安保法制判決 何も答えぬ司法に失望 - 東京新聞(2019年4月23日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019042302000176.html
https://megalodon.jp/2019-0423-0905-35/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2019042302000176.html

健全な司法か。「安全保障法制は違憲」と訴えた訴訟の全国初の判決が札幌地裁であった。だが、「訴えの理由がない」と原告敗訴。原告や証人の尋問も認めず、一刀両断する司法には失望する。
集団的自衛権の行使を可能にした安全保障法制は憲法に反するのではないか-。多くの国民が抱いた疑問だ。長く日本政府が個別的自衛権のみを認め、「集団的自衛権の行使はその枠を超え、憲法上、認められない」と国民に説明してきたからだ。明らかに矛盾している。
原告四百人余りは国家賠償を求める形で訴訟を起こした。平和的生存権の侵害による精神的苦痛などを理由とした。だから、原告たちには法廷で語らせないと、苦痛への理解は深まらない。証人尋問をしてこそ、裁判官も事実の認定ができるはずである。それらを排斥し、強引に審理を打ち切ったのは、乱暴である。原告の弁護団が「司法権力の乱用だ」と反発したのも理解できる。
判決では「不安は抽象的」「自衛隊の海外派遣の蓋然(がいぜん)性はいまだ低い」などとの言葉が並んだ。しかし、この訴訟の核心は法律そのものが違憲か否かという点だ。
政府答弁の矛盾に加え、安保法制の合憲性の裏付けとしている「砂川判決」にも致命的な問題がある。駐留米軍に関する一九五九年の最高裁判例である。ここで確かに固有の自衛権を持つと明示した。だが、あくまで個別的自衛権であるのは常識である。集団的自衛権はここでは全く問題になっていない。さらに判例には「一見極めて明白に違憲」ならば、行政行為を「無効」とできると踏み込んだ表現もある。だから、裁判官は「一見極めて明白に違憲」かどうかのチェックが求められるのではないだろうか。
憲法との整合性への検討が全く見られない。むしろ判断を回避する理屈を駆使しているように感じる。司法に期待される役割の放棄とも受け止める。自衛隊イラク派遣訴訟で、二〇〇八年に名古屋高裁は「平和的生存権基本的人権の基礎で、憲法上の法的な権利」と認めた。今回はそれを「具体的な権利と解せない」と後退させた。納得できない。
判決の根底には、司法は政治的問題に関わりたくないという消極姿勢がありはしないか。あと全国二十四の裁判所の判断が残る。三権分立の基本を踏まえれば、司法権こそ個人の権利侵害の訴えに誠実に向き合うべきだ。

 

アイヌ支援法が成立 多様な歴史性育むために - 毎日新聞(2019年4月23日)

https://mainichi.jp/articles/20190423/ddm/005/070/093000c
http://archive.today/2019.04.23-000838/https://mainichi.jp/articles/20190423/ddm/005/070/093000c

文化の継承や地域振興を後押しするアイヌ民族支援法が成立した。1997年に制定されたアイヌ文化振興法に代わるものだ。
アイヌの人々は北海道を中心に独自の文化を形成してきた。明治維新以降に始まった開拓で、土地資源や狩猟、漁労といった生業を奪われた。困窮に追い込まれ、いわれなき差別を受けた。
文化的にも、アイヌ語が制限されるなど、同化政策が推し進められ、大きな打撃を受けた。
支援法はそういった苦難を強いられてきたアイヌの支援を目的としている。この法律の意義は初めて「先住民族」として明記されたことだ。
政府が当時の政策の誤りを正し、多様な文化を尊重する共生社会の実現を目指すのは当然だ。
ただし課題は残る。先住権の問題だ。2007年に国連総会で採決された「先住民族の権利に関する国連宣言」は、収奪された土地の原状回復や補償などを明記している。ニュージーランドや北欧などでは先住民族の権利回復が進む。
日本では、国連宣言の翌年に衆参両院で「アイヌ民族先住民族とすることを求める決議」が採択された。だが、支援法に先住権は盛り込まれなかった。
先住権をどう具体的に考えるかは確かに難しい問題だ。しかし、「国連宣言の趣旨を踏まえ」という支援法の付帯決議にもあるように、引き続き検討していくべきではないか。
北海道アイヌ協会が求めてきた個人への生活支援や教育支援も見送られた。居住地域を対象に実施した道の生活実態調査(17年)では、アイヌの人々の大学進学率が居住地域に比べ低い。生活保護受給率は減少しているものの、格差は残る。支援策の拡充が求められる。
独自文化の維持、振興の拠点となる「民族共生象徴空間」(北海道白老町)の管理も柱だ。中核区域には「国立アイヌ民族博物館」が来年4月にオープンする。豊かなアイヌ文化を未来へ引き継ぎたい。訪れる国内外の人々に触れてもらう意義は大きい。
同時にアイヌの人々が歩んできた苦難の歴史と現状を理解する場にもしたい。多様性を包摂するところに社会の豊かさもある。

 

[衆院補選後に]状況変える新たな手を - 沖縄タイムス(2019年4月23日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/412266
https://megalodon.jp/2019-0423-0914-15/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/412266

衆院沖縄3区の補欠選挙で初当選したフリージャーナリストの屋良朝博さん(56)は一夜明けた22日、辺野古を巡る硬直化した議論を解きほぐしたい、と国会活動に強い意欲を示した。
選挙戦では、玉城デニー知事の後継者として、県民投票の結果を踏まえ、新基地建設反対を前面に掲げた。
辺野古は解決策にならない。別のアプローチを考えるほうが現実的だ」
反対を主張するだけにとどまらず、選択肢を示すことで、具体的に政治を動かしていく。その発想が屋良さんの持ち味だ。
この考えは、対話による解決を求める玉城デニー知事とも共通する。
玉城知事は言う。
「県と政府の対立という言葉があるが、私たちが申し入れているのは対話であって、対立を持ち込んでいるわけではない」。見逃しがちだが、ことの本質を突いた重要な指摘だ。
キャンプ・シュワブのゲート前で、反対派の市民に当選報告をした屋良さんは「当たり前の政治、当たり前の民主主義を」と訴えた。
「当たり前の政治」とは「対話による解決」ということだろう。
工事を強行する政府と、話し合いによる解決を求める県。数の力で押し切ろうとする政府と、埋め立てによらない解決を求める県。
この違いを説得力のある言葉で発信し、県の主張を内外にもっとアピールする必要がある。何よりもスピード感をもって当たることが重要だ。

    ■    ■

安倍晋三首相は、移設反対派が勝利したことを受け、「一日も早い普天間飛行場の全面返還を目指したい」と述べた。
菅義偉官房長官も「辺野古が唯一だという考え方には変わりがない」と、移設方針に変更はないと明言した。
お決まりの「ワンフレーズ・ポリティクス」である。キャッチフレーズのような言い回しは、現実から遊離し、思考停止を表す言葉になりつつある。
軟弱地盤の改良で工事の長期化が避けられなくなった。工期さえはっきりしないのに、枕ことばのように「一日も早い」全面返還と言う。
本心からそれを望むのなら米側と交渉し、早急に代替案を検討すべきである。
県民投票や相次ぐ選挙で辺野古埋め立て「反対」の民意が示されてもなお、政府は「辺野古が唯一」だと言い募る。民主的な意思表示を無視した強権政治というしかない。

    ■    ■

県は6月、外部有識者による「万国津梁会議」を設置し、基地負担軽減について専門家の意見を聴取する。玉城知事の言う「話し合いによる解決」の具体的な一歩だ。
政府が司法決着にこだわるのは、県との主張の隔たりが大きく話し合いによる解決が困難だと考えているからである。
政府をどのように話し合いのテーブルにつかせるのか。議論を通して沖縄側は何を目指すのか。リスクがあるのは確かだが、状況を変えていく取り組みなしに事態を前に進めることはできない。

 

<南風>辺野古に行こう - 琉球新報(2019年4月22日)

https://ryukyushimpo.jp/hae/entry-906970.html
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辺野古に関する県民投票で43万を超える人が反対の意思を示しました。残念なことに日本政府は辺野古の基地建設を進めています。政治家は人々に諦めを促すのではなく、希望を実現する人であってほしいと強く願います。
一方、座り込みの現場からは「多くの人が座り込めば工事は止まる」「ゲート前に来てください」という呼びかけが聞こえます。私自身フルタイムに加え仕事をかけ持ちしており、なかなか現場に行くことができません。それでも数カ月に1度は足を運ぶようにしています。もし県民投票で反対の票を投じた43万の人が1カ月に1度でも足を運ぶとすれば、すごい数になります。
ネット上で繰り返される反基地運動に対する誹謗(ひぼう)中傷や「参加するとお金がもらえる」などのデマをちょっぴり信じている人は、ぜひ自分の目で確かめてみてください。
辺野古集落では、新基地建設に反対の人もいれば、条件付き容認の人もいると聞きます。条件付き容認をしている住民の「本当ならない方がいい」という言葉の重みを想像する必要があると感じています。
辺野古に基地ができなければ「平和」運動は大成功でしょうか。北部や離島の多くは、人口流出や働く場の確保など多様な課題を抱えています。もちろん主人公はそこに住む人々ですが、辺野古を含む北部や離島の活性化について、県民全体でもっと知恵を絞る必要があるのではないでしょうか。
辺野古で座り込むのと同時にできることもあると思います。座り込みの帰りに地元で飲食する、日常雑貨を買う等、一人の行動は微力ですがその数が増えれば経済効果を生む可能性があります。政府の不誠実な対応が続く今だからこそ、座り込みの現場と辺野古地域が賑(にぎ)わうことが同時並行で進んでほしいと思います。(玉城福子、大学非常勤講師)

 

仏の顔も… - 北海道新聞(2019年4月23日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298997
http://archive.today/2019.04.23-001135/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298997

日本人は、「三」という数が好きなのだろうか。三大夜景、三本勝負、三種の神器、万歳三唱。「維新の三傑」は、西郷隆盛大久保利通木戸孝允(たかよし)。平安時代の名筆家、小野道風藤原佐理(すけまさ)、藤原行成(ゆきなり)は「三蹟(せき)」と言う。
ことわざにも「三」は多い。「早起きは三文の徳」「石の上にも三年」―。さて、安倍晋三政権にとっては「二度あることは三度ある」か。
米軍普天間飛行場の移設計画が争点となった衆院沖縄3区補選で、移設容認を掲げた自民党候補が敗れた。昨年9月の県知事選、今年2月の県民投票に続く、三度目の「移設ノー」の民意だ。
これまで、安倍政権は知事選後の12月に名護市辺野古沿岸の埋め立てに着手した。そして、県民投票後も工事を中止せずに、新たな区域への土砂投入を強行した。「沖縄に寄り添う」と言ってきたにもかかわらずである。
「三度目の正直」だ。まずは工事を中止して民意と向き合い、改めて話し合いで解決する道を模索するのが筋だろう。しかし、菅義偉官房長官は「丁寧に説明させていただきながら、辺野古の埋め立てを進める」と、立ち止まろうとする姿勢は全く見られない。
「寄り添う」「真摯(しんし)に」「丁寧に」―。「舌先三寸」の政権の言葉は、どれも辞書の意味とはかけ離れている。気付いている有権者も少なくないはずだ。7月には参院選が控える。「仏の顔も三度」という言葉もある。2019・4・23

 

(政界地獄耳) 野党共闘、共産党の“査定”は? - 日刊スポーツ(2019年4月22日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904220000181.html
http://archive.today/2019.04.22-072306/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904220000181.html

統一地方選挙後半戦と衆院の2つの補選が終わった。メディアは自民党の2敗と幹事長・二階俊博、選対委員長・甘利明の責任論などが問われている。昨年秋からの沖縄県知事選挙、豊見城市長選挙、那覇市長選挙の沖縄3連敗に続いて福岡、島根の保守分裂選、大阪の知事、大阪市長自民党は落としている。与野党対決で勝ったのは北海道知事選ぐらいといえる。

★では野党はどうだろう。この補選で野党共闘が進んだのかといえば圧倒的に強い沖縄は、候補者の勝ち馬に乗るかのように野党が群がったものの、大阪では共産党の現職、宮本岳志衆院議員が職を辞し、無所属で立候補。野党共闘の捨て石になろうと努力した。一方、その前に行われた大阪の市長選、知事選では維新対自民、公明、共産など野党の構図を作ったものの歯が立たなかった。「その時、党は候補者も立てず、さしたる議論もなく反維新を標榜(ひょうぼう)するだけで自民党候補を勝手連的に応援した。これには大阪の共産党支持者が納得していないという声が出た。その党のアンサーが宮本の無所属出馬ではないのか」(在阪政界関係者)。

★それに対して、まともに宮本の応援に入ったのは自由党代表・小沢一郎ら幾人かの野党議員。立憲民主党代表・枝野幸男、国民民主党代表・玉木雄一郎は街頭などには立たず、事務所に激励に入っただけだ。共産党選対委員長・穀田恵二は「宮本の応援に駆けつけた議員は約40人いる」として、名簿にしていて応援の見返りに衆院選での選挙協力で配慮する可能性を示唆した。結果的には自由党社民党大阪府連に加え、立民や国民、無所属の国会議員、前議員らが応援に入ったがここでも維新の前に敗北した。今回、野党共闘は勝てそうなところは都合よく、厳しいところは冷たくを各党は如実に見せつけたが、穀田の“査定”も面白い。まだまだ協力関係とはいえないが、それで間に合うのか。(K)※敬称略

 

【放送芸能】初恋の少年に誓った不戦 渡辺美佐子 映画「誰がために憲法はある」 - 東京新聞(2019年4月21日)

https://megalodon.jp/2019-0422-1421-45/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/entertainment/news/CK2019042102000200.html


映画「誰がために憲法はある」予告編

 

沖縄3区補選 「辺野古が唯一」脱せよ - 朝日新聞(2019年4月22日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13987598.html
http://archive.today/2019.04.22-052249/https://www.asahi.com/articles/DA3S13987598.html

政府がむき出しの力で抑えつけようとしても、決して屈しないし、あきらめない。県民のそんな思いが改めて示された。
注目の衆院沖縄3区補選は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対をかかげる屋良朝博(やらともひろ)氏が、安倍政権が推した元沖縄北方相・島尻安伊子氏を破って当選した。
昨秋の知事選で、政権側の候補は移設の是非を語らない「辺野古隠し」に徹し、批判を浴びた。島尻氏は今回、普天間の危険性を取り除くためだとして容認姿勢を明確にしたうえで、経済振興策などを訴えた。だが有権者には届かなかった。
当然の結果ではないか。
2月の県民投票では、辺野古の海の埋め立てに反対する票が7割以上を占めた。しかし政権は一顧だにせず、3月下旬には新たな海域への土砂投入を始めた。3区の有権者を対象に朝日新聞などが実施した世論調査では、68%が政権の姿勢を「評価しない」と回答。参院選を前にした重要な補選だというのに、首相は応援のために現地に入ることすらできなかった。
いったい政権は、この問題にどんな展望を持っているのか。
埋め立て予定海域に軟弱地盤が広がっていることが明らかになった。工事は可能なのか。完成はいつで、事業費はどこまで膨らむのか。政権は具体的な説明をほとんどしていない。はっきりしているのは、当面できる作業を急ぎ、既成事実を積み上げるのに躍起な姿だけだ。
民意と政権の乖離(かいり)が目立つのは辺野古だけではない。
沖縄3区には名護市や沖縄市などのほか、米軍北部訓練場を抱える地域も含まれる。16年末に同訓練場の半分にあたる約4千ヘクタールの土地が返還された。
政権はその成果をアピールするが、返還の条件として建設されたヘリコプター着陸帯近くの住民は、激しい騒音や事故の不安に悩まされている。普天間辺野古の関係と同じで、たらい回しでは真の負担軽減にはならないことを、県民は間近な例を通して熟知している。
玉城デニー知事は就任以来、政府に対し、工事を一時やめて話し合うよう繰り返し求めてきた。だが、かたくなな姿勢は変わらず、今月10日に普天間飛行場の地元宜野湾市長も交えて2年9カ月ぶりに開かれた「負担軽減推進会議」でも、大きな進展は見られなかった。
補選で当選した屋良氏は、記者や研究者として基地問題に取り組み、米海兵隊の運用見直しや普天間の機能分散を提案してきた。政府はそうした見解にも誠実に耳を傾け、今度こそ「辺野古が唯一」の思考停止状態から脱しなければならない。

 

衆院2補選敗北 自民批判と受け止めよ - 東京新聞(2019年4月22日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019042202000170.html
https://megalodon.jp/2019-0422-1424-07/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2019042202000170.html

きのう投開票が行われた二選挙区の衆院補選は、いずれも自民党の公認候補が敗北した。選挙区固有の事情はそれぞれあるにせよ、自民党に対する有権者の厳しい批判の表れと受け止めるべきだ。
衆院沖縄3区補選は沖縄県知事選に立候補、当選した玉城デニー氏の議員失職に伴うもので、無所属のフリージャーナリスト屋良朝博氏(56)が自民党公認の島尻安伊子元沖縄担当相(54)を破った。
沖縄3区には政府が米軍普天間飛行場宜野湾市)に代わる新基地建設を進める名護市辺野古があり、選挙戦では新基地建設を容認する島尻氏と、反対する屋良氏が激しい舌戦を展開した。
在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄は長年、重い基地負担を強いられ、県民は新たな基地建設に反対する民意を示してきた。
昨年以降だけでも、九月の県知事選で新基地移設に反対する玉城氏が圧勝し、今年二月の県民投票でも七割が反対票だった。
こうした民意を背景に、沖縄県は政府に計画変更を繰り返し迫ってきたが、安倍内閣は一顧だにせず、埋め立てを強行している。基地負担を強いられる地元の声に全く耳を傾けようとしないのは、民主主義の軽視にほかならない。
主要野党が推す屋良氏の勝利は新基地への重ねての反対表明であり、建設を強引に進める自民党政権への厳しい批判と受け止めるべきだ。安倍内閣は、沖縄県民に対する高圧的な態度を改め、新基地建設計画の変更を求める県側との話し合いに応じる必要がある。
一方、大阪12区補選は、日本維新の会新人の藤田文武氏(38)が、自民党新人の北川晋平氏(32)ら三候補を破った。選挙戦最終日に安倍晋三首相自らが北川氏の応援に駆けつけたが、及ばなかった。
大阪都構想を進める維新は、大阪府知事大阪市長がそろって辞職し、立場を入れ替えて立候補する「クロス選挙」で自民党候補を破った。補選勝利はその勢いに乗った、という事情はある。
とはいえ、道路整備を巡り首相や麻生太郎財務相への忖度(そんたく)に言及した塚田一郎元国土交通副大臣や復興以上に自民党議員が大事と発言した桜田義孝前五輪相が辞任に追い込まれたことも自民不信につながったのではないか。
地域で相次ぐ自民党敗北は、有権者が長期政権のほころびを敏感に感じ取っている証左だ。首相をはじめ自民党執行部は有権者の批判を謙虚に受け止め、強引な政権運営を直ちに改めるべきである。