(筆洗) ある映画音楽の作曲家は自分の担当した映画が上映されている映… - 東京新聞(2020年7月8日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/40946

ある映画音楽の作曲家は自分の担当した映画が上映されている映画館のトイレに閉じこもるのだそうだ。
何をするのか。上映が終わると観客たちがトイレにやってくる。作曲家は耳をそばだてる。そこで、映画のテーマ曲の口笛や鼻歌が聞こえてくれば大成功というわけだ。
映画黎明(れいめい)期の映画音楽は映写機のシャーという音を消すためのものだったそうだが、やがて、映画にとって欠かせぬものになった。映像が伝えきれぬ感情を音楽が補ってくれる。良い映画音楽はときに映像以上に観客の胸に刻まれる。
「続・夕陽のガンマン」「アンタッチャブル」「海の上のピアニスト」など四百本を超える映画音楽を担当したイタリアの作曲家エンニオ・モリコーネさんが亡くなった。九十一歳。この人の音楽もきっと世界中の鼻歌や口笛になっただろう。
イタリア映画の傑作「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽は当初引き受ける気はなかった。「キスを通して映画の歴史を語る」。送られてきた台本を読み、心を変えた。引き受けてくれて本当によかったとあの映画のファンなら思うだろう。
あくまで映画のあるじは映画監督であって「音楽家は映画監督のために働くのだ」と語っていた。だからその音楽は独り善がりに陥ることなく映像と一体となって物語を紡ぎ出せたのだろう。追悼に、どの作品を見るかで悩む。傑作が多すぎる。

 

余録) 映画「風と共に去りぬ」の撮影は… - 毎日新聞(2020年7月8日)

https://mainichi.jp/articles/20200708/ddm/001/070/107000c

映画「風と共に去りぬ」の撮影はすでに始まっていた。しかし、脚本が気に入らなかったプロデューサーは撮影を止め、新聞記者出身で早書きのすご腕と定評があった脚本家のベン・ヘクトに5日間での書き直しを命じる。
舞台「ムーンライト&マグノリア」は実話を基にドタバタの舞台裏を描く喜劇だ。2004年に米国で初演され、日本の劇団ではテアトル・エコーが「風と共に来たる」の題で上演している。
81年前の製作当時、欧州ではナチス・ドイツユダヤ人を迫害していた。映画の成功に情熱を傾けるプロデューサーに対し、奴隷制を美化するような設定に反発するユダヤ系のヘクトの視点がピリッと利く。実際、ヘクトはクレジットされることを拒否したという。
米国で白人警官が黒人男性を死亡させた事件を受けてブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)運動が広がる。動画配信サービスは、この映画の配信を一時停止し、本編の前に解説を付けて再開した。ヘクトが生きていたら、留飲を下げたに違いない。
ラグビーイングランド代表チームのファンが歌う黒人霊歌由来の応援歌「スイングロー・スイートチャリオット」も賛否の議論が起こる。奴隷制に関わる歌だからというのだ。
米ディズニー社の人気アトラクションのテーマは、黒人少女が主人公の映画に変更されるようだ。たとえ物理的に排除されても、意識が変わらなければしょうがない。負の歴史をいかに教訓にするか。他者への想像力も大事だ。

 

[大弦小弦]辺野古新基地 広がるか見直し機運 - 沖縄タイムス(2020年7月8日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/597331

琉球新報沖縄タイムスが全て正しいという立場ではない」。元防衛相の石破茂さんは、辺野古新基地の検証が必要と発言した講演で、沖縄2紙にも言及している。何やら持って回った表現だ

自民党の国会議員に「沖縄の新聞はうそばかり」と言われたことがある。どの記事か聞くと答えず「中国の問題を全く載せない」と言う。中国艦船が海自艦にレーダー照射した問題を、1面に載せた年だった

▼石破さんの言葉は裏返すと、大手紙が報じない核心を突く記事もあるという意味と解釈した。「政府が全て正しいか検証が必要」と続けた。軟弱地盤に約1兆円の税金をつぎ込む国策に、懐疑的なのだろう

▼元防衛相の中谷元さんは、新基地の軍民共用などを訴えた。前回の自民党総裁選で石破さんの推薦人に名を連ねている。連動しているとみるのが自然だろう。辺野古に造る前提は歓迎できないが、現計画への与党からの懐疑は、壁を崩すアリの一穴(いっけつ)になり得る

▼専門家の解析は大浦湾側の護岸を、工事中は震度3以上、完成後は震度1以上で崩壊のおそれありと警告する。地震を誘発する活断層の存在も指摘する

▼巨費を投じ、十数年かけても完成がおぼつかない。完成後も低耐震ではムダの極みだ。「辺野古が唯一」への固執だけでは政策に値しない。政治が「プランB」を示す時ではないか。(吉田央)

 

“森友問題”自殺した職員の妻が国を提訴「文書開示に1年以上かけるのはありえない」 - MBS 関西のニュース(2020年7月6日)

https://web.archive.org/web/20200706103108/https://www.mbs.jp/news/kansainews/20200706/GE00033791.shtml