「疑惑」国会幕開け 説明は国民代表の責務だ - 琉球新報(2020年1月22日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1060921.html
https://megalodon.jp/2020-0122-0946-56/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-1060921.html

言論の府で口を閉ざすとは任務の放棄も甚だしい。まずは、かけられた疑惑に対する説明を尽くすことが国民の代表である国会議員の責務だと肝に銘じるべきだ。
通常国会が開会した。安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題、元閣僚らの公選法違反疑惑、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件が焦点だ。
にもかかわらず、問題が指摘され、「疑惑」が浮上した議員は木で鼻をくくったような説明しかしなかった。
昨年10月に法相を辞任した自民党河井克行衆院議員は「捜査中で支障を来さないよう発言を慎む」と説明を避けた。妻の案里参院議員と共に昨年の参院選で車上運動員に法定上限を超える報酬を支払っていた疑惑がかけられている。案里氏も「捜査の区切りがついたところで説明したい」と語るだけだった。
昨年10月に経済産業相を辞任した自民党菅原一秀衆院議員は、秘書が選挙区の有権者に香典を手渡した疑いがある。公選法違反容疑で東京地検に告発された。「当局から要請があれば誠意を持って協力する」と繰り返した。
いずれも疑いが持たれているのは自らの政治活動に関わる違法な行為だ。なぜ説明しないのか。
国民の代表であることの自覚を忘れてはならない。国民へ訴え、語り掛けるのは何も選挙の時だけではない。疑惑を持たれている時こそ、誠実な説明が大切になる。
疑惑について発言したからといって、捜査に影響を及ぼすことなどあり得ない。身に覚えのない疑いをかけられているのなら、堂々と主張すればいい。
IR汚職事件で、贈賄容疑で逮捕された中国企業の元顧問が「現金を渡した」と供述した衆院議員も登院した。
県関係議員の一人が下地幹郎衆院議員だ。100万円の受領を認め、日本維新の会を除名されたが、下地氏は「しゃべらんよ」と述べた。
一方で本紙の首相施政方針演説に対するコメントでは「新聞でのIR疑惑とは無関係だと国会で証明する」と寄せた。証明の機会を早期に設けるよう望みたい。
宮崎政久法務政務官は「金銭の授受は一切ない。不正もない」と答えた。しかし中国企業の元顧問との関係性については釈然としない部分もある。国会審議や記者会見を通じて丁寧な説明が求められる。
説明責任がないがしろにされるのは首相の対応にも原因がある。臨時国会で「桜を見る会」に関する集中審議を避け続けた。会期延長にも応じなかった。20日の施政方針でも一切言及していない。
国民に説明しない、あしき前例をつくっている。
まずは首相自身が反省して態度を改めることだ。「桜を見る会」を巡る数々の疑惑に対し、国会審議の場で誠意をもって質問に答え、模範を示すべきだろう。

 

施政方針演説 現実を隠す改革の幻想 - 信濃毎日新聞(2020年1月21日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200121/KT200120ETI090010000.php
http://archive.today/2020.01.22-004743/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200121/KT200120ETI090010000.php

通常国会がきのう、召集された。安倍晋三首相は施政方針演説で「社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく」と述べている。前面には全世代型社会保障や成長戦略の実現などを打ち出した。
内実は厳しい。超高齢化社会に向けて、負担や給付のあり方に根本から切り込み、改革していく姿勢は見えない。
成長戦略は、第5世代(5G)移動通信システムや人工知能(AI)などを並べているものの、米国や中国に引き離されたままだ。「世界をリードする」という言葉に実態は伴わない。
財政再建にはほとんど言及しなかった。来年度当初予算案については「税収は過去最高」「公債発行は8年連続で減額」と述べて胸を張った。
実態はどうか。前提としている名目の経済成長率は2・1%で、現在の実力とされる1%程度を大きく上回る。2019年度は税収増にブレーキがかかっているのに、20年度に過去最高の税収を見込むのは楽観的に過ぎる。
公債発行の減額もまやかしだ。減額は1千億円にすぎない。それも外国為替資金特別会計から従来ルールを超える額を繰り入れるなど、「禁じ手」の対応で財源をかき集めた結果だ。例年通りの経済成長率で税収が想定より減れば、新たな国債発行は避けられない。
25年度の基礎的財政収支の黒字化を目指すとも述べた。政府が17日に示した中長期財政試算は、高い経済成長率でも3兆6千億円の赤字だ。従来の成長だと8兆円を超える。政府は現実との乖離(かいり)をどう説明するのか。
外交も同じだ。北朝鮮に対しては「拉致問題の解決に向け、金正恩朝鮮労働党委員長と条件を付けずに向き合う」と強調。ロシアとは「日ソ共同宣言を基礎として交渉を加速」とした。交渉の行き詰まりから懸け離れている。
桜を見る会」を巡る疑惑や、それに伴う公文書の取り扱いの問題、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件などにも言及しなかった。紛争に巻き込まれる懸念が残る自衛隊の中東派遣も「日本船舶の安全を確保する」と述べただけだ。
楽観的な目標や数値を掲げて改革の幻想をふりまき、政権に不都合な問題は覆い隠す。これは国会と国民の軽視である。必要なのは、厳しい状況を国会の共通認識とした上で、国民の前で道を切り開く政策論争をすることだ。空疎な言葉では未来は築けない。

 

センター試験 積み残した大きな課題 - 朝日新聞(2020年1月22日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14335735.html
https://megalodon.jp/2020-0122-0725-28/https://www.asahi.com:443/articles/DA3S14335735.html

大学入試センター試験が31年の歴史に幕を下ろした。高校や大学から「改良を重ね、思考力を問う良問が増えた」と、一定の評価を受けた試験だった。
思考力のさらなる重視をかかげて「共通テスト」に切り替わるが、英語民間試験と記述式問題の導入をめぐる迷走から、なお行方が定まっていない。まずここをはっきりさせ、受験生の不安を解消する必要がある。あわせて中長期的な視点から、あるべき入試制度について検討を深めるべきではないか。
文部科学省の審議会などでの議論をふり返ると、当初指摘された二つの問題が積み残されていることに気づく。
一つは試験の肥大化だ。センター試験は私大に門戸を広げ、各大学が科目を自由に選べる方式を採った。参加数は6倍近い858校に膨らみ、多様な要望に応えるため、科目数も18から30に増えた。06年からは英語のリスニングも加わった。
その結果、科目選択が複雑になりすぎ、試験監督が問題冊子を配り間違える事故も起きた。今回の記述式導入などの頓挫は、共通入試に何もかも詰め込もうという考えの限界を露呈させた。制度が難解になるほど、塾で助言・指導を受けられる生徒が有利になるのも、見過ごすことのできない欠点だ。
センター試験の後継の姿を議論する過程では、教科や科目の垣根にとらわれない横断型試験とするアイデアも出ていた。そうした案も含め、主要教科の土台の力を測る簡明な試験の形を、改めて模索してはどうか。
肥大化の背景には、個別入試の運営が各大学の重荷になっている事情もある。共通テストの出直しの論議では「記述式などは個別入試で」との意見が出ている。それには国による各大学の入試体制充実への支援や、大学間の連携を真剣に検討する必要があろう。
積み残されたもう一つは、基礎学力のない学生の増加だ。定員だけみれば大学全入の時代を迎え、「学力不問」の学校推薦や自己推薦の入試も問題になってきた。学び直しの時間を設けるなど大学側の負担は大きく、本来の教育に支障が出ている。
文科省は来年から、推薦入試の際、小論文や口頭試問などによる学力確認の実施を義務づける。高校にも、英数国の民間検定なども使って基礎の定着を図るよう求めている。一方、推薦入試にも使える基礎学力テストの構想は、高校の序列化を招くといった懸念から、見送られた経緯がある。
大学の学びに必要な力を測る公平な入試制度をいかに作るか。成果の検証と結果を踏まえた不断の見直しが求められる。

 

伝える「満蒙開拓」 松本・梓川高生から安曇小児童へ 体験聞き取った紙芝居上演 - 信濃毎日新聞(2020年1月21日)

http://archive.today/2020.01.22-005000/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200121/KT200120ATI090010000.php

 

<東京2020 祝祭の風景> 第2部 届かぬ声(3) 都の立ち退き要求、住民交流分断 - 東京新聞(2020年1月21日)

https://megalodon.jp/2020-0121-0914-20/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/national/list/202001/CK2020012102000146.html

 

首相施政方針 疑惑解明の意欲見えぬ - 東京新聞(2020年1月21日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020012102000162.html
https://megalodon.jp/2020-0121-0841-04/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2020012102000162.html

通常国会がきのう召集された。安倍晋三首相は施政方針演説で、経済政策や社会保障改革に取り組む姿勢を強調したが、政権に向けられた疑惑の解明に努めようという意欲は全く見えてこない。
今年の通常国会は夏に東京都知事選、東京五輪パラリンピックを控え会期延長が難しい。政府は提出法案を最少の五十二本に絞って予算案や年金制度改革など関連法案の早期成立を期す、という。
虚偽報告や情報隠蔽(いんぺい)は論外だが、政府が国民の代表で構成する国会と誠実に向き合わなければ、審議が公正に行われるはずがない。まず問わねばならないのは安倍政権の政治姿勢である。
二〇一二年十二月に政権復帰した安倍首相は、第一次内閣を含めた通算在職日数で歴代最長記録を更新し続け、長期政権ゆえのおごりや緩みも顕著となっている。
首相が地元支援者らを多数招待して「私物化」と批判を浴びた上に、招待者名簿の違法管理を続けた「桜を見る会」問題、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡み、現職国会議員が逮捕された汚職事件は、その典型だろう。
しかし、首相は施政方針演説の中で、桜を見る会やIRの問題には全く言及せず、疑惑解明に向けた決意や意欲は伝わってこない。
昨年十月、公職選挙法に抵触する可能性がある「政治とカネ」の問題で閣僚が相次いで辞任したことについても触れずじまいだ。
共同通信社による今月中旬の世論調査では、首相が桜を見る会の疑惑を「十分説明していると思わない」とする回答は86・4%に達し、IR整備を「見直すべきだ」と答えた人も70・6%に上る。
首相はこうした国民の厳しい声を正面から受け止めているのか。
桜を見る会は中止となり、二〇年度は予算を計上していない、捜査中の事件のコメントは差し控える、というのが政府側の言い分なのだろうが、国民の理解が得られるとは到底思えない。
自衛隊の中東派遣について「情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する」と述べたが、そもそも国会の審議や議決を経ず、政府のみの判断で自衛隊を海外に派遣することは妥当か。
政権の長期化に伴い、国会を軽んじる姿勢も目立つ。三権分立の危機である。国会と誠実に向き合い、真実のみを述べ、情報を隠さず、野党の指摘にも真摯(しんし)に答えるのか。議会制民主主義の基盤を成す政権の政治姿勢こそ、今年も問われ続けなければならない。