親の体罰禁止へ法改正を検討 政府・与党 民法「懲戒権」削除も視野 - 毎日新聞(2019年2月17日)

https://mainichi.jp/articles/20190217/k00/00m/040/001000c
http://archive.today/2019.02.16-222036/https://mainichi.jp/articles/20190217/k00/00m/040/001000c

政府・与党は、児童虐待防止に向け、両親など家庭内の体罰を禁止する法改正の検討に入った。今国会で児童虐待防止法体罰禁止の明記を検討。その上で、今後、親が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」の削除などの見直しも目指す。民法改正には法制審議会(法相の諮問機関)の審議が必要で、法改正まで時間がかかる。このため、児童虐待防止法改正を先行させたい考えだ。
児童虐待防止の観点からの体罰禁止はこれまでも議論されてきた。特に民法の懲戒権については、児童相談所(児相)の職員らに「しつけ」を理由にした虐待事案への介入をためらわせる一因にもなっていると指摘されてきた。
だが、2010年の法制審での議論では「『しつけ』もできなくなると誤解される恐れがある」などの反対論が出た。このため、16年の児童虐待防止法改正では体罰禁止が議論になったが、踏み込めなかった。
千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(10)や東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)の事件はいずれもしつけ名目で暴力を受けており、社会的関心が高まった。東京都は全国に先駆けて保護者による体罰や暴言を禁止する条例案を今月20日開会の都議会定例会に提出することを決めている。
さらに、国連の子どもの権利委員会も今月7日、体罰の法的禁止を日本政府に勧告したことなども踏まえ、安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で「懲戒権の規定の在り方について法務省に検討させる」と答弁。山下貴司法相は15日の記者会見で「具体的な検討方法やスケジュールを担当部局に検討させている」と表明し、法制審への諮問を示唆した。
児童虐待防止策を検討してきた超党派議員連盟(会長・塩崎恭久厚生労働相)などからは「児童虐待防止法での体罰全面禁止に再挑戦すべきだ」との声が強まっている。ただ、自民党の保守派議員らには「家族の在り方に踏み込むべきでない」との声が根強く、政府は慎重に検討する意向だ。【横田愛

 

木村草太の憲法の新手(98)校則問題(下)丸刈り強制は違憲で違法 - 沖縄タイムス(2019年2月17日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/385914
https://megalodon.jp/2019-0217-1505-19/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/385914

県民投票は告示にこぎつけた。校則問題の検討に戻ることにしよう。(1月6日付の「校則問題 上」に続く)

kodomo-hou21.hatenablog.com

校則それ自体には、法的拘束力がないことは確認された。今回は、今後の校則の在り方を考えよう。
第一に、法的権限の行使基準としての校則を作ること、それ自体を否定する必要はない。職員室に呼び出しての指導にせよ、懲戒処分にせよ、統一的な基準なしにこれを行えば不公平が生じる。
この点、学校教育法施行規則26条5項は、「学長は、学生に対する第2項の退学、停学及び訓告の処分の手続を定めなければならない」と定める。この規定が要求するのは「手続法」のみだが、公平確保のためには、何をすると懲戒対象になるのかという「実体法」についても、ルールを明確にした方が、法令の趣旨にかなうだろう。
第二に、校則を作る場合には、法的根拠を明確にすべきだ。一口に校則といっても、「懲戒処分基準」と「施設管理権に伴う要求事項」とでは、法的根拠が異なる。校則の妥当性をチェックする際には、この違いが重要だ。したがって、校則は、「○○校懲戒基準」とか、「○○施設利用規則」といった形で、法的根拠ごとに分類して定めるべきだ。
第三に、違反時の扱いの明記も重要だ。「規則が合理的だ」と言えるには、違反に対する制裁の程度が適切であることも必要だ。前回紹介した裁判例のように、校則に「男子は丸刈り」と書いてあった場合、学校で強制的に丸刈りにするなら人権侵害だが、違反者に何もしないなら、問題にする必要はない。よって、校則には、違反者に対して、懲戒処分や強制を行うのか、それとも学校の希望を伝えるにとどまるのかを明記すべきだ。違反時の扱いが定められていない場合には、懲戒処分や強制を予定しないものとして扱うべきだろう。
第四に、校則による処分・強制の適法性を担保する仕組み作りが必要だろう。ここで重要なのは、処分や強制の適法性は、法律や判例を基準に判断されるという点だ。しばしば、校則の策定は、生徒自身やPTAが関与すべきとも言われる。しかし、生徒やPTAは法律の専門家ではない。また、「自分は丸刈りが好きだから、他の子どもにもそれを強制したい」と考える生徒が多数派だったとしても、丸刈り強制は人権侵害であり、違憲・違法だ。校則の適法性の担保のために必要なのは、生徒らの関与ではなく、弁護士など法律専門家の助言や関与だろう。
第五に、校則違反者へのいじめ防止も必要だ。校則違反者に対しては、しばしば、児童・生徒による嫌がらせが行われる。しかし、校則は、教育や施設管理のために存在するのであって、子どもたちがいじめのターゲットを選ぶ基準ではない。
特に、「子どもたち自身が作る校則」は、違反者への憎しみを募らせやすく、いじめを誘発する危険を持つ。学校には、いじめ防止義務がある。「子どもたちが自ら話し合って決めたルールだから」と安易に校則化するのは、少数派に対する抑圧となる。必要のない校則は、作らない方がよいだろう。
このように、校則問題は、処分や強制の適法性を問い、法的根拠を分析することで解決すべきである。(首都大学東京教授、憲法学者)=第1、第3日曜日に掲載します

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お知らせ 本コラムを収録した書籍「木村草太の憲法の新手」(沖縄タイムス社、1200円)は、県内書店で販売されています。

木村草太の憲法の新手

 

首相自衛官募集発言 自治体への不当な弾圧だ - 琉球新報(2019年2月17日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-876635.html
https://megalodon.jp/2019-0217-1507-07/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-876635.html

安倍晋三首相が自民党大会で「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある」と発言した。しかしこれは明らかに事実に反する。首相本人が2日後の衆院予算委員会での答弁で「正しくは都道府県と市町村だ。自治体だ」と一部を修正した。しかしそれでも事実と異なる。
しかも安倍首相は「非協力」自治体を解消するため、自衛隊を明記する憲法9条改正の必要性を主張し始めた。改憲の目的に、自衛官募集の自治体協力を挙げること自体、詭弁(きべん)としか言いようがない。
防衛省自衛官募集の目的で、市区町村に対して、18歳、22歳になる住民の個人情報の提供を依頼している。2017年度は全1741市区町村のうち、36%の自治体が紙か電子媒体での名簿を提供し、53%の自治体は住民基本台帳の閲覧を認めている。
防衛省は残り10%の自治体の名簿を取得していない。未取得のうち協力拒否は5自治体だけだ。ほかは募集効果の観点で判断し、防衛省が閲覧していないなどが理由だ。
つまり自衛官募集に協力をしているのは名簿提供と住民基本台帳の閲覧を認めている合計89%の自治体だ。明確に協力を拒否しているのは5自治体だけで、全市区町村のわずか0・3%に満たない。
安倍首相が主張する「協力を拒否している」6割以上の自治体とはおそらく、個人情報を紙か電子媒体で提供している36%の自治体を除く64%の自治体を指すのだろう。
つまり住民基本台帳の閲覧を認めている53%の自治体も、防衛省が募集効果で判断して閲覧自体をしていない自治体も「協力を拒否している」とみなしているのだ。あまりにも乱暴だ。首相の発言とは思えない。
住民基本台帳法11条は、国や地方公共団体の機関が法令で定める事務のために必要な場合は、住民基本台帳に記載されている氏名、生年月日、性別、住所の写しについての閲覧を認めている。
住民基本台帳法は閲覧を認めているが、名簿提供まで認める規定はない。このため半数以上の自治体が閲覧にとどめている。同法は06年の改正で「何人でも閲覧を請求できる」との制度を廃止し、閲覧対象を限定した。
閲覧さえ厳密化されたのに、自治体が防衛省に名簿自体を提供することには批判の声がある。中には防衛省がダイレクトメールを送るための便宜として「宛名シール」などの紙媒体を作成し、提供している自治体もある。これこそ業務を逸脱していないか。
そして自民党は14日、所属国会議員に対し、自衛官募集の関連名簿提出を地元市町村に促すよう求める通達を出した。国会議員が自治体に圧力を掛けることなどあってはならない。政府の意に反する自治体への不当な弾圧を見過ごすことはできない。

 

(政界地獄耳)いまだ続く悪夢のような政権 - 日刊スポーツ(2019年2月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201902160000092.html
http://archive.today/2019.02.16-010725/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201902160000092.html

自民党大会での首相・安倍晋三の「悪夢のような民主党政権」発言を巡り、12日の衆院予算委員会では立憲民主党会派の元民主党政権副総理・岡田克也が質問に立ち「もちろん民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし政党政治で頭から相手を否定して議論が成り立つのか。私たちは政権時代にその前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら政権運営もやってきました。そのことを考えたら、あんな発言は出てこないはずだと思います。撤回を求めます」と語気を強めた。

★発言撤回を求められた首相は「自民党総裁として言論の自由がある」と子供のような答弁をした。党大会直後、自民党元幹事長・石破茂は「過去の政権を引き合いに自分たちが正しいと主張するやり方は危ない」と発言、首相をたしなめた。民主党政権で中枢にいた立憲民主党代表・枝野幸男も首相発言に反発。「良くなった部分も多々ある」と自画自賛した。

★この議論を言論の自由でくくるのは幼稚だが、自民党政権の印象操作の巧みさと、それに準じた新聞や雑誌の民主党批判キャンペーンは国民が民主党に期待した分、裏切られたという感情に変化して、悪魔のような民主党政権に納得する国民を増やしたのだろう。まして民主党政権の幹部は口をそろえて「いいこともやった」と主張する。政権は良いことをやるのが当たり前。それこそ現政権はやっている感を見せつけるのはうまいが結果が伴っていない。成果が出ていないことをメディアが攻めないなど、政権に甘いことも民主党幹部には歯がゆいだろう。

★しかし、その後の選挙で国民の評価は決定づけられた。確かに民主党政権時代の評価は実態以下に評価されがちだが、政権やメディアのキャンペーンをうのみにした国民の気持ちを覆すだけの材料も民主党政権は持ち合わせていなかった。やり方は幼稚だが、その手法に国民が納得するならば、首相の方が一枚も二枚も上手だということになる。国民の本音は、いまだに悪夢のような政権が続いているということではないか。(K)※敬称略

 

自衛官募集で自治体協力 「完全拒否」0.3%だけ 防衛相答弁「6割拒否」変えず - 東京新聞(2019年2月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201902/CK2019021602000142.html
https://megalodon.jp/2019-0216-0947-29/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201902/CK2019021602000142.html

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岩屋毅防衛相は十五日の衆院予算委員会で、自衛官募集の協力要請に一切応じていない自治体は五つだと明らかにした。全国千七百四十一市区町村の0・3%にとどまる。野党は「六割以上が協力を拒否」とする安倍晋三首相の主張を「乱暴だ」と批判。岩屋氏は「六割が非協力」との主張を変えず、自治体が適齢者名簿を提供するのは当然だとの考えを強調した。 (上野実輝彦)
国民民主党渡辺周氏への答弁。岩屋氏は「採用ポスター掲示などの募集広報を含む、自衛隊法九七条一項が規定する自衛官等の募集に関する事務を全く実施していただけていない」と説明した。自治体名は明らかにしなかった。
岩屋氏は「六割の自治体からは防衛相からの依頼に対して回答(名簿)をもらっていない。協力いただければ募集事務も随分はかどる」と改めて自治体側に名簿提供を求めた。
渡辺氏は「完全拒否」の自治体が0・3%にとどまることを受け「六割(が協力していない)というのはあまりに乱暴な数字ではないか」と指摘した。
防衛省の二〇一七年度の調査では、適齢者の氏名や住所などを名簿にして提供している自治体は36%。54%が名簿や住民基本台帳の閲覧を認めている。「その他」の10%には「完全拒否」のほか、適齢者が少ないことなどから自衛隊側が閲覧を求めていないケースも含まれる。
岩屋氏は予算委で、募集事務の一部が国が本来行う事務を自治体が代行する「法定受託事務」であることから、名簿提供に「当然応じてもらえるのが前提だ」と説明した。
自衛隊法施行令には「防衛相は市町村長に、必要な資料の提出を求めることができる」とある。防衛省幹部は「条文を読めば、名簿を提供しなくてはならないと考えるのが普通だ」と話すが、独協大の右崎正博名誉教授(憲法・情報法)は「提供を義務付けているとは読めない」と指摘している。

 

自民、自衛官募集で要請文 野党批判「自治体に圧力」 - 東京新聞(2019年2月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201902/CK2019021602000177.html
https://megalodon.jp/2019-0216-0949-33/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201902/CK2019021602000177.html

立憲民主党など野党は十五日、自民党が党所属国会議員に対して、自衛官募集に関連する名簿提出を地元市町村に促すよう求めた通達を出したことについて、自治体への圧力につながると批判した。政府・与党側は圧力を否定した。 (清水俊介)
立民の辻元清美国対委員長は同日の党会合で「(国会議員に)地元自治体がちゃんと協力しているかチェックしろよ、という話だ。地方自治の本旨から逸脱し(地方への)圧力ともとられかねない」と非難した。
国民民主党原口一博国対委員長も記者会見で「首相を擁護するために(自民党側が)忖度(そんたく)した」と指摘した。
一方、自民党加藤勝信総務会長は記者会見で「自治体に実態を聞くことが圧力になったら、国会議員は何の仕事もできなくなる」と反論。菅義偉(すがよしひで)官房長官も記者会見で、圧力にはならないとの考えを示した。
自衛官募集を巡っては、安倍晋三首相が自民党大会で「都道府県の六割以上が協力を拒否している」と発言し、改憲の必要性を訴えた。同党が十四日に出した通達は、首相発言を踏まえ「約六割以上の自治体から情報提出の協力が得られない」としている。
通達は、一部の自治体が隊員募集に関する情報を政府に提供した後、議会の「左派系会派」から批判され、謝罪した事例も紹介し「看過できない」としている。謝罪を報じた地元紙の記事も添付した。

自民党通達「自衛官募集に対する地方公共団体の協力に関するお願い」の要旨
法令を踏まえ、防衛省自衛隊は各市町村に募集対象者情報の提出を依頼している。防衛相からも都道府県知事と市町村長に依頼文書を出している。
しかし、全体の約六割以上の自治体から情報提出の協力が得られない。一部の地方議会では左派系会派からの要求に応じ、情報提供を行った行政側が謝罪を行う事態に発展しており、看過できない。党所属国会議員は、選挙区内の自治体の状況を確認するなど、募集事務の適正な執行に向け、協力するようお願いする。

 

(余録)「日本の子どもが怒鳴られたり… - 毎日新聞(2019年2月16日)

https://mainichi.jp/articles/20190216/ddm/001/070/124000c
http://archive.today/2019.02.16-004838/https://mainichi.jp/articles/20190216/ddm/001/070/124000c

「日本の子どもが怒鳴られたり、罰を受けたりせずとも、好ましい態度を身につけていくのは本当に気持ちのよいものです」。明治中ごろに日本を訪れた英国公使夫人メアリー・フレーザーは、そう述べている。
日本びいきの彼女だったが、明治以前の日本人が子どもに体罰を用いないことに驚く西欧人の記録は多い。古くは戦国時代に来日した宣教師フロイスの「われわれは鞭(むち)で子どもを懲罰するが、日本では言葉で譴責(けんせき)するだけだ」がある。
幕末の英国公使オールコックも子どもを打たない日本人に感心し、欧州の子どもへの懲罰を非人道的かつ恥ずべきものだと自己批判した。しかし当の日本人は明治になって西欧に学んだ民法に親の子どもへの「懲戒権」を書き入れる。
時は流れ、親が子どもに手を上げれば児童虐待となる今日の欧米である。日本が法律を学んだ国々はとうに親の「懲戒権」など削除した。日欧の文明は逆転し、今や子どもへの暴力につき国連委が日本政府に対策を求める時代である。
こんな歴史を思い出したのも栗原心愛(くりはら・みあ)さんの虐待死で、父親が執拗(しつよう)な虐待を「しつけ」と主張したからだ。父親の心にひそむ弱者への攻撃性を正当化し、歯止めを失わせたのが、親の権利や教育という口実だったのならばやりきれない。
明治に欧米に倣(なら)って身につけたものが、今や欧米に非難される“伝統”となったのは子どもへの懲罰だけでない。オールコックやフレーザーを感動させた本当の伝統を掘り起こして子どもを守る時である。

 

自衛隊めぐる要請文書、自民内にも異論「強制できない」 - 朝日新聞デジタル(2019年2月15日)

https://www.asahi.com/articles/ASM2G72HJM2GUTFK01R.html
http://archive.today/2019.02.15-005524/https://www.asahi.com/articles/ASM2G72HJM2GUTFK01R.html

自民党が14日に自衛官募集をめぐって配布した文書に対し、党内からも異論が相次いだ。文書は「約6割以上の自治体から協力が得られない状況」としているが、自治体には法令上、応じる義務はないと指摘が出た。安倍晋三首相に対しても「自衛官募集と憲法改正を絡めているが、こんなことをしてはいけない」との声も上がった。
文書では、防衛相が市町村に対象者の名簿を紙または電子媒体で提出するよう協力を求めていると説明。この要請に対し、6割以上が応じていないとして、「選挙区内の自治体の状況を確認」するよう所属議員に求めている。
ただ、自衛隊法や施行令では、防衛相は自治体に協力を求めることはできるものの、自治体側に応じる義務が定められているわけではない。紙や電子媒体で名簿を提出していなくても、ほとんどの自治体は、住民基本台帳の閲覧や書き写しを認めているのが実態だ。
自民党国防族議員の一人は文書について「問題だ」と述べた。関係法令についても「解釈の幅がある」とし、市町村が防衛相の要請に応じる義務があるとは言えないとの見方を示した。別の国防族議員は市町村に「強制できない」とし、「こんな文書を作ったら、中央の政治が地方に介入することにつながって、問題になる」と指摘した。

 

自民党、自衛官募集協力の要請文書配布 首相を後押しか - 朝日新聞デジタル(2019年2月14日)

https://www.asahi.com/articles/ASM2G6RXRM2GUTFK01P.html
http://archive.today/2019.02.14-143500/https://www.asahi.com/articles/ASM2G6RXRM2GUTFK01P.html

自民党は14日、党所属国会議員に対し、「自衛官募集に対する地方公共団体の協力に関するお願い」と題する文書を配布した。
安倍晋三首相は10日の自民党大会で、憲法改正に絡めて「新規(自衛)隊員募集に対し、都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態がある」と発言。論議を呼んでいることから、首相の主張を後押しするねらいがあるとみられる。
文書は、同党安全保障調査会の小野寺五典会長と同国防部会の山本朋広・部会長名で配布した。
防衛省自衛隊が、各市町村に募集対象者の情報の提出を依頼していることなどを説明したうえで、「約6割以上の自治体から情報の提出の協力が得られない状況にある」「一部の地方議会においては、左派系会派からの要求に応じて、法令に基づき募集対象者情報の提供を行った行政側が謝罪を行う事態にまで発展しており、看過できない状況」などとして、「選挙区内の自治体の状況をご確認頂くなど、法令に基づく募集事務の適正な執行」に協力を求めている。
防衛省が市町村に協力を求める根拠となる自衛隊法と同法施行令には市町村に資料の提出を求めることができることが定められているが、資料提出に応じる義務は明記されていない。
それでも全体の約53%の自治体は、自衛官募集のため住民基本台帳の閲覧や書き写しを認めており、紙や電子媒体で名簿を提出している自治体と合わせると、9割近くが募集に協力していることになる。

 

同性婚求め13組一斉提訴「尊厳取り戻したい」 - 東京新聞(2019年2月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021502000147.html
https://megalodon.jp/2019-0215-0921-52/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021502000147.html

国が同性間の結婚を認めないのは憲法が保障する婚姻の自由を侵害し、法の下の平等にも反するとして、十三組の同性カップルが十四日、国に損害賠償を求めて東京、名古屋、大阪、札幌の四地裁にそれぞれ一斉提訴した。原告らは記者会見し、「セクシュアルマイノリティー(性的少数者)の尊厳を取り戻したい」と訴えた。
原告側弁護団によると、同性婚を認めないことの違憲性を問う訴訟は初めて。提訴した十三組は東京、埼玉、神奈川など八都道府県に住む二十~五十代の同性カップルで、いずれも各自治体に婚姻届を提出したが受理されなかった。
東京地裁に提訴した原告らは、東京・霞が関の司法記者クラブで会見。埼玉県川越市の会社員相場謙治さん(40)は、政府が憲法同性婚を想定していないとの見解を示していることを踏まえ「特別な権利が欲しいわけではありません。平等なスタートラインに立ちたいだけなんです」と強調した。
横浜市の会社員中島愛さん(40)は、ドイツ人女性とドイツで結婚している。「日本では婚姻関係が認められず、不平等な扱いを受けている。今回の提訴が、日本での認識を変える一歩になってほしい」と望んだ。
同性愛者であることを告白しづらい現状を訴えたのは、東京都のNPO法人理事佐藤郁夫さん(59)。佐藤さんの男性パートナーは、家族や会社にゲイであることを隠しているため会見を欠席。パートナーから預かった「裁判に勝って、最後は顔を出して笑って終わりたい」とのコメントを声を詰まらせながら代読した。
一斉訴訟では、国会が立法措置を怠ったことによる精神的苦痛は一人当たり百万円に相当するとして、計二千六百万円の賠償を求めている。法務省民事局は「訴状を受け取っていないためコメントできない」とした。 (小野沢健太)

 


同性婚求め一斉提訴

 

同性婚一斉提訴 多様な価値観で考えて - 東京新聞(2019年2月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019021502000175.html
https://megalodon.jp/2019-0215-0922-52/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019021502000175.html

同性婚を認めないのは、憲法の婚姻の自由を侵害する-。そう訴えて同性カップルらが国に損害賠償を求め一斉提訴した。同性婚は今や世界の潮流である。多様な価値観で考えるべきテーマである。
物事は変わるものも、変わらないものもある。変わるのは人々の考え方が変わっていくから。価値観は文物や文化などに大きく左右され、他国との交流でさらに劇的に変化を遂げていく。
米国の同性婚の場合は、二〇一五年に連邦最高裁が「同性婚は合憲」と判断した。その前に「結婚は男女間に限る」とした連邦法に「法の下の平等を定めた憲法に反する」と判決を出してもいた。米社会を二分していた問題に区切りが付いた。
遡(さかのぼ)れば、こんな判決もあった。一九六七年。やはり米連邦最高裁が異人種間の結婚禁止法を違憲とした。白人と黒人の結婚は、一部の州では禁止だったのだ。
日本でも家制度により結婚相手も親同士が決めることが多かった。これが本人同士となったのは戦後の日本国憲法の定めによる。その憲法二四条には「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定められている。
「両性」の言葉について解釈が分かれている。つまり男女と判断すれば「同性婚違憲だ」となる。一方で両性とは男女に限定されず、それぞれ両方の性を指すのであり、「同性婚は合憲だ」との解釈も生まれる。合憲説を支えるのは、法の下の平等であり、個人の尊重であろう。
十四日に国に損害賠償を求め、東京、札幌、名古屋、大阪の四地裁に提訴したのは計十三組の同性カップル。各自治体に婚姻届を提出したが、受理されなかった。
政府は昨年五月に閣議決定した答弁書で、憲法条文は同性婚を想定していないとの見解を示していた。それが日本の現実だ。
そのため同性カップルは法的な結婚ができず、お互い法定相続人になれなかったり、税制上の配偶者控除を受けられないなどの不利益を受ける。少数かもしれないが、私たちの社会に現実に困惑している人たちがいる。
国内では一五年以降に東京都渋谷区など十一の自治体が「パートナーシップ制度」を設け、同性カップルの存在証明をする取り組みが広がってはいる。だが、法律上の地位には至らない。
海外ではもはや欧米を中心に二十カ国以上が同性婚を認める。先進七カ国では日本のみ孤立する。

 

(筆洗)国が同性同士の結婚を認めないのは婚姻の自由を保障した憲法に反する - 東京新聞(2019年2月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019021502000145.html
https://megalodon.jp/2019-0215-0923-48/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019021502000145.html

米国のブルース歌手、エタ・ジェームズが一九六一年にヒットさせた「AT LAST」という曲がある。
「AT LAST」とは「ついに」「やっと」の意味。やっと私の恋がかなった。寂しい日々はもうおしまい。つかみ取った幸せを歌っている。二〇〇九年の大統領就任祝賀パーティーで当時のオバマ米大統領と妻のミシェルさんがこの曲でダンスしていたのを思い出す人もいるかもしれない。
半世紀も昔の曲だが、米国では特定の機会に流れる定番ソングとなっている。お分かりか。結婚パーティー。とりわけ、同性カップルの結婚を祝う会でこの曲の人気は高いそうだ。結婚までの道程が険しい分「やっと」と歌うその曲と思いが重なりやすいか。
「AT LAST」と言える日を信じて日本の同性カップルたちが険しき道を歩きだした。国が同性同士の結婚を認めないのは婚姻の自由を保障した憲法に反するとして昨日、同性カップル十三組が東京、大阪、名古屋など四地裁に一斉に提訴した。
婚姻が認められねば、法定相続人にもなれぬ。具体的な不都合に加え、愛する者同士、法律上でも家族になりたい、平等に扱われたいというのは理解できる願いだろう。
同性婚への見方も変わった。先進七カ国(G7)で認めていないのは日本のみ。日本にだけ「AT LAST」の日が来ないことの方がよほど不自然であろう。

 

同性婚求めて一斉提訴 不利益を放置はできない - 毎日新聞(2019年2月15日)

https://mainichi.jp/articles/20190215/ddm/005/070/059000c
http://archive.today/2019.02.15-002455/https://mainichi.jp/articles/20190215/ddm/005/070/059000c

時代の流れの中で、起こるべくして起きた訴訟と考えるべきだ。
男性同士、女性同士が結婚できないのは、「婚姻の自由」や「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして、13組の同性カップルが全国4地裁で国家賠償請求訴訟を起こした。
同性婚を認めない法制度の違憲性を問う訴訟は、全国で初めてだ。
同性愛者を含めた性的少数者(LGBTなど)の認知度は、社会的に高まっている。だが、自治体に婚姻届を提出しても、男女の対である「夫婦」を基本とする民法の規定などを根拠に受理されない。
通常のカップルならば相手が亡くなった場合の法定相続人になれる。税法上は配偶者控除が受けられる。外国人の場合、配偶者としての在留資格が認められる。だが、同性カップルにはそうした法的権利がない。その矛盾を正すのが訴訟の狙いだ。
同性カップルを取り巻く社会環境は、既に大きく変わりつつある。
行政が同性カップルを「結婚関係」と認め、夫婦に準じた措置を取るパートナーシップ条例が2015年3月、東京都渋谷区で成立した。この動きは全国に広まり、札幌、福岡、大阪各市などの政令市も要綱などを整備し、こうした自治体の人口は900万人を超える。
さらに、企業の中には、同性婚カップルは結婚に相当すると認め、住宅手当などの福利厚生策を適用しているところが増えている。
現実は先を行っている。原告が求めているのは、特別な権利ではなく平等だ。その主張は理解できる。もはや不利益の放置はできない。
広告大手の電通が先月公表したLGBTに関する調査結果では、調査対象6000人の8割近くが同性婚に賛成と回答した。男性より女性、年代が若いほど賛成の割合が高かった。社会の中で、容認の流れが進んでいる。国際的に見ても、同性婚を認めている国は、米国や欧州の主要国など25カ国に上る。
憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」と規定する。この規定は同性婚を排除していないとの考え方があり、法整備で対応できるのではないか。司法判断を待つまでもない。多様化する家族をどう法律の中に位置づけるのか。国民的な議論が欠かせない。

 

(余録)多数決でものごとを決する民主主義だから… - 毎日新聞(2019年2月15日)

https://mainichi.jp/articles/20190215/ddm/001/070/130000c
http://archive.today/2019.02.15-002658/https://mainichi.jp/articles/20190215/ddm/001/070/130000c

多数決でものごとを決する民主主義だから、こんな皮肉をいう人もいる。「民主主義とは“半分以上の人が半分以上の時間は正しいはずだ”と無理やり信じ込むこと」。米作家E・B・ホワイトの言葉という。
だから「最大多数の最大幸福」を追求しがちな民主主義の難所は、いつも少数者の権利を守れるかという点である。たとえどんな多数の支持を背負った民主主義権力でも、侵してはならぬ一線を定めているのが憲法ということになる。
ならば同性婚の制度化を求める人々が、現行制度は憲法に違反すると提訴したのも単に司法まかせにすべき話ではなかろう。それは性的に多様な人々の権利主張をめぐる新たな合意の模索という、民主主義の宿題を指し示してもいる。
同性婚といえば婚姻を定めた憲法24条の「両性の合意」が論議となる。きのうの提訴では、条文は「婚姻の自由」を定めたもので同性婚を禁じたものではないと主張した。民法によって婚姻届が受理されない現状は「違憲」だという。
さらに同性カップルの税制などでの不利益は憲法14条の「法の下の平等」に反するというのである。思えばこの数年で日本社会のLGBTなど性的少数者への理解は飛躍的に広がり、自治体や企業での権利擁護への取り組みも進んだ。
世界的にも同性婚を認める国が広がる今日、提訴が投げかけた一石は日本社会が求めるべき理想、守るべき伝統は何かを論議し直す貴重なチャンスだろう。「難所」でこそ試される民主主義の真価である。

 

世田谷 養護施設虐待 少女「痛いも言えず」 - 東京新聞(2019年2月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021502000127.html
https://megalodon.jp/2019-0215-0925-33/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021502000127.html

東京都世田谷区の社会福祉法人が運営する児童養護施設グループホームで起きた虐待問題で、四十代の女性職員から暴言を受けていた入所中の十代の少女が「痛いというのも言えない」などと関係者に訴えていたことが分かった。この職員はホームの責任者だったことも判明。少女が被害を言い出しにくい環境だったとみられる。
少女への虐待通告は昨年五月、都の児童相談所などに寄せられた。通告前、少女は関係者に虐待の被害を「言わないでおいて。あんまり言ってると怒られちゃう」「言ったら精神的に殺される」とも告白。都は現在、こうしたやりとりを把握しているもようだ。
寮によると、少女は同月、ホームの責任者だったこの職員に付き添われて児童相談所を訪問し、聞き取り調査を受けた。通告を受け職員は六月に別の施設に移った。
都は九月、「ブス」などの暴言を心理的な虐待と認定したが、暴力は確認できないとした。
その後、少女への暴力もあったという別の通告が寄せられ、都は再調査を開始。少女は最初の聞き取りで、十分に被害を訴えられなかった可能性がある。
寮の飯田政人施設長は十四日、都の調査結果を基に「暴言は二〇一六年か一七年ごろから続いていたのではないか」と報道陣に説明した。
 昨年五月まで長期間、虐待を把握できなかったとして「暴言はほかの職員のいないところで行われており、気がつくことができなかった。子どもたちに申し訳ない」と陳謝した。 (岡本太、石原真樹)