治不信を引き起こしている現実もある。
今回の高裁判決は「被告人から賄賂を要求したものではなく、収受した金額は多額とはいえないものの、要職にある者としてはあまりにも安易に犯行に及んでいる」と指摘した。動いたとされる金額の問題以前に、政治とカネの問題に広く警鐘を鳴らそうとしたとみることもできよう。
密室の中で何があったのか。公権力の不正には厳しく立ち向かわねばならぬが、「疑わしきは被告人の利益に」という裁判の鉄則も忘れてはならない。裁判員裁判の時代を迎えた現在、決定的な証拠がないまま進む裁判は、傍聴席の市民に消化不良をもたらすようにも見える。司法の迷走が市政の停滞をもたらすとすれば、最も不利益を被るのは市民である。

翁長知事、米軍ヘリパッド容認「苦渋の選択」 辺野古阻止は改めて強調 - 沖縄タイムス(2016年11月29日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/73278
http://megalodon.jp/2016-1129-0934-36/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/73278

翁長雄志沖縄県知事は28日、就任2年を前に報道各社のインタビューに応じた。北部訓練場へのヘリパッド建設で「苦渋の選択の最たるものだ。4千ヘクタールが返ることに異議を唱えるのはなかなか難しい」と述べ、大規模な米軍基地返還を条件とした建設には反対できないとの認識を示した。一方で「オスプレイが全面撤回されればヘリパッドは運用しにくい。配備撤回で物事は収斂(しゅうれん)されるのではないか」と述べ、オスプレイ撤退を主張することで、ヘリパッドの撤去につなげたい考えを説明した。
知事は2014年10月、知事選の出馬に際する政策発表で「オスプレイ撤去と県外移設を求める中で、(オスプレイが離着陸する)高江のヘリパッドは連動して反対していくことになる」と明言しており、公約との整合性が問われそうだ。
名護市辺野古の新基地建設で、自身の埋め立て承認取り消しの違法性を争う訴訟で判決が確定した場合の対応は「司法の最終判断を尊重することは当然」と判決に従う考えを強調した。
一方で「敗訴が確定しても、前知事の承認時に要件を満たしていなかったことを争えなくなるだけだと思っている」とも指摘。
岩礁破砕とサンゴの特別採捕に関する許可や、基地建設の設計変更に関する承認申請の審査などの知事権限を駆使して、新基地建設を阻止する考えをあらためて示した。
2年後の知事選で再選出馬する考えは「来年の話をしても鬼が笑うというくらいだ。全力投球で与えられた4年間をまっとうする」と述べるにとどめた。
県民所得の向上は「観光リゾート産業や情報通信関連産業の振興、臨空・臨港型産業など新たなリーディング産業の育成、農林水産業、製造業、建設業、小売業などの地場産業育成に取り組む」と説明した。
知事は12月10日に就任2年を迎える。

停止中の女川原発1号機、原子炉建屋に海水12トン超 - 朝日新聞(2016年11月28日)

http://www.asahi.com/articles/ASJCX5V2TJCXULBJ00Q.html
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東北電力は28日、運転停止中の女川原発宮城県)の1号機で、原子炉建屋に海水約12・5トンがあふれ出したと発表した。機器の点検を終えて冷却用の海水の通水を再開したところ、本来は閉じているべき弁が開いていたため、海水が建屋内に流れ込んだ。海水に放射性物質は含まれておらず、すべて回収された。外部への流出はないという。
東北電によると28日午前10時56分ごろ、原子炉建屋の地下2階で海水があふれ出ているのを、作業員が発見した。当時、原子炉格納容器の空調や使用済み燃料プールの浄化に使用するポンプなどを冷却する熱交換器の点検をしていた。点検を終えて冷却用の海水を流したところ、閉じているべき弁が開いていたため、海水が本来とは異なる配管に流れ込み、建屋内にあふれ出たという。

「国は人命に全責任を負うことはしない」 アレクシエービッチさん、福島で思う - 東京新聞(2016年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112902000134.html
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原発事故に遭った人々の証言を集めた「チェルノブイリの祈り」などの著作で知られる、ベラルーシノーベル文学賞作家でジャーナリストのスベトラーナ・アレクシエービッチさん(68)が二十八日、東京外国語大(東京都府中市)で名誉博士号を授与され、学生との対話に臨んだ。今回の来日で福島第一原発事故の被災地を訪ねた感想を語り、「明日すべての原発を止めることは不可能でも、何ができるかを考え始めることはできる」と述べた。
アレクシエービッチさんは二十三日の来日後、福島県を訪れて原発事故の被災地を視察。事故で住居を追われた人々の話を聞いた。福島市出身の同大二年、茂木颯花(もぎさやか)さんに「福島で何を思ったか」と尋ねられ、「チェルノブイリ事故と同じで、国は人の命に全責任を負うことはしないと強く感じた」「全体主義の長い文化があった我が国と同じく、日本社会には抵抗という文化がないようにも感じた」と答えた。
現在のロシアの覇権主義的な姿勢について聞かれると、「国民の意識の軍事化が行われている。恐ろしい時代になっている」と警鐘を鳴らした。若者へのメッセージとして「どんな状況であっても、人間らしさを失ってはならないと理解してほしい」と語りかけた。
アレクシエービッチさんは対話に先立ち、「とあるユートピアの物語」と題して講演。市井の人々の言葉をすくい上げ、記録文学を執筆してきた半生を振り返り「一人の話は個人の運命だが、百人の話は歴史になる」「私の仕事は命についての対話と呼びたい」などと語った。
対話を終えた茂木さんは本紙の取材に「原発が再稼働されるなど、現状に絶望的な気持ちだったが、励まされたような思い。『小さい人』一人一人の証言をまとめた彼女の作品を、すべての人が読むべきだと思う」と話した。(樋口薫)

◆アレクシエービッチさん 学生との対話詳報
東京外語大で行われたノーベル文学賞作家アレクシエービッチさんの講演と学生との対話の詳報は以下の通り。

学生「福島で何を思われましたか」

アレクシエービッチさん「昨日福島県から戻ってきたばかりです。『チェルノブイリの祈り』という本に書いたことのすべてを見たというのが、私の印象です。荒廃しきったいくつもの村、人々に捨てられたいくつもの家を見ました。
国というものは、人の命に全責任を負うことはしないのです。また、福島で目にしたのは、日本社会に人々が団結する形での『抵抗』という文化がないことです。祖母を亡くし、国を提訴した女性はその例外です。同じ訴えが何千件もあれば、人々に対する国の態度も変わったかもしれません。全体主義の長い文化があったわが国(旧ソ連)でも、人々が社会に対する抵抗の文化を持っていません。日本ではなぜなのでしょうか」

学生「私は原発をなくさなくてはならないと思うが、それは可能か」

ア「人類はいずれ原発に代わる別のエネルギー源を探し求めざるを得なくなると思います。チェルノブイリや福島のようなカタストロフィーが複数起きることが予測されます。自然が一枚の絵であるなら、人間は登場人物の一人に収まるという形でのみ存在が可能です。自然に対して、暴力の言葉を操って対峙(たいじ)しようとするのは間違いです。それは人類の自殺へ至る道です。
明日すべての原発をストップさせることは不可能です。では、何を始められるのか。それは何ができるか、何を作ればいいのかを考え始めることです。ロシアのようにミサイルにお金を使うのでなく。現在の一番主要な問題はエコロジーだと私は思います」

学生「ロシアで『アフガニスタン侵攻は正しかった』との再評価が進んでいると聞き、危惧しています」

ア「新たな愛国主義、命を惜しまず偉大な国を守ろうという言説が広がっています。現代は旧ソ連の時代よりも恐ろしい時代になっています。アフガン侵攻の取材時は、戦死した兵士の家を訪ねると、母親が『真実を書いてください』と叫んでいた。でも、今は遺族に拒まれることが非常に多くなった。『真実を語ると遺族報償金が入らなくなる』と説明されます」

学生「私はウクライナ人ですが、ロシアとの関係を良くするために何ができるでしょう。また、あなたの本は両国にどんな影響を与えていると思いますか」

ア「あなたは芸術にグローバルな役割を求めていますが、私は宗教や芸術はより繊細なレベルで機能するものだと思います。一人一人の人間の心を和らげるとか、人生を評価するとか。私はアフガニスタンで死体を見ました。ひどい光景、非人間的な光景でした。あなたのような若い人に言えることは一つ。どんな状況であっても人間であり続けること、人間らしさを失わないことだと思います」

学生「チェルノブイリソ連崩壊などで絶望に陥った人々はどうやって自分を救済したのでしょう」

ア「人は意外に多くのものに救われています。例えば愛。自然や音楽、毎朝コーヒーを飲むというルーティンの行動にも、偶然にも。さまざまなつらいことがありますが、人生は興味深く、生きるのは面白いと私は思います」

◇講演要旨
私の本には普通の人が登場し、「ちっぽけな人間」が自分の話をします。ささいなこと、人間くさいこと。いつも日常の言葉から文学を作ろうとしてきました。どの本も五年から七年かけ、五百人から七百人の人生を書き込みます。私は見過ごされた歴史を追う、魂の歴史家です。
最初の作品では、女が目にした戦争を描きました。戦争では人間だけでなく、命あるものがみな苦しむ。自然は声なく苦しむので、さらに恐ろしい。チェルノブイリ原発事故は想像を絶しました。至る所に死が潜んでいました。目に見えない、耳にも入らない「新しい顔の死」です。これは未来の戦争、前代未聞の新しい戦争だと思いました。
多くの放射性物質は百年、二百年、一千年は放射線を出し続けます。放射能に国境は存在しません。チェルノブイリは時間の感覚や空間を変え、「自他」の概念も消滅させました。
アフガニスタン侵攻と原発事故は、ソ連という帝国を崩壊させました。社会主義から資本主義に急転換して社会が混乱する中、プーチンスターリン体制を素早く復元しました。人々はおびえ、何が社会で起きているのか理解できません。自由への道のりは長い。どうして苦しみは自由に変換できないのでしょうか。私は時代を追います。人間を追い続けます。

多様性を渋谷から発信 LGBT課長に同性愛の男性、民間から起用 - 東京新聞(2016年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112902000121.html
http://megalodon.jp/2016-1129-0913-01/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112902000121.html

東京都渋谷区が同性カップルを夫婦に等しい関係と認める証明書の交付を始めてから、十一月で一年。性的少数者(LGBT)を含め誰もが共生できる社会の実現に向け、区は九月に男女平等・ダイバーシティ(多様性)推進担当課長として、民間出身で同性愛(ゲイ)を公表している永田龍太郎さん(41)を抜てきした。二十九日には、LGBTの人たちが悩みなどを語り合うイベントも開かれる。 (神野光伸)
「LGBTに対する社会の意識を変えたい」。永田さんは米・衣料販売大手GAP(ギャップ)日本法人で宣伝業務に携わった。
同社では、性や身体の障害などによる差別を禁じ、多様性を認め合うことがルール。永田さんはLGBTの啓発イベントで協賛を求める人らを支援したり、店舗にLGBTの象徴のレインボーカラーを取り入れたりして、社の姿勢を知ってもらう取り組みを進めた。
ゲイを自覚するようになったのは思春期のころだ。それまでも物腰の柔らかい話し方から「オカマ」などと中傷され、疎外感を感じてきた。「ゲイは笑いのネタでしかなく、救いの手はどこにもなかった」。高校を卒業すると故郷の福岡を飛び出し、自分を受け入れてくれる場所を求めて東京の大学へ進学した。
だが、大学では周囲にゲイであることを打ち明けられず、卒業後の就職先でも息苦しさが付きまとった。「ゲイとして生きる自分を隠してきた。何かあったらばれるかもと、同僚らに対する想定問答を頭の中にいつも用意していた」
状況を大きく変えたのが、GAPへの転職。職場には多くのLGBTの同僚がいて、誰もが当たり前のように接していた。「自分は特別じゃない」。初めてゲイであると公表できた。
永田さんの経歴や活動を知った区は、当事者の気持ちを理解して共生社会施策をさらに進めてくれると期待し、声を掛けた。永田さんも「次は行政の中で、LGBTと地域をつなぐ手伝いをしたい」と応じ、九月中旬に採用が決まった。
現在、区がカップルと公認したLGBTは十六組だが、まだ公にできない人も多いとみられる。「差別の問題はマイノリティー(少数派)側ではなく、マジョリティー(多数派)側にある」と永田さん。「証明書は通過点。存在しないものと扱われてきたLGBTの問題を、区民や事業者に啓発していきたい」
     ◇
二十九日のイベント「LGBTコミュニティスペース」は午後二時半から、区文化総合センター大和田内の渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>で。LGBTの人であれば参加は自由。今後も月一回程度開く。問い合わせは同センター=(電)03(3464)3395。

◆支える動き広がる
行政が同性カップルを公認することで差別や偏見を解消したいと、渋谷区が全国に先駆けて昨年四月に同性パートナーシップ条例を施行後、LGBTを支える動きは各地の自治体や企業に広がっている。
東京都世田谷区は渋谷区と同時期に、同性カップルの宣誓に基づくパートナーシップ受領証の発行を開始。今月二十八日現在で四十組に交付した。同様の取り組みは、三重県伊賀市兵庫県宝塚市なども導入している。
企業ではLGBTが働きやすい職場環境づくりが進む。渋谷区の長谷部健区長は「企業が(区の取り組みに)賛同してくれたのは大きい。実際の夫婦と同じように福利厚生などを受けられる人が増えてきている」と手応えを話す。
渋谷区と世田谷区は同性パートナーがいる職員に「結婚」祝い金などの支給を始め、千葉市も「結婚」休暇などを取得できる制度を来年一月に導入する。ただ、行政がパートナーと認めても税制面や相続関係などで結婚と同様の待遇は受けられず、LGBTを巡る法整備を求める声は強い。

<ながた・りゅうたろう> 1975年、福岡県生まれ。99年に東大教養学部卒業後、広告代理店の東急エージェンシーに就職。仏高級ブランドのルイ・ヴィトン日本法人を経て、2007年にGAP日本法人に入社。16年9月に退職、渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長に就任した。
<LGBT> レズビアン、ゲイ、両性愛バイセクシュアル、性同一性障害など生まれつきの性別に違和感を持つトランスジェンダーの頭文字をとった総称。

国会会期 何のための延長なのか - 東京新聞(2016年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112902000179.html
http://megalodon.jp/2016-1129-0912-38/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112902000179.html

そもそも発効しない協定を承認する必要があるのか。私たちの暮らしに関わる年金の法案を、議論を打ち切って、採決を強行して成立させていいのか。一体、何のための国会延長なのだろう。
今月三十日までの臨時国会の会期が十四日間、延長されることになった。安倍晋三首相(自民党総裁)と公明党山口那津男代表がきのう会談して確認した。正式にはきょう国会で議決される。
環太平洋連携協定(TPP)の今国会承認を確実にするとともに、年金支給額を抑制する年金制度改革関連法案を成立させるためだという。
TPP承認案と関連法案は今月十日に衆院を通過した。このうち承認案は憲法の規定で、参院で議決されなくても十二月九日に自然承認となる。延長幅を十四日間としたのは、今国会中にTPPを承認して、早期発効を目指す政権の姿勢を示すためだろう。
しかし、TPPを取り巻く国際環境は激変した。
米次期大統領に就任するドナルド・トランプ氏が、来年一月二十日の就任当日にTPPを脱退することを正式に表明したためだ。
米国がTPPから脱退すれば、発効すらしない。そんな協定を承認する必要性がどこにあるのか。
安倍政権は発効すらしないTPPを承認するばかりか関連法案も成立させ、予算措置も講じるという。これでは、真の目的は各省庁による予算枠の獲得であり、TPPはそのだしに使われただけなのかと、うたぐりたくもなる。
TPP承認案と関連法案はせめて、トランプ新政権発足後まで棚上げすべきではないのか。
年金制度改革関連法案も同様になぜ成立を急ぐ必要があるのか、理解に苦しむ。
年金制度の安定には長期にわたる制度設計を要する。政権交代のたびに制度が変わる不安定さを避けるには、少なくとも野党第一党の理解を得る必要があろう。支給額を抑制するのならなおさらだ。
国会会期の延長が、与野党が胸襟を開いて議論し、知恵を絞るための時間を確保するためなら理解もするが、現実は関連法案成立のための最低限の時間を与党側が確保するのが目的だろう。
会期延長に限らず、安倍政権はこのところ採決強行など数の力を背景にした強引な国会運営が目立つ。望み薄なのは重々承知だが、数の力におごらず、丁寧な国会運営を望みたい。実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな、である。

県教委が請願文書を1年半放置 異例の謝罪議案提案:神奈川 - 東京新聞(2016年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201611/CK2016112902000130.html
http://megalodon.jp/2016-1129-0912-14/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201611/CK2016112902000130.html

教育委員会が、県民からの請願文書を一年半近くにわたって放置していたことが分かり、謝罪の意を表明する異例の議案が二十八日、県議会本会議に提案された。横浜地裁小田原支部の和解勧告に応じる形。県教委高校教育課の担当者は「申し訳ない。言い訳のしようがない」と平謝りだ。
県教委によると、二〇一四年九月、伊勢原市の男性が、県が導入した県立高校生の入院時の学習支援について、全国に発信してほしいと請願。教員を病室に派遣する取り組みで、積極的に評価する趣旨だった。
しかし受け付けた当時の高校教育企画課(現・高校教育課)は、教育委員会会議に諮るなどの対応を放置。今年一月、男性から情報公開請求があり、文書を捜したところ、担当者の机の引き出しに、保管したままになっていたと分かった。
県教委は書面で謝罪したが、男性は精神的苦痛を受けたとして、五万円の損害賠償を求めて三月に提訴。十月になり、県側が「対応の誤りで一年以上未処理が続いたことを謝罪する」との意思を公表し、再発防止に取り組むことで和解の見通しが立ったという。
請願は当初、知事あてに提出され、転送された高校教育企画課が受理した。保管していた担当者は「まったく覚えていない」といい、原因は特定できなかったという。 (原昌志)

 カストロ氏死去 激烈を極めた理想主義 - 毎日新聞(2016年11月29日)

http://mainichi.jp/articles/20161129/ddm/005/070/037000c
http://megalodon.jp/2016-1129-0911-50/mainichi.jp/articles/20161129/ddm/005/070/037000c

カリスマ性を持った20世紀の革命家としては最後の人物だろう。
社会主義国キューバフィデル・カストロ国家評議会議長が、90年の生涯を閉じた。強烈な信念で半世紀にわたって反米を貫いた。
米国に事実上支配された親米独裁政権の下で自国民が貧困にあえぐ姿に憤り、学生運動を始めた。32歳当時の1959年、アルゼンチン人の盟友チェ・ゲバラらとともに政権を倒し、革命を成功させた。
最初から米国と敵対していたわけではない。しかし、カストロ政権を「容共」とみなす米国が国交を断絶し、さまざまな政権転覆の工作を仕掛けたため、ソ連に接近する。
その結果起きたのが62年の「キューバ危機」だ。ソ連キューバで核ミサイル基地の建設を進めたため、ケネディ米政権は海上封鎖に踏み切り、世界は核戦争の寸前にまで追い込まれた。米ソ冷戦時代の象徴として歴史に刻まれている。
自らの像の建立を禁じるなど偶像化を嫌い、質素な生活を続けた。数時間に及ぶ演説でも、機知に富んだ話術で人々を引きつけた。
90年代に極端な経済難に陥り、米国に脱出する難民が急増しても政権を維持できたのは、カストロ氏のカリスマ性があってこそだった。
しかし、胸に抱く理想と現実との落差は大きかった。
経済面では、ソ連からの援助に頼って国内産業を育てられなかった。そのために冷戦終結後に国民を苦しませたことは否定できない。
石油不足でトラクターは動かず、牛馬を使う農耕が復活した。バスや列車の本数は削減され、中国から大量に買った自転車が町にあふれた。国民のドル所持容認や自営業の拡大といった改革を迫られ、結果として貧富の格差を拡大させた。
政権運営でも反対派を容赦なく弾圧した。共産党以外は認めず、表現の自由も厳しく規制した。革命の理想を追うが故に、独裁色を強めたのだろう。米国への亡命キューバ人がカストロ氏の訃報に歓喜したというエピソードは、その姿勢がもたらした断絶の深さをうかがわせる。
2008年に政権を引き継いだ弟のラウル氏は現実主義者と言われる。経済改革を進め、オバマ米政権との間で国交を回復させた。
ただ、トランプ次期米大統領の姿勢は明確ではない。死去後の声明ではカストロ氏を「残酷な独裁者」と評している。両国の和解を後戻りさせないよう求めたい。
功罪相半ばするカストロ氏の軌跡だが、活動の原点は人間の置かれた不平等に対する猛烈な反発だった。その課題の克服はグローバル化が進む現代にも引き継がれている。

(余録)北海道・夕張の炭鉱住宅で黄色いハンカチが… - 毎日新聞(2016年11月29日)

http://mainichi.jp/articles/20161129/ddm/001/070/119000c
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北海道・夕張の炭鉱住宅で黄色いハンカチが連なって風にはためく。映画「幸福の黄色いハンカチ」の印象深いラストシーンだ。事件を起こして服役した主人公の男を大切な人が待っていてくれた。約束の黄色いハンカチを目にした高倉健の表情は忘れがたい。
健さんが83歳で亡くなってから2年になる。全国を巡回する追悼特別展が始まった。最後の作品となった「あなたへ」では北陸の刑務所の指導技官を演じた。日本侠客(きょうかく)伝、網走番外地、昭和残侠伝……。この人ほど刑務所に縁のある役を演じた俳優はいないだろう。
この秋、恒例の「東京拘置所矯正展」が東京・小菅で開かれた。全国の刑務所の受刑者たちが作った家具や美術品、日用品を展示し、販売する場だ。各地にも同様の催しがある。受刑者らの更生への取り組みについて理解を深めてもらうのが目的だ。
その中に富山刑務所のコーナーがあった。立派な神輿(みこし)が黄金色に輝いている。指導したのは、健さんが演じたような刑務官だ。販売の担当者は「刑務官は手助けしてはならないルールで、すべて受刑者の手作りです。培った技術を生かし、人生をやり直してほしい」と言う。
健さんは「あなたへ」のロケ地である富山刑務所を慰問している。約400人の受刑者に語りかけた。「一日も早く社会復帰して、あなたを待っている大切な人のもとに帰ってください」。本人も受刑者も涙ぐんだ。神輿を作った受刑者もその中にいたかもしれない。
黄色いハンカチが空にはためけば、人はいつからでもやり直せる。それは受刑者ばかりではない。名優は今もそう伝えてくれている気がする。