参議院法務委員会(開会日2007年5月15日)

政府参考人の出席を求めることを決定した。
少年法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会閣法第四四号)(衆議院送付)について修正案提出者衆議院議員早川忠孝君、同大口善徳君、長勢法務大臣、小渕文部科学大臣政務官及び政府参考人に対し質疑を行った。
また、同法律案について参考人の出席を求めることを決定した。

法務大臣が、政府案立法の経緯と提案の経緯を説明した。また、与党修正案についてその提案者がその趣旨を説明した。
質疑答弁は、以下。
「立法事実」とされる少年犯罪の状況について、かみ合う議論ではなかった。統計的には凶悪化や低年齢化はないのではなど質問したが、依然深刻な状況であると法務大臣法務省刑事局長は、「近年、低年齢の少年で凶悪事件が発生している。最近、ささいないきっかけで凶悪・冷酷な犯行が。動機不可解。少年自身説明できない。従前の少年犯罪と違う面ある」とした(注.ずっと以前からこのような事件はあった。・・少年犯罪データベース参照)。法務大臣は「国民の大多数は少年がひどいと聞いている。何か対応しろというのが国民の要請である」とした。
本法案全体について、野党議員(江田民主党議員)は、家裁や児童相談所のリソースが弱体化しており、これを強化する制度づくりを最大限努力すべきである。少年保護法制というのは、犯罪内容ではなく、少年の要保護性が高いか低いかでみるもの、と少年法制の根幹からみる必要性を強調。2000年「改正」がどうだったのかその状況を踏まえてからでよいとした。江田議員も民主党千葉議員も、少年については「育ち直し」が必要であって、少年が自分で育ち直しをする道筋を手助けするのが必要であるが、この法案はこの点疑問であるとされた。
警察の触法少年への調査権については野党議員から、「大阪地裁所長襲撃事件」等を引用しながら、主に、少年の権利保障の観点からさまざまな疑義が出た。触法少年の調査には可視化が不可欠ではと質問したが、政府委員の消極の回答。取調で机をたたくなどして虚偽自白に追い込んだ「大阪地裁所長事件」については、「係争中なのでコメントできない」とし、我々は規則・通達を遵守してきた、というのが警察庁生活安全局長の回答である。共産党仁平議員は、触法少年事件での捜索・差押等は刑事訴訟法を準用するのに、なぜ、少年への調査について、警察内部の通達・規則レベルの話だけで、(憲法上の権利である)黙秘権等の権利保障がないのか鋭く突いた。これについて従前から「刑事責任を追及するのではないから」を繰り返しているが、最高裁判例では、保護処分も不利益処分であるとしているのに、なぜかと質した。これについて、法務省刑事局長は、「たいへん難しい問題。そのような中で修正案で弁護士の選任権を入れた」と答弁(注.これだけではあまりに不十分)。警察庁安全局長は、この法案が通ったら、これを踏まえて(警察内部の)規則・通達を整備する必要があるかどうか検討するという程度の答弁しかしなかった。
少年院の下限年令については、民主党千葉議員が、1949年にそれまでの「おおむね14歳以上」の「おおむね」をはずした理由として、14歳以上の犯罪・虞犯少年と14歳未満の少年を同一に扱うことは適切ではない、14歳未満は児童福祉法上の施設で処遇するということであったが、この趣旨が今、本当に変化しているのかと質した。法務省刑事局長は、現在の少年非行の現状に鑑み、14歳未満であっても、凶悪犯罪や悪質な事件を繰り返すなど深刻な問題をかかえる者に対して早期に矯正教育が本人の改善のために必要で相当、開放処遇の児童自立支援施設では対応困難と考えるとした(注.このような少年も以前からいた。特に、1949年当時は、少年による殺人事件が今より数倍もあった時期である)。しかし、14歳未満は児童福祉上の施設の処遇の方が適切であるとして上記のようになったはずであるし、また、児童自立支援施設でも国立のように一部自由を制限でき、医療チームもある施設がある、だからなぜ「おおよそ12歳以上」で少年院送致可能になるのか理解できない、そもそも厚生労働省自身が、「育ち直しは福祉で責任をもってやるという覚悟」がなければ一番被害を受けるのは子どもではないかと鋭く追及した。
保護観察中の遵守事項違反による少年院送致について、これではまるで、保護観察は「執行猶予付少年院送致」ではないか、虞犯通告も活用されていないし、保護観察が充実できる体制づくりの方が先ではないかと野党議員から追及された。この遵守事項違反による「審判」では少年院等「施設収容」送致しか選択できない。保護観察中再度犯罪を犯しても、必ずしも少年院送致にならないのに、である。この辺の追及がほしいところであった。